第231話 『まやかしと呪い』
「村長っ」
役場に戻ると村長はカウンター前の待合スペースで、4人の男達とカードゲームをやっていた。
一体いつ仕事してるんだろう。
「おう、どうだった。いい女はいたかい?」
手持ちのカードを扇状に広げながら、オッサンが巻き煙草を加えたまま、ニヤニヤした顔を上げた。
「そんな事はどうでもいいっ! それより村長、今話せますかっ」
俺の剣幕に驚いたオッサンは、俺とゲーム仲間を交互に見やった。
「そいつは急ぎかい?」
「大至急ですっ!」
男達もポカンとした顔を上げ、何がなんだかわからないと肩をすくめたり、俺の方に体ごと捻って顔を向けたりしてきた。
その中や、カウンターにもあの老人の姿はない。
「そういや、ゴディスさんは?」
そうだ。村長だけでなく、あの良識人ぽい老人にも相談した方が良いだろう。
しかも彼は解析能力者だ。
「ん、爺さんなら帰ったよ」
「どこですっ? 家はっ」
「なんだよ、爺さんにも用なのか?」
不思議そうな顔をしながらも、一応場所を教えてくれた。
聞いて慌てて出ていこうとした時、ふとテーブルの上のジョッキに目がいった。
中身は昨日俺が持って来た黒ビールである。
「村長、私が持って来たビール以外に、元から役場にお酒を置いてたりしませんか?」
「ん、まあ、そりゃあ、私用に少しくらいはな」
別にちょっとくらい、職場に置いといても構わないだろ、とオッサンが少しムスッとするように口を尖らせた。
「その古い酒はもう残ってないんですか?」
ゾルフは節約して飲んでいると言っていた。
ここにも少しくらい残ってないか?
「んん? なんだよ、さっきから次々と、訳わかんねえなあ」
眉を顰めながら口髭を弄る。
「すみませんが、説明したくてもすぐには出来ないんです。
で、もう残ってないんですか?」
他の人達にも、中途半端に聞かれたくない。
「ぅうん、ウィスキーだが、瓶に少しだけ残してあるぜ。
ただ、栓がちゃんとしてなかったようで、ちょいと匂いが変っちまってるが」
「それっ、見せてください! 早くっ」
オッサンはちょっと面倒臭そうな顔をしたが、テーブルにカードを伏せると、のっそり立ち上がった。
そうしてカウンターの中に入ると、書庫の横にある戸棚から黒っぽい陶器製の瓶を取り出した。
「ほら、もし飲みたいなら全部やるよ。ただし、劣化してるけどな」
そう言って瓶を渡してきた。
栓を抜くと、酒は瓶の中に8分の1程度残っていた。
プンとアルコール臭に混じって、微かに苦いというより、やや錆た感じの匂いが混じる。
ウィスキーは基本、腐ったりするものじゃないが、保存状態が悪いと酸化したり、味が薄くなったりすることはある。
こんな匂いがするのは、劣化というか、変質している証拠だ。
もう飲むべき状態じゃないが、無いよりマシでチビチビと飲んでいたらしい。
だが、そっと解析すると、中身は劣化した酒ではなかった。
《 泥水と赤錆―― 》
もはや人の飲む物ではない。
思った通り、酒も騙されている。
「村長、先にゴディスさんに会ってきます。それから話します。
あとみんなに、古いモノは口にしないように伝えて下さい。
食べるのは、今日持ち込んだ食料だけにしてくださいねっ!」
ぽかんとする男達の視線を無視して、俺はまた豪雨の中に走り出た。
ゴディス老人の家は入り口とは正反対、あの鉱山入り口が見下ろす足元の鉱石置き場近く、塀から続く岩肌近くの民家の中にあった。
茶色っぽいオレンジ色の瓦屋根の木製2階建て。上の窓には小さなベランダがある。
看板どころか表札もないが、キツツキを模ったドアノッカ―があるのが目印らしい。
足を軸にしたブロンズ鳥の口先で、金属版を突くように叩く。
カンカンと結構高い音が響くが、この暴風雨の音でかき消されないだろうか。
何しろまわりの吊下げ看板などが、絶えずギイギイとした軋みを上げていて、時折裏手の低い木戸の閉まりが悪いのか、風向きが変るとガチャンカチーンと、閂の金具が音を立てるのだ。
俺がここの住民なら、気になってしょうがない。(それとも俺が神経質なせいか?)
