第197話 『地獄変』
★ご注意★
今回今までの中でも、より強い残酷・残虐描写が出てきます。
気分を悪くされそうな方は、どうかご遠慮お願いします……。すみません。
さっきから何言ってやがんだ、このうす馬鹿悪魔は?
『お前の言ってる事こそ、さっきから訳が分からねぇぞ。だから『俺』が殺したのはお前の仲間だろうがっ!』
会話はいつもここの辺りでループしているのだ。
一体どのくらいこんなやり取りをしていたのだろう。
時間の感覚のないこの忌むべき空間で。
【 あ~あ、 こいつは本当に時間がかかりそうだなあ。おれの方が疲れちまうよ~ 】
黒く硬そうな蹄の生えた足を投げ出すと、悪魔はドスンと沼の縁に横になった。
『さっさと拷問するなら始めやがれっ! いつまでもこんな下らない喋りばっかり繰り返しやがってっ』
ずっと血沼に浸かってるのも立派な拷問なのだが、そんなこと意に介さないくらい、『俺』はこの無駄な押し問答にうんざりしていた。
【 んんん、そいつは残念ながら出来ねぇ相談だ。なんたって自分の罪が分からないお前を、いくら痛めつけても意味がないだろう?
それじゃあお前と一緒になっちまうんだよ、このクズ野郎! 】
『俺がクズなら貴様はクソだっ!』
大体なんでこんな悪しき奴に、クズ呼ばわりされなくちゃならないのだ。
しかし『俺』がこいつの仲間を大勢葬ってきたから、こいつにしたら当然なのか。
それなら『俺』が今までやって来た事は、無駄ではなかったという事だ。
敗れはしたが、悪魔たちに一矢報いてやれたのだ。
地獄に堕とされたが、『俺』は少し満足感を得た。
そんな『俺』の悟った様子が気に入らなかったようで、悪魔が【 フンッ! 】と大きな鼻を鳴らした。
【 お~い、なんでそんな満足げな顔してんだよ~。イカサマ殉教者がよぉ 】
何とでも言ってろ。
お前たちのやり方はよく知っている。
そうやって人の心を揺さぶり、心の隙間に毒を垂らし、疑心暗鬼や不安、嫉妬や憎悪を芽生えさせて人々を争わせるんだ。
『俺』は揺るがないぞ。
こいつが何を言おうが、全て企みのうちなのだから。
そうしていつか隙をみて、あの醜いツラに一撃をかましてやる。
地獄に来たのを幸いにここで大暴れしてやるんだ。
『俺』の抵抗心はまだまだ揺るんだりするものか。
そんな『俺』の余裕を感じてか、悪魔がその濁った金色の目を白黒させた。
【 ああ~、確かにお前は聞きしに勝る強情な奴というか、面倒くさい強者だなあ~ 】
『そりゃどうも。悪魔に言われても、ちっとも嬉しくないけどな』
『俺』は澄まして言ってやった。
【 ……しょうがねぇな。じゃあおれ様も、ここはひとつ腰を据えなくちゃいかねえかあ 】
そう言うと悪魔は、人の足とは逆に曲がった後ろ足を器用に組んで、沼の縁に胡坐をかいた。
『お前こそ面倒くさい奴だな。さっさと煮るなり焼くなりすりゃあいいのに……』
まだこの不毛な会話が続くのか。
それともこれが、この悪魔の拷問のやり方なのか?
