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第146話☆『アジーレ 第2層 踏破』


 緩やかな坂を降りて出たところは、さっきの鍾乳石の洞窟と打って変わった場所になった。

 そこは先程までの凸凹した岩肌とは違って、いかにも人工物的なこげ茶色のレンガで床や壁が作られていた。

 壁面からは、柵のない分厚いレンガの足場が幾つも突き出している。

 明かりは先程までの光苔に代わり、天井のレンガの中に混じって光る光石が空間を照らしていた。

 高い天井はなだらかなアーチ状で、それを支えるいくつもの梁が架かっていた。大聖堂の天井とかに見られるような湾曲した梁だ。

 その梁を下から太い沢山の柱が支えている。

 また3人くらいが乗れそうな足場が、その各柱にもついていて、上下や斜めにその足場同士を石の階段が繋いでいた。

 そんな縦横無尽に構築された足場には、チラホラと探索者たちが乗っていた。

 そうして足場に面した壁のいくつかには、縦長の穴が開いている。


「なんだ、ここは? 人工物が埋まってるのか」

「違う。これもダンジョンが作ったんだ」

 壁を軽く叩きながら奴が言った。

「人間の思考を読み取って構築したんだ。人間に馴染ませるようにな」

 馴染ませるって言ったって、レンガ造りの建築物ってだけで、すごくややこしい迷路になってるぞ。

 ただ、その人工物っぽい壁や柱にはあちこちに、楓に似た五角の葉をつけた蔓が伸びていて、赤や黄色の実をつけていた。どうやらレンガの隙間から生えているようだ。


「う~ん、以前は3層がこんなだったんだけど、今度は2層になっちゃったのかあ」

 レッカが困ったような顔をした。

「前まではこの2層は、1層と同じような洞窟タイプだったんだよ。それに3層もここまで複雑じゃなくて、もっと簡単な造りだったんだけどね」

 エッボも辺りの匂いをしきりに嗅いでいるが、方角を決めかねてるようだ。

 

 確かに他の探索者たちも、あちこちの足場や階段を行ったり来たりする者や、穴に入っていったと思ったら、また別の穴から出てきた者までいた。

 なんかエッシャーのだまし絵を見ている気分だ。

 匂いで判断するのはエッボに任せて、俺は探知で探る事にした。


 他のパーティにも探知能力者サーチャーらしい、魔法使い風のが必死に探っているようだが、やはり沢山の人々の思念が渦巻いていてやりづらそうだ。

 しきりにこめかみの辺りを擦ったり、しゃがみ込んだり、頭を抱えたりしている。

 だが俺は、あの祭りの最中の街中で、紙吹雪のクジを探した時よりは楽だと感じた。あれが結構良い訓練になっていたのだと思う。

 人の思考をすり抜けながら、レンガの肌をゆっくりとなぞるように探っていく。

 とりあえず視える範囲には隠し部屋や通路はないようだ。

 ただ、ある足場の中に金属らしき丸い物体を感じた。探知ではジェレミーのオーラは感じられない。

 だが人工物のような球体をしていた。


「ちょっと待っててくれ」

 俺は皆に断ってから、下の足場に向かって飛び降りた。

 以前だったらこんなマネ、やれと言われてもやらなかっただろう。

 何故か階段を降りて渡るより早いからと、自然とやってしまった。

 足場を3つ降りて、階段から柱1つ向こう側の小さな足場に跳んだ。

 近くで視ると、確かに何か埋まっている。

 俺は土魔法でそこのレンガを数個抜いた。下から黒っぽい土が現れる。

 その土をほじくり返していくと、それが上に浮かび上がってきた。

 

