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異能力者が溢れる世界を作ってみた  作者: d-novel
第九日目・第十日目
69/73

空中楼閣


お昼前に臨時ニュースが流れた


月の軌道に異常が見られるため、今日の午後は警戒を要するので、外出先の人間は速やかに帰宅するようにとのこと


ラジオや携帯の速報、電車や街角の電光掲示板にも、ニュースは流されているようだ


そして、更に十二時半になると、可及的速やかに帰宅せよの通達


報道機関にも、最低限の人員を残して、帰宅するよう通達が流れているとのこと



街にはサイレンが鳴りわたり、役所の放送が流されて、商店も次々に店仕舞いを余儀なくされているようで、ほどなく、美女木さんも現れた



「待ってたぞ」

「ほ、ホントに何か大変なことが起こるんですか」

その問いかけに答える前に、TV画面が切り替わり、首相が、登場した


『国民の皆さん。すでに対策は取っておりますが、現在、月に異常な動きが見られております。

お昼の時点では、まだ、この事による被害は報告されておりませんが、皆様には、これからの外出は控え、災害情報にご注意の上、避難勧告がなされた時のため、速やかに移動できるよう、動きやすい服装で待機ください。


先も、申し上げました通り、すでに充分な対策は施しておりますので、軽挙妄動は慎み、デマなどに惑わされないよう、公式な情報発表をお待ちください。


なお、公共交通機関に関しましては、現在、増便体制をお願いしており、午後二時までは、正常運転していただくこととなっております。

慌てず、指示に従って、速やかに移動ください。


繰り返します。。。。』



 月、月なぁ、

「ねぇ、まさか月が落ちてきたりしないよね」

「シーちゃん、それって、どの位の人が、想像すると思う?」

「私も、それあると思います」

「カイコも、そう思うか。とすると、意外に早くにパニックが起きるな」

「しんじくんは、どう、思ってるの?」

「俺が、思ってるのは、官邸が情報を小出しにして来るのが、計算されたもののはずだ、と言うことぐらいだな」


TVには、見たことのないおばさんが、とても優しげな声で語りかける場面になっている

ヒーリングミュージックがBGMでかかっている





時間止まったわ


うぉっ、なりふり構わず洗脳工作か


コレは、聞かなければ大丈夫な類いっぽい

おそらく、パニック対策だろうが、さすがに俺は聞かない方が良いだろう


このメンバーで、俺に絶大な信頼を置いてくれているのは、秋鳴と、おそらくシーちゃん


だからこそ、彼女には事実を伝えないといけない




俺は密閉性の高いヘッドホンを二つ用意すると、彼女に声をかけた

「岩谷さん」

「えっ、あれ、止めたの?」

「いや、勝手に止まった。おそらく今、流れているのは、パニックを抑えるための洗脳放送だ」

「そんな」

「俺は、判断を誤りたくないので、この放送を聞かないようにする。君もだ」

「他の人は?」

「秋鳴と鼎さんは、たぶん俺の言うことには、黙って従ってくれる」

「そう、、、私、信頼されてないんだ」

岩谷さんがつぶやく


岩谷さんの言葉を敢えて無視してヘッドホンを手渡し

「スマホで、大音量で音楽が聴けるようにして、この洗脳放送の間、ちょっと、離れていて。他のメンバーは、ある程度、安心していてもらっていてもいいから、ひとしきり放送を聞かせたら、俺が、TVの音量をゼロにする」



