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第117話『さらば 友よ その3』

毎回毎回すみません。

今回もこれで終わりにしようとしたら

長くなってしまいました。

お時間のある時にどうぞ。


 ギトニャに着くと、まず宿の確保をした。

 

 この間と同じ門前広場の宿に入る。

 ここは『銀の鱗亭』という名前だった。

 看板の下に『この辺で一番 魚料理が美味い店』と木札が下がっている。

 確かにここで食べた≪ピラクーのタレ焼き≫は旨かった。他にもあるのかな。


 今日は満室に近いという事で、空いている部屋は2階の3畳程度の部屋だけ。

 狭いベッド1つに、ハンガーラック、小さなチェストと椅子だけの、もちろんトイレ・シャワー別しかなかった。

 それでも、もういいや。俺も慣れてきたもんだ。

 狭いなりに部屋代も3,180エルと安いのもいい。床やベッド、壁紙はそれなりに古くて少し黄ばみ気味だが、埃臭さはなかった。今度からラーケルに来るときの定宿にいいかもしれない。

 宿代は前払いで、一応2日分の連泊代を払った。


「じゃあ宿も決まったし、ギルドに行こうか」

 俺の腹が鳴った。昼がまだだった。

 キリコが一応料理を作ってきてくれてはいるが、こんなテーブルもない、窮屈なところで食べる気はしない。

 だが、1階食堂もすでに昼営業を閉めていた。次の営業は6時からだ。

 俺達は外に食堂を探しに行った。


 昼下がりとあって、フォークと皿の看板を見つけても閉まっている店ばかりだった。

 マズいタイミングで来てしまったかな。


 プラプラ歩いていると、小さな広場の真ん中に芝生があった。真ん中に小さな噴水と数本の樹、その下にベンチがある。

 1本の樹に寄りかかり、草の上に座った男がのんびり水煙草を吸っていた。

 

「良かったらここでお昼にしましょうか」

 キリコが木陰のベンチに誘う。

「外でも食べれるものを作ってきて良かったです」

 そう言って籐のバスケットに入った、サンドイッチとオニギリを出してきた。

 キリコ、お前、何度も思ったけど、やっぱり女になった方がいいよ。


「なあ、こっちって、人種によって寿命に差があるみたいだけど、一番の長寿ってどこなんだい?」

 俺はトマトと卵とレタスのサンドイッチを頬張りながら訊いてみた。

「それはやっぱり魔族ですね。魔族の人種にもよりますが」

「やっぱそうかぁ……」

 魔族ってさっきの天使もモデルになってるって言ってたけど、もう姿が人外なのばかりなんだろうか。それはさすがに無理だな…………。

 ……そういやセオドアの奥さんは豹獣人とか言ってたな。


「その、獣人で豹獣人パンサーって…… 一般的に何歳くらい生きるんだい?」

「そうですねぇ、純血種なら300年前後ですね。

 けれどなんです、誰か良い人でもいるんですか?」

「いや、そんなのとは違うよ」

 俺はサンドイッチを持った手を振った。

 もう片手にはアイスコーヒーの入ったカップを持っていたからだ。


 300かぁ。それならセオドアとなんとか寿命が合うのかな。

 セオドアのほうがだいぶ年上じゃないといけないが。


 そういやダリアが豹獣人か。

 あんな感じなら獣人でもいいかなぁ。

 俺はちょっとダリアの流し目の顔を思い浮かべてみた。

 だけどそれでも俺の3分の1…………。

 俺は溜息をついた。


「美味しくないですか……?」

 キリコが少し心配そうに訊いてきた。

 こいつはワカメと高菜漬けのオニギリを食べている。

「いや、全然美味いよ。ちょっと考え事してた。

 そういやヴァリアスの奴、遅いな。まだ仕事終わんないのかな」

 俺は話題を変えた。


「それが……日本時間で今朝、すでに終わっているようなんです」

 キリコが声を落とした。


「えっ、終わってる? なんであいつ来ないの? ――いや、別に来なくてもいいけどさ」

「それがわからないんです。今朝ギリギリまで待ってみたんですけど、連絡が取れなくて……」

 仕事って、戦争に援軍として参加したという事は知ってます? と訊かれて俺は頷いた。

「実は、他に参加した使徒たちに聞いたら、誰も副長を見た者がいなくて……」

 だったらリブリース様が昨日の夜、伝言を伝えに来たと言おうとして、俺は口をつぐんだ。

 途中から抜けてきたと言った彼はボロボロだったからだ。


「その仕事って、奴とリブリース様だけだったのかい?」

「いえ、他にも使徒たちはいましたが、副長は始めから飛ばしてたから、ついて行けなかったとか。

 途中まで一緒だったらしいリースさんも、戻って来るなり調子が悪いっていなくなっちゃって」

「…………」


 俺とキリコはそれぞれ黙ったまま、ぼんやりと前を見るとはなしに見た。

 俺達の前を黄緑色の毛並みのコニ―(ロバに似た馬)が、左右に籠をブル下げて馬方に引かれていく。その先で、首から木製の番重ばんじゅうを紐で下げたパイ売りが、声高にお客を呼んでいる。

