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第149話☆『アジーレ 第3層 予兆  第二の魔笛』


「ねえ、ホントに来ないの?」

「行かないって、何度も言わせんなよ」


 日もだいぶ高くなって来て、ダンジョンのまわりは朝より賑やかになっていた。

 僅かに空いたスペースには、水の玉のジャグリングをするクラウンや、獣使いの見世物などが大いに人々の目を楽しませている。

 人が集まるところには物売りも多く出張って、競い合うように呼び声を上げていた。


「素敵! 今なら中に入れるんですって」

 エイダが紅茶色のクリクリした瞳を輝かせた。

 人混みの中を1人で見に行った彼女が係に訊いてきたのだ。本来なら入り口から中を覗くだけだったはずが、途中のイルミネーションのあるところまで一般も入れるようになったのだとか。

 ただし、ダンジョンの様子が少しでもおかしいと思われたら、すぐ中止になるらしい。

 だからグズグズしていると入れなくなってしまうかもしれないのだ。


 少しでもおかしかったらって、もうすでにオカシイだろ。ダンジョンにこれだけ人が集まるって、すでに異常なことじゃないか。

 風使いのヨエルは額に無意識に手をやった。不安を感じるとついやってしまう癖だ。その手がバンダナに触れる。

「手前から見えただけだけど、すっごく綺麗だったわよ~。これは絶対見なくちゃっ。今年だけだっていうし」

 ジッとしてられないエイダは、樹に寄りかかっているヨエルの腕を軽く引っ張った。


 やっぱり先に街の方に行くべきだった。ヨエルは失敗したと思った。そうすればこちらにまわって来る頃にはダンジョンイベントは終わっていたかもしれないし、街の祭りだけで終わらせられたかもしれない。

 だが、王都から直接バレンティアまでの乗り合い馬車は、どうしてもこの手前のアジーレの前を通る。

 ダンジョン前の広場の賑わいに、ついエイダが先にダンジョンを見たいと降りてしまったのだ。

 

「ただ入れ替え制にしてあるから、順番待ちがすごい行列なの。でもホールも綺麗で見世物もあるから退屈はしないと思うわ。

 ねぇ、ホールの中だけなら大丈夫でしょ?」

「絶対 は・い・ら・な・い」

「もう、頑固ねー」

 頑固はどっちなんだ。

 おれがあれだけ今日だけはここには来たくないと言ったのに。

 そりゃ予知の事は伏せてるが、占い師の予言だって同じだろ? 

 確かに予知や占いの正確さはピンからキリまである。おれの予知だって100%じゃないが、自分の命が危険にさらされるかも知れないと感じる場所に、誰が好き好んで行くんだ。


 だが、エイダは楽天的なところもあって、占いは良いことだけ信じて、悪いことは注意にとどめるぐらいの、必ずなんとかなると思って生きてきた女だった。

 もちろん今まで良い目ばかり会ってきた訳ではない。

 13年前にあの黒死病が、エイダの家族を全員連れて行ってしまうまで、彼女は王都の貿易商の次女で、市民向けとはいえ学校にも通える生活をしていた。

 それがあの天災を機に今の職業にならざる得なくなったのだ。


 エイダ―――本名はアデライン―――は王都の花街にある『青い夜鳴き鳥亭』の娼婦だ。その馴染み客であるヨエルにこの祭りの最終日に連れってて欲しいとねだっていたのだ。

 本来なら休みなんかあるようで無いも同然のところを、なんとか取れた1日の自由な時間。

 いつもならまだベッドで微睡んでいるような時間に起きて、しかもこのように遠出するなんてよっぽど楽しみにしていたのだろう。

 それがわかるから、ヨエルはあまり強く言えない。

 それに―――。


「もう、ヨーさん慎重派なんだから。この災い避けのエイダが一緒に居れば、そんな厄吹き飛んじゃうから」

 この国では病厄にかかった一家の生き残りを、黒死病が避けたとして、災い避ける力が生まれたと言われた事がある。

 おかげでそのような者は、黒死病が下火になった頃、まだ家族が誰も罹っていない家の者から身に着けている物や、髪の毛などをお守り代わりにねだられたり、奪われたりする事が度々あった。

