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もふもふ!! WONDER SISTERS  作者: 不破わらび
2/2

ほかほか日和

「さっむーい!!」

ありあは思わず声を上げた。暖房の効いた校舎から出た途端,冷たい風が頬を突き刺す。

「この冬一番の冷え込みになるってのに,そんな格好してるからでしょ」

ベガはため息をついた。「そんな格好」というのはこのような格好である。防寒具はブレザーの下のカーディガンだけ。シャツの首もとはボタン一つ開けている。おまけに膝上まで折ったスカートと短い靴下を履いている。

「だって…制服が隠れちゃったら可愛くないじゃん」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう」

ありあは「可愛い」と評判の制服を防寒具で隠すのを嫌がる。それに比べてベガは対照的だ。厚手のカーディガンとダッフルコートを着込み,もふもふしたマフラーと耳あてで顔を包んでいる。両手には手袋をはめ,スカートは膝下でタイツにブーツといった徹底ぶり。

「あんまり冷やすのは良くないし…風邪をひくわよ」

温かさの残るマフラーと使い捨てカイロを渡す。

「ありがと。ベガちゃん」

ベガとカイロの温もりに寒さをまぎらわせた。


交差点で立ち止まる。いつもの道とは逆方向だが,少し先にコーヒーチェーンの看板が見えた。ありあは甘えるような声を出す。

「ねぇ,ちょっとあったまっていかない?あたし,今週出たばっかのチョコフォンデュ・ラテが飲みたいな~」

「そうね。私も久しぶりに行ってみようかしら」

「やった!」

信号を渡るのを止め,看板に向かって歩いていった。

おやつ時をとっくに過ぎているからか,イートインコーナーはがらがらだった。各自のトレーを窓際のテーブルに置く。ありあはチョコレートフォンデュ・ラテとミートパイ,ベガは抹茶ミルクとショートケーキを選んだ。

「いっただっきまーす」

「いただきます」

息を吹きかけながらカップに口をつけると,冷えた身体に甘さと温かさが染み渡る。

「温まった?」

「うん。あったまるし,すっごくおいひい…って,あふっ!!」

ミートパイの中身は熱々だった。

「気をつけなさいよ。ほら,お水」

「うぇ…舌ヤケドしかけたあ」

「ゆっくり食べなきゃダメよ」

ショートケーキを切りながらベガは苦笑する。

ありあは気を取り直して,半分に割ったミートパイにかじりついた。とろとろとチーズがお皿に流れ落ちる。

「ん~ひあわせ~」

満面の笑みで頬張っているのを見て,少し羨ましくなった。

(今度作ってみようかしら。ミートパイ…)

等と考えながら,クリームに包まれたイチゴを味わった。


外の寒さも忘れてしまいそうな程,店内は暖かかった。窓の向こうには曇り空が広がっている。

「雨降りそう…傘持ってきてないのに」

「昨日テレビでは初雪かも,って言ってたわよ」

「初雪!それならちょっと楽しみかも」

「もっと寒くなるわよ」

「雪は楽しいからいいの」

食べ終わったトレイを持って,二人は返却口に向かう。

「温かいのでもお持ち帰りしておいたら?」

「ん~そうだねえ」

ありあは返却口からカウンターへとスライドした。

「じゃあ,そこで待ってるから」

ほぼ完全防備のベガにとっては何てことない寒さである。

(久々の寄り道も悪くないわね)

予報通り,雪がちらちらと舞い始めている。

「お待たせ!!」

紙コップを2つ両手に持って,ありあがやって来た。白い息を吐きながら,片方を差し出す。

「はい。ベガちゃんのぶん.寒かったでしょ」

「あ…ありがとう」

「マフラーとカイロを貸してくれたのと,普段お世話してくれてるお礼!」

「別にそんな…良いのに」

「いーじゃん。こんなときくらい」

「そう…じゃあ,いただくわね」

手袋越しに伝わってくる熱に,笑みがこぼれた。

「ありがとう。カイロより温かいわ」

「冷めないうちに飲んでよね~っぶぁっちぃ!」

「また何やってんの」

「うぇ…今度はヤケドしちゃったかも」

ひーひー言いながら蓋を閉める。

「懲りない子ねえ。雪でも舐めといたら?」

「そっかあ。その手があった!」

口を開けて空を仰ぎだしたのを,慌てて止める。

「おバカ!冗談よ!!みっともないし汚いからよしなさい!」

「へへ…さーせん」

頬を真っ赤にして笑うありあに,ベガはため息をついた。雪の粒は段々と大きくなってきている。

「さ。早く帰りましょ。あんまり道草くってたら風邪ひいちゃうわ」

「この調子なら積もるかなあ」

「どうかしら。バスや電車が止まらないと良いけど…」

「雪うさぎ,作りたいんだもん」

他愛の無い話をしながら帰路につく。二人の足跡には一粒,また一粒と雪が重なっていった。

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