 いつもと変わらぬ風景が目の前に流れていた。


「まっ、あいつの事だから、そのうち素知らぬふりして戻ってくんじゃない?」

 俺は一気にコーヒーを飲み込んだ。

「大体、あいつがそんな簡単にやられるようなタマじゃないんだろ」

「…………うん、そうですね。確かに。今までどんな危険な仕事でもちゃんと戻ってきましたからね、副長は」


 えっ、そんなに何度もやってんの? そりゃ確かに傭兵だな。

 だけど数多くやってたら確率的にはいつかは……。

 念のためスマホで呼び出してみたが、昨夜と変わらず電話は繋がらなかった。

 

 いや、あいつの安否なんか考えてもしょうがない。

 どうせ俺には何も出来ないし。

 あいつの事なんか考えるのやめて、せっかくこっちに来たんだから、俺はこっちでやる事をしよう。


 宿で聞いていたハンターギルドは、以前来たことのある商業ギルドの角を曲がった、通り沿いにあった。

 3階建てだが、さすがに他の建物に比べて横幅が広くて大きい。

 2階の受付のあるフロアには、やはり壁や衝立に依頼書が所狭しと貼ってあった。


 ざっと見てもEランクは、薬草採取や小動物の肉の依頼がほとんどだった。

 非識字者(読み書きが難しい人)のためもあって、採取する薬草や動物の絵がかいてあるので、パッと見た目でも何の依頼かわかりやすい。


 だが、なぜか今一つ気分が乗らない。

 以前は薬草採取の仕事を細々と続けていこうと考えていたのに。

 ――― なんだかつまらない ――― のか? 俺? 

 それにまた兎とか狩りたくないし。以前よりは絶対に苦しまずに殺れると思うが、またあの可愛いのが、体から段々と温もりを消していくのをあまり味わいたくない。

 ここら辺が俺のヘタレなところでもあるのだが。

 もちろん、可愛くないのならどうでもいい、という訳では決してはない。

 

 だとすると鉱石とかの採取かな。

 鉱石の採取関係はEにはなく、Dランクからだった。やはり採石できる場所の問題のようだ。

 確か自分の取得しているランクより1つ上も請負可能だったはず。


「ソーヤは鉱石採取がいいんですか?」

 横で一緒に見ていたキリコが訊いてきた。

「別に特に好きってわけじゃないけど、俺の受けられる範囲内だからだよ。それに生き物を殺すわけじゃないから気が楽だし」

「そうですか。鉱石ハンターも良いですよね。なんならあのカッサンドラの洞窟の水晶を、少し分けてもらいましょうか」

「えっ、良いの?」


 確かにちょっと気になってたんだ。あんなにたくさん手つかずの、しかも色々な水晶が密生してるんだもの。人間のエゴかもしれないけど、ほっとくのはなんだか勿体ないと思ってた。

「多分、頼めば大丈夫だと思いますよ。今まで貰った人はいないと思いますけど」

「なんだ、それじゃ貰いづらいよ……」

 今まで誰も言った事ないのに、初めての奴がいきなり厚かましく、敷地内に生えている水晶をくれと言うのもなんだか気が引ける。

 おそらくあいつなら、そんなこと気にするなとか言うところだろうが。


 特にこれといったモノがないので、ひとまずここから半日くらいの場所にある、崖の中腹に生えているキノコ採取の依頼をやろうと思った。


「あの、常時依頼のD-18を受けたいんですけど」

 俺はハンタープレートを見せながら、受付嬢に言った。

「かしこまりました。何人ですか?」

「私1人です」

「えっ、あなたお1人?」

 受付嬢はあらためてプレートを見た。


「……申し訳ございませんが、これは受付けできません」

「どうしてですか? 私、EだからⅮも受けられますよね?」

「ランクの1つ上を受諾可ではありますが、この場所は非情に切り立った危険な場所です。せめてもう1人、同じランク以上の人員が必要です」

「あ、だったらあの――」

 俺は少し離れたところで待っているキリコを、呼ぼうとして思いとどまった。


 そうだった。あいつは錬金術師だった。

 傭兵ならともかく、職人技能者じゃ数に入らない、というか問題外だよな。


 こんな時ヴァリアスがいてくれれば、これどころかもっと色々選べるのだろうけど。

 何しろ、請け負える依頼はグループの総合力で決まる。

 4人中3人がEでも1人がAなら、極端な話、CやBの仕事を受ける事も出来るのだ。

 (もちろん条件はいろいろあるが)


