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198話 『暴かれた原罪と彷徨える贖罪』 

 思ったより長くなってしまったので、今回の話をこの198話と199話に分けました。

 今回はまだ地獄変、鬱展開です(-_-;)

 気が落ちている方は避けてください。


「柑橘系とか、そんな甘い香りは要らんっ」

 ヴァリアスが『呼び香』を再び配合しようとした助手に怒鳴るように言った。


「そんなんじゃコイツに効かねぇよっ。

 ここにイグサがあるだろ。それをメインにしろっ!」

「と、灯心草とうしんそうですか? 確かにありますけど……」

「言っとくが、摘みたてのじゃなくて、乾燥させたやつだぞ」

 オドオドとした助手は、奴と師匠であるリィーゴを交互に見た。


「この方は、そういう乾草系が好きなのですか?」

 リィーゴが代わりに奴に訊ねる。

「コイツの故郷では、木材と漆喰で造った家に、イグサで編んだマットを使ってるんだ」

 はあぁあぁ~ と、リィーゴとアイーゴが同時に声を漏らしながら、一緒に目をしばしばさせたが、すぐに助手に指示し直した。



 ★★★



【 この女を特に執拗に、お前は追いまわした 】

 悪魔が断定的な物言いをした。

「住民が残り少なくなっていたから、生きている奴から情報を聞き出そうとしただけだ。

 ただ案の定、口を割らずに逃げ出したから、追いかけただけだ」

【 血まみれの侵略者が目の前に現われたら、誰だって話なんか聞いてる余裕ないだろ。

 それにそんな行動は無意味だったろ。すでに他の異教徒の村の情報は掴んでた 】

「『俺』なりに新しい情報を得たかっただけだ。他意はない」


 いちいち突っかかって来るな、この悪魔は。

 確かにこの女の顔には、ちょっとだけ一物よぎったことはあったが、それだけだ。

 そのはずだ。

 そう、この時の『俺』は思った。


 だが、()は彼女を見た時に、この先の事を思い出し始めていた。

 この後、これをきっかけに『俺』――俺は――――


 あれから悪魔はまた時間をかけて、『俺』の心に出来た小さな波紋を見逃さず、その波を静まらせることなく、更に揺らしていった。


【 お前は個人的な憎悪を、彼女にぶつけたんだ 】

『それはない。『俺』は汚らしい魔女として葬っただけだ』

【 じゃあなんで、お前はあんなに楽しそうだったんだ? 】


 何を分かりきってる事を、いちいち訊いてくるんだ。

『それは神に代わって、お前たち(悪魔)に鉄槌を下せるからに決まってるじゃないか』

 悪魔が鼻を鳴らした。

【 フフン、そうか、そうか。そりゃあさぞ快感だったろうなあ 】

 何を負け惜しみ言いやがる。

『ああ、お前たち邪悪な者を、打ち砕いてやるのはとても気持ち良かったよ』


 悪魔の口調が、ワザと少し驚いたように変わった。

【 おんや、じゃあ何故あの女だけ、最後に打ち砕かずに()()()()()んだあ? 】

『それはあの魔女の逃げ足が意外と早かったからだ。だから長い剣に持ち替えただけだ』

【 ホントにそれだけ? 】

 とぼけるような口調でまた訊ねてきた。

『当たり前だ。他に何がある』

【 本当はあの女が苦しむのを見たかったんじゃないのかあ? だから頭を即座に叩かなかった 】

『はぁ? 何を言ってやがるんだ。だからあの女が――』


 ―――― 本当はゾクゾクしていた。

 あの女に似た顔が苦痛に歪むのが――――

 違う。

 悪しき者を滅ぼせるのは誇り高きことだ。神の手助けができて嬉しかったんだ。

 大体、あの女は――


 ―――― 『俺』を振って、金持ちの商人に寝返った馬鹿女―― ユリエ ――に似てたから――

 ――――  俺を捨てて、置き去りにしていった―― 由利子 ―― に雰囲気が似ていた――


 違うっ 違うぞ! 

