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異能力者が溢れる世界を作ってみた  作者: d-novel
第九日目・第十日目
73/73

邯鄲の夢 ~ エピローグ

コンサートは終わった


俺は観客のいなくなった駐車場の隅に、一人で力なく座っていた


櫓はとうに壊され、仮設ステージの撤去が進んでいる


首相周りはとうに帰ったが、仮設の楽屋では、女の子たちが北村さんの愛犬くるみを囲んで打ち上げをしていた



俺は、一人になりたくて、こんな目立たない隅まで来て、座り込んでいた


そう言えば、さっき、妻奇も見かけた

昨日、電話で釘を刺しがてら、今日のコンサート告知CMを見るように言っておいた

少なくとも、現時点で、妻奇は殺人犯とはなっていなさそうだし、無駄に死ななくていい命が助かったなら、それでいい



それから、ぼんやりと、この十日間のことを考えていた


<異能力者の溢れる世界>


俺が作った世界


だったよな



視界の外から、一人の男のものらしい足音が近づいてくる

足音は目の前、俺の斜め前で止まった

そのまま男が、俺に声をかけてきた


「もう十分だろ」

男の声は、三嶌伸一のものだった


「そうだな」

俺は下を向いたまま答える


情けないことに、本当に自分の息子なのかどうか、定かではない

三嶌和子、伸一の母親は、そういったことは、一切口にしなかった



「シーちゃんから、だいたいのことは聞いた」

あぁ、今日のシーちゃんの動きは、伸一の指示だったんだな


「僕は自分の存在を消すつもりはないよ」

唐突に伸一が俺に告げた


「そりゃ、そうだな」

「だけど、いつ吹っ飛ぶか分からないこの世界は、元に戻させてもらう」

「任せていいのか」

伸一の生い立ちを知った俺は、過去に戻って、いくつかアドバイスを与えた

そして、能力が授かる日のための準備をしておくように言った


こいつは、あまり真面目には聞いていなかったはずだが、俺に手紙を寄こしたということは、何らかの準備をして、対策を打っていたのだろう


「その前に、あんた、なんか隠していることないか」


隠してることかぁ

あり過ぎるかもなぁ


「時間を巻き戻すのか?」

「それじゃ、僕の存在が危ういんじゃないの?」


そう、俺が、過去に戻ってやった事は、結局、俺が能力を得てからの十日間でやったことのうちでしかない


「お前は、何ができるんだ」

「あんたが隠してることが、分からないと、使えないよ」

何らかのリセット能力か



「あんたなんだろ」

「何が」

こいつどこまで分かってる


「この一連の騒ぎの大元の犯人はさ」

「なぜ、そう思う」

「あのなぁ、僕は探偵やってたんだぜ」


単純な探偵の経験値は俺より上っていうわけか


「それに、パラドックスの問題がある」

「タイムパラドックスか」

「でもそのパラドックスも、第三者が介在していたとしたら、矛盾がなくなる可能性がある」


第三者だ?!


すっかり忘れてたが、神を引き継いだとは言え、俺が調子に乗って、行ったり来たりしていた過去は、あの爺さんの管轄だ


てことは、当然、あの爺さんは全部承知の上のことじゃないか


都合良く誘導されただけか


結局、俺は、伸一に、自称、神という爺さんとの出会いと、10日前に、俺が仕込んだ内容を話した


「しかしさぁ、よく考えりゃ、こんな結果になるのは、読めただろう?」

「月を落とそうとする奴が出てくるとかか」

「そんなことじゃない。このまま、放置すれば、三日も待たずに、日本は滅ぼされるだろ」


あぁ、そうだ

今、全力をあげて、外交で全世界の疑念を封じ込めているんだった


未然に終わったとは言え、月の軌道まで変える奴、それどころではなく、月を地上に落下させようとした奴がいたんだ


「まさか、まだ、何が起きても、自分が端から処理して歩くつもりか」

いや、俺ももう疲れたよ


うつむいたまま、じっと、伸一の足下を見つめる


「ということで、状況は分かったから、オヤジのしでかしたことは、僕が後始末する」

オヤジと言ってくれるのか


「あぁ、ありがとよ」

俺は力なく、呟き、初めて、伸一の顔をまともに見た




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




気がつくと、あたしは、元のオッサン姿で、公園のベンチに座っていた


あの爺さんと出会った公園


暑いなぁ


と言うことは、あの日に戻っているのか?