 俺はすごすごとまた依頼の貼ってある壁に戻ってきた。

「ソーヤ、あっちに不定期・臨時依頼がありますよ」

 キリコが衝立横の台にあるファイルを指さした。

 ああ、そうか常時依頼以外に、そういう単発的依頼もあるんだった。


 ただ、Eランクの臨時依頼は2枚しかなく、『下水道掃除補助』と『船の荷下ろし―― 220ポムド(約100㎏)以上持てる人募集』だけ。なんか、食指が動かない。

 Dランクに『ブリック沼の泥採取』というのがあった。なんでも沼底の泥が美容に良いという事で、今の季節が最も成分が良いのだそうだ。


 地味だけど、相手が生物じゃないからいいかな。

 量はそれなりに持って来なくてはいけないので、通常はその場で乾かして、出来る限り水分を飛ばし、かさを減らすらしいが、それは水魔法でやればいいし、何より俺には空間収納があるから問題ないだろ。


 しかしこれも1人だと却下だった。

 なんでもこの沼には手強い肉食魚がいるという事で、Eランク1人では行かせられないというのだ。


 そんなこと言ってたら、何も出来ないぞ。

 とはいえギルドからしてみたら、明らかに失敗しそうな奴に依頼を出来ないのは当たり前だ。

 たぶん俺が係だったら、何かあったら後味悪いから通さないだろう。

 これでもピラニアどころか伏竜と対峙してきたんですけど……。

 

 念のため土魔法が出来る事を話した。だから沼に入らずに出来るかもしれないと。

 が、それならその証明を見せてくれと言われた。

 どうも魔法の熟練度を示す『魔力認定書』なるモノがあるのだそうだ。

 これは魔導士ギルドという所で発行しているらしい。

 しかし認定書は一朝一夕ですぐ発行してくれる訳ではなく、比較的大きい町にしかこの魔法使いのギルドはないらしいのだ。

 なんかもう面倒なのでやめた。


「どうします?」

 キリコが訊いてきた。

「どうしようか……」

 俺とキリコは2人で衝立の前で突っ立ったまま、しばし考え込んだ。


 こういう時、奴だったら、じゃあこれにしろとか勝手に決めてくるんだよな。

 考えてみると俺、他人にひと押しされないと、なかなか決められない性格だった。

 引っ込み思案の俺とは対照的に、取り敢えず行動するあいつは、かなりの危険な奴だが、そのおかげでここまで出来るようになってきたんだった。


 ――― だからどうだってんだ? 

 優柔不断だっていいじゃないか。何でもかんでもテキパキこなせる奴が偉い訳じゃあるまいし。

 こうやって色々悩んだっていいだろ。

 あいつがいたらきっと、これやれ、あれやれとか、息をつく暇も与えてもらえないんだ。きっと。


「ソーヤ……声漏れてますよ」

「え……。俺声に出してた?」

 俺はあたりを見回した。

 5,6人いるハンターらしき人達は、依頼書を眺めていてこちらには注意を払っていなかった。

「小さい声でしたけどね。近くに来たらわかりますよ」

「サンキュ、キリコ。気を付けるわ」

 このクセも治さないとなぁ。


 とにかくあいつがそばにいないから、余計に存在を意識するようになっている。

 どうせ何かに手間取ってるだけだ。

 そのうちいつの間にか、ちゃっかり後ろとかにいるんだ。きっとそうだ。

 時間を少し喰ってるだけで……。


「あ…………」

 俺は顔を上げた。

 あいつは今、地球にいるんだ。こっちとは移動の時に時空差がある。例えこっちでまるまる1日経っても、地球じゃ30分弱しか経ってない。

 つまりこっちで、待ち合わせ時間に来ないから電話したら、まだ寝てたっていう以上の待たされ感になるはずだ。


「キリコ……………… すまん」

「はい?」

「来たばっかりで悪いけど、日本に帰ってもいい?」


 別にあいつの事が心配なんじゃなくて、この中途半端な感じが気持ち悪いんだ。こっちにいたらこのムズムズとした座りの悪い時間が長いに決まってる。

 だったらさっさっと白黒つけて早く落ち着きたいんだよ。


 キリコには悪かったが、またあの水晶の洞窟を通って、日本橋に戻り、アパートの玄関に転移した。


 私の手はずが悪かったんですかね…………と落ち込むキリコを、俺の気分の問題だと慰めながら、またスマホをかけてみた。

 スマホからは相変わらず同じアナウンスが流れた。


   **************


 令和元年の最後の週末は、そのまま日本で過ごす事になった。

 ギトニャに宿代を払いこんでるのに勿体ない気もしたが、どうせ来週行けばあちらはまだ同じ日の夕方だろう。全然問題なしだ。


 大晦日は仕事は休みだった。

 もしかして初詣とか田上さんと行けるかななどと、期待もあったのだが、彼女は正月を実家で過ごすという。

 実家…………あったんだ。俺はそういうモノの存在を失念していた。

 だけどシングルマザーで親に頼らないのかな。

 その理由は言いづらそうだったので訊かなかったが、なんとなく察する事は出来た。


 例の内縁の夫――田上さんにつきまとっていた男が怖くて、実家に戻れなかったんだ。彼女が消息をくらました後、何度も実家に押しかけて来ていたようだし。

 ――― となると、しばらくして、もうあいつが本当に現れないとわかったら、彼女はいずれは実家に帰ってしまうのか? 