もう一度ノックしようと手を伸ばしたところ、カタンと目の前の小さな覗き窓が開いた。
白い眉と深緑色の目が覗く。
「ほお、君か」
ゴトカタンと閂を外す音がして、ドアが内側に開いた。
「すいません、お邪魔します」
手前のこの部屋は居間のようだ。
木製テーブルとクッションを敷いた4脚の椅子。左横の壁に括りつけの棚とキャビネット。
正面の暖炉棚の上に、女性のバストショットを描いた肖像画が掛かっており、またリボンで作られた造花が瓶に飾ってあった。隣には封を開けた手紙が数通置いてある。
「お茶でも飲むかね。わしゃあ酒は飲まんので、あいにく置いとらんが」
暖炉内の横棒に吊る下げたケトルをミトンで掴んだ。
「お構いなく、それよりも大事な話がありまして」
レインコートの水を弾き落とすのももどかしく、そのまま丸めてカバン(収納)に入れる。
「そのようだな。わざわざこんなとこに来るなんて。
イワンにも話せん話かね?」
「いえ、村長さんにもちゃんと話しますが、先にゴディスさんに一度聞いてもらった方がいいかと……」
そう言いながら俺は、湯が注がれるポットに意識を持っていった。
《 グリーンカルダモンの実を乾燥させたもの…… 》
ああ良かった。
中身は普通のハーブティーのようだ。ケトルのお湯も泥水ではない。
全部が全部、泥や砂利で化かされているわけではないようだ。
そういや、食堂の料理にも僅かながら本物の小麦粉とかが混じっていた。
これはどういうルールなんだろう。
「良かったらまず座らんかね」
突っ立ている俺に、手前の椅子を勧めてきた。
手には食器棚から出してきた陶器製のカップを2つ持っている。
中身が大丈夫そうなので、もう断らずに頂くことにした。
テーブルの真上には、貝殻を使ったランプがぼんやりとした明かりを灯してぶら下がっている。
部屋の中は暖炉の灯りもあるが、窓を閉め切っているので全体的に薄暗い。
こちらに来てだいぶこういった薄暗さにも慣れてきたが、嵐の外より暗いのは閉塞感を感じないのだろうか。
ボウッと暖炉の火が大きく揺らめいた。
木の焦げた匂いが漂う。逆風が入り込んだせいだ。
「ふぅ、しかし本当に嵐も早く止んでくれんかな」
老人がゆっくりと立ち上がり、トングに似た火バサミを取ると、炎の帯を偏らせた薪をゴロゴロと動かしてならした。
「薪は十分にあるんだが、ランプ用のオイルがもう残り少なくてなあ。
結構買い置きしてあったつもりなんだが、こう嵐続きだと思った以上に減りが早いものだ」
節約のために灯芯を小さくして、必要最低限のランプにしか火を入れてないとか。
それで薄暗かったのか。
好んで暗くしてるわけじゃなかったようだ。
「良かったら、光玉を打ち上げましょうか? 1日くらい持つのを作れますよ」
「おお、それは助かる」
老人が口元を上げた。
それから頭上に光玉を打ち上げたほか、柱に付いているランプ、食堂や2階の寝室、トイレ、それに外出用のカンテラにも光玉を入れた。
みんなLEDのように長く持つように、そして光具合は白熱電球風に柔らかく調整した。家中がとても明るくなった。
なんだか独り暮らしの老人宅で、電球の交換をしているノリである。
