第219話 『異界へのルール』
前回までの嵐の設定
『三日三晩』⇒『七日七晩』に変更しました。
ドサッと、受け身を取りながら転がった地面は乾いていた。
また俺は晴天の空の下、道端に膝をついていた。
フックが付いた鎧戸は開いたままだ。
「戻って来れたか……」
先程と同様、中にはまた誰一人いなくなった。
まるでリアルな幻覚のようだ。
しかしこうやって外に出ると、元の世界に戻って来れるんだ。
そこが何かポイントなのだろうか。
それにどうしよう。
もう一度トライするには、ちょっと危険度が増してるよなあ。
何しろ俺はすっかり悪い心証を与えてしまってるのだから。
その一因が俺の横で、ニヤニヤしながら立っていた。
「面白くなってきたな。次はどうする?」
奴がさも他人事のように言ってくる。
「全然面白かねぇよっ。
俺は怪しさ満載じゃないか。もう次に入った途端、半殺しにされるかも知れないんだぞ」
「それならこっちも入った途端に、相手をヤっちまえばいいんじゃないのか」
おおいっ! 誰か、こいつに『正当防衛』の正しい意味を教えてやってくれっ。
「あっ」
思い出した。
借り物のインゴットを回収しなくちゃ。
「んなモノ、別にバックレたって分かんないだろ。通常の状態じゃねぇし」
相変わらず神聖さの微塵も感じられないセリフだが。
「俺だってこんな状況だから、バカ正直に返さなくてもいいかなと思うけどさ。
だけど仮にも神様の子がそれやっちゃったら駄目じゃないのか?」
これが普通に親が人間だったなら、『許してチョンマゲ(死語!!)』で済ましたいところだが、半分とはいえ、さすがに善の神様の血筋が――――。
あれ? 奴も神様の血を引いてるんだよな??
それでこれって……。
「おい、どうした。気分悪くなったのか?」
俺がおでこに手を当てて考え込んだので、奴が少し心配そうに訊いてきた。
ううむ、前から疑問に思ってたが、モラルって何なんだろう。
浮気性のお父さんといい、蛮族のエッセンスみたいな奴といい、俺の道徳観念がいつも揺さぶられる。
けれど……今はこんなことに頭を悩ましてる場合じゃないんだよなあ。
「なあ、さっきからこの役場でばかり怪異が起こるが、やっぱりここが何かの元凶なのか?」
村の中に誰もいないが、ここでばかり人が出現する。
「それは違うな。この役場にしかいない訳じゃないぞ。
それこそ、そこらじゅうにウジャウジャいる。天使たちのようにな」
「なんだよ、気持ち悪いな」
しかし今のはヒントか。
見えない次元には存在しているという事なのか。
まさしく天使たちのように。
あらためて探知すると、インゴットも俺が置いた時のまま、それぞれの窓枠に元通りに載っていた。
おかげで外から取ることは可能だが、あの鎖だけはさすがに難しい。
くぅ~っ、ここでちゃんと『鉄』の操作が出来れば、わざわざ入らなくても済むのだが。
「もう1つヒントくれよ。
なんで役場には出現して、他には出ないんだ?」
「ったく、お前はすぐに安易に聞きたがるな。もうちょっと自分で考えろよ」
奴が渋い顔をして腕を組んだ。
「そりゃあ分かってるけどさあ、俺はこっちじゃまだ経験が浅いんだからさ。
そこんとこをサポートしてくれる為にいるんだろ?」
確か初めて会った時に、そんなような事を言ってなかったっけ?
「まあ、そりゃそうだが……」
ちょっと難しい顔をして役場を見ていたが
「じゃあちょっとだけな。
キーワードは『入り方と時間』だ」
「それだけ?」
短すぎる。
「当たり前だ。これでも大サービスだぞ。
それにお前だってさっき『時間』について考えてたろ。
2回も体験したんだから、なんとなくわかるだろ?」
なんだと、余計にごっちゃになるんだが……。
大体そこら辺にいるなら、なんで建物の外には現れない。
よしんば嵐だからとしても、雨が何故降らない?
怪異は外に出ないのか?
それに建物内だけに出るなら、さっきの製鉄所にでだってありそうだったが……。
ん、時間?