 俺は怖くて訊けなかった。冗談めかして訊くこともできないのだ。

 

 我ながら弱すぎると思うが、いつも手に入れたと思うものは、手の中の雪のように消えて行く。だからまた期待なんかしなければ良かったのに。

 元旦、俺はグダグダとそんな事を考えながら新しい年を迎えた。


 午後、大家さんに年始の挨拶をしに1階に降りた時、ポストから年賀状を取ってきた。

 数少ない友人や、DMなどで10枚くらいだったが、中に彼女の名前があった。

 それには『今年もいろいろ迷惑かけるかもしれないけど、よろしくお願いします』と書いてあった。


 社交辞令なのか、それとも今年はまだ、会社を辞めないという事なのか。

 俺はラインで済ませてしまったが、彼女はわざわざ年賀状も送ってくれた。

 どうなんだろう。確かめたい。


 彼女は今実家にいるはずだ。ラインで年賀状のお礼と共に聞いてみようかな。

 いや、だけどそれって変じゃないか?

 俺は部屋でまた1人、炬燵に転がりながら悶々と考えた。


 キリコは落ち込んだついでに神界に行ってくると言って、あの日以来姿を消して現れない。

 用があるときは呼んでくれればわかると言っていたが、こっちの天使とも通じてるのだろうか。

 ちょっと相談しようかと思ったが、我ながら不甲斐ない感じがしてやめた。


 とりあえず、年始の挨拶と帰れる実家があっていいね、というような事をラインに打ち込んでみた。

 あとは送信ボタンを押すだけだが。

 …………この最後の思い切りが出来ないんだよな、いつも。

 

 ナジャ様が前に言ったように俺は押しが足りないのかもしれない。

 ヴァリアスの言うように、やらないで後悔するより玉砕したほうが、この場合スッキリするかもしれない。

 

 いや、なんでアイツモードの思考なんだ。

 う~ん、もういいや。文面も変じゃないと思うし、それはそれで受け流して貰えれば。

 俺だって戦時中の人達みたいに、何度も死線をくぐってきたんだ。これくらいで怖気づいててどうする!

 ポチっと送信。


 はあ…………。

 ちょっと脱力してスマホを炬燵に置いたまま、天井を眺めた。

 何故かどこかで諦めが付いたような気がした。

 この先どうなるかわからないが、こんな事をいちいち気にしてる自分がなんだか―――。



 ピロリン。 スマホにラインが来たことを告げた。

 俺はガバッと起き上がると、そろそろと彼女からのラインを開いた。

 内容は定番の挨拶から始まり、『実家で親戚一同とお雑煮を食べているところ』だと言ってきた。


 そして――― 『実家にいる姉が、また今年3人目の子供を産む予定で、お年玉が辛い(笑)』と言ってきた。

 それはつまり、姉夫婦が両親と同居しているという事か。それは帰りづらいかも。


 おお、それなら実家に戻る可能性は薄れたか ??!