そんな妙な考えさえ頭をよぎり始めた。
―――― さっきから流れてくるこの記憶は、一体誰のなのだろう。
もしかしてあの装置に、誰かの記憶が残っていたのかもしれない。それがたまたま俺のと混じってしまってるのだろう。
時間の感覚が無くなり、どこかボーッとしながら、この状況を深刻に考えることなく、ただただ傍観していた。
ただちょっとだけ、『面倒くさい奴』という部分になんだか共感を覚えた。
俺のそばにもこんな奴がいたような気がした。
ん、誰かがまた呼んでいるような気がした。
何と言ってるのか分からないが、どうやら俺のことを呼んでいる気がする。
ただそれが『面倒くさい奴』のような予感がして、そちらに気をまわすのを止めてしまった。
******
これは後から聞いた話である。
あの適正検査を作動させた時、俺はどうやら始めの頃は、1人でクスクス笑ったり、キョロキョロと眼だけを動かしたりしていたようだ。
そんな姿を見られていたのかと思うと、ちょっと恥ずかしい検査だなと思わざるえないが。
だが、しばらくして一点を見つめるように目を見張ると、やがて無表情になっていったそうだ。
異常に気がついたヴァリアスが俺の目を遮るのと、アイーゴが装置の魔石を外すのはほぼ同時だった。
「どうしたっ! 蒼也っ」
俺の頭に手を当てた奴は、そこに俺がいないことに気がついた。
「なんてこったっ!」
奴に憤怒の表情で振り返られて、副長、次長、アイーゴの3人は、突然ドラゴンを前にした時のように震えあがった。
だがそこで、勇気をふり絞って、声を出したのはアイーゴだった。
「……ご、ごく、極まれなのですが、深く陶酔状態になってしまう方がいるようです……。
2万人に1人くらいの割合いですが……」
「っだとぉっ ゴラァッ!! なんでそういう重要な事を先に言わねぇんだよっ!!!」
自分もやっている事を都合よく忘れるサメが吠える。
「ヒッ! しっ、しかし……見た目ほど大したことにはなりませんよ……。長くとも半日もあれば意識は正常になります。
これは隷従の道具ではありませんから、そんな大層なことには……」
「じゃあなんで、魂が奥に引っ込んでんだっ!?」
「「「えっ!!?」」」
「とにかく連れて帰る」
そう奴が俺を抱えて、その場をすぐ立ち去ろうとした。
帰ると言っても、実はまだラーケルでの借家を決めていなかった。昨日まで役場に厄介になりながら、候補の物件を検討しているところだった。
今日あたりは、レッカの借家に、遊びに行きがてら泊めてもらう予定だったのだ。
だがむろん、こんな状態で連れて行ける訳がない。
それに俺は、神経・精神に関わることには神の制約がかかっている。
奴でもヘタには手が出せない。
だから、ラーケルではなく、あのアグロスのハルベリー先生の所へ連れて行こうかと考えたそうだ。
もしダメそうだったら、ネーモーにやらせようとも考えていたようだ。
本当はこちらから元使徒に強要したら、制約に引っかかるところだったのだが。
「お待ちくださいっ」
出ていこうとした奴を、アイーゴが止めた。
「ア゛ア゛ッ!」
噛み殺されると覚悟したと、その時の心境をアイーゴが後に語った。
「ウチの検査でこのような事態になったのに、このままお帰しするわけにはいきません!
どうか手当てさせてくださいっ」
本来なら上司が言うべき言葉なのだろうが、またもや先に、部下のアイーゴが決死の思いで奴に頭を下げた。
「どうする気だ」
「まずは治療室に。そこに我がギルド精鋭の心癒師たちがおりますので」
部下にばかり言わせてはおけないと、続いて次長が立ち上がった。
一瞬ヴァリアスは考えたが、ここの医者というなら、ハルベリーよりも腕のあるヤツがいそうだ。
それに考えてみたら、あのオヤジは治療師であって、精神を専門にする心癒師ではない。
ネーモーを使うのは最後にして、こっちに任せてみるか。
「案内しろっ」
慌ててアイーゴがドアを開ける。
そうしないと奴が蹴破りそうな勢いだったからだ。
******
【 これ覚えてるかあ 】