そういや、入ってすぐに雨が降って来た訳じゃなかったな。
1度めは簡単にだが2階まで調べて、それから1階でメシ食ってたら起こったんだ。
2度目は窓の細工と調査、それに火搔き棒の加工に時間がかかっている。
両方とも入ってから、10分以上時間が経ってる。
製鉄所にはそんなにいなかった。
「うん、うん、いいぞ。その調子だ」
サメが嬉しそうに笑った。
「そうか、あと『入り方』だな。
もしかして窓から出るのは、その次元を破るポイントなのか?
普通、窓から出入りしないからな」
俺はちょっと得意げに答えた。
「半分正解だ。だがそれは出方だろ。まず入り方だ」
また少し違うのかよ。
「あ、試させてみれば良かったか」
奴がうっかりしたという風に顎に手をやったが、なんでそんな恐ろしい答え合わせをさせたいんだ?
これがもし合っていたなら、入った途端にエキサイトしてるオッサンの群れに飛び込むハメになるんじゃないか。
「まあいいや。とにかく扉から入る分には、数分ならまだ安全なんだな」
んーと、奴がどっちつかずに首を傾げる。
本当に憎たらしい。
でも二度あることは三度ある。同じように入り口から入って、時間さえ短ければ怪奇現象は起きなさそうだ。
下手に窓から入って見つかったら、また不審者度を上げることになるし。
半開きの扉の中を覗くと、窓から射す陽光に照らされてカウンターの奥まで見えた。
俺がひっくり返した机はちゃんと元通りになっている。
よし今のうちだ。
窓まで走り込もうとした時、俺はふともう1つのキーワード『入り方』の違いを思いついた。
入り方の違い――もしかして――
「ヴァリア――あれっ いないっ!」
いつの間にか奴の姿が見えなくなっていた。
傍にいるとまた俺が何かと頼るからだろう。
いや、絶対に近くにはいるんだろうが、またピンチにならないと出て来ないパターンだな。
「わかったよ。自分の目で確かめるよ」
カウンター内の窓まで走って、鎖をまず回収。
グルグル巻きにしたせいで、絡んでしまい少し焦る。
後で考えたら、こんないちいち外さなくても、ただ収納すれば良かっただけだった。
本当に焦ると、咄嗟に単純な行動しか出来なくなる。
やはり俺には経験の場数が必要なのかもしれない。
もたつきながら外せたので、次はダダッと階段を駆け上る。
突き当りの窓からインゴットを回収・収納。
その窓から外に転移した。
無事に役場前の道に立つことが出来た。
よし、じゃあさっさとこれを返してと思ったが、いざ製鉄所の前まで来ると奥に入るのが躊躇われた。
ううっ、すいません。決してイタズラじゃないですけど、ここに返却させてください。
扉の手前に、インゴットと鎖を積み上げて置いてきた。
さて次は『入り方』の検証だ。
通りを走っていくと響き渡る足音が、途中からタッタッという音からジャッジャッという砂利音に変わる。
門前広場に入った。
井戸の向こう側に、灰褐色の石壁が分厚く囲い込んでいるが、来た時と変わりなく門は開いている。
もちろん扉の向こう側には、灰色の石山に挟まれた茶色い道が伸びていた。
すんなり村の外に出れた。
空は高く、岩肌を滑って吹いてくる風は冷たいがどこか清々しい。
遠くで何かの鳥の啼き声がする。
まったく中と外とで違和感がない。
だが、俺の考えが正しいとすると、まだ俺は役場以外の場所では、異界に入り込んでないんだ。
もう一度門の方を振り返る。
村の門戸は町のように上げ下げ式ではなく、内側への観音開きタイプだった。
そして迎え入れるように大きく開いている。
今のとこは想定通り。
あと次の脱出方法は……。
無骨な石壁を見上げ直した。