 可能性の糸がまだ切れない事に、俺は少し気分が上がってきた。スタンプを返信して、畳の上に大の字に伸びてみた。

 よくやった、俺。ちゃんと行動すれば、それなりの答えが帰って来るじゃないか。

 さっきまでグズグズ悩んでた事が、かなり前のことのように感じられた。


 ふと、首を横にすると、あのドラゴンの魔石が窓からの光を浴びて、蔓花のような赤がゆらゆらと光っていた。


 あいつ一体なにやってんだろう。


 ふと思いついて、2杯分以上の珈琲豆を挽いてみた。

 匂いで、もしかすると奴が来るかもしれないと思ったからだ。


 あの銅製のジョッキに珈琲を注いで、テーブルの向かいに陰膳のように置いてみる。

 あの時、奴はジョッキを持っていかなかったのだ。

 いつもならマイジョッキはすぐ収納するのに。


 珈琲のふくよかな香りが部屋の中に漂うが、何も起きなかった。

「おい、せっかくコーヒー淹れたんだから、飲みに来たらどうなんだよ」

 俺はポツリと窓に向かって言ってみた。


「や~、わざわざ淹れてくれたんですかぁ。ありがとうございます」

 後ろで声がしたので振り返ると、キリコが立っていた。

 相変わらず料理まめなキリコは、六角型の赤地に金の梅模様の3段お重を持ってきていた。


「それにしてもスゴイ大きなカップですね。これジョッキじゃないですか?」

「いや、ごめん。淹れ過ぎたから入れ替えるよ」

 俺は慌ててジョッキを持って、台所にカップを取り換えに行った。


 そのまま正月休みも終わり、新しい年が始まったが、今年初めての週末にも奴は姿を現さなかった。

 キリコはやってきたが、気乗りしないので行かない事にした。

 いま中途半端に行ってもあちらでは夕方になってしまう。どうせなら朝に合わせて行った方がいいかもしれない。

 などと適当に理由を考えた。


 次の週末も奴は現れなかった。

 さすがにこれはおかしい気がしてきた。

 キリコに聞いてもわからないというし、そもそも、その話をしたがらなくなってきた。

 もう過ぎ去った事は過去として、ただの終わってしまった事柄になってしまったように。

 それよりも俺が、いつあちらに行く気があるのか教えてくれと言うだけだった。


 あの怒涛の2ヶ月間はなんだったのか。

 望んでいたはずの、当たり前のような日常にいられながら、俺はどこか落ち着かない気分だった。

 

 いきなり来て、急に去っていったあいつは何だったんだ。

 俺を一生守るんじゃなかったのか?

 また俺を置き去りにする為だけにきたのか。

 

 台所の水切りカゴに、あいつの赤銅色のジョッキだけが残っていた。


 世間では中国の一部の都市での新型肺炎の流行が騒がれ、テレビで時折流れるようになってきていた。

 田上さんとは、会社の人達に知られるのも恥ずかしかったから、あれからちゃんと会ってはいなかった。


 ただこのあいだ、会社でこっそりとお弁当を作って持ってきてくれたのに、少しの望みを見い出していた。


 そんな事に一喜一憂しながら、3週間が過ぎようとしていた。


 1月の第3金曜日の夜、いつも通り仕事を終えて、駅からアパートに向かって住宅地を1人歩いていた。

 例の酒屋のある小さな商店通り(商店街というほどではない)を抜けた時、なんとなく冷たい夜風に当たっていたい気分になって、そのままいつもとは違う道に入った。

 こちらには小さいが公園がある。

 ベンチもあるから近くの自販機で飲み物でも買おう。


 しかし近くまで来た時に、俺の耳に‟ キィコォー キィーコー ”という金属の擦れる音が聞こえてきた。

 こんな夜中に誰かブランコでも漕いでいるのか。


 植え込みの葉のすき間からブランコが見えてきたが、それはまったく動いていない。

 動いていたのは、真ん中近くにあるシーソーだった。

 しかしその両端に乗っているはずの人影は見えなかった。


 …………以前の俺だったら、ここで背中に冷たいモノが流れて体が動かなくなるだけだったが、ゾッとした瞬間、ある行動を起こしていた。

 というかおそらく反射的にやっていたのだ。

 探知を。

 

 両端に何かがいるのはわかった。

 何か人のような形をした ――― 向かって左は大きく、右は小柄だった。

 今度こそザワザワと体中から震えが来たのを感じた瞬間、その小柄のほうが俺に向かって手を上げた。


「ソウヤ、久しぶりーっ。元気にしてたかー?」

 街灯の灯りににじみ出るように現れたのは、白いファーのボレロに赤いワンピース、ふんわりした金髪の少女と

「よう、ソーヤ君、*Felice anno nuovoフェリーチェ・アンノ・ヌォーヴォ! 遅くなったけど新年おめでとう!」

(* 良い年を! の意:イタリア語のハッピーニューイヤー)

 黒い男がニコニコしながら言った。


「ナジャ様とリブリース様 ?! 一体何してるんですか ??!」

 俺はこちらに手を振りながら、いまだに上下運動を止めない2人のそばに小走りに近寄った。


「何って見ればわかるだろー、シーソーだよ」とナジャ様。

「そりゃシーソーはわかりますが、こんな夜中に、しかも姿消して…………」

 後の方は小声になった。

「なんかさ、始め普通にやってたら、こっちの警吏?、あれに色々聞かれてさ。面倒くさいから姿だけ消してたんだよ」

 そういうリブリース様は今日は、黒のライダージャケットと革パンツにベルトの沢山ついたロングブーツと、『マッドマックス』の主人公みたいな恰好になっている。


「あの…………。姿だけ消してたから、シーソーだけが動いて見えてましたよ」

「だって全部消したらシーソーごと見えなくなっちゃうじゃん。そしたらシーソーが無いって、騒ぎになっちゃうでしょ」

「いや、イヤイヤイヤ、この方がよっぽど騒がれますよ。うちの近所に心霊スポット作るのやめてください」

 ったく、この考え方の違いがヤバいんだよな。


「しょうがないなー、よっと」

 ナジャ様が勢い良く、シーソーから飛び降りた。

「いダッ! ちょっ、ちょっとナジャ、降りる時はそっとにしてって。おれ様の命の次に大事なとこが…………」

 どうも急に下がって、男の大事なとこを打ったらしい。リブリース様が呻くように言った。


「なに言ってるんだよー。これっくらい」

「もうっ、女には永遠にわからないんだから…………。ってこれさ、結構危険じゃない?

