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異能力者が溢れる世界を作ってみた  作者: d-novel
第九日目・第十日目
71/73

パラドックスでしか終われない

昭和二十年三月

一人の幼女が、今にも命の灯火を消そうとしていた


戦中とは言え、まともに看病できれば救われる命


しかし、部屋の奥に寝かせられたその子の周りには誰もいない


父親はもちろん、母親も外出しており、襖一枚隔てたところで、やはりこれも幼女と言って良い、その子のお姉ちゃんが、昼寝をしていた



俺は、寝ている女の子の顔に不思議な既視感を感じたが、とにかく、目的の幼女を抱き上げ、何かしらの超常現象が起こったかのように、その子が寝ていた周りに、意味ありげな紋様を書いたカードで円を描く


最後に昼寝をしている子に、布団を被せると、その場を後にした



◇◇◇◇◇◇◇◇



明日に控えたイベントの前に、俺は過去からの伝言のことが急に気になり、宿泊先のホテルを抜け出して一回自宅に戻り、もう一度伝言を読み返した



最後に読んだのは水曜日

毎回、その日までに必要な文言しか確認しない


その時は、三嶌伸一から来た手紙に従って行動した

手紙で頼まれたのは、美虹ちゃんという赤ん坊を預かってくること、その養父母への手紙も同封されていた


更に、その預かった赤ん坊は、同時期にシーちゃんの部屋に置いてきて欲しいという旨と、それに関する伸一からシーちゃん宛のメモも一緒に入っていた


『事情があって、この子を保護して欲しい。僕が迎えに行くまで、自分の子として育ててくれないか』


また、随分と都合の良い伝言だが、伸一のシーちゃんへの絶対の信頼を伺わせるメモ書きだった


指定された家と指定された日時は、明らかに震災直前の、被害の大きかった場所

結果的にこれがミコちゃんの救出につながることは予想できたので、あまり疑問を持たずに行動した



これまでの伝言をまとめると


最初が先週の土曜日


マンション購入は〇〇年〇〇月

建て替えは〇〇年〇〇月

認証システム、適宜


資産形成、後日


と書かれていた


今までのところ、これが一番詳しい伝言になるのだが、その先は、日付と曜日だけ書いてあり、次のページにはたった一言、便箋一葉に大きく書いてあるだけという繰り返し



日曜日が、その資産形成


わずかばかりでも説明があったのは、自宅マンションのことだけだったので、あとは、好きにやらせてもらった



月曜日が人脈作り


一日置いて、三嶌伸一の戸籍を作ったタイミングで、


水曜日

手紙が着く


そして、今日、土曜日


再び、手紙が着くとあり、

更に、今、読んでるこの伝言を書いて、届けると書いてある



なんかおかしくないか?



でも、確かに、どこかのタイミングでこの手紙を書かないことには、この手紙が存在しないことになるわけだから、書かざるを得ないよな


しかし、一回目の今日は、この伝言のことすっかり忘れていたのに、今さっき急に思い出して、自宅に見に来たとか、そんなんでいんだろうか


だいたい郵便物が来ていることにも気がつかなかったぞ


とにかく、先に伝言を書いてしまった方が良かろうと、便箋を取ってきて、さて書き写そうかと思ったら、どこに行ったんだか、元の伝言が見当たらない


簡単な伝言だし、うろ覚えで、ちゃっちゃと書いて、とりあえず、過去に置いてきた



現在に戻ってきてからすぐに、ポストを覗きに行って、手紙があることを確認

消印もなく、切手も貼ってない

再び伸一からの手紙だった



え、また赤ちゃん救出?

しかも戦中?


そんな時期なら、子どもだってどれだけ亡くなっているか分からないのに、敢えてその子を人攫いもどきで救わないとならないみたいだし、更に病気らしく、どこか病院に預けろだと


しかし、戦中の病院に預けてもなぁ


まぁ、何か意味があるんだろうが、そこら辺は自分で判断していんだろうな



兎に角、奴の言う通りに動いてみた


変な演出はご愛敬


昔に行ったついでに、何とはなしに、テレビ放送が始まった年を見てみたくなったので、昭和二十八年へ飛んでから、適当な病院に、赤ん坊を預けたというか、押しつけてきた



『今、女の人に、少しの間だけ子ども抱いてて、と言われて預かったんですけど、この子具合が悪いみたいなのに、一向に、その女の人戻って来ないんですよ』

と相変わらず適当なこと言ったら、みんな心配して、面倒をみてくれた


いい時代だなぁ


みんなが気を取られているうちに、とっとと消えた俺は極悪人に思えるが、伸一の手紙には、それ以上のことは書いてなかったんだから、多分、それでいんだろう




そうして、TVの置いてあるところを探して、しっかり第一回放送とかいうものを暢気に見て、それから現在に戻ってきたのだが、俺は突然ゾッとした



ちょっと待て、三嶌?