 病渦が消えたと同時にその混乱も無くなっていったが。

 もちろんそんな力があるとはエイダ自身も思っていない。そうであれば両親や兄姉達も助かっていたはずなのだから。

 だけどそれでも、自分は大丈夫と思ってしまう、どこか天性のお気楽さがあった。

 そのおかげで堕ちた生活にもヤケにならずにいられたのだ。


「それにこんなに係の人が注意してるんだもん。事故なんか起こりっこないわよー」

 そう手を向ける方にヨエルも視線を動かした。

 パレードこそないが、道化師の掛け声や売り子の呼び声、人々の明るい笑い声などであたりはとても賑やかで楽しそうな光景だ。

 眼では明るいイルミネーションがちゃんと見える。その中を出入りする楽しそうな人々の顔も。

 しかし別の感覚が彼に違うモノを視せていた。


 暗転する視界。体の奥が冷たくなっていくような耐えがたい不愉快な感覚。

 それが頭の奥に閃いてくる。

 綺麗に飾られた、ぽっかりと口を開けた入り口が、ヨエルには深淵の闇に感じられるのだ。

 ハッキリとは視えないが、ここにおれが入ったらヤバい結果になるって事だ。 

 それを初めて感じたのは、ラーケル村から帰ってきて王都に戻る途中、このダンジョン前を通った時だ。

 馬車を護衛中でうっかり馬から落ちそうになった。

 幸い、一番後ろだったために他の者に悟られずに済んだし、視界はすぐに戻った。

 だがその感覚が頭の芯に残っていた。

 前からエイダとこの日に付き合う約束をしていたが、悪いがこればかりは譲れない。


「おれはここで待ってるから、お前1人で行って来いよ」

 予知は俺個人に関するものだ。確かにこれだけの係がいるなら他の者は大丈夫だろう。

 おれが入ると落盤か、それとも何か揉め事に巻き込まれるのかもしれないが。

「うーん、一緒に行きたかったなあー」

 残念そうにエイダが下唇を突き出した。


「大体なんで俺なんだよ。他にもお前の馴染みは沢山いるだろうに」

 一昨日の夜、アジーレには行けない事を伝えたところ、エイダが頬を膨らませて怒っていた。

 街の祭りには付き合えるが、ここは行けなくなったとハッキリ断ったのだ。

 急な変更だったとはいえ、まだ1日あったし、他の客と行けばいいとヨエルは思っていた。

「それともあんまり急で、代わりが見つからなかったか? それだったら悪かったが」

「やーね、そうじゃないわよ。他の人はあくまでお店の中だけのお付き合い。

 あたしはヨーさんと来たかったの。

 それにベッドでだって体が合うのはヨーさんだけよ」

 そのふくよかな唇を耳元に寄せて囁いた。


 娼婦の常連客に対するリップサービスだとはわかっているが、そう言われて悪い気はしない。

 ヨエルがエイダの腰を抱いて引き寄せると

「ふふっ、じゃあここで待っててね。どっか行っちゃいやよ」

 女は彼に軽くキスをすると、ブルネットの巻き毛をひるがえして群衆の中に入っていった。


******************************


「カラっぽだ。やっぱり先に取られてるようだよ」

 隠し扉の中を探っていたレッカが首を振った。

「セバスさんがあちこちで純金が見つかったって言ってたしね」

「幸いここにあったのは1等の珠じゃないようだね」

 中を覗き込んで、エッボが匂いを嗅いで確かめた。俺も中のオーラを見たがジェレミーのとは似てもいなかった。


 すでに15近くの部屋を通っていた。

 上がったり下がったりしたが下りが多く、3層に来てからずい分と地下に降りてきているはずだ。


『(なあ、まだ珠は見つかってないよな?)』

 俺はこっそり奴にテレパシーで訊いてみた。

『(ああ、安心しろ。まだがっちりダンジョンが持ってるぞ)』

 そうなのか。だけど本当にどこにいっちゃったんだ。全然オーラの気配を感じないぞ。奴が移動してるって言ってたから、もっと奥にあるって事なのか?