 本当は男用の拷問道具じゃないの?」

「そんな物騒なモノ、公園に置きませんから。

 そういやリブリース様、体はもう大丈夫なんですか?」

 そうだった。今、両足はちゃんとあるようだが。

「うん、ありがと。この通り全快だよ。やっぱり『精霊の愛の園(神界の花街)』は最高だね。英気を養ったらもうすぐに治っちゃったよ」

 あんたはソープランドで傷を治すのか。


「日本には今日来たとこなんだ。地球には今年の初めからいたんだけど。

 ナジャがあちこち、風を感じながらゆっくりまわりたいって言うからさ、あれで世界中まわってた」

 と、親指で指した後ろ側に、エンジンとマフラーが思い切り主張してるような大型バイクがあった。

「そうだよ、気持ちいいぞー。砂漠の途中で会った隊商(キャラバン)には驚かれちゃったけどさー」

 えっ、もしかして砂漠をその恰好で2人乗りして走ってたんですか? ダカール・ラリーでもそんなマネしませんよ。

 いや、そんな事より――。


「あの、その後、ヴァリアスの奴から……連絡は?」

「えっ、ないの?」

 ナジャ様が意外という顔をする。

 リブリース様から笑みが消える。

「そうか…………」

 

「ソウヤ、ときに訊くが、今のお前の守りはキリコだろ? 奴で足りてるのか?」

 少女がスタスタと俺に近寄ってきて、俺の目をジッと見ながら言った。

「え……それはどういう…………」

「キリコじゃ力不足だろ。あいつがもう戻ってこないんだったら、あたいがサポートしてやろうか? 系統違いでもお前が望むなら、転属は可能だよ」


「…………戻ってこないって…………それは」

 なんだか足元の地面が不安定になったような気がする。

 黒い男が下を向いた。

「どうする?」

 少女が詰め寄るように聞いてくる。


「…………あいつは……もう死んでるっていうことですか……………………」








 ガッ !! と、首にいきなり黒い袖の腕がまわってきた。

「誰が死んだって ?」

 耳元で聞きなれた低音がした。


「ヴァ、ヴァ、馬鹿ぁっヴァリーッ ?!!」

「いよぉ、なんだ、なんて顔してるんだぁ? オレがいなくて淋しかったのかぁ、んー?」

 ニーッと牙だらけの口を顔の近くで見せながら、俺の頬を摘まんできた。


「やめろよっ! このっ、パン切ナイフみたいな歯ぁしやがって」

「なんだよ、それっ」 

 ふと前を見ると少女はもちろん、ライダー男も下を向いたまま体を震わしている。

 ハメられたっ!!


「2人とも知ってたんですかっ ?! 知ってたんですよねっ!」

 俺は奴の腕を振りほどいて、2人に逆に詰め寄った。

「いや、悪い悪い、だってヴァリーが黙ってろって言うから」

 ライダー男が口を片手で覆いながら弁解する。


「そうだよー。あたい達ウソはついてないものねー、ケーケケケッ!」

 面白かったけどさーと、少女が大笑いした。


 クソッ、確かに、誰も死んだとは一言も言ってない。

 あっ、じゃあキリコも知ってたのか !


「すいません……ソーヤ」

 いつの間にかヴァリアスの後ろから、キリコが済まなさそうな顔をして出てきた。

「キリコっ、お前ぇ――」

「すいませんっ、副長に絶対言うなって言われてて―――だけど黙ってるのも悪くて…………

 だから会うとボロが出そうでなので、あまり会わないようにしてたんです……」


「ったく、お前は蒼也の家政婦か。何のために守護としてつけたと思ってるんだ。それにオレが連絡したのは、蒼也がこっちに帰ってきてからだから、嘘ついてたわけじゃないだろが」

 そういえば正月に来た時に、俺がそれとなく訊いても黙ってたのは、そういう訳か。

 この悪魔トリオ プラス(ワン)めっ! 