俺、何で、三嶌なんて名乗ったんだ?

本名と、ちょっと似てるから、適当に名乗ったんじゃなかったのか?



和子!


確かに、名字なんかで呼んだことなかったし、周りからもカズちゃんとしか言われていなかったが

三嶌和子のことを、今の今まで、何故忘れていた?



古い昭和グッズが欲しくて、しばらく昭和四十年代で遊んでいた頃だ


寝ぐらにしていた、当時の新築マンションの目の前の食堂で働いていた子

何度かデートした


その頃の女の子は素朴でほっこりしたもんだが、何がきっかけだったか、現在、倉庫代わりに借りている建物に、戦利品を置きに戻って来て、その後、別の時代に飛んでたりしたら、それっきり忘れてしまっていた




俺はあわてて、文書偽造屋の竄愧(ざんき)に適当に作らせたはずの、三嶌伸一の戸籍謄本のコピーを確認する


三嶌和子


何がどうなってる


まさか、本当に俺の子か?

和子が一人で育てたのか?


明日を控えて、こんな気持ちでは、とうていいられない


俺は、贖罪のため、また過去に飛ぶことになった



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



クラッと、大きなめまいを感じた


三嶌伸一は、どこか不安定だった自分の人生の中の、欠けていたピースがはまったことを感じた





これでもう大丈夫


僕が僕でいられる


ここから先は、亡くなった母に聞いた話


病院に捨てられた子だったこと

しかも、すぐに手当をしないといけないような病状だったこと


肌着に縫い付けられていた出生日の矛盾

昭和二十八年当時、明らかに三才児ぐらいの子の生年が昭和十七年となっていたこと


こんな時空を越えた訳の分からないことをするのは、あんたしかいない

しかも、肌着を確認したりしない適当さ

戦中は、たぶん、こうやって何かしら名前を縫い付けたりしたんだろうに


そして、決定的なこと

僕の書いた日時と住所を書いたメモが、ご丁寧にも赤ん坊にくっついたままだったこと


いったいぜんたいどうしたらこんなパラドックスを起こせるんだ


なんで、このメモで、赤ん坊に関することを調べられなかったかというと、昭和二十八年当時には、もうその家は跡形もなかったことと、

時代的に、そんな人捜しに手間をかけられなかったことがあったらしい


そのメモは一応、何か自分の出生につながるかもしれない情報だと、母が最後まで持っていたメモだが、最後はボロボロ

でも、何度も聞かされた話だから覚えていた

不思議なことがあるのよと


それが僕自身の書いたメモだったと、今になって急に気がつくというのも、僕自身もどうかしてる



幸い母は、親切な人、僕のおじいちゃんとおばあちゃんになる人にもらわれたらしいが、学校は中学までしか行かせてもらえなかった

結局、僕は、この祖父祖母には会っていない


で、なんで、あんたが、またそこに出てくる

あんたは、自分が助けた赤ん坊と大人になってから付き合うとかおかしいだろ


あんたとは子どもの時にあった記憶はない

時々ふらっと来て、母に金だけ渡していたような印象だ

母は強い人だったし、あんたが結婚に向くような男だとは思っていなかったようで、シングルマザーを貫いた

おそらく必要以上にお金も受け取らなかっただろう


まぁ、その、あんたの金のお陰で大学までは出られた


大学の卒業式の直前、母が亡くなった


母の葬式の時、初めてあんたを認識したが、バブル崩壊直後で、仕事も決まらず、心配をかけたまま母が亡くなって悄然としていた僕に、

海外でも行って色んな物を見てこいと資金援助してくれた時は、つい誘いに乗ってしまった


二年ほど好きなことをして戻ったときに、あんたから、何かしてみたいことがあるかと聞かれて、半ば冗談で探偵とか言ってしまったために、

それは良いと、警察関係者や司法関係者らを紹介されて、特殊な免状も取らされて、探偵になるなら、この資産は全部お前のだと、莫大な財産を譲られた


その当時は、ありがたかったし、難事件の時は、すぐにヒントをくれたり

なんで、そんなことが分かるのか尋ねると

『俺には不思議な能力があるんだよ』

とホラ話ばかりする変なオヤジだと思っていた


当時女子高生だったシーちゃんに出会えたのは、今になって感謝している

まさか、あんたみたいに、シーちゃんをほったらかしにしてしまうことになるとは

半ば、あんたの変な予言のせいと、シーちゃんは子どもにしか思えなかったからなんだが


それが、今年になって、美虹ちゃんの事件をきっかけに、自分が一番信頼しているのがシーちゃんだったことを思い知らされた


その後、あんたの予言の日まで、自分が願うべきことを考え抜いた



で、あんたは、もう充分楽しんだよな


明日は、せいぜい協力するよ



そして、待たせたな


シーちゃん



◇◇◇◇◇◇◇◇◇




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