「なぁ、ちょっと休まないかい? おいら鼻がちょっと疲れてきたよ」

 エッボが紙を取り出して鼻をかんだ。

「ここいらの魔素と色んな人の匂いが入り混じってて、ちょっと鼻が馬鹿になりそうだ。いったんリフレッシュさせないと」

 そう言ってリュックを下ろすと、中から何か小さな巾着袋を取り出した。袋を開けると中に鼻を入れて深く吸いだした。

「こういうの珍しい? 匂い消しなんだ。鼻の利く獣人が良く持ってる物なんだよ。中にミントとか清涼系のハーブや薬草を入れてあるんだ。これを嗅いで、色んな匂いで麻痺した感覚を取り戻すんだよ」

 俺が不思議そうに見ていたのでエッボが説明してくれた。

 

「そうだね。少し休もうか。ソーヤも疲れたでしょ?」

 パネラが壁に寄りかかって腰を下ろした。

 確かに俺もさっきから頭の奥が少し痺れ始めてきた。レッカも息をついて角に座る。彼も色々神経を使っているらしい。

 俺はバッグから水を取り出した。神経の疲れが取れる効能のある癒しの水だ。ただし奴に5倍に薄められてはいるが。


 奴は今来た通路の方をジッと見ていた。

『(珠ってもっと奥にあるんだろ? 先に行った奴らに取られる可能性ないかな?)』

 俺はちょっとまた心配になってきた。

『(大丈夫だ。今入ってきている奴らには、まず見つけられないだろう。見つけてもまず取る事は難しいだろうしな)』

『(それならいいけど……)』

 俺は横に座り込んだ。床がほんの少し生暖かく感じるのは気のせいか。

 待てよ、難しいって、俺たちもそれじゃ探すの無理じゃないのか?

 顔を上げると奴と目が合った。


「お前さ、ダンジョンをどんなとこだと思ってる?」

 奴が横にしゃがんで来て、目を逸らさずに訊いてきた。何か大事な事を言う時によくやる仕草だ。

「えっ? どんなって……、生きてる洞窟とか? 聞いたように動植物とか人間のエネルギーを餌にしてる生き物なんだろ」

「まあ生き物だが、生物じゃないからな。そこのとこは勘違いするなよ。試験でそんなの書いたらマイナス点だからな」

 なんだよ。試験の心配かよ。

 でも確かにこれが済んだらまた試験勉強しなくちゃ。うーん、やる事いっぱいだなぁ。


「でもダンジョンで宝は作られるけど、魔物が湧いてくるわけじゃないんだな。中をこうして一掃しちゃったら本当に出てこないんだ」

 俺はあたりをまた軽く探知してみた。あたりにはモモンガどころかクカラーチャ1匹もいない。

「こう時間が経ったら、またいつの間にか魔物が生まれてくると思ってたよ」

「なにそれ? ソーヤんとこはそういうダンジョンがあるの?」

 対角線側の壁際に座っているパネラが不思議そうに訊いてきた。

「ううん、俺のとこの小説、いや、創作された物語でね、よく出てくる設定なんだ。宝も魔物もダンジョンが製造してるから、採っても倒しても、また次の日とかに出没してるんだよ」

「へぇー、それ面白いね。おいらの仲間にも写字生やりながら、物語を書いてる奴がいるから教えてやりたいよ」

 エッボが袋に鼻を突っ込みながら言った。

 それで俺は簡単によくある設定を話して聞かせた。


「ダンジョンは創造神じゃないんだから生物まで作れる訳ないだろ。疑似生物ならアリかもしれんが、そんな食えるようなのをゼロから創りだすのは無理だぞ ((他所の星にはならあるかもしれんがな)) 」

