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異能力者が溢れる世界を作ってみた  作者: d-novel
第九日目・第十日目
67/73

うたかたの

俺は岩谷さんを、特番チームが詰めているTV局に送ると、地下駐車場で待機した


小一時間ほどで、戻ってきた岩谷さんは見る影もなかった



一度ラインから外れた人間が、すぐに戻れるほど、制作現場は、甘くない

そういうことのようだ


もっとも、岩谷さんが自分の能力をカミングアウトしていれば、展開は違っただろう

だが、流石にこの段階でのカミングアウトは躊躇せざるを得ない



岩谷さんのいたチームの制作番組は、この一週間、全くハズレがない


何しろ夜中の番組まで、視聴率10%をマークしているのだ

チームのチーフの能力の所為だと、岩谷さんは言うが、結果を出しているチームに、ゴールデンの緊急特番が回ってくるのも必然で、兎に角、全員ほとんど寝ていない状態でカリカリしているらしい


出亀はエースカメラマンとして、貴重な素材をどんどん編集室に送り込んでいるようだった


いったいどうしたらこんな映像が撮れるのかという物が、硬軟取り混ぜて、送られてくるのを、必死に選別して、尺に収める戦いを、ギリギリまでやっているらしい


ちらと見た中では、週刊誌の見出しにもなっていた、自分の専門分野に特化した医師の神業としか呼びようのない映像もあったらしい


なにせ、心臓だけを肉体から、なんの負荷もかけずに取り出して、さらにそれを治療したあげく、元通りにしてしまえる心臓血管外科専門医の手術映像など、流せるのかどうか、関係部局、省庁にまで確認を取りながら、編集しているらしい



とりあえず、何かに備えて地下駐車場で待機していた俺の所に、肩を落として岩谷さんが報告したのは、そう言った内容だった



「居場所がなかった・・・」

こんなに憔悴した彼女の顔を見るのは初めてだ


『何ができる?』と問いかけられた時に、なまじ隠しておかなければいけないことがあるばかりに、思考が止まってしまったんだそうだ



「それでも、今、君が巻き込まれる訳にはいかない」

俺は、敢えて彼女に強く言ってあげた

俺が実際に生きた年齢から見たら、この子は娘みたいな年齢なのだ



「うん、、、あのさ、行きたい所があるんだけど」

「何処でも連れてくよ」



・・・



で、迷宮探索なのね


例の迷宮制作チームの学生さんに、オファーがあったらしい

何にもないことで有名なテーマパークに、一夜にして迷宮を立ち上げたらしい


本日はリニューアルオープンなんだそうだ



土地だけ無駄にあるテーマパーク内には、実に三つもの迷宮が出来上がっている


子供向け、一般向け、そして能力者を含むプロの格闘家までを想定した、格段に難易度の高いA級迷宮



子供向けと、無謀なチャレンジをしたがる若者に人気のA級迷宮は長蛇の列だった


流石に中身は改良を重ねたらしく、迷宮内の自動運営がスムーズになされていて、俺たちがレポートしたときのように、モンスターを倒すと、能力者がひっくり返ってしまうようなことは無さそうだ