「あっ―― !!」

 俺は慌ててまわりをうかがった。

 だが、夜の11時近くの公園で、騒いでいる俺達に注意を向けている気配はない。

「安心しろ、ソウヤ。ちゃんとお前が着た時に隠蔽をかけてるよ。近くまで来なきゃわからないよー」

 少女がウインクした。

 良かった。地元だけによけいドキドキしちゃったよ。

 しかし安心したら腹が立ってきた。


「おいっ、今まで何してたんだよっ? まさか陰で俺の事こっそり見てたのか?!」

「そんな厭らしいマネはしてねぇよ。あの仕事――― いくさだったんだが、いや、つい楽しくてな。

 力出しすぎちまって、また力の調整に時間喰っちまったんだ。こっちの亡者でな」

「ハアッ !!? 楽しいって……大変な戦いじゃなかったのか……?」

 だってリブリース様はあんなに酷い怪我したのに…………。

 俺の視線で気が付いたのか、奴が言った。


「コイツはな、敵にやられたんじゃないぞ。一緒に参戦してた火のヴァルキリーだ。

 コイツをボコボコにしたのは」

「イヤっ、恥ずかしいから言わないでっ!」

 リブリース様がしゃがみ込みながら、両手で顔を覆った。

 そんな事にお構いなく、ナジャ様が続ける。


「そうなんだよねー。あたいもキーラ(ヴァルキリーの名)から聞いてるよー。

 戦闘中だってのに、リースがいきなり抱きついてきたって。だから思わず本気で火弾打っちゃったって」

「いや、その…………ほら、戦う女は美しいって言うじゃん? ちょっと見惚れちゃってさぁ。そしたら思わず力一杯反撃されちゃって…………。

 こっちも油断してたんだよねぇ。避けきれなかった……」

 少し恥ずかしそうに、だが全然反省していないこの痴漢男が言った。


「え、じゃあ、あの足は……?」

「ああ、あれはね、ちょっと回復させようと気ぃ抜いて歩いてたら、死にぞこないの悪魔の口に突っ込んじゃったんだ。

 ハハ、ライオンの檻じゃないからね」

 何しろそこら中、死骸だらけだったからうっかりしてたと、ヘラヘラ笑った。

 このヒトはアホなのか――?


「だから、先に帰らせたんだ。もう終わりかけてたし、お前から着信もあったみたいだから」

 奴が俺の右腕のスマホを指して言った。


「じゃあ本当にヤバい訳じゃなかったんだ…………」

 今度こそ体の力が抜けた。

「お前、オレが殺られると、本気で思ってたのか? オレが勝てないのはあるじだけだぞ」

「あるじって…………まさかあんた、自分の主人にも挑んでるんじゃないだろうなぁ?」

「そうだよー、こいつらは戦バカだからね。神々にも戦いを挑んでるのさー」

 呆れ顔で少女が言う。

 いや、それって―――エエッ??!


「蒼也お前、この宇宙の果てがどんなとこか知りたいと思った事はないか? 果てがあるならその先がどうなっているのか。もしくはこの宇宙の外とか」

 街灯の灯りに背を向けて、影になった奴の銀色の目だけが異様に輝きだす。


「オレはな、いつかこの世界だけじゃなく、もっと上の世界を見てみたいと思ってるんだ。

 それこそ神々が来た本当の世界をな。

 だからまず神――主を超える。それが高みを目指す一歩になるんだ。

 ただ、さすがに我が主、器も力も大き過ぎてまだ一回も勝てん。

 まあ焦らずにいつかは越えてやるがな」


 えええっ、お父さん良いんですか? 

 こんな獅子身中の虫みたいな奴を放っておいて。


「おれもだよん。オスクリダール(闇の神)様をもし倒したら、スピィラルゥーラ(運命の女神)様が、相手してやってもいいって言ってくれてるんだ。

 これで戦わなくちゃ男がすたるというものだろう?」

 その女神様、闇神様に恨みでもあるのか? それとも面白半分なのか?


「あたいも上の世界の美味いモノ、食べてみたいからさー。でもそれにはまず、知の神リテラートゥス様の度肝を抜かないといけないのさ。燃えるよねーケケケ」

 いろいろ抜かされてるのはこっちなんだけど。

 って、あんたもかいっ!


「だけど……そんなこと出来るわけないだろ? いくらなんでも……」

 神様は絶対唯一の脅威の存在のはずだし、いくらなんでもその創造物が…………。

「蒼也、オレ達、創世の使徒が『神の傭兵』って言われてるって聞いただろう。なんでかわかるか?」


 え……オレたち? あんただけじゃなくて?

 思わずリブリース様に振り向くと、彼は「あれ、言葉足らずだったっけ?」と言った。

 おい、意味がずい分違ってくるぞ。

 キリコは「私は違いますよ、一緒にいさせてもらっただけで、実力はないですからね」と手を振る。


蟲毒こどくって知ってる?」

 少女が綺麗な瞳を向けて小首を傾げた。

「ええと、確か……壺とかに毒蛇や毒虫とかを入れて共食いさせると、残ったやつの毒性が強くなって、それを呪いに使うとかいうヤツですよね?」

 俺も昔のマンガで読んだだけの知識だけだけど。


「うん、まあそうだよ。あと念とか、エナジーとかもね。

 創世期の話は知ってるよね? 

 あたい達、創世期の使徒はね、その『蟲毒の使徒』とも呼ばれてるんだよ。

 あのアドアステラという閉鎖された中で、初めての仲間同士での殺し合いをしたからねー」

 少女の瞳が深紅色に変化した。


「他所の神々はやらないそうだね。なんでも危険だから禁じ手なんだって。自分たちの創造物が力をつけ過ぎて、反逆でもしてきたら面倒でしょ? 