 テレパシー交じりで奴が言ってきた。

「だからあくまで空想上の話だって ((大体俺んとこにはダンジョンなんかないし)) 」

『(お前のとこにも似たようなものがあるだろ)』

『(何っ?! 日本にこんな物騒な洞窟ないぞ。大体魔物なんかいないし)』


「蒼也、さっきお前はダンジョンは、生物のエネルギーを食って生きてる洞窟と言ってたよな」

 言葉に出してきた。

「ああ、それで合ってるだろ?」

「ダンジョンがどうやって出来るかちゃんとわかってるか?」

「ん、あー、人の念とか欲望とかが魔素と混じるんだよな」

「思念と魔素が融合するんだ。魔素は少ないがお前んとこだって、思念が溜まって生き物になるのがあるだろ」

「なんの事だ それ?」

「付喪神とか言ったかな。あと生き人形とか」

 ゾッとした。

 そうか……、あれも人の念が溜まって成るモノなんだ。

「ちょっとニュアンスが違うが、良い土地とか悪い土地とかいう場所だってあるだろ。それもそういうもんだ。そういうとこで魔素が濃けりゃあ出来るかもしれんぞ」

 うう、日本に魔素が無くて良かった。いや、ダンジョン化してないだけで、おっかない場所はあるんだ。

「どうだ? 共通項があるとわかりやすいだろ。これでただの上っ面な知識じゃなくてしっかり理解出来ただろう」

 なんで今言うかな。余計怖くなっちまったじゃないか。


「それにしても本当に誰1人にも会わないね」

 パネラがぽつんと言った。

「それに小動物どころか虫もさっきの1匹しか見てないし、なんか変だ……」

 レッカも水筒の水をお茶を飲みながら呟いた。


 それからすぐに俺たちはまた歩き出した。

 先頭のパネラが辺りを警戒し、エッボが空気を嗅ぎ、レッカが床や壁を食い入るように見ていく。

 もちろん俺は出来る限り、辺りを探知していた。

 一番後ろから来る奴だけがお気楽な感じで、ポケットに手を突っ込んでついてくる。

 内部は相変わらず松明の明かりのみで、俺たちの周り以外は薄暗かった。

 ほんのたまに、どこかで水の滴るような音がする。


「……なんだか不気味だけど、トラップがなくて良かった」

 俺はふと声を漏らした。こんなとこで罠まであったら、目も当てられない。

「ダンジョンによって色々性質が違うんだ。ここは迷宮タイプだが、トラップだらけのところや迷路とトラップの混合型もあるぞ。その逆にあの『メカトロ』のようにただのフィールド型もある」

「そんなトラップだらけじゃ人間どころか魔物も棲みたがらないんじゃないのか?」

「だからそういうのは人間を餌にするタイプが多いんだ。宝目当てに危険をおかしても入ってこようとするからな」

 人間って命より欲が勝っちゃうのか。ダンジョンにも業が深い生き物って思われてるんだな。きっと。

「ただ、これは大雑把に分けた言い方だ。本当のダンジョンはもっと奥深い。そして状況に合わせて常に変化している」

「ヴァリアスさんって博識なんですね。セバスさんと話が合いそうです」

 レッカが感心したようにこちらに振り返った。


「そういえばセバスさん、無事に地上に出たかな」

「行けたんじゃない? 潜るときと違って帰り道を戻るだけだから」

 サラッとパネラが答えた。

「そうだよね。ここはトラップなんかないから、帰りは楽か」

 行きはよいよい帰りは恐いじゃなくてよかった。


 その時、またあの音が微かに聞こえてきた。

 今度は先程より長く、高く低く、さっきより高低の幅が広がっていた。

 そしてそれはそこら中から響いてきた。

 奴も軽くあたりに視線を動かす。

 俺は探知しながらあたりを振り仰いだ。だが、もちろん何も感じられなかった。

 その音以外は。


「思ったより早いようだな」

 奴がふと呟いた。


********************************


「どっわぁっ!」

 現場監督サイゼルはその巨体を宙に舞わせてひっくり返った。

 まわりにいた人達も支えるどころか思わず避けてしまったので、したたか背中を打ってしまった。

「ううっ、くそぉっ、なんだこの床はっ」

 サイゼルは毒づきながら体を起こした。

 何か滑るモノを踏んづけたようだ。おそらく観客が捨てたか落とした食べ物かもしれない。

 まったく忌々しい。サイゼルはあらためてまわりを見回した。

 ホールは相変わらず人でごった返している。

 少しづつ観客を1層に入れる中、なんとかさっき探索参加者たちを全員入れ終わったところだ。

 本当はもう少しゆっくり入れたかったが、一般も入れる様子にこちらも文句が出てしまったため、早めに入れるようになってしまった。

 何もかも予定とは違ってしまったが、まあそれを言ったら始めに計画していた状況と人数も何かも違うのだ。多少のブレはしょうがない。

 

 それにしても―――、サイゼルは薄い頭を掻いた。

 2階からは結構人手が戻ってきてはくれたが、3層からは2人しか戻って来なかった。3層の奥まで連絡が聞こえなかったのか?

