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第187話 『ドラゴンの扱い方』

今回はいつもより少し少なめです。


「ちなみに従魔になったという事は、その、鱗とかの素材が手に入りやすくなったという事ですよね?

 ある程度まとまった量が期待出来るかと」 

 さっきはこれで終わりみたいな事を言った所長が、今度はもみ手をしながら訊ねてきた。


 トーマス所長、越後屋ですか。

 あなた今、とても悪い顔になってますよ。

「確かに……。あんなドラゴンがいてくれれば、いざという時の兵力として申し分ない」

 フッと笑った将軍様が悪代官の顔になった。


「いや、まずダメでしょう。ジェンマも嫌がるだろうし、第一ヴァリアスの奴が許しませんよ」

 自然と落ちた分ならいいが、体の一部を無下に採るのも、軍事目的に使われるのも奴らは好まないだろう。

 俺だってそんな事はさせたくない。


「なんとっ、それでは何故ドラゴンを従魔にしたのです? ただのペットではありますまい」

 代官様がカッと目をむいてきた。

 いや、どちらかというと、そのペットに近い感覚だと思うんだが……。


「そりゃあ、放っておいたら被害が増えるからですよ。いつ人や街を襲うかもしれないし……」

「だったら、何故退治せずに生かしておいたのです! それこそ使う目的があるからでしょう?」

「それは多分、ドラゴンタクシーに使えるから……」

 乗り心地は最悪だけどな。

「「――たくしぃ??」」

「いえ、馬車代わりというか、移動手段に使えるからですよ。こちらにも竜騎士さんとかいるんですよね?」

 あれは主に戦闘用らしいけど。

 

「確かにおりますが、竜騎士と言ってもその実はワイバーンです。ドラゴンと比べ物にはならんでしょう」

「そうですよ。それにあれはドラゴンの中でも上位種じゃありませんか」

 トーマス所長もちょっと頼むような顔をしている。

 

「そう言われても、嫌がるものを無理やりやらせるわけにはいきませんよ」

「ううむ、そこをなんとか、ソーヤ殿が説得出来ないものだろうか」

 やはり代官様は、奴の力が是非とも欲しいのだろう。

 俺は同じ立場だったら、きっと同じことを言うだろう。


 だけど俺は今や、何故か人外側に身を置いているのだ。

 それに戦争となると、相手は魔物とかだけでなく、人相手になるかもしれない。

 仮にも自分の仲間に、大量虐殺なんかさせたくない。


「あいつは見掛け倒しで、結構ヘタレ者ですよ。戦争なんかに出しても、相手の軍事兵器を見た途端、臆病風に吹かれるかも知れませんよ」

 もう自分のことは棚上げである。


 ただこちらの世界でも、大砲や巨大投擲器などがあるのは知っている。

 その中にはもちろん魔道具もある。まさしくドラゴン砲などという物まであるのだ。

 それは対ドラゴン兵器でもあるらしい。

 そんなモノであいつが傷つくのも見たくない。


 アレ? なんで俺あいつのこと気遣ってるんだろ。

 これも血を契りをしたせいか?


「それでもそこら辺の兵器などとは、比べ物にならんでしょう。

 あんな強力な魔物を味方につけておいて、遊ばせておくなど、宝の持ち腐れだっ」

 将軍様が、目と膝上の拳に力を入れて、こちらを睨むように見てくる。

 くそっ、この圧が暑苦しい。



「遊ぶも腐らせるのもこちらの勝手だろ。お前たちのモンじゃねぇんだから」

 いつの間にか戸口に魔王(ヴァリアス)が寄りかかっていた。


「ヴァ、ヴァリアスさん、いつの間に……!?」

「そんな、だが、せっかくのドラゴンを――」

「アイツはオレの部下だが物じゃねぇ。従魔を道具扱いしてると、いつかしっぺ返し喰らうぞ」

 そう言いながら、ドサンと俺の隣に座ってきた。

 思い切り行儀悪く足を組む。

 てめえ、だからあっちに足を向けろよ。こっちに向けんじゃねぇ。


「あんたっ、勝手にどっか行きやがって。事務処理は人任せかよっ」

「なんだ、お前を置き去りにするわけないだろ? コイツらがお前に危害を加えないのがわかってるから、ちょっと場を外したまでだ」

「それが置き去りってっていうんだよ!」

 って、そのツラはわかってないなっ?!