 銀色に光る球体をした金属の玉。

 しかしどこにもジェレミーのオーラどころか、ジゲー家の紋章すら描かれてない。

 しかも中は空洞ではないようだ。

 解析してみると《 純銀 99.73%…… 》と出た。


 とにかくそれを持って皆の元に戻る。

 降りる時と違って、上にジャンプするのは力がいる。しかし転移するところは見せられないので、階段や足場のヘリに掴まったりしてなんとか跳び上がった。


「凄いね、ソーヤ。身体能力もかなりあるんじゃないの」

 パネラがさも感心したように言ってきた。

「そうだよ。おいらと同じ魔法使い系とは思えないよ」とエッボ。

「いや、ちょっとだけだよ。ただあいつに振り回されてるから、無理やり出来るようになったんだ」

 そういうと3人は、「あ~」という顔をして納得した。

 奴だけが「そんなに振り回してなんかねぇぞ」と心外そうだったが。


「こんなのが出てきたんだけど、コレもちろん今回の宝探しの珠じゃないよね?」

 俺は皆にその銀製の玉を見せた。直径約5㎝くらい。中身もそのまま詰まっているので、見かけよりずっしりしている。

「これは確かに純銀だね」

 解析能力はないが、金属系には精通しているパネラが、ピュウと口笛を吹いた。

「新しいお宝ってわけかぁ。こりゃ今回の件がなかったら、じっくり探したいとこだけど」

 エッボが少し残念そうに丸い角を掻いた。

「すぐに隠して、危ないから」

 レッカが少し慌てたように声を潜めてきた。

 

 言われて気が付いたが、周りの人々が俺たちの方をジッと見ていた。

 読心術が使えなくてもわかる、羨望と妬みの入り混じった眼差し。それが俺の右手に注がれている。

 咄嗟にバッグに入れようとしたが、思いついて

「これ、あんたが持っててくれよ」

 俺は聞こえよがしに言って、奴に渡した。

 奴も察したらしく、すぐに受け取った。

「ああ、いいぞ」

 奴はそのまま収納すると、まわりを見回した。

 一斉にこちらを見ていた視線が、コソコソと逸らされていった。


「新しいお宝ってどういう意味? 前にはこういうのなかったのかい?」

 匂いを嗅いでいるエッボの代わりに、パネラが返事した。

「そうだよ。ここのダンジョンも『メトカロ』と同じで、金属や宝石よりどちらかというと魔石とかが多かったんだよ。あと珍しい果実とかね。

 こんな貴金属が出たとしても、それは鉱山と一緒で他の鉱石と混ざってて、こんな綺麗な塊で出ることなんかないからさ」

「という事はダンジョンが新しく作ったってことか」

「だから言っただろ。人間の思念が強く作用してるって。こんな玉にしてくるって事は、今回の宝探しの珠を模倣してるんだろうな。相当、人間の欲の思念を喰ってるぞ、こりゃあ」

 また奴が面白そうに牙を見せた。

 それって人間を餌に狙いを定めた、あのペサディリアのダンジョンと一緒じゃないのか?

 なんだか条件が似てきて怖い気がする。


 と、その時、俺の上着のポケットがモソモソと動いた。モモンガが起きたんだ。

 そっと手を入れると小さな毛玉がビクッと体を震わせたが、俺が敵意がない思念を送ると少し落ち着いたようだ。

 小さな手が俺の中指を掴んで、クンクン匂いを嗅いでいるのがわかった。

 その手触りがモフモフしてて暖かく、ずっと触っていたい。

「ここら辺にモモンガの巣があるぞ」

 そう言われてよく見ると、壁や柱の所々に片手が入るぐらいの小さな穴が開いていた。

 そうなのか。じゃあ仲間がいるんだな。俺がそっとポケットの口を開くと、恐る恐る小さなこげ茶の頭が顔を出した。

 ちょっとその小さな鼻をひくひくさせていたが、やがてパッと飛び出すと、1つの穴に駆け込んでいった。

 奥の方から小さくチチチ、キキッと鳴く声がする。

 良かった。どうやら仲間と合流できたみたいだ。

 ちょっとほっこりした気分は、すぐに現実に引き戻された。


「う~ん、ちょっと空気が上手く掴めないなぁ」

 エッボが困ったように声を漏らしたからだ。

 次へのルートが難儀していた。

「下層の方から来る匂いが掴めないというか、風が上から下への流れが強くて、下からの匂いがわからないんだよ」

 そうか。こっちが風上なのか。さすがに空気に匂いが乗ってこないとエッボもわからないよな。

「こういう時の探知だろ、蒼也」

 奴が指で俺の頭を小突いてきた。

「いてぇな、わかってるよ。だけどこっちも上手く出来ないんだよ」


 俺ももちろん下層に行く道を探すべく、レンガの下に向かって探知の触手を伸ばしているのだが、何故かどこまで行っても空間に抜けないのだ。

 俺の探知能力は何もない所では約190mぐらいだが、遮蔽物が沢山あるところや、濃密な物質の中ではその範囲が狭まってしまう。

 しかもここは普通の土石ではなく、魔素の生き物というべきダンジョンの中だ。

 入った事はないが、例えるなら水銀と油の混ざったプールを泳ぐような感覚だろうか。潜ろうとしても体が浮いてしまうような、あの祭りの街以上の濃密な抵抗感があって、しかも場所によってその濃度が違うのだ。