「ねぇ、この後、何が起きるか把握したら、あなたは、昨日に戻るのね」

「おそらく、そういう事態が起こると思う」

「きっと、忙しい、全く、別の一日なのね」

「・・・」

「そして、私は、何も思い出せない・・・」



岩谷さんにヘッドホンを押しつけて、俺は、機械操作の準備だけする

時間を動かさないと、機械類は操作できないのだ


岩谷さんは、もう、目を合わさず、黙って、同じように準備をする


画面は、洗脳放送が始まる直前に戻っている




時間を動かす


すぐに、機械の操作をする


会話の流れがつじつまが合わなくなっているかもしれないが仕方ない


岩谷さんは、すっと、席を離脱する

音楽は聴いてくれているようだ


再び、時間が止まったら、スルー設定にしようと思ったが、とりあえず、今、俺の耳には聞こえていないからか、能力は働かない


カイコは不審な顔をして、俺と岩谷さんの両方をみたが、洗脳放送は、強力なようで、すぐにそちらに目を奪われる


とりあえず所在無げに、うろついて、画面をチラ見したり、みんなの様子を確認していると、フッと、雰囲気が変わったので、TVの音量を下げに向かった


首相の放送の再放送に切り替わっているようだ


「・・して、音消しちゃったの」

シーちゃんが問いかける

最初が聞き取れなかったが、恐らく'どうして'だろう


「だって、何回も同じ話、聞きたくないじゃん」

「ふぁー、首相の能力でしたよねぇ、、、」

カイコはリラックスしてくれているようだ



待たせていた、美女木さんに、能力使用の制限をお願いした


美女木さんは、自分の能力が知られていることにビックリしていたが、メンバーの能力を説明して、特に、シーちゃんが、大概の怪我は治してしまえるから、大怪我するようなことが有っても、焦って何度も巻き戻ししたりせず、巻き戻しするなら、シーちゃんに怪我を負わせないような行動をお願いした



「はぁ、でも、特に心配することはないんでしょ?今、TVでそう言ってたし」

「そうそう、俺らと一緒にいれば、心配ないってことさ」

なんとなく、趣旨を入れ替えたが、この子はこれで大丈夫だろう


岩谷さんを手招いて、秋鳴に、何か画面で新しい動きがあるまで、音を消して、見張っておくよう伝えた


他の子たちは、頼むから、トランプでもして時間をつぶしててくれ


シーちゃんが思い出したように、みんなのお茶の支度をしたり、世話してくれるのが、ありがたい


俺は、ミコちゃんと時間をつぶす


だって、しょうがないだろ


・・・


午後2時に、遂に、次の緊急放送が始まった



◇◇◇◇◇◇◇



「なぁ、今日って、なんか、イベントが有るんじゃなかったの?」

「いや、俺も割のいいバイトだからって、朝から来たんだけど、結局、誰も来ないんじゃん」

「ステージだけ組み上がってんのな」

「それより、電車、止まるかもよ」

「あれか」


そう言って、たむろしてたバイトたちは、空を見上げた



「おーい、君たち、今日は、もういいから、帰りなさい」

チーフが遠くで叫んだ

「イベントは中止、バイト料渡すから早く来て」


「ラッキー、何もしなくてバイト代ゲット」


百人では聞かない人員が引き上げ出す


空には、半月がかかっていた



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



『現在、月と地球の距離が、若干近づいております。

これで予想できることは、津波や暴風が考えられます。


海岸沿いに住んでいるみなさんは、引き続き、避難態勢を整えてください。

また、都心などで、帰宅困難が予想されるみなさんは、地下、及び、地下街の方が安全かと思われます。


但し、河川の氾濫が警戒予される地区では、水の浸入対策をあらかじめ施すように、お願いします。』


これ、駄目じゃん



岩谷さんは引き攣った顔をしているが、先ほどの洗脳放送を聞いているみんなは、冷静に聞いている



「隊長、何か指示が、ありますか?」

「この辺で、高い場所と言うと、パラシオタワーか」

「そうですね」

「よし、そこの屋上に侵入する。午前中に説明した通り、俺のフォローに秋鳴、救護班としてシーちゃん、更にそのバックアップとして、美女木さん、さっき説明した通りだが、大丈夫か」

「えっ、えっ、なんか良く分からないけど、危ないことするの?」

「危なくならないように、一緒に来て欲しいんだ」


「私も行くわ」

岩谷さんが、真正面から、俺を見つめる


「・・・分かった、全体の俯瞰を頼む。カイコは、ミコちゃんを守って、ここで、情報収集してくれ」

「はい、三嶌さん」


まず、一人で、侵入して、居場所のチェック


「美女木さんと、そして、シーちゃんも初めてだな。これからテレポートする」

「えっ、何それ」

「三嶌さんって、そんなことができるんですか」

「タイミングを見計らって飛ぶ。行くぞと言ったら、俺の身体に触れてくれ」

「了解」

「分かりました」



そして午後三時


辺りが少し薄暗くなり、風がでてきた


『本日、最後のお知らせです。月は引き続き、異常接近しておりますが、すでに十分な対策は、取っております。尚、暴風と、津波が予想されておりますので、退避勧告の出た地域の皆様は、速やかに移動ください。。。』



いや、考えてみると、この十分な対策って、俺のことだろう


ここからは、現場判断だ


いよいよ風が強くなってきた


「じゃぁ、行くぞ」

「「「「はい」」」」




俺たちは、パラシオタワーの屋上に降り立った




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