「それにアイツをあのまま調子づかせてたら、そのうちブレスでも吐いてたところだった。

 アイツら気分が高揚すると、内部に高圧ガスが発生するからな」

 それを聞いて所長が、ビクッと肩を震わす。


「大体、従魔にしたおかげで、ドラゴンの被害を1体分、回避出来ることになったんだぞ。

 それで十分有難いことじゃないのか」

「……確かに」

 思わず呟いてしまった所長を一瞬振り返りつつも、またこちらを向いた将軍様は口をへの字にした。

「だが、むざむざとこのまま……」


「だから、言ってるだろ。アイツは物じゃねぇって。第一、機械だって油を挿したり手入れは必要だろ。

 生き物なんか更に感情がくっついてるんだ。ただの命令なんか聞きたくねぇだろ」

「ではどうしても無理だと言われるのか……」

 今や悪代官からお白洲に引き出された、ただの悪役まで意気消沈してしまった将軍様に、奴がズイッと顔を突き出した。


「頭の固てぇ奴だな。お前、自分の部下もそうやって扱ってるんじゃねぇのか?

 感情があるって事は、魚心あれば水心ありだろ。

 ちゃんと褒美をやれってことだよ。

 アイツだって酒の代わりに、鱗や爪を落としていってるじゃねぇか。

 よっぽどアイツの方が道理を分かってるぞ」


 将軍様が顔を上げ、所長が目を大きくする。

「おおっ、では何か捧げ物をすれば、力を貸してくれるという事ですかなっ?!」

「必ずとは言わないけどな。アイツの気分もあるし。

 それにアイツは上でも下でもないんだから、捧げ物とかいう意識はよせ。

 だから舐められるんだぞ」

 いや、人からしたら無理だろ。

 相手はドラゴンだぞ。東洋じゃ神の使いだ。

 ヘタすりゃ、いや、絶対あんたより神格化されてるぞ。


「では、依頼と報酬という事にすればいいのでしょうか?」と所長。

「そうだ、さすがギルド長。呑み込みが早いな」

 悪魔のサメ(デーモンシャーク)がニヤリと笑う。

 気がつけばいつの間にか悪魔組に上納金支払うことになっている。


「報酬はアイツの行動を見てればわかるだろ?

 旨い酒とか、気持ちよく酔える飲み物とか、ほどよく変化したアルコールとか」

 それ全部、酒じゃねぇかよっ。このドランカーズがっ。


「では、では、早速、まずはお近づきのしるしにご用意させていただきたいっ!

 そうなると、あの方、いえ彼は何が好みで……」

「そうだなぁ」

 ドラゴンマネージャーが組んだ足をブラブラさせながら

「今のところ手当たり次第に飲んでるようだが、まあ強めの酒が好みのようだな。

 オレがやったのはブランデーだったが、ウイスキーやラム・ジンあたりもいいだろう。

 今度黒ビールあたりも試してみようかとは思ってるんだが」

 

 なんであんたの好みもチョイスしてるんだよ。

 あれか、マネージャー特権のピンハネか?