悪魔が両手を斜めに上げると、クイクイとロープでも手繰り寄せるような仕草をした。
ポコポコボコボコと、後ろで泡がはぜる音がする。
すると赤い沼面が大きく波打ってきて、『俺』の頭にザブンザブンと何度も血がかぶさってきた。
つまらない嫌がらせだな。
『俺』は腐った血を浴びるのは慣れ切ってるんだ。今更だぜ。
【 おい、後ろを見てみろよ。せっかく出してやったんだぞ 】
後ろを見ろと言われても、こっちはさっきから体の自由が利かないのだ。
それにお前の言う事なんかいちいち聞くか。
あーそうだったと、悪魔が自分の頭を軽く叩いた。それから『俺』に向かって右手をつき出すと、捻るようにクイっと手首を動かした。
すると『俺』の体もぐるりと半回転した。
そこには風車が立っていた。
白く丸い壁に円錐形の焦げ茶色の屋根を乗せ、その斜めになった屋根板から4枚の大きな羽根が突き出している。
―― ああ、昔映画『ドン・キホーテ』で見た風車によく似てる。ゆっくりとはいえ、あんな大きい羽根がグルグル回るすぐ後ろに、なんで窓やドアがあるのだろうとか思ったものだ。
窓はまだしも、ドアなんか半分くらいの位置まで羽根が降りてくる。
出入りする時、危ないじゃないかと思った。
そしてかの老騎士は、その巨大な羽根が回転するのを見て、モンスターと錯覚したのだ。
普通に見れば青い空をバックに緑の丘に建った風車は、とても牧歌的で怪物の要素なんか見当たらないのだが。
しかし、今、目の前に出現したソレは、まさしく魔の物だった。
まずその風車は、血の沼から生え伸びたようにそびえていた。
バックは雲ひとつない青い空どころか、漆黒の闇だ。
空も遠くの山々も、全てが闇よりも黒かった。
なのにうねうねと、ぶ厚い雲が捻じれるように蠢いているのが分かる。
その空から絶えず、ドロドロとした妙に濁った音が響いてくる。
そうして時折、山火事のような炎が、恐山の岩のようにゴツゴツした山の輪郭を浮かび上がらせるのだ。
そして風車の元は白かったであろう壁は、赤くまだらに染まっていた。それは羽根も……。
いや、羽根からは布が取り払われ、そのふすま格子状の骨組みが剝き出しになっていた。
代わりにそこに張り付いていたのは――――
『ああ、名前は忘れたが、確か谷沿いの小さな村だったな』
『俺』は思い出した。
【 けっ! それならお前がこの風車がある村で 何をやったか覚えてるか 】
『そりゃ覚えてるさ。お前の仲間をたくさん葬ってやったんだ。そうしてそれを神に告げるべく、高いところに掲げたんだ。
その風車の羽根に括りつけて』
『俺』は誇らしげに答えた。
―――― そう、その風車の羽根格子には、沢山の死体が巻き付けられていた。手足や首がない者や、まだ完全に死にきっていない者までいた。
彼らは全て、車刑のように、何もかもあらぬ方向に捻じ曲げられて、格子に絡み付いていた。
そんな恐ろしい光景を見ながら、俺は何故か、この男のように落ち着いていた。
恐ろしい事にどこか冷めて、この光景を見ることが出来たのだ。
まるで当たり前の情景のように。
【 見ろっ! あの子を 】
悪魔が十字羽根の一番下の一角を指さす。
格子の縁に辛うじて引っかかっている、小さな体があった。頭がひしゃげている。
【 お前があの子は殺したんだ。まだ4つになったばかりだったのに 】
『だからどうした。悪魔に年は関係ないだろ』
それとも悪魔のくせに、若輩者には哀れみをもって然るべきとでもいうのか。
【 それじゃあ見せてやるよ 】
辺りに光はなくともその深紅色の沼面に、ハッキリと逆さ風車が映っていた。
だが続いて湧きあがった震えるような波紋のせいで見えなくなった。
やがて血の鏡面が落ち着くと、今度は畑の中や家々の間を逃げ惑う人々が映し出されてきた。
親とはぐれたのか、泣きながらその中を1人彷徨う男の子がクローズアップする。
その小さな頭に、無情のメイスが振り降ろされる。
『よく覚えてないな。ちっこいのがいた気はするが……。
だけど4つって言ったか?