 表面ぐらいならそうでもないのだが、奥に行けば行くほどこの抵抗が強くなる。


「ダンジョンの層は真っ直ぐ下とは限らないぞ。横や斜めだったりすることもあるからな」

「なんだとっ、それ早く言えよ。もう下に降りていく事しか考えてなかったぞ」

 しかしそれだと下だけじゃなくて、上以外全方位を探らなくちゃいけないのか。

 かなり厳しいなぁ……。


 探っているとレンガを通じて、微かに遠くの振動が伝わってくる。

 震度1とか2くらいの、ジッとしていると分かるような弱い揺れだと思うが、これが蠕動なのか。波が打ち寄せては戻るように、消えたり現われたりしている。

 それが何か巨大な生物の呼吸のようで、どこか不気味なモノに感じられた。


 その時、地面に沿って小さいがしっかりとした高い音が聞こえた。それは2回長く3回早く、また1回長く鳴った。耳を澄ますとまたそれが繰り返された。

 これも蠕動?

「なんだろ? 何かの合図かな」

 エッボも耳をピクピクさせて、こっちを見た。

「え、何? 何か聞こえるの?」

 レッカが不思議そうに訊いてきた。彼には聞こえてないのか。


「地笛ですよ」

 いつの間にか、同じ足場に白い笑い仮面を着けた、赤と黒の衣装を着た道化師が1人立っていた。

 その姿はとても小柄で、リトルハンズのように見えた。しかしその体に対して頭は大きく、手足は短めだった。

「わたし達、ダンジョンの係の連絡笛です。どうやら地上に人員を少しまわすようにとの連絡のようですが、なに、大した事はないでしょう。

 気にしないで大丈夫ですよ」

 そう言って男は―――声からして若くはない男とわかる―――俺たちの間を通ると階段を上がって行った。


「今の係、ジェレミーの匂いがした……」

 エッボが小さな声で呟いてきた。

 ナニッ ?!

 俺は慌ててその男のオーラを見た。

 だが、護符を付けているのか、ジェレミーどころか男自身のオーラの一片も視えない。

「という事は、ジゲー家の直近の人かな」

 レッカも訝しげに男の姿を目で追った。

 直近というと、例の珠を探す地の使い手なのだろうか。これはオチオチしちゃいられない。

「ほんの少しだから、ジェレミーの家臣というより、何か彼が居た場所や物に触れただけなのかもしれないけど」

 鼻をさすりながらエッボが言った。

 奴だけがフンッと鼻を鳴らしていたが。

 うう、どうしたもんか。見えない敵にも注意しなくちゃいけないのに……。

 とにかくまた探知の触手を伸ばして、下に続く通路を探した。


 ここ2層の大きさはというと、よく広さの目安に例えられる東京ドームで例えると、行った事ないのでわからないが、おそらくテレビ中継とかで見る広さから察すると、それを少し歪な卵型に変形させたくらいの感じか、もう少し大きいぐらいだろうか。

 とにかく向こう側の壁は見えるが、障害物があるとはいえ触手が届かないし、天井も遥かタワーマンション何十階を見上げる感じくらいある。

 とりあえず伸ばせるとこまで触手を這わせていると、またあの玉の感触があった。

 

 今度は下の地面だ。

 地面にも通路の穴があったりするので、何組かのパーティがウロウロしている。レンガの隙間に短い草がみっちり生えていて、こげ茶と緑地に見える。蔦も結構伸びていた。

 どうしよう。そんなの探してる暇じゃないよな。

 だけどせっかく見つけたのに勿体ないしなあ。俺はちょっと迷った。

 待てよ、ここにとどまらないで場所を変えた方がいいか。

 俺は皆にまた下に降りる事を告げて飛び降りた。


 地面に降りて、ピンポイントのレンガのところに右手をつく。

 近くに他のパーティがいるので、レンガは外さすにそのまま下の土を動かす。

 出来るかな? 