でもおかげでゴディス氏の態度も柔らかくなった。
「妻だよ」
また居間に戻って来ると、肖像画の前に立って老人が言った。
「13年前に流行り病で、あっけなく逝ってしまったがね」
「ああ、それはどうも……」
俺も軽く肖像画に挨拶するように頭を下げた。
「2人の息子は、ここの鉱夫の仕事を嫌がって村を出ていってしまった。
それぞれ大きな町で商いをやっとるようで、たまに手紙で近況を知らせてきとる」
最近こっちに来いと云って来るが、今さら息子夫婦の世話になるのもなあと、言いながらも顔は嬉しそうだ。
「で、話とは?」
カップと一緒にハチ蜜の瓶をこちらに押しながら訊ねてきた。
「最近、この村で原因不明の腹痛が起きているとか」
それを聞いて老人の眉が微かに動く。
「うむ、まあそのようだな。ここ3,4日のことだが、急に腹を壊す者が増えて、医者がてんてこ舞いしとる。
何しろこの村に医者は1人しかおらんからな」
瓶の中にハチミツスプーンをくるりと回す。
うん、このハチ蜜も大丈夫そうだ。
「何かね、それで薬がもっと必要かという相談なら、医者のイーサンに訊いた方がいいが」
「いえ、ご意見を聞きたいのは、その原因の方です」
「むぅ?」
「まずこれをみて下さい」
テーブルの上に、さっき貰ったウィスキーボトルと、例の『赤豆と木登りトカゲのシチュー』を取り出した。
シチューはテーブルの下で隠しながら、持参の木皿に入れて出した。
「これを解析してみてくれませんか」
「ふむぅ?」
なんの冗談だと言わんばかりに、目の前の酒と料理と俺を見比べた。
「私は食べ物のせいだと思います」
「……確かに酒の方は、酸化しとるようだが」
ボトルを手に取りながら呟くように言う。
「そう感じますか? もっと良く視て下さい。こっちの皿に入っているモノはどうです?」
「む、むぅ……毒や腐ったモノは入っていないようだが……」
しばし2つの物体をジッと視ていたが、やがて目を瞑ると手で覆いながらひとつ息を吐いた。
「大丈夫ですか?」
彼も渦中の人なのだ。目を曇らすフィルタがかかっているのに、老人には酷だったか。
大体ゴディス老人自身、護符のせいで解析出来ないので体調がわからない。
こんなモノを体に入れたら、それこそさきのヘブンという人のように、体力の無い老人からやられるのではないか。
「あぁ……今朝ちょっと解析を頑張ったからな。ちょっとまだチカチカする……」
そうだった。
今朝、あの大量な食材を全て1人で解析したのだった。
俺も転移をやり過ぎた時に、転移酔いでしばらく眩暈が治らなかったんだった。
これは体力補充や身体回復ポーションでは治らない 神経回復が有効なのだ。
今回、これは必要ないかと仕入れなかった。
俺がいつも飲んでいる癒し水は、手持ち分を切らしてしまい、後で奴から貰うつもりだった。常備薬として別に買っておいたポーションも、回復と毒消しだけだった。
う~ん、相変わらず、用意が足りない俺……。
「すいません、無理させてしまって……」
「……年には勝てんな。昔はこれくらい平気だったんだが」と眉間を摘まんだ。
あの量は若くても大変な気がするけど、それとも能力差なのか?