高さは10メートルくらいあるかな。
表面のあちこにボコボコした溝がある。これならなんとか登れるだろう。
念のために落ちていた小石を投げてみる。
何事もなく小石は門の中に落ちて音を立てた。
度胸を決めて踏み出すと中に入った。
スッと空気が変った気がした。
上手く説明できないのだが、強いて言うなら湿度なのだろうか。
同じく寒さは変わらないのだが、門の外は晴れて乾いた感じだった。
だが、こちらはどこか湿気を含んだ冷たさがある。
まるで霧が出たスキー場にいるようだ。
さっきはこんな湿った空気ではなかった気がする。
確か報告で酒屋のブンが、村に入った途端に静かになったと言っていた。
確かに微かに聞こえていた、風の音や鳥の声がしなくなった。
代わりに、雪の降る夜のような静寂さが辺りを包む。
ひとまず入り方のルールの1つはクリアか。
万一の事を考えると、奥には行きたくない。
とはいえ、現象が起きるまで、ただボーッと待っているのもなんだな。
俺はキョロキョロと広場を見回した。
壁際に何台か置いてある荷車には、幌が被せてあるのもある。めくってみると幾つかの木箱が積んであった。
その隣は石と丸太で作られた納屋のような造りの建物。
半分開いた戸から覗くと、壁にフックを引っかける太い棒が取り付けられ、あちこちに飼い葉桶が置いてある。それに独特の動物の匂いも。
どうやら馬やロックポーターを繋いでおく厩舎のようだ。
そういえばここに来た他のハンター達の馬とかも、どうしたのだろう。
やはり探知しても残留オーラは見つからない。
が、キラリと藁の中に引っかかるものがあった。
手に取ると糞と土で汚れているが、それはシルバーのハンタープレートだった。
突然、停電したように、辺りが真っ暗になった。
続いてゴオォォーという音と共に、豪雨が屋根を叩き、中まで入り込んできた。
始まった!
風がピュウビュウゴウゴウ唸り声を上げ、店の吊り看板や鎧戸をガタガタと揺らし始める。
うおおぉ、雨が冷てぇっ!
雨ももちろん魔法で避けられるが、この強い雨にいつまでも抵抗し続けるのは無駄に体力を削る。
俺は慌ててレインコートを引っ張り出した。
壁際に置かれた荷車を覆っている幌が、バタバサと煩く鳴り続ける。
家々はピタリと窓を締め付けていて、明かりの一筋も見えない。
しかし中に誰かがいるのは確かなようだ。
周辺への探知で、あちこちの建物に人が動いているのがわかった。
ただそれはいつもと違って触手の出せる範囲も短く、なおかつ少しピントが外れたカメラ越しのように、輪郭がぼやけて見えた。
この感覚。ダンジョンなどの亜空間に入った時に似ている。
とにかく外でもこの異界に入る事が出来た。
やっぱり俺の考えは合っていたようだ。
『入り方』
それは普通に門や扉からまず入る事だった。
それが発動条件の1つだったんだ。
始めに俺が村に入った時に異界に入らなかったのは、空から侵入したからだ。
普通、空から入って来るような人間はほぼいないだろう。
イレギュラーな入り方をしたから、ずっと居ても外では平気だったんだ。
だけど役場には普通に扉から入った。
それが『入り方』の違いだった。
さて、そうだとすると、このまま門から出てもやはりこの異界からは出られないのだろうか。
出てダメだったら出直して、今度は壁から出ないといけないのか。
俺は豪雨の中、めくれないようにフードを掴みながら門の方に向かった。
ありゃ、扉閉まってる。
先程まで開いていた2枚の門扉はピッタリと閉まり、重そうな閂がしっかりとはまっていた。
やっぱりこんな嵐の時には閉めとくもんなのか。
というか、今何時なんだろう?