 それがレンガのすぐ下まで来た時に、俺はそれを手で掴むような感じで、直接収納した。

 おお、出来た。手前に障害物レンガはあったが、これで少し離れても収納できることが分かった。おそらくまわりの人たちも、俺が今やったことに気が付いていないだろう。

こっそり、バッグの中でいま収納した玉を解析してみると

《 純金 96.8%…… 》 と出た。

 おお、今度は金か。さっきのより直径3㎝弱くらいと小さくなってるが、それでもさっきのより断然価値はあるだろう。

 これはもしかすると白金プラチナやミスリル銀もあるのかもしれないな。

 ちょっと俺は一時的に邪な、目的とは外れた考えを起こし始めていた。


 その時、俺のすぐ前の壁に開いた穴からふうっと風が吹いてきた。

 だがそれは、下の階から吹いてきたわけではなく、この同じ地層からのものだった。というのもその穴が、隣の穴とすぐにUの字型で繋がっているのが視えたからだ。

 ああいう短いのもあるんだな。

 ん? そうか ――― 風か!


 俺は探知を止めて風の流れに注意することにした。

 この内部は上から吹いてくる空気が、それぞれの穴に流れ込んでいく。

 入ってすぐ行き止まりになる穴は、空気がその壁に沿って中でクルクルと渦を巻いている。そうでなくとも、曲がりくねった長い通路を通った挙句、再びこの空間に繋がって戻ってくる風もある。

 だが、このダンジョンの内臓のような土壁を探るより、たとえ人の思念が漂っていようとも空気を感じる方が負担は少ない。

 もちろん空気の探知の方が、普通の探知より距離は短いが、今は扱いやすい方がいい。


 俺は底面をウロウロしながら、穴の中の風の動きを探っていった。

 中々戻ってこない俺に、上からレッカが心配して声をかけてきたが、俺は軽く手を振って答えた。


 まわりのパーティが少しづつ、それぞれの穴の中に入っていくのに、少し焦りを感じつつ、俺は風を探った。

 多分、皆な間違ってる穴に入っている。確実とは言えないが、下横斜め上などを繰り返した結果、またこのドームのどこかに戻ってくる穴だろう。グルグル回っている空気だと、どこか俺の感が働いた。