だとしたら、渦中にずっといたとしても、見破れる可能性が高いな。
「じゃあひとまずこれは後にして、別の事を伺います」
瓶と皿を横にズラして、あらためて老人に向き直った。
「最近、私達以外に、誰かギルドから使いの人が来ませんでしたか?」
俺は老人の目を覗き込みながら言った。
ちょっとだけ老人が目を瞬かせた。
知ってるのか。
「そういえば――ギルドから来たと言っとった ―― 盗賊なら何人かいたな」
「えっ、盗賊ですか?!」
「ああ、どこから入り込んで来たのやら。嵐のせいですり抜けたのかもしれんが、本当に油断ならん」
眉をしかめながら、手を温めるようにカップに両手をそえた。
「その人達は、本当に盗賊だったんですか……?」
「そうだ。何しろ、役場にいつの間にか入り込んで物色してたそうだ。
役場なら金目のモノがあるとふんだのだろう。
だから君たちの事も、てっきりそうかと思ったわけだよ」
老人はお茶で喉を潤した。
それはやって来たハンター達が、調べている最中にこちらに入ってしまったからじゃないのか。
俺もそうだったが、盗みに入ったとしか見えないし。
「でも、その人達、ギルドからって言ってたんですよね? もちろんハンタープレートを持って――」
「そんなモノ、どうとでも偽造出来る」
老人が事もなげに言った。
「それに元ハンターの盗賊なんぞ、ザラにおるからな」
そうか、身分証が必ずしも身の潔白を証明するとは限らないんだ。
現役で犯罪を犯す奴はいるし。
あらためて伝書手配してもらって良かった、俺。
「それって、それぞれいつの頃のことですか? もしかして合計9人でした? 3グループ来て合計9人だったとか」
「ううん? なんで9人だと思うんだ。何か知っているのかね?」
老人が片眉を上げた。
「あ……、いえ、その、最近そんな盗賊グループの記事を読んだので……」
つい苦しい嘘をついた。
ここで知っていると言っても潔白を証明出来ないし、逆に俺も警戒されるかもしれない。申し訳ないが誤解を解くのは止めておこう。
老人は少し訝し気に俺を見たが
「……人数はよく覚えておらんが、それぐらいだったかもしれん――」
ちょっと左上に視線を動かした。
「……確かに彼らは、別々のパーティだとか言っとったようだが、所詮グルだよ。
何しろみんな昨夜のことだから」
「昨夜っ?! 昨日のことですか。本当にみんな昨日に固まって?」
「固まってとは変な言い方だな。みんな同じ盗賊団だったのだろう。
だから同じ日に別々に侵入してきただけだろうな」
調査に来たハンター達はこの1カ月の間、バラバラの日にこちらに来ているはずだ。
それがみんな同じ昨夜に見つかっている?
そういや、俺もそうか。
「……それって、私が来る前ですか?」
「うん……、ああ、そうだな。君の騒ぎの前だ」
「そんな騒ぎがあったのに、なんで教えてくれなかったんですか?
そう言ってくれれば、なかなか信用してくれなかった理由がわかったのに」
「すまんな。村長が何故言わんかったか知らんが、わしゃあ今訊かれるまで忘れとったよ」
忘れたっ?! そんな大変な事を?
年はとりたくないもんだなあと、老人は白い巻き毛を手ですくうように擦った。
それどころの忘れ方じゃないだろう。これはもう認知としか――
しかし思い出してみると、初めてオッサン達と遭遇した時、『お前は誰だ』と言ったが、『お前も盗人か』とは言わなかった。
しかも『スパイ』呼ばわりだったし……。
「その、盗賊たちは……全員追っ払えたんですか?」
「始末したよ。こんな嵐の中、どこにも行かんだろ。
ましてや相手も向かって来たんだ。こちらも生け捕りなんぞと悠長な事言っておれんからな」
そうか、俺が追い廻されたように、彼らも同じ目にあって……、それで殺されてしまったんだ……。
何も知らなければ、正当防衛と見なされそうだしなあ。
――待てよ、ニコルス主任の話によると、6人の登録書は黒く変色したという事だったが、残り3人は?
まだどこかで生きているのか。
「ゴディスさ――」
ふと考えから顔を上げると、老人が斜め前に置いた皿のシチューを凝視していた。
その顔は心ここに非ずと言った感じだ。
しかしよく視ると、彼は解析をしていたのだ。
濃い霧のような触手が、あの偽料理を包んでいた。
「こ、これは――」
老人が驚きの声を漏らす。
解析出来たっ! そしてまやかしを突破出来たのかっ。
「これはなんと、なん――……」
そのまま老人が止まった。
次の言葉を待っていたが、何か様子が変だ。
「ゴディスさん?」
声をかけたが返事がない。
俺は慌てて立ち上がると、老人の肩に手をかけた。
――硬いっ!
いくら弾力性の無くなった老人の体とはいえ、服の上から石膏のようにカチカチになっていた。
口は喋りかけた状態で半開き、目は斜め下に視線を向けたまま瞬きもしない。
全てが一瞬にして凍りついてしまったみたいだ。
息もしていないし、死んだのかさえもわからない。
どうしたんだっ?! 何が起こった?