 そんな事はないはずだ。地笛はその名の通り地面を伝って響くようになっている。地の使いの者なら必ず感じるはずだ。

 それとも誰かが行くとでも思って、サボってるのか?


 サボってると言えばベニート(副監督)の奴はどうした? もう四半刻(30分)は経ってるぞ。あいつこそサボりに行ってるんじゃないのか。

 それでなんとなく思い出した事が、現場監督の頭をかすめた。

 確か3層の係関係の半分はあいつが手配した地の使いじゃなかったか?


 急遽増員しようとした土魔法使い(アースメイジ)がなかなか集まらないので困っていたら、珍しく奴から申し出てきたんだった。

 なんでも学校の友人たちにその手の使い手が結構いて、良い小遣い稼ぎになるなら声をかけてくると言ってきたのだ。

 もう時間もなかったし、それで手を打ったんだった。本当なら全員の能力を確かめたかったが、そんなヒマもなかったので、簡単に能力報告書を提出させただけで済ませたのだ。

 本来なら魔力認定書を提示させたかったが、持っていないとかであらためて取らせるのに時間がなかったからだ。

 ちょっと不安だったが背に腹は代えられない。

 だから始めは人数が少ない3層に配置させた。探索者が3層に増えてきたら上層から係を移動させるつもりで。

 ちなみに3層の係が順番に見回るようにはしたが、4層には係は配置しなかった。

 出来たばかりらしく、サイゼルが確認したときは30m四方のスペースしかなかったので、問題無しと判断したからだ。


 あいつ、仲間たちと遊んでるんじゃないのか?! 忙しくてまわらなかった疑惑が急に湧いてきた。

 くそぅっ、ここが収まってきたら、確認しに行ってやる。

 サイゼルは心の中で毒づいた。

 と、また足元が滑った。今度は踏みとどまった。


 ったく、さっき踏んだモノがまだくっついてやがるのか。サイゼルは壁に手をついて体を支えながら、靴底を横に向けた。

 緑色の葉っぱのようなものがべったり付いていた。

 そっと靴を脱ぐと手に取ってまじまじと見てみた。


 それは踏み潰されたクカラーチャだった。


 確かにこいつは体の半分が油で出来ているから、踏むとこうして凄く滑りやすくなる。

 よく見るとそこかしこにクカラーチャが踏まれたらしい緑色の痕跡が地面にあった。

 それを道化の恰好をした掃除人が、足元のゴミと一緒にササッと砂をかけて回収していく。

 なんでクカラーチャがこんなとこに?

 壁際とはいえ、こんな人が沢山いるところにわざわざ出てくるなんて。こいつは薄暗い静かなところが好きだから、こんな明るく賑やかなところには普通出てこないはずだが。

 

 そういえばさっきモモンガが天井から落ちてきて、ご婦人の頭に乗っかって悪さしてたな。

 まずこのホールまで出てきたことは滅多にない。しかも臆病な性格だから余計こんな騒がしいところには来ないだろう。

 やっぱり何か普段と違う気がする。


 妙な不安を感じ始めたサイゼルは、ダンジョンの入り口に目を凝らした。


 その時、奥の方から響くような振動が、ホールのこの足元まで伝わってきた。


ここまで読んで頂きありがとうございます!

最近読者様を増やしたくて、別サイト『カクヨム』様に転載連載したりしてるんですが

読み直しながら少し直したりしてると、途中からアラや矛盾が見えてきて

いっそのこと全部やり直したくなってきました。

でもそんな事したら90%以上の確率で中途半端なまま、お蔵入りする事が目に見えているので出来ません(泣)

とりあえず今は勢いで突っ走ります。

細かいとこはすいませんー!

次回はやっと4層に行く予定です。


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