これ勝手に開けたらマズイ……よな。
ここには潜り戸というか、小門のような出入口はないのだろうか。
探知で探ってみるが、門の横や、扉自身に付けた切戸はまったく見当たらない。
しょうがない。ここは扉を登るか。
俺は閂に足をかけた。
スッと後ろに光が差した。続いて怒鳴り声。
「なんだっ おめえっ、何やってやがる!?」
振り返ると横の番小屋の戸が少し開いていて、背の低い男がこちらを睨んでいた。
「あ、今晩は」
「なにがコンバンワだっ! そこで何してやがるんだよ」
「すいません、実は迷い込んじゃいまして――」
俺は敵意が無いことを示すために、両手の平を前に出して見せた。
「ああんっ!? 迷ったって、どっからだよっ! 門はこの通り閉まってたはずだぞ。
大体おめえ、ここら辺じゃ見かけない顔だな?」
戸口から半身を出して来た男は、背の割に肩幅も広くどっしりした体躯。
ついでに濃紺色の髭モジャだ。
おそらくドワーフ系に違いない。
「それがその……、実は私、風使いで、これで空から落ちてきました」
と、バッグからスカイバットの羽を少し出して見せた。
「ああ?! 舐めてんのかっ。こんな暴風雨の中、普通飛んだりしねぇだろ」
あー、確かに。
自分で言っておいてなんだが、無茶だよな。
「そうなんですが、本当なんですよ。緊急の用があったので……」
苦しい言い訳だが、咄嗟に思いつかなかった。
男は胡散臭さ気に俺を眺めまわしていたが、やがて
「おい、こんなとこで話しててもしょうがねぇ。こっちに入りな。
このまんまじゃ雨が降りこんじまう」
手招きして来た。
どうする? ここは逃げるべきか。
探知したところ、小屋には特に危なげな仕掛けはなさそうだ。
それにせっかくの機会だし、何か聞き出せるかもしれない。
「じゃあ、その物騒なモノ、仕舞ってもらえます?」
俺がそう言うと、ドワーフは軽く肩をすくめてみせながら、片手に持っていたフレイルを中に置きに行った。
「さあ、これでいいだろ?」
男はやはりここの番人のようだった。
ゾルフと名乗った。
小屋の中に入ると奥に暖炉が燃えていて、隙間風は入るものの外に比べるとずい分暖かった。
狭いながらも小さなテーブル一式と戸棚。暖炉の前にはベッドと、最低限生活できる家具が揃っている。
床には断熱材として藁がいっぱい敷かれていた。
「藁を濡らしたくねえから、雨具はドアのフックに引っかけてくんな」
本当は中に入る際、レインコートの水気は払ったのだが、ここは言われた通りにするのがマナーか。
その藁の中から慌てたように、1匹の茶色のイモリのようなトカゲが、ドア下の隙間から出ていった。
テーブルの上には食事をしていたのか、湯気のたつカップと木皿。
木皿には焼いたベーコンと馬鈴薯、チーズなどが載っている。
「あんたも何か食うかい?」
「いえ、さっき食べ――いや、食欲ないんで」
俺は手を振って遠慮した。
「じゃあ暖ったかい茶でもどうだ。
こんな雨ン中、遭難したんじゃ体が冷えちまっただろ」
暖炉棚に載せていた別の木製カップを持ってきた。
断ろうと思ったが、あまり断り続けるのも失礼か。
それに遭難設定だし、やはりここは有難く貰ったほうが自然だろう。
暖炉の鉄棒に引っ掛けられていた鍋から、お湯を掬うとポットに注ぐ。
解析したところ毒は入っていないようだし、勧めてもらった丸椅子に腰掛けて頂くことにした。
ほうじ茶のような香ばしい香りと味がする。
「で、あんた、どこから来たんだ? こんな嵐の中飛ぼうなんざ、正気の沙汰じゃねえぜ」
もう1つの椅子に座り直すと、あらためて訊いてきた。
「ええと、私はこういう者で」
とりあえずその問いははぐらかしたい。
俺は魔導士ギルドの身分証を見せた。
「誓約で仕事の内容は話せないんですが、決して嘘はついてませんから」
その通り、飛んで来たのも緊急なのも嘘ではない。
「うん、まあ確かに本当に嘘をつく気だったら、こんな時に空を飛んだなんていうトンデモネェ事は言わねぇだろうし」
おおっ、これは正直に言って正解か。
「ただ『ニホン』なんて国、この大陸じゃあ聞いた事もねえけどなあ」と、小首を傾げながらプレートを返してくれた。
「あー、ここの大陸じゃなく、島国なものなんで……」
しかもこの星のじゃないけどな。
「あの、こっちもお聞きしたいんですけど、ココいつから嵐になってます?」
「あ? 妙なこと訊くなあ。ずい分遠くから来たみたいじゃねえか。
確かにあんたは異国人のようだが、ここら辺はもうかれこれ6日前もから降ってるぜ」
6日前からか。
という事は、今日で7日目だから嵐が去る前日だな。
酒屋のブンが来たその次の日には、ここには誰もいなかった。
「えーと、じゃあ、何か最近この村で妙な事が起こったりしませんでしたか?