じゃあまだ罪深くならないうちに、浄化してやったんだな。善きことをした』
俺の言葉に反応するように、潰れた顔はさらにクシャクシャになるとめそめそと泣き出した。
フンッ! と、後ろで悪魔の不満そうに鼻を鳴らす音がする。
ふふん、悪魔の気分を害してやるのは気分が良い。
【 よし、次だ 】
悪魔がそう言うと、風車の巨大な羽根が、ゴロゴロゴロと音を立てて動き始めた。
次に下に来た羽根には白髪頭にスカーフを巻いた老女が、下に折れ曲がった顔の前で震わせていた。
再び血の面に波紋が広がり、老婆が映し出される。
腰を抜かして家の壁にもたれてしゃがみ込み、手を前に上げて命乞いをしていた。
次の瞬間変な方向に首が曲がる。
『俺』はメイスに引っかかった、そのボルドー色のスカーフを汚らしそうに捨てた。
『おい、もしかして『俺』がこんな弱そうな奴しか相手しないとでも思ってるのか?』
確かに小悪魔や魔女も殺ったが、こんなのばかりしか倒せなかったと思われていたら心外だ。
『俺』はちゃんと武装した兵士や男どもの方を主に葬ってやったぞ。
奴らの方が悪の力が強いからな。
【 わかってるよ、エセ英雄さんよぉ。勝負だから両成敗と考えちまってるんだろ?
お前にゃもうちょっと、歴然としたモノを示さねぇとダメみたいだからなあ 】
何が両成敗だ。悪魔と神で立場が一緒になる訳ないだろうに。
それから次から次へと悪魔の手先たちの末路が映し出された。
みんな毒にも薬にもならないと言わんばかりの、小市民を装った偽善者ばかりだ。
その一見人の良さそうなツラの裏では、神を拒絶し邪神を崇め、混沌を呼び込む機会を虎視眈々と伺っていたのだ。
この世から1人残らず一掃するのが世界のためだ。
『俺』はその神の意思を――道を示された戦士なのだ。最後まで奉仕出来なかった事だけが悔やまれるが。
【 こいつはどうだあ? 何も思わないかあ 】
さっきから似たような小悪党ばかり出してくる。
そんな小者はいちいち覚えている訳がない。
絶え間なく風車がゴロゴロゴロンと、その巨大な羽根をまわしていく。
そうして俺の間近、下に来た垂れ下がった死人たちを悪魔が指さすと、血の面に奴らの最後の場面が浮かび上がるのだ。
すでに千人は越えているのじゃないか。
明らかにこの風車に付けられる数じゃないし、再現される場面もあの村だけではなく、あちこちの街や違う土地だった。
もう寄せ集めになっている。
そのうちに今度は粛正時ばかりではなく、それぞれ生前の生活模様まで遡って流し始めた。
当たり前のことだが、地上で肉の体を持つ奴らは、純種の悪魔と違ってその体は脆い。我々と同じ物を食べ、息をしなくては体を維持できない。
だから悪魔の仲間とバレないように一般市民に混り、さも大人しそうな目立たない生活を送る。
だからそんな名も知らない、ただ殺しただけの相手の人生を見せられても、何の感慨も湧かない。
―――― それは俺も同じだった。
誰だか知らない人のホームビデオを延々と見せられている気分だ。
一体いつまで続くのだろう。
そして俺は何をしていたのだっけ…………?
誰かが俺の腕を掴もうとした感じがして、さっとソレを振り払った。
―― ように思う。
そういう風にしたつもりだけであって、体は指一本動かしていないのだが。
ソレは俺がそう拒否しただけで、闇の彼方に引っ込むように遠ざかっていった。
実際は俺が奥に退いていたのだが。
【 こいつはどうだ、覚えてるか? 】
何千何百と聞いたセリフを、またもや悪魔が繰り返した。
こいつの拷問官としての勤勉さには、確かに感心させられる。
これが地獄での最新の拷問方法なのか?