「それよりオレ達は暇じゃねぇんだ。

 所長、例の金の都合はついたのか?」

 それを聞いてハッとしたハンプティダンプティが、ぴょこんと飛び上がるように立つと、慌てて壁にある伝声管で経理を呼び出した。


 すぐに事務員風の袖にアームカバーをした男と、武装したゴツイ獣人がやって来た。

 同じギルドの建物内とはいえ、動かす金額が大きくて護衛が一緒についてきたらしい。

 前は副長自身だったから、護衛は要らなかったんだな。


「どうぞ、お確かめください」

 事務員から受け取った革張りの大きなコイントレーを、所長が前にススッと差し出した。

 もうマフィアに上納金を渡す絵面にしか見えない。

 もちろんこれは上納金でも見ヶ〆みかじめりょうでもない。

 あのディゴンの精巣の買い取り代だ。


「ふん、これじゃ間違えようもないだろ」

 確かにトレーの上のコインは8枚しかなかった。ただ全部大金貨だったが。

 800万か……。ドラゴンの牙より高い。

 世の男どもはどんだけ、化け物のタマ●マを頼りにしてるんだ……。


「これで用は済んだな。従魔の手続きも終わってるんだろ? 行くぞ、蒼也」

 譲渡書にサインを済ませると、奴がすぐに立ち上がった。


「え、えっ、あの、歓迎のしるしの打合せを……」

 所長が丸っこい手を上げて、おたおたする。

「ん、それはアイツ次第だ。一応訊いとくが、あまり期待しない方が良いぞ。

 いくら酒を飲ましてくれると分かっても、利用される前提じゃ酒も不味くなるからな」


「結局は……ドラゴンの気分次第か……」

 将軍様が額に手をやって唸る。


「まあ最終的にはオレの気分次第だがな」

 悪魔(ディアボリカ)が口が裂いてみせた。

 さっきはあんな事言って期待させといて、ホントにあんたの気まぐれに突き合わされる方は堪ねぇんな。

「すいません、何か……出来る事があれば、手伝いますので……」

 俺はへこへこ頭を下げながら退室しようとした。


「おっと、そうだった」

 奴がドアの前で急に止まったので、危うくぶつかりそうになった。こいつは早く歩くくせに急に止まりやがる。

 車間距離のように間を適度に取らないと()に激突だ。 


「さっき言ってた『人語を理解している』という件、あれはちょっと違うぞ。確かにアイツらは知能はあるが、アイツがたまたまここの大陸語を知っていただけだからな。

 皆がみんな、自分とこの言葉(母国語)が通じるとは思うなよ」

 そう2人に向かって言うと、またサッサと階段の方に行く。

 ちょっと待て、あんた、一体いつから聞いてやがったっ!?


