第七話 日常
「今日一日、どうでしたか?」
やっと長い一日が終わった。大学で学んだことがほとんど生かされなかった。緊張で上手く頭も回らず、ミスを繰り返してしまったような気もする。
「はい、ありがとうございました。なんか、今日はミスばかりしてしまって、この仕事が僕には向いていないんですかね?」
「誰でも最初は同じですよ。私も最初の内はミスをするものです。」
そして僕は家に帰った。
大学に通っている間は実家や石川の会社で暮らしていたが、今の僕はこの病院の近くのアパートに暮らしている。できる限り自炊をしようとはしているが、今日のように疲れた日はどうしてもコンビニ弁当などで済ませてしまっている。
家に帰ると、必ず最初にすることがある。靴を脱ぐ・・・ではなく、このロボットからログアウトすることだ。充電器は石川が設置してくれた。「そろそろ会社から出勤して貰う訳にはいきませんから。」と言っていた。
ただ、今僕が使っているこのロボットは近い将来、一般の身体的障害者たちが使う体で開発しているので、こんなにお金を使うのでは使い物にならない。なので、石川はいかにエネルギーを使わずに、もしくはいかにエネルギーを生み出してこの機械を使うかが今の課題だと言っていた。
プルルルルルルルルル
電話が鳴った。石川のようだ。
「何ですか?」
「どうも、石川です。」
そんなことは分かっている。
「一日目の出勤いかがでしたか?大学の中ではたまに充電が切れるなどのことがありましたが、予備バッテリーを持って行くことで改善が出来たでしょう?」
「それでも、お金がかかることには変わりありません。もっと改善できないんですか?」
「確かに、このままだと普通の人が買って使うには高すぎますね。しかし、よほどの技術革命でも起こらない限り、難しいですね。」
僕は時々モニターをしながら、その給料的な感じでロボットを動かすための莫大な電気代をまかなっている。そのため、こちら側の意見もよく言う。
「そもそも、最近はパソコンを使った仕事が多いので、仮想空間とパソコンを接続して仕事をするだけでも良いのではないでしょうか?」
完璧な意見を言ったつもりだったが、以外にも否定的な答えが返ってきた。
「それでは根本的な解決にはなりません。仕事をこなすだけならそれだけでも良いかもしれませんが、日常のことを考えると炊事も出来ませんし、運動をすることも出来ません。本物の体も動かさないと衰退化してしまいますが、人間というのは欲望的です。一つの物を手に入れると、さらに進んだ何かを手に入れようとしてしまいます。」
ごもっともである。一つの物を手に入れて満足するようなら、ここまでの苦労をしないし、技術も進まなかった。それが人間と良いところでもあり、悪いところでもある。
「それでは、また何かあったら電話をかけてください。」
「いや、かけてきたのあん・・・・・・もう切れてるし。」
幸い僕が使えないのは足なので、基本的に日常で苦労することはない。運動をしなければ、体に被害が加わるし、一人暮らしなら体を動かしてくれる人もいない。そんなことを考えながら、僕は深い眠りについた。
定期テストが終わったので、帰ってきました。大分不定期でしょうが、末永くお付き合い下さい。
テンポの速い話なので、なぜこうなったの?などがあったら、僕のTwitterか、感想に書き込んで頂ければ、本編にその話が載ることがあります。よりよい小説を!!
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