『俺』はそんなことは思ってないぞ。己の私怨なんかこれっぽちも、神の闘いの御前に出すわけがない。

 これは聖戦なのだから、そんな邪心は――――


 かなり長い事、戦い、走り回り、メイスを振るっていたが、気分が絶頂に高揚していた『俺』は全然疲れていなかった。

 だからあと少しダッシュすれば、軽く女に捕まえることは出来たが、それはしなかった。

 逃げ回る女の頭を覆っていたリネンのベールが外れて、『俺』の目の前にバサッと赤茶色のウェーブの髪が広がったのに、一瞬目を取られたからだ。


【 お前は神の真理を穢したんだ。ただ殺しを楽しむために、神の言葉を利用してただけだ 】

 いつの間にか悪魔が首を伸ばしていて、『俺』の耳元に囁いた。

『違ぁっう!! 断じて神を利用するなんて真似はしないっ! 殺しも楽しんでなんか――』


 必死に逃げる女を追いまわしながら、『俺』は笑っていた。

 肩を砕かれ、泣きながら逃げ回る女が、どこまでイケのるか追いかけまわすのが楽しかった。

 ―――― いい様だ ――――

 頭を覆っていたリネンのベールを剥ぎ取ると、バサッと赤茶色のウェーブの髪が広がった。

 これをもっと紅く染めてやりたい――――

 その髪を引っ掴んで女を仰け反らせ、背中から心臓を避けて右肺を刺し貫いてやった――――……


【 神は本当は何と言われていた? 敵を倒せなんぞとはおっしゃってなかったはずだ。

 ましてや無抵抗の者を殺せとも。

 それはお前ら人間が、勝手に神の言葉を邪に捻じ曲げて、自分たちの都合の良いように解釈しただけじゃねぇのかっ! 】

 悪魔が咆哮するように声を荒げた。

 それは『俺』にまともに響いてきた。


 それから一度ヒビの入ったダムが速度を上げて決壊していくように、『俺』の真理の牙城が脆く崩れ去っていったのだ。



 いつから悪を滅することでなく、相手を殺すことが楽しくなったのか、覚えていない。

 どうしてか、相手から伝わる手応え、苦痛と恐怖に満ちた顔、哀願するツラをぶちのめし痛めつけ、命を摘むことに最高のエクスタシーを感じていたのだ。


 それを神の敵である悪魔を葬ること――神に奉仕出来ている喜びと錯覚して――――


 おそらく相手をいじめ、しいたげ、いたぶり嬲る事に、快楽を感じ始めたのがきっかけなのかもしれない。それが(間違った)神の教えという大義名分のもとに、なんの呵責も感じなかったのだ。


 虐め心が突き進む先は―――― 快楽のための殺しだ。


 ()がそのことを思い出したせいなのか、急に視界が暗転したと同時に、体が沼から無理やり引き上げられるのを感じた。


『俺』はどす黒い地面の上に四つん這いになって、ゲーゲー吐きながら喘いでいた。

 もちろん吐けるようなモノはなく、ただただおこりに罹ったように、体の芯から震えていた。

 これはその後の記憶だ。


『俺』は―――――― 快楽殺人鬼だった。

 悪しき者なら殺しても良いだろうと、己の快楽の獲物を絞っていたに過ぎない。

 何十人? いや、何百人やったのか、覚えていない。もしかするともっとか。

 軽蔑し卑しんでいた悪しき者に、俺こそがなっていた。


 この時の俺の記憶は不確かになっている。

 あまりにも重すぎた真実のせいで、意識が飛んでいたようだ。


【 ようやく分かってきたか? お前が手にかけたのは、悪魔教でも邪神教の信者でもねぇ。

 ただ、お前らとは違う神を、信仰していただけのタダの異教徒だ 】

 痙攣のような震えで上げられない俺の顔を、悪魔が覗き込んできた。

 