「全部、夢だったのか・・・」

邯鄲の夢の故事を思い出した


十分に別のもう一生を送ったな


大金持ちにもなってみた

えらい人たちともずいぶんと知り合いになった

冒険もした

そして、どうやら息子も作った


結婚だけは、また、しなかったな


邯鄲の夢の通りの夢オチなら、その辺に仙人みたいな爺さんが・・・


「おい、お前さん」

「おー、びっくりさせないでくださいよ。いい夢見ました」


「何を言っとるか。いやいや、この十日間、わしも結構、楽しませてもらったぞ」

「ええと、爺さん、じゃなくて、神様なんだっけ」

「なんだっけじゃないぞ。まぁ、お前さんも立派な息子が持てて良かったじゃないか」

「あいつは、存在するんですか? てことは、今日は、あなたに逢った日じゃないんですか」


「今日は、コンサートがあったじゃろう」

「えっ?今は、今日の続きって、ことですか? それって、まずいんじゃ? 伸一は何をしたんですか」

「いい思い出だけを残す。そうしたみたいだな」


はぁ、てことは


「無駄じゃよ」


能力は、無くなっていた


「じゃぁ、みんなは」

「まぁ、息子の判断に任せるんだな」

「あっ、そういやあたしも、自分のとこの年寄りのこと忘れてた。たまには、顔見に行かないと」

「そうそう、それが、いいな」


伸一にとっては、祖父母になるのか?


爺さんはいつの間にか、視界から消えていた


「あっ、ちょっと」

聞きたかったことがあったのに


結局、俺は、あの爺さんの退屈しのぎに操られていただけなのか?


あの爺さんが、また、今まで通り、神様に収まるんだよな



結局、どこからどこまで現実だったのか


あたしは、自分の頭を叩きながら、ヨロヨロと元々自分が住んでいた部屋へ帰った




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



<<短いエピローグ  ちょっとした蛇足>>




一応、十日ぶり?になるのか


この真夏に放置していた部屋は、ムワッとしてた


空気の入れ替えだけして、気になっていた近くに住む、年老いた両親の所に顔を出すことにした


自分では、新聞を取ってないので、両親の家でこの十日間の古新聞でも、じっくり読んでみたかったりもした



「随分、顔を出さなかったねぇ、忙しかったのかい」

「あぁ、とってもね」

両親はなんとか元気にしているようだった


趣味人の父親と、いい歳して、オカルトや超常現象の大好きな母親

そういや、母親はなんで、オカルトに興味を持ったんだったっけ


古新聞を端から読んでみた


すごい辻褄合わせが起きてる


アイドルイベントへの襲撃事件が起こり、この一週間、活動を自粛するアイドルが相次いだとか

株の乱高下は、日本と関わりなく、起こっているみたいだ

暴力団抗争は普通に起きていたり、未解決事件だったものが突然解決したりはしていた


ただし、能力騒ぎのことは、すっぽり落ちている


が、学生が新タイプのアトラクションを、テーマパークと共同で開発!


とか、落としどころが、微妙なものもあるみたい


能力が暴走して自爆しちゃった人とかはどうなったのかなぁ


まぁ、いいや、あたしには、また、あの先の見えない日常が始まるだけ

伸一に言われた通り、もう十分楽しんだ


「和子は、どうしてるかねぇ」

母親がつぶやく


つぶやく、えっ?

確か、妹が、神隠しにあって行方不明になった

現場が、意味不明のカードで装飾されていた・・・


あたしだ


母親の影響を受けたあたしが、魔が差してやったこと


あそこで助けた赤ん坊は叔母だ。。。。

その不思議な現象を見た母親はオカルトにはまったんだった


まだ、パラドックスが残ってるのか?


和子って、和子って、まさか


あの爺さんは、俺に何をさせたかったんだ



もう何も考えないことにした


------------------


あたしは、自宅に戻る


元々のあたしの携帯に、いくつか着信やら、メールが入っていた

結果的に全部無視してしまっていたわけだから、こりゃ当分、仕事は来ないな



それから、一週間ほどは、何をする気にもならず、引きこもりな生活を続けた



そんな時、伸一から手紙が来た



伸一は、あたしが住んでいたマンションに、今、シーちゃんと美虹ちゃんと一緒に住んでいるんだそうだ

シーちゃんのこと、ずいぶん待たせたものな

幸せにしてやってくれ


探偵事務所を再開するようで、秋鳴を正式に採用したそうだ

ハチロクは就職祝いに彼女のものになったとのこと

あっ、でも、ただではないらしく、給料から少しずつ、月賦のように引かれるみたいだ


岩谷さんは夏期休暇が終わったと言う形で、仕事に復帰


カイコが結局、引退宣言をするようだ

自宅は引き払って、岩谷さんと同居するという所までは読めたが

なんと北村さんの付き人をするらしい


すっかり彼女の歌にやられてしまったらしく、また、北村さんも突然有名人となって、

仕事をさばくのに、取りあえず付き人が欲しかったらしい


それで良いのかカイコ(笑)


それと銀行口座を確認しておけとのことだった



あたしの方は、引きこもりのまま、コンビニやら、近所の中華料理屋で食いつないでいたが、財布に千円しか無くなっていたこともあって、早速、銀行に行って、残額を確認してみた



えっ、伸一の奴、こんなに金を残してくれたのか


年寄りの世話をしても、一生、遊んで暮らせるくらいあるな


現金な物で、元気が出てきた


よし、チョッと気合いを入れて、部屋の掃除でもしてみよう



そして、俺は見つけてしまった



suicaみたいなカード



あれ?




あー、なんとか終わらせられた


つたない文章を読んで頂いた方、本当にありがとうございました

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