 しかも制御出来なくなったら大変だからね」

 そう言う黒い男が目や口から、黒い瘴気が立ち昇らせながら立ち上がった。


「前に創世期に、半分くらいの使徒が消滅したって言ったろ。あれは正確じゃない。まともな状態の奴だけを数えたら、20分の1も残らなかった。

 他はほとんど、辛うじて生きてたってだけだ。オレ達がほとんど吸収(喰った)しちまったからな」

 そう言って白髪の悪魔は白目を黒くさせて笑った。



「…………ソーヤ、私は違いますからね。刃向かったり出来ませんから」

 いつの間にかキリコが傍に来て、唖然としている俺に囁いた。

 本当か? 

 お前もあっちの仲間じゃないのか。変化したりしないのか?


「だけどねー、さすがにあたい達を創った神々は、他所とは断然、格が違うのさ」

 少しウットリするように少女が遠くを見る。

「そうそう、この我が儘を聞いてくれる度量も持ち合わせててね」

 黒い霧を引っ込めた男が軽く肩をすくめてみせた。


「「「それでこそ 我が主っ!!」」」

 一歩後ろで、キリコも頷いている。

 何なんだよ。こいつら………………!?


「さて、しばらく時間を無駄にしちまったから、明日からまたしごいてやらないとな。まったくこの調子だと、千年くらいじゃ時間が足りんかもしれん」

 そう言ってキリコが差し出した、あの長い帯のような紙をビラビラと、引っ張るように流しさ出した。


「ハアァーッ??! 何言ってんだよ。勝手にいなかったくせに。それに俺の一生、なんで訓練に明け暮れなくちゃいけないんだよっ!」

「お前、自分のことをすぐ忘れてるだろ。お前はあの方の要素エレメントを持っているんだぞ。つまりオレ達と同じような力を持つか、それ以上になるか、これからの訓練次第なんだ」


「そんなの――、どう生きるかは俺の意思で決めていいんだろ?」

「もちろんだ。だが、最低でも基礎だけはちゃんと作らないと、力と体の歪みができて心体ともに崩壊するぞ。能力がもう発現しちまってるんだから、動き出してる力の成長は止められん。

 少なくとも成長期が終わるまでは、正しく導いてやらんとな」


「まさか、それって、俺が魔法が使えるようになったからか―― ?!」

「その通り」

 サメ男が今までの中で、一番底意地の悪そうな顔でニンマリ笑った。


 なんてこった…………。

 あの時初めてのギルドで、言語スキルを貰った時か? それとも空間収納が出来るようになった時か?

 とにかく俺は自分で知らないうちに、この悪魔の契約書にサインしてしまってたんだ。

 

 ……………………もう後戻り出来ない……。


「俺が本当に自由になるには……強くならないと駄目って訳か……」

「おお、やる気が出たか? 別に今でも自由だぞ。嫌なら全て忘れて全部リセットすればいい。

 元に戻るだけさ。全て忘れてあの頃のようにな」


「このヤロー……。俺がそれが嫌なの知ってて言ってるだろ……」

「そうだ、過去を振り返るな。過ぎ去った事より、これからどうするかを考えろ」

 奴が俺の背中をバンバン叩く。


「痛いって! ったくなんで父さんはよりによって、あんたなんかを―――」

 俺は溜息をついた。


「…………あんたもあんたなら、父さんも父さんだよな……。

 こんな自分の寝首を、いつ掻くかわからないような奴を野放しにしてるんだから……」

「さすがだろ。オレ達ファミリーのボスは」

 そう言って俺の首にがっしり腕をまわしてきた。


「オレもお前が兄弟で良かったよ。からかい甲斐あるしな」

「この野郎~~~」


 あんたには、いてもいなくても振り回されっぱなしだよ。

 おかげで癒しの水はとっくに飲み尽くしちまったし。

「言っとくけど相方なら、もうちょっと俺の意見を尊重しろよな。でないと本当にリセットするからな」

「もちろんだ、相棒」

 そう言った奴が真剣な顔をするのを見て、俺は急に可笑しくなって吹き出してしまった。


「なに笑ってんだよ」

「…………スマン。だって、あんたがマジな顔するから……」

「あ゛あ゛?!」



 こんなオラオラ系の奴が、なんで俺の守護神ガーディアンなんだろうと思うところもあるが、少なくともこいつは俺を置き去りにするどころか、一生引っ張りまわす気なんだな。

 俺はあらてめて奴に向き直った。


「悪かった。とにかく これからも宜しくな、相棒」


ここまで読んで頂きありがとうございます!

おかげ様でなんとか第2章を終わりにする事が出来ました。

次回から第3章となります。

どうかこれからもお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

******************************

昔、TVでダカール・ラリー耐久レースを見て。バイクで砂丘を走れるんだと

あらためて知りました。四輪とのチームでしたけど。

車のナビゲーター(いや、運転手だったかな?)が、思い切り大声で歌っていたのが印象的でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] いよいよココから本格的に物語が始まるのかとワクワクしていましたが… 結局変わらずなのですね。 死ぬ必要はないですがそのまま彼は退場した方が良いのではないのかと思いました。 彼が嫌いなわけでは…
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