 そこには始めに感じたような醜悪さは無くなっていた。

 真に醜いのは俺の方だからだ。


【 神は争いなんざ望んじゃいない。お前たちが勝手に、自分が信仰する神を押し付けようとしただけだ。

 支配しやすいようにな 】

『 …… そ、そんな 気はなかった…………』

【 お前はな。お前はただ盲信、狂信してただけだ。他人に言われることをそのまま、鵜呑みにして信じてただけ。その方が考えずに済んで楽だったからな。

 そうして人殺しを楽しんだ 】

 グギュゥッ! と、胃が絞られるような吐き気を感じたが、やはり何も出ない。

 吐ければ少しは楽になるかもしれないのに……。


『 ……………… ざ、懺悔させてくれ……』

【 あ、そいつは出来ねぇ相談だあ 】

 俺は顔を上げた。

 すぐ目の前に悪魔の顔があった。

 その金色の四角い瞳が、俺の目を真っ直ぐに見ていた。

【 神の御名をどれだけ堕としめたか、お前まだわかっちゃいねえな。

 どんなツラ下げて許しを請うつもりなんだ 】

 ………… そのとおりだ……。


『じゃあ……せめて、その……あの人たちに、謝りたい……』

【 ぁあ~ん、そいつは残念だったなあ 】

 悪魔が黒い爪で、俺の頬を突っついた。

【 あれからどのくらい時が経ったと思ってるんだ? もうみんなとっくに転生しちまってるよ。

 お前のお仲間もな。

 お前だけが残ってるんだよ、偽フォルトゥーナ 】


 それを聞いて肺が潰れるかと思うほど、胸が圧迫された。

 俺は謝罪することすら許されないのか――――。


【 勘違いすんなよな。もしも、相手がまだこちらに残っていたとしても、会わす訳ないだろ。

 謝って許してもらってたら、地獄は要らねぇんだよ!

 懺悔だとか謝るだとか、相手に気持ちを伝えることで、てめえの気持ちを少しでも楽にしたいだけじゃねぇかっ!! 

 それじゃ贖罪にはならねえんだよっ! 】


  !!?!!! ……………………………………………


 パチンッ! 目の前で悪魔が黒い指を鳴らした。

 また意識が飛んでいた。


【 おおい、考えるのを放棄するなよ。まだやっと断罪に入ったばっかりなんだから 】


 ああ…… そうだよな…… 罰はしっかりと受け止めないと……。


『……わかった。……早いところ刑を執行してくれ。拷問でも何でもいいっ。

 早く、この穢れた魂を焼いてくれっ!』


【 やんないよ 】

『 え…… 』

 しばらく意味が分からなかった。


【 地獄はな、お前たちが考えるように、拷問刑を科すところじゃねえんだよ。

 本来はこうして断罪――罪人に自分の罪を解らせるところなんだよ。

 痛みでわからせないと解らない奴もいるから、そう思われてるみたいだが、お前は違っただろ?

 だからもう、おれの役目は終わりだ―― 】

 そう言って悪魔がスッと立ち上がった。


『 そんな……じゃあ俺の罪は……罰はどう受ければいいんだ――――?』

 悪魔が俺の顔を見下ろした。

 その顔は眉を寄せ、少し憐れむような顔をしているように見えた。


【 自分で方法を考えるんだな。自分で己を焼いてもいいし、切り刻んでも良い。どんなふうに痛めつけても良い。

 ただそんなのは、ただの自己満足だあ。被害を受けた相手のなんの特にもなりゃしねぇ。

 罪滅ぼしにも何にもなんないけどな 】

 それから遠くの黒々とした山を指した。


【 あっちは煉獄だ。お前みたいに罰を受ける方法を探す者たちがうようよいるよ。

 あそこで本当に償える方法を探してこい。 

 “ 運が良ければ(フォルトゥーナ) ” 見つかるかもしれないぞ 】

 クルッとそのまま半獣の化身は、俺に背を向けた。

 

『待ってくれっ そんなの無理だっ! 人が、しかも自分を罰するやり方なんて、限られてるじゃないかっ。

 せめてどうすればいいのか、教えてくれよぉっ!!』

 だが、彼の姿はもうすでに闇の中に消えていた。


【 『罰を受ける』と『贖う』は違うからなあ~。よ~く考えろぉ~~~ 】


 声だけが最後に返ってきた。


 こんな……罪だけを暴かれて、こんな中途半端な状態で独り放り出されて……。

 それともこれが刑なのか……。



 ―――― もう贖うべき相手に会えない。神に謝ることすら出来ない……――――


『俺』は重い足取りで歩きだした。あの黒い煉獄の山道に向かって。


 だが、()はこの先を覚えている。

 永いこと彷徨ったにも関わらず、ハッキリとした答えが見つからなかったのだ……。

 そこに――――


 黒い山に項垂れながら向かっていく後ろ姿を見ながら、俺は独り、闇の中に取り残されていた。

『俺』と俺は分離していた。


 だけど残された俺も同じだ。

 償いは始まってすらいない。

 今もなお、俺の魂は煉獄を彷徨っているのだ。

 