はい、我々二人では、A級は、二階までしか行けませんでした

というか、ゴルゴじゃないんだから、スペツナズみたいな特殊部隊でも来なけりゃ、制圧できんだろう


気がついたら、救護室で、二人で手をつないでひっくり返っていた

絶対安全と分かっていたら、俺の能力は働かないし、あえて、対象を防衛機能から切ることもできるから、そういう楽しみ方をしないとね


思いっきりズルして、時間巻き戻しの割り込みを駆使しながら、極力列に並ばずに、迷宮探索をしたのは、言うまでもないんだが



この後も、俺たちは、初めてのデートを満喫した



・・・・・・



「あれ、まだいたの」

時間は、二十二時

TVの特番は終わっている時間だ


事務所に戻ると、まだカイコがそこに居た


まぁ、半ば、カイコが居るのは知ってたんだが


なんせ、岩谷さんを送ってきたところだ



カイコは所在無げにスマホをいじってた


チラッとこちらを見て

「・・・したら、承知しないんだから」

と、怖い目でボソッと呟いた


「あ、あの、えーと、送ろうか」

「トッキーに送ってもらいます」

「あっ、あ、そう、気をつけて」

うるさそうなシーちゃんは警戒してたが、カイコにここまで、突っ込まれると思わなかった


いや、待て、最初から、カイコの経略だったんだよな・・・

それでなきゃ、カイコが秋鳴と行動を共にするわけはないわな


で、これかい


まぁ、間違っても、カイコには手を出さん



秋鳴がロフトから降りてきた


「あー、隊長ー、おっ疲れ様でした」

秋鳴、お前まで今日はトゲがあるぞ



仕方ねぇだろ、両方とも肉食系なんだから



「えーと、車入れ替えて、俺、帰るね」

退散だ退散


さて、グッスリ寝るぞ


俺は明日はどう過ごそうか、ぼんやりと考える


そして、そのあくる日が来るまでは、今日という日がうたかただったと言うことは知る由もなかった



◇◇◇◇◇◇◇◇



世界中の天文台が、騒然としていた


「自転速度が明らかにおかしい」

「いや、公転もです。なんだこれ」


鎮静化していた全世界の日本に対する疑惑の思いが、また、一気に暴発していた


「位置がメチャクチャじゃないか、なぜ、こんな時間にここにある」

「大統領に至急連絡だ」

「レベル4か」

「いや、このまま行くと、もうそんなレベル云々ではないかもしれない」

「くそ、忌々しいジャップが」

「間に合わないか」

「正確なところは、あと6時間ほどしないと見えてこないが、このままの予想だとおそらく。。。」


「すまん、、、私は、もう家に帰ってもいいか」

「おい、こんな状況で何を言ってるんだ」


「・・・最後は家族と一緒に過ごしたいんだ」


ここに詰めているスタッフの中では、一番キレ者と言われるその男の言葉に、誰もが言葉を失くした



数秒後、我にかえった者から、淡々と帰り支度を始めた



・・・



「日本全土をカバー出来るか?」

「単純に、全域への着弾は可能ですが、確実に全滅させられるかどうかと言うと、我が国にまで、相当の影響を与えるほどの弾数を発射して、なお」

「なお?」

「50%以上が生き残るかと」

「そんなことがあるか!」

「いえ、連中は異能力者の集団なのです、しかも人口の20%は確実に自己防衛機能を持っていると思われます」


「・・・このまま心中か」

「方策はただ一つだけです」

「なんだ」

「奴ら自身に落とし前をつけさせる。それしかありません」

「・・・総書記にそう報告できるか」

「・・・」



◇◇◇◇◇◇◇◇



やっちまった


目の前には二十歳くらいの女が横たわっていた


あれだけ釘を刺されたにもかかわらず、妻奇省吾は自分を抑えることができなかった


有名人は駄目だ

アイドルはあきらめよう


妻奇の思考の行き着いた先は、結局それだった


小柄な女を捜そう


一人でもなんとか処理できる女


ターゲットにこだわらなければ、先に能力で認識阻害を欠けてしまえば、拉致は簡単にいくことに思い当たった


台車で運んでいても、誰も気がつかない


ゆうゆうと自宅アパートに運び込んで、さて、どう料理しようかと考えて、女を見ると、息をしていなかった


周りは見ていたが女の様子など、気にも留めていなかった


しかし、原因を今考えている場合ではない

これを処理しないと


妻奇は、まだ気がついていない

彼の能力では、死体には認識阻害がかからないことを



・・・・・・



画面には、迷宮入りしていた殺人事件の犯人の弁護士が、能力を使用した捜査は違法であると、まくし立てていた


日本でおとり捜査が認められていないのと同様に、異能力だけで、犯人を検挙するのは、許されざる行為だと




「ボス、もうダメです」

「ホント、お前たちはだらし無いね。こんないい女を満足させられないなんて」

「はぁ」

「そうだ、ねぇ、明日、ヨットに乗りに行こうよ」

「ヨットですか?」

「せこいのじゃ駄目よ、何人も乗れるような奴」

「はぁ、じゃぁ、いつもの手順で、ログ段取りは分かってんな、、、って寝てんじゃねぇ」


ゆかりは、薄物を引っ掛けただけで、テーブルの上のフルーツにかぶりつくと、ボンヤリと、TV画面を流れる臨時ニュースのテロップを眺めてた


(・・・あれ?もしかしたら、明日だめじゃん?)


いや、たぶん明日だけではなく、、、


四之宮ゆかりは、もう一度、ベッドに戻った



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