第八話 初手術
2019/6/10更新
~研修三日目~
・・・と言ったところで、研修期間は2ヶ月。まだまだある訳だが・・・。
研修医は例え外科だけを目指していたとしても、内科、精神科、小児科などのほぼ全てを回らないと行けない。外科を目指していたとしても、内科についての知識は無ければ行けないし、精神的なことも知っておかなければいけない。
僕は体の充電を確認してから自転車にまたがり、病院へ出発した。
「お、もう来たのかい?」
病院に入ると、高橋先生がタブレット端末を確認していた。あのタブレットには入院している患者のほとんどの情報が入っている。
「はい。なかなか眠れなくて・・・。」
大嘘である。めっちゃぐっすり寝てたわ。なぜこのようなことをするのかというと、研修を必死にやっている感を出すためだ。
「その割には、ものすごく元気そうだけどね。」
・・・・・・少々焦った。なに?医者って超能力者なの?
「別に、何人もの患者を診てきているからね、顔色からも察しなければいけないこともあるんだよ。」
・・・・・・また見破られた。この人に逆らったらヤバいのかのしれない。
「そ、そういえば、今日は、気胸の患者が手術の日ですよね?」
とりあえず、話題を変えることにした。
「大丈夫か?そんなにうろたえて?まぁ、その手術はそこまで難しい手術でもないから、安心していていいよ。ところで、手術を見てみるかい?見ないという回答権は君にはないけれど。」
「じゃぁ聞く必要無いじゃないですか。もちろん見ます。」
「見るだけじゃなくて手伝って貰わないと困りますよ。」
!!いきなり看護師の七瀬さん?先生?どっちで呼べばいいんだ?が入ってきた。
「ただでさえ病院という職場は人手不足なんです。女性は忙しい時に産休をとってしまったりしてしまうんですよ。」
「・・・それ女性の君が言う?ふつう。」
このふたりは仲が良いようだ。しかし、女性が・・・と言うと差別のように聞こえてくるが、「仕事を休む」という点では、やはり様々な場所に危害が加わる。さらに、子供を預けておけるような場所も保育士不足というせいで、なかなか見つからない。だから、小さい子供を家に一人で置いておく訳にも行かないし、かといって仕事を辞める訳にもいかない。そんな板挟みの中女性は過ごしている訳だ。
「黒崎くん、国会議員になって日本を変えてきてくれない?」
「いや、そうしたら今度は医者が減りますよ?」
とかいう緊張感のない話をしながら、僕の仕事が始まった。
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「それでは、術式を始めます。」
気胸の手術が始まった。今回の手術は、肺に出来た風船状の「ブラ」と呼ばれるものをとるだけの手術なので、そこまで難しい手術ではないのだが、医療大学で人体解剖はやったというものの、やはり人の体の中を見るのは気持ちが悪くなる。まぁ、こればかりは経験を繰り返さない限りどうしようもないことなのだが。
全身麻酔をされた患者は、深い眠りについている。まずは気胸の原因となる肺嚢胞を自動縫合器によって切除。今回の患者はそこまで肺嚢胞が多くないので、そこは良かった。内視鏡で見ているので、少ししか見せて貰うことが出来なかったが、貴重な体験ではあった。
一時間ほどで手術は終了し、僕はほっと一息ついた。こんなことをたくさんこなしてきた医者をどれだけ尊敬すべきなのか分からなかった。
「初めての手術、どうだった?」
高橋先生が話しかけてきてくれた。
「とても緊張しました。でも、医者を目指すと言うことが、どういうことなのかを思い知ったような気もします。」
「ハハッ何をいまさら。医療学校でそれ位のことは学んでおかないと。しかも、この手術は何度も言うけど、そこまで難しい手術じゃないからね。でも、こんな簡単な手術くらいはいずれロボットがやるようになるんだろうね。ロボットはミスをしないから。」
「でも、ロボットはミスしなくても、それを作った人間はミスをします。何らかの回路を間違えただけで、こんな簡単な手術でも物事によっては人を死に至らしめる可能性だってあります。」
少し強めに言ってしまったせいで、ロボットの力に頼っている側の僕がロボットを否定しているようになってしまった。
その言葉に高橋先生は肯定するように言う。
「・・・・・・そうだね。僕も仕事を減らしたくないし、人間が出来ないことをロボットがやるべきだと思うな。人間が出来ることをみんなロボットがやってしまったら、それこそ人間がロボットに支配されてしまっているのと変わらない。そんな世界は御免だね。」
くだらないような、大事のような、もしかしたら本当に起こるかもしれない話をしてから僕は席を立ち、後片付けを始めた。
「初手術」と言っても、主人公は基本見ているだけだったし、数行でまとめられてしまっています。気胸については最初は簡単な手術にしようと思って出てきたのが気胸でした。この病気は、手術自体は簡単ですが、少し失敗すれば肺炎にも繋がる怖い病気です。
テンポの速い話なので、なぜこうなったの?などがあったら、僕のTwitterか、感想に書き込んで頂ければ、本編にその話が載ることがあります。よりよい小説を!!
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(@Cain06892403)