もう俺も、同じような退屈な光景を見せられるのが、苦痛になってきた。
『……うんざりだ。さっさと別の拷問にしろよ。お前だって飽き飽きしてるだろうに……』
【 だから、これは拷問じゃねぇって。断罪にすらまだ引っかかってねえんだぞ。
おら、ちゃんと見ろよ 】
もうすっかり馴染みになった伴奏のようなゴロゴロロという音と共に、目の前の赤い鏡面に動く風車の羽根が映る。
長い髪が揺れているのがわかった。
顔を上げると、羽根の下辺に若い女が逆さまに垂れ下がっていた。
こうしてみると、結構若い女も処分したんだな、『俺』。
もう向かってくる兵士たちが切れた頃、残りの下っ端悪魔どもを殲滅したからなあ。
女は左肩が砕け胸を刺し貫かれて、くすんだマスタード色のカートル(女性用の衣服:ワンピースの原型)を紅く染めていた。
波打つ赤みがかった栗色の長い髪が、風に吹かれて散らすように広がる。
見開かれた茶色い眼が、驚愕の色を浮かべて『俺』のほうを真っ直ぐ見ていた。
『ああ……』
この女は見覚えがある。
【 思い出したか? 】
『俺』がつい漏らした言葉に、すぐに悪魔が反応してきた。
そうだな、確かにこの女には覚えがある。
何しろ初めて見た時、『俺』―― 俺 ―― を、昔 振られた――捨てられた――女に似ていると、思ったからだ。
******
治療処置室は5個の小部屋に分かれていた。
そのうちの一番奥のドアを、アイーゴが大急ぎで開けた。
「こちらへ」
すでに入る前にわかってはいたが、一応ヴァリアスは言葉にした。
「なんだお前ら、双子か」
そこには青紫色のフードに長いローブを着た、アイーゴそっくりの男が立っていた。
大きくて長い鼻といい、飛び出しそうなギョロ目といいソックリだ。
違いは目の色が、アイーゴが漆黒なのに比べて、濃い青だったぐらいだ。
「「いいえ」」
アイーゴとソックリな男は、同時に声を発した。
「「従兄/従弟です。似てるのでよく言われます」」
隔世遺伝のことはそこら辺の学者よりよく分かっているし、一応の約束事のセリフは言ったから、この件はそれで終わりにした。
言われる前にそばの寝台に俺を降ろす。
「リィーゴ、適性検査で『行ったきり』になってしまったんだ。治療を頼む」
アイーゴが従弟に現状を手早く説明した。
リィーゴと呼ばれた心癒師は、助手に『呼び香』の用意を指示しながら、俺の額に手を当てて唸った。
「これは――まるで死人のようだ」
「ふざけんなっ! 蒼也は死んでねぇぞっ!!」
サメに一喝されて、リィーゴとアイーゴは小さな兄弟のように、一瞬お互いに寄り添った。
だがむろん、リィーゴがそう言った意味をヴァリアスはよく分かっていた。
魂が抜けているように、ほとんど感じられなくなっていたからだ。
助けてくれる医者に怒鳴ってしまった事は気にしないが、自分が手を出せない領域に行ってしまった俺にイラついていたらしい。
こいつはナタリーの時に、あんなに偉そうな講釈をたれていたのに、俺の事を無理やり引きずり出そうとしたのだ。
本来は魂に直接触れて動かすのは制約違反だし、ましてやその結界のせいで触ることも出来ないはずだった。
だが、奴はその馬鹿力で強引さで結界を破って侵入してきた。
流石は神に挑むサメ、恐るべしパワーだ。
しかし、掴めそうだったその魂魄の端は、するりと奴の触手をかわすと、更に奥に入り込んでしまった。
「蒼也ぁっ てめぇっ! シカとしてるんじゃねぇぞっ!!!」
その重低音のせいで、アイーゴとリィーゴはもとより、呼び香を配合していた助手の手元が狂いそうになった。
ここまで読んで頂き有難うございます。
今回の残虐描写は、罪の対比を現すためにも必要だったので、あえて描きました。
次回は闇落ちした『男』と蒼也の暴かれた罪が出てきます。
なので、すみませんが、まだ残酷描写ありです。
こんなんで読者様が離れてしまいそうな気がするけど、
どうしても通らなくちゃならないテーマなので、このまま進行しますです。
ただ、必要だけど残酷描写自身がテーマではないので、
なるべく削ってまとめようとは思います。
次回のテーマは『暴かれた罪と贖罪の道』です。
その道を示すのが、我がポジティブキングのヴァリハリアスです。
奴が、いや、彼がどう蒼也を導くのか、それとも道を惑わすのか?? (^_^;)
とにかく救済までいきたいです。
こんな調子でも宜しければ、どうか引き続きよろしくお願いいたします。