例えばこの嵐、いつもとは違うとか」
「あ? あんた、天気専門の占い師か何かか? 天気でも調べに来てんのか?」
ドワーフはまた少し訝しげに俺を見た。
「別にこんな嵐、ちょっと長いだけで珍しくもねぇだろ」
フンと、短めだが逞しい脚を組み直した。
「ただよ、こう続かれると荷が動かせなくて困るぜ。
外に迂闊に出られねえし、食料も入って来ねえ。
何よりも酒が切れそうでな。
おかげで今日飲んだ半分の飲み物は、こうして茶で我慢だ」
そう言いながら自分のカップを指で突っついた。
あー、そうだろうなあ。酒好きのドワーフは酒を切らすのが一番怖いんだろう。
だから節約して飲んでるのか。
俺はしみじみと、ため息交じりにまた茶を飲むドワーフにちょっと同情しながら、自分のカップに口をつけようとした。
ふと、俺の探知の範囲に人の姿が入って来た。
数は10人くらいか。
やや不鮮明だが、てんでに棒状の物や鎖らしき物を持っているのがわかった。
もしかして嵌められたっ?!
俺はドアに飛びついた。
「今更バタバタしてもしょうがないぜ」
番人がゆっくり立ち上がる。
ドアの貫抜錠がガッチリと重く動かない。小さいのにまるで外の大扉の閂のようだ。
いや違う、ゾルフが貫抜棒を魔力で押さえ込んでいるんだ。
俺なんかより強い『土』魔法。(ここでの『土』は鉱石・金属も含む)
ビクともしない。
「あんたは、ちょっとお人好しのところがありそうだな。こんなにアッサリと中に入って来るし。
まあ大人しくしとけよ。そうすりゃ悪いようにはしないぜ」
と、ゾルフがまた椅子に座るように手招きしたが、もちろん大人しく従うわけがない。
「遠慮しますっ!」
同時に引っかけてあったレインコートを、番人の顔目がけて広げた。
一瞬、番人の視界から消えた隙に外に転移する。
だが、門の外へはやはり分厚い層に阻まれて飛び出せず、勢い余って跳ね返されるように小屋の外に出現した。
一気に雨が叩きつけてきて、俺の顔や服を濡らしていく。
クソッ 撥水!
水魔法で雨を弾く。
そこへゴウゴウ唸る雨風の音に混じって、バシャバシャアッと飛沫を上げる足音がすぐ近づいて来た。
幾つかのカンテラや光玉の明かりが揺れている。
「アッ 何かと思えば、またテメエかっ!!」
1つのカンテラを突き出してきた男の顔に、こっちも見覚えがあった。
ドルクのオッサン――いわんやスタン・ハンセン似の役場のオッサンだ。
三度目の正直もど真ん中来たっ。
俺の不審者度数が絶賛爆上がり中だ。
風が寒いが、それよりもこちらから発せられる怒気が熱い。
そのオッサンの肩から、茶色のトカゲが首を上げてこちらを見ていた。
あのトカゲはさっきの ―― あいつがもしかして連絡したのか。
トンダお使い魔だな。
「今度は門小屋で何しようとしてたんだっ! 門番に何かしてたらタダじゃ済まさねぇぞっ」
「何もしてませんっ。お茶してただけですっ!」
「「「ああっ!?」」」
その時、後ろの方で扉の開く音と共に、ゾルフの大声がした。
「村長っ! そいつは魔法使いだっ!
『ニホン』とかいう訳わからねぇ国のスパイに違げえねぇっ」
日本の皆さんすいません!
俺のせいで日本が、異世界で怪しい国にランクインしました。
とか言ってる間に、まわりをグルっと囲まれてしまった。
ここまで読んで頂き有難うございます。
結局中途半端なとこで切ってしまいました……(-_-;)
切りよくしようとすると、1万2千字以上になりそうだったので。
ちなみに『許してチョンマゲ』でマジに謝った場合、
シャレになりませんのでご注意ください( ̄▽ ̄;)当たり前っ!
次回もすったもんだと新たな謎が出る予定です。
どうか宜しくお願いします。