 そんな感じで5分くらい探っていた時に、1つの穴が俺の直感に引っかかった。


 それは中腹よりやや下の壁についた、畳一畳くらいの小さな足場で、やや歪な楕円の穴が開いていた。

 足場に他の人はいなかったが、その穴に通る空気がこちらに戻ってくる気配がないと感じた。

 さらに奥に、3層に繋がってるんだ。多分。

 俺が皆の方を振り返ると、奴と目が合った。


『(やっと分かったか。退屈したぞ)』

 奴がテレパシーを飛ばしてきた。

『(だったら始めから教えろよ。時間の無駄だろ)』

『(だが、良い訓練になっただろ? 人から教えてもらうより、自分で見つけ出すのが一番身につくからな)』

『(こんな時にも訓練って―――、とにかくこれで正解なんだな? じゃあいったんそっちに戻るぞ)』

 俺は近くの階段に飛び乗って、順に戻ろうとした。


『(待て。時間が勿体ないから、お前は先にその足場のところへ行け)』

『(えっ、だけどパネラ達は跳んだり出来ないぞ。まさか皆の前で転移使うのか?)』

『(いいから、先に待ってろ)』

 なんだかあれだが、言われた通りにここだと思うポイントの足場まで、他の足場や柱を三角跳びしながらたどり着いた。

 まわりにちょっと目立ってしまったが。

 だけどこれくらいで目立つって、やっぱりパネラが言った通り、ここにはDランク以下が多いのだろうか。あまり活発に魔法を使うような者も見かけない。

 いや、俺だってこんなの2か月前までは、驚いて見ている側だったんだ。

 あいつや出会った奴らが異常なのに慣れてきてしまったようだ。


「おい、蒼也がどうやら下に続く穴を見つけたらしいぞ」

「「「えっ?」」」

 向こう側で奴が皆に伝えているらしい。

「どうしてわかったの? 何かサインでも送ってきたの」と不思議そうなパネラ。

「オレ達だけの連絡方法があるんだ。とにかくあっちに行くぞ」

「わぁ、反対側だね。他のパーティにバレる前に早く行かないと」とエッボがこっちを見る。

「待て。いちいち下に降りてたら面倒くさいだろ」

 階段を降りようとしたレッカとエッボを、奴が引き止めた。

「えっ、でもおいら達、ソーヤみたいな身体能力ないし……」

「任せろ、オレが運んでやる」

「「「ええっ?!」」」


「パネラ、お前オレに負ぶされ」

 奴がそう言ってしゃがみ込んだ。

「えっ?! あたいが?」

「そうだ。この中でお前しか、しがみ付いてられるような力ないだろ」

「まあ、そうかもしれないけど……、今、装備付けてて重いし……」

 パネラがちょっともじもじした。

「そんな事くらいわかってる。大体それっぽち変わらんわ。時間ねぇから早くしろっ」

 戸惑いながらヴァリアスの背中に乗って、首と腰に手足を回す妻を、ちょっと複雑な顔をしてエッボが見ているのが、奴のテレパシーを通して感じ取れた。


「よし、しっかり掴まってろよ。一気に行くからな」

 そう言うと奴は両脇に、エッボとレッカを抱えた。

「「え、えぇっ?!」」

『(蒼也っ、ちょっと横にどいてろ)』

 俺が慌てて端っこに寄るのと、奴が助走もつけずに吹っ飛んできたのは同時だった。

 もうっ、ミサイルが撃ち込まれてきたのかと思った。(作者注:ミサイルにシャークティースしてあるのありますよね)

 奴は、凄まじい衝撃と共にこちらに着地した。もう足場が落ちるかと思った。

 ヤバかった。

 おかげで周りの皆がこっちを凝視してきた。


「この馬鹿チートっ! 目立ち過ぎだろっ。皆なこっちを注目しちまったじゃないかっ」

「構わん。少し力を見せつけてやった方が、ちょっかい出して来ないだろ」

 そう言いながら蒼くなって固まっている2人を床に座らせた。

「おいっ、もう着いたぞ。早く降りろよ」

 パネラも手足が固まってしまって、なかなか解けなくなっていた。

「ぢょっ、ちょっ、ちょっと待って、ね……。力が抜けなくて……」

 なんとかパネラを下ろすと、俺たちは穴に入った。


「確かにここだけ風の流れが違う感じがする」

 やや膝をガクガク言わせながら、エッボも中に入って同意した。

「でも、思い切り注目を浴びちゃったから、ここに皆な来ちゃうね」

 レッカが穴の外を気にしながら言ってきた。

 そうなんだよな。この馬鹿ザメのせいで。


「ちょいと下がってて」

 体をほぐすように腕を回しながら、パネラが前に進み出てきた。

「ここいらは比較的、鉄分を多く含んでるようだから」

 そう言いながらパネラが穴の口の前で踏ん張るように、足を広げると両手を上下に突き出した。

 するうちに地面からレンガを割って、太い鉄柱が何本も持ち上がってきた。それは上に伸びながら、互いに手を取り合うように、横にも棒を伸ばして格子状になっていった。

 みるみるうちに入り口は鉄格子で塞がった。


「これでちょっとは時間稼ぎになるでしょ」

 もう助け合いじゃなくて、邪魔して出し抜くレースなんだな。

 なんだか『チキチキマシン猛レース』を思い出した。



ここまで読んで頂き有難うございます!

『チキチキマシン猛レース』、私は飛行機編より断然カーレース編が好きでした。

あのケンケンのマネ出来ない笑い方、何故かたまにオネェのような(あらやだっ!)

口ぶりになるブラック魔王のコンビが最高。

ちなみにあのレース参加者の紅一点ミルクちゃんと小人の7人のギャング達は

(よく考えたら、これってもしかして差別用語になっちゃうのかな?

 白雪姫の小人はノームだけど、これただのオッサン達だし??)

スピンオフアニメ『ペネロッピー絶体絶命』で、ミルクちゃん名前を変えて出ています。

確か両親が亡くなって、優しい叔父さんに引き取られたペネロッピーが

莫大な財産を相続したために、叔父さんこと裏の顔は悪人マントメガネに

毎回命を狙われるという辛辣なストーリー。

だけど毎回ギリギリセーフで、7人のギャングが助けに来るという定番ストーリー。

結構昔の外国アニメ好きだったなあ。

**************************

ちなみにお察しの通り、私のストーリーは辛辣な面が多いので

これから段々と不穏な空気になっていきます。

次回あたりから破滅の音が聞こえ始めます。

こんなんですが、どうかこれからもよろしくお願いします。

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