俺は彼の手首や首筋を探ったが、脈もわからなかった。
もちろん護符のせいで解析出来ない。
そうだ、今なら。
服をまさぐると、首にペンダントタイプのアミュレットを下げているのがわかった。
早速外して状態を確認する。
《 状態:異常 ◇*▲*◎による~~~…… 》
だから何なんだよ、ピーによるピーってっ!
幸い生きているようだが、肝心なとこがわからない。
俺はその不鮮明なところに、更に集中した。
モヤモヤとした霧が払っても払っても湧いて出て来るように、文字の上を覆っている。
または近視の人が必死に遠くに目を凝らしても、細部がぼやけてどうにも見えないといったもどかしさ。
しかししばらく頑張っていると、俺の集中度が増したのか、それともこの個体に対して力が満ちたのか、段々と形を成してきた。
《 状態:異常 ◇*▲*◎による *ロ* …… 》
もう少し、もうちょっと ―― 頭に孫悟空の輪っかがはめられていくみたいに、締め付けられてくる。
頑張れっ 俺、あともう少しだ。
グッと奥歯を噛んだ瞬間、見えなかった文字の一部が明確化した。
《 状態:異常 =====による 呪い 》
『呪い』――?!
と、老人の両目のまつ毛がふいに動いた。
ふううぅと鼻から息を吐く。力が抜くように肩が動いた。
俺は慌てて向かいの椅子に転移して座り直した。
ガタンと椅子が音を立てる。
老人がまた目を瞬いてこちらに向き直った。
「ええと、気分は大丈夫ですか? ぼんやりされてましたけど」
俺はその場を取り繕うように言った。
「ああ、すまんな。
まったく人と話している時にぼんやりするなんて、失礼した」
それは大丈夫です。
日本じゃ平気で人前でスマホ見るのがザラですから。
「まったく最近の長雨で、頭がぼーっとする……うん?」
おもむろに首まわりを探る。
ああ、もうバレた。
それから上着のポケットに手を入れると、右側からペンダントを取り出した。
さっき咄嗟にポケットに転移させていた。
さすがに首にかけたら気付かれそうで躊躇したのだが、裏目に出たか。
しかし老人は、ペンダントを手にしげしげと見ながら、また深く息を吐いた。
どうも自分の勘違いと思ったようだ。
すいません、それはボケじゃないですよ。
「で、なんの話だったかの?」
「ええと、盗賊の件です」
俺もさっきのハプニングで、一瞬忘れそうだった。
「盗賊?」
また老人は目をぱちくりさせた。
「ええ、昨夜、私が来る前に盗賊が来たとか」
「そんな者おらんぞ」
「はいっ?」
「そんな事があったら、必ず連絡が来るからな。
わしゃあ聞いとらん。
それにここ何年もそんな奴は来ておらん。大体、この嵐だし」
「ぇえっ??!」
老人も目を開いた。
いやいやいや、本当にさっき言ってたじゃないか。
本当にボケて――
あーっ! さっきのフリーズ現象っ!
あれでもしかして記憶が消されてしまったのか?!
今回の異変に触れそうになったから。
これも『呪い』のせい、化かし作用なのか。
「ソーヤ君、さっき光玉を沢山作ってくれたが、結構無理していたのではないかね?
1日持つような光なんぞ、結構な練りが必要だからな。
若いから魔力切れを起こしても、自覚症状がないのかも知れんぞ。
魔力による疲れは、体力とはまた違う出方をするからな」
逆に老人に心配されてしまった。
そんな事はないですよ。あれくらい余裕でと、言いたかったが、ここは愛想笑いで誤魔化した。
もうこの人から情報は得られないかもしれない。
それよりも今度こそ、あのオッサンに訊いてみよう。
「すいません、お茶ご馳走さまでした。あとこれ持って帰りますっ」
俺はまたボトルと偽シチューをバッグに収納すると、目を丸くしている老人を後に、再び役場に向かった。
ここまで読んで頂きどうも有難うございます!
なんだか今回、あまり進んでない気がする……( ̄▽ ̄;)
……うん、とにかくこのまま続けます。
次回は生き残りのハンターに出会う予定です。