 俺たちは階段の踊り場で転移した。


  ★★★


 これらの情報はギルドを通して、各ハンター達に伝わった。

 後にこのせいで、ドラゴンハンター達が狩りに行く時に、必ず酒を一樽は持って行くのが流行ってしまった。


 だが、これはあくまであいつ、ジェンマの好みというだけの事。

 ドラゴンだってそれぞれ個体差があるし、ましてや種類と雌雄では、かなり嗜好も違ってくる。

 大体、ドラゴンはヤマタノオロチではないのだ。

 皆がみんな酒好きというわけではあるまい。


 それにヴァリアスが言った通り、誰でも人語が伝わるとは決まってないのだ。

 必死に話しかけて酒を出したのに、まったく言葉が通じず、食べてくれと言わんばかりに見えてしまうケースもあった。

 おかげで自ら差し出した、酒の摘まみにされてしまった者もあった。


 結局一時期流行ったこのやり方は、そのうちあまり使われなくなり、また以前と同じ、餌で釣ったりする方法に戻った。


 しかし、これで命拾いした者もいた。


 たまたまレッドドラゴンに遭遇し、今まさに喰われるという寸前に、『命を助けてくれれば、たらふく酒を飲ませる』という必死の命乞いが通じたのだ。

 ここでもしも、童話のように娘をやるとか云っても通用しなかったと思うが、相手がたまたま酒好きで功を奏したのだ。

 もちろんドラゴンは人語がわかっていても話す事は出来ない。

 だが、反応は出来る。

 いわゆるイエスならこっち、ノーならあっちみたいなゼスチャーだ。


 この時は尻尾の先を、上下か左右かの動きで、なんとか会話に成功したらしい。

 ただ代償として、村の馬3頭とウイスキー蔵が破壊されたが、命の値段としては安いと言えるだろう。


  ★★★


 さて、俺たちが跳んだ場所は、ラーケル村の灰色の石塀の傍だった。

 あたりに人がいないのを確認してから隠蔽を解く。


「そういや、ジェンマは帰したのか?」

 戻ってくるのが意外と早かったが、どうせこいつの転移で移動したのだろう。

「いや、今あの黒い森に待機させてる」

「ハァッ!?」


「あそこなら魔素も濃いから、アイツでもしばらく大丈夫だからだ」

「いや、そう言う意味じゃないっ なんでまだここにいるんだよ? あの暗黒大陸に帰したんじゃないのか」

「そりゃ、こっちに面通しさせる為だからだ。手続きも済んだし、もうジジイに引き合わせてもいいだろ」


「ぁあっ?」

「だってお前はここの村民になるんだろ? それじゃ従魔も――いや、仲魔も紹介しとかないとなんねぇじゃないか」

 悪魔がまた二ッと笑った。


ここまで読んで頂き有難うございます!

また少しペースがゆっくりして来てます。

カクヨム版もやってるし……(;´∀`)

2つのストーリーの流れやテンションも違うから、リセットしないと

物語に浸れなくて……。


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ……最近、夜眠れない(-。-;)

 この間まで夕方になると眠くてしょうがなくて、

夕寝してしまうと、もちろん夜寝られなくなってしまうので、

コーヒー飲んだりしてなんとか凌いでいたのに

今度はまったく眠くなくなった。


 これはあれか、自律神経失調症か?

 私は橋本病の気(発病までには至ってない)があるから、疲れやすい、気分が上がらない、眠い、だるいはアリかと思っていたが、今度は逆だ。

 なんだ、逆転してバセドウ病の方(アップ系)に変化したのか?


 と思ったけど、おそらく思いつくのは、夜ギリギリまで

創作したり、動画見てるせいかもしれない。

 うん……こっちの可能性が大だなぁ……(´ε`;)

 多分、神経が興奮したまんまなんだ。

 何しろ最近、西部劇やらアクション動画ばかりだったから。


 よし、寝る前は静かな曲のを見よう。


 おお、洋画『ひまわり』

これ、名曲だよね~。静かだしいいかも。


…………駄目だ、泣きそうになっちゃった……(;Д;)


 これ泣かせる映画だったから、曲だけでもダメなヤツだった。

 しかも名シーンつきだし。


 反戦映画だけどやっぱり哀しい愛の物語のテーマ性が強いよね。

 戦争も酷いけど、運命も残酷じゃない? これ。



『ひまわり 50周年HDレストア版』予告編はこちら↓

https://www.youtube.com/watch?v=jk-C5ZBvsEo



 音楽を味わいたい人は

『 Love theme from 'Sunflower』はこちら↓

https://www.youtube.com/watch?v=sWSXI2XIp_4&t=188s


 駄目だダメだっ! 夜中にこれは!


 ちょいと『ロッキー』で気分上げて――

 いや、上げてもイカンだろ……。


 ん、これはどうかな?

『マイ・ファニー・バレンタイン』

 ちょっと気怠げなジャズ。


 えっ、これってこういう歌詞だったの!?

 和訳付きで初めて知った。


 バレンタインってバレンタインディと同じ名前の

彼氏を重ねてたのね。


 そんでもって、彼氏のこと

顔はイケてないし、逞しくもないし、その喋り方なんとかならないの? 的な

 これは彼氏をディスってないか?

 と、散々こき下ろしておきながら、最後に

『私を愛してるなら そのままでいてね、

           私のバレンタイン』


 これはツンデレか? 元祖ツンデレだったのかっ?!


 違う意味で目が覚めてしまった――。



『My funny valentine [日本語訳・英訳付き] 』こちら↓

https://www.youtube.com/watch?v=2lTKD_A9eJo

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