 今まで絶対と信じてきた信念が、間違っていたこと。

 そうしてそのために――いや、快楽のために大勢の罪なき人々を殺してきた事実が、ありありと俺の全身に纏わりついてくるのを感じた。


 急激に己の犯してきた罪が、生々しく鮮明に次々と脳裏に浮かび上がって来る。

 

 ――――ッ こんなの耐えられないっ 耐えられるわけがない!


 だが、狂う事も許されない――――


 神様っ 誰でもいいっ 誰か 助けてくれーーーっ !!



 ――――――――――――――――――――――――


 ―――― 微かに懐かしい匂いがした。


 なんだ、これは。何だったっけ……。

 俺は辺りを見回した。

 すると匂いが少し強く感じられた。

 これは ……………… 畳みの匂い?


 無性に家に帰りたくなった。


 俺はしゃにむに、匂いのする方角に走った。

 闇の中を走って、転んで、また走りまくった。

 見えない岩や穴に足を取られたり、打ち付けたりしながら、とにかくその匂いがしてくると思われる先に向かって進んだ。


 どのくらい走っていたのか判らない。


 急にそばで俺は声をかけられた。

 振り返ると、人影が立っている。


 戻ってきてくれたのか……?

 おかしなことに、俺は悪魔が戻って来てくれた事に、涙が出るほど嬉しかったのだ。

 だが、彼は悪魔ではなかった。


『ソーヤさん、探しましたよ』

 男は大きな眼をクリクリさせて微笑んだ。

『さあ、帰りましょう。みんな心配してますよ――』

 男が言い終わる前に、俺は男の手を掴んでいた。

『迷子になられてたんですね。じゃあ一緒に戻りましょう』

 すがりつく俺の手を、上からもう片方の手で優しく握りながら、男が手を引いた。



 ★★★



「―― 蒼也っ 戻って来いっ!!」

 闇を抜けると、目の前に見慣れた凶面があった。

 そしてその傍らには、ギョロ目の男――アイーゴも。


 喋ろうとしたが、舌がひっつれて声が出なかった。

「先にこれを飲めっ」

 アイーゴが渡そうとしたカップを押し退けて、ヴァリアスが俺の口に小瓶をつけてきた。

 そう言われても上手く飲めない。


 が、その液体が口にスルッと入ってきて、勝手に喉の奥に流れていく。

 奴がみんなの手前、瓶で口には持ってきたが、その実、操作していたのだ。

 中身は天然のエリクシル(妖精の泉)のようだった。

 内側から柔らかい心地よさが広がって来ると、体がだいぶ軽くなっていった。


 だが舌を動かしても声が出ない。

「深呼吸しろっ。お前は仮死状態になってたんだ。すぐに喋ると窒息するぞ」

 俺は息の仕方を忘れていた。

 背中に手が当てられたかと思ったら、肺が勝手に息を吸い込み始めた。

 何回かやられて、やっと自分で自発呼吸できるようになった。

 俺は顔を上げて――――


「ア゛ア゛アァァァーーーーーッ !!」

 叫んでいた。


 エリクシルでさえ、記憶を消す事は出来なかった。


 覚えてるっ 覚えてるぞ! 自分の罪を全てっ!!

 あれは夢でも何でもないっ 

 ()()()()の穢れた悍ましい過去だっ 

 俺はまだ誰1人さえ、償いを済ましていないっ !!

 なんでこんな極悪人が、のうのうと生まれ変わってるんだっ?!


 今こそ思い知った! 俺が人を殺せない理由を。

 俺は前世で人を殺し過ぎたのだ。それも欲望のままに。

 俺の背にはとんでもなく重い十字架が乗っかっていた。

 そしてそれを浄化する術さえ知らないのだ。


「殺せぇっ 殺してくれっ 誰かっ 俺をぶっ殺してくれぇーっ!!」

 叫びながらまた痙攣のような震えが襲ってきた。


「これを飲ませて下さいっ」

 アイーゴが奴にコップを渡してきた。


 実はアイーゴではなく、さっきからリィーゴのことを勘違いしていたのだが、そんなこと、この時の俺に分かる訳がない。

「辛い記憶を薄れさせる精神安定剤です。完全には消せませんが」

 それはトラウマ治療などに主に使われている薬だった。

 いつもの奴なら、そんな精製薬は断固として断っただろうが、この非常事態に四の五の言ってる暇はなかった。

 エリクシルと同じように、無理やりに飲まされた。

 

 脳を鷲掴みにしていた、どす黒い記憶がサァーッと波が引くように消えていく。

 酷い悪夢を見て飛び起きた時、一気に詳細さを忘れていくアレと似ていた。

 ようやくまともに息が出来るようになってきた。

 同時にあの震えも収まり始めた。


 だが、記憶が完全に消えた訳ではない。

 呪文の残響のように、断片が俺の頭の中にこびり付いていた。

 あの悪魔との会話も。


「……あぁああ…………」

 掻きむしるように頭を抱えた俺の上で、奴の声がした。

「お前ら、いいと言うまで外に出ていろ」

「は? はっ はい!」

 ガタガタと3人の男が慌てて出ていった。

 すぐに奴が部屋に遮音と結界をかける。


「おい、まずは水飲んで落ち着け」

 そう言ってペットボトルを押し付けてきた。

 まだ飲みづらかったが、必死の思いで飲む俺の横で、椅子もないのに奴が空中に座った。


「で、全てを思い出しちまったって訳か」

 苦々しそうに頭に片手をやった。

「………… ぁあ……」

「クソォ……もっと()()()()()()()()教えるつもりだったのに。予定が狂っちまった」

 なんだって――


「ヴァリアス……知ってたのか。俺が大罪人なこと……」

「もちろんだ。オレはお前のガーディアンなんだぞ。それにお前はもう罪人じゃない。

 十分反省はしただろ。今は『あがなびと』だ」

 いつも通り、奴がぞんざいに足を組んできた。


「……俺は、あの忌むべきオークやゴブリンと、同類ってことだな……」 

「アイツらとは違う。アイツらはまだ自分の罪を認めていない、罪人のままだ」

 罪滅ぼしもしていない俺と何が違うのか……。


 俺は神を信じる資格さえない。

 だから無宗教でもいられる、日本を転生先に選んだんだ。

 なのによりによって、神の落とし子になるなんて……なんて皮肉なんだ……。


「なんで、なんで俺だったんだ……? わかってたはずなのに、なぜ俺が神様の子として生まれられたんだ?!」

「だから前にも言ったろ、相性だって。魂の良し悪しは関係ない。

 それに後からこうやって()()()()ことも出来る」

「じゃあ、俺を矯正してくれよ。俺が更生できるように、罪を贖えるように、力を貸してくれっ!

 あんたなら出来るんだろ? あの人たち(被害者)を見つけ出すくらい――」


「あのなあ」

 奴がグイッと顔を近づけてきた。

「前に訊いたよな。『何故 ()()()()()()()()()()()()』って。

 その理由の1つがソレだ」

「それって――――」


「後悔しても()()()()()()()()()()()からだ」


「うヴっ!」

 また胸を締め付けられて、俺は下を向いた。


「だけどな、直接できなくても、やり方はあるぞ」

「え…………」

 俺はゆっくりと奴に振り返った。


 何故か奴は少し得意げな顔をしてきた。


ここまで読んで頂きどうも有難うございます!

快楽殺人の話はいつか描きたいテーマですが、しっかり描くと

ネットでお披露目できなくなる可能性もあるので、難しいところです(-_-;)

虐めをやる人の中には、『相手が気にくわないから』とか、『見ててイライラするから』とか

色々、自分は楽しんでないから違う、とか思う人もいるでしょうが

それで気が晴れる事自体が、快楽に繋がってるんですよね。

一種のヒール効果。リラックゼーションです。

まあ、大半の人は虐め自覚がないのでしょうが……。


次回はヴァリアスモードです。

奴が闇落ちした蒼也をどう救うのか。

アレ? どっちも地獄変……?(汗)

本来1話で済ますはずだったので、199話も続いて打ち上げます。

次話199話『導きし者たち』

どうかよろしくお願いいたします。

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