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探偵は鑑定士ではありません  ~美術品を処分してください~

何でも能力絡みにするのはいけないかもしれないが、このご時世、まずは、能力発動前を調べるのが常道だろう


安全を確認した俺は、秋鳴を連れて、先週の木曜日に飛ぶ

秋鳴と二手に分かれて、十品の一グループごとに、写真を撮りながら、数の確認を行うことにした


一時間程経過した所で

「あっ、ここ9個です」

と、秋鳴が声をあげた


茶器の並んでいるコーナーだった


「今、半分くらいだけど、頑張って最後までやって、それから食事でいいかい」

お茶菓子食べただけで、お昼食べてないんだよな

「えーっと、9個のを見つけただけでは、駄目なんですね」

「うん、ちょっと疑っていることがあるんで、一応、全部チェックして」


更に一時間かけて、グループごとの写真と、各コーナーを俯瞰(ふかん)した写真を撮って、いったん休憩とした


・・・


打ち合わせがてらの食事を終えて、現在時間にもどり、各グループ毎に、写真と現状を比較していく


「あれ?」

「そっちもおかしいか」

「隊長の方もですか?」


ノイズが混ざっているグループは、主に、茶器、装飾品など、小さいものを集めたグループだった


木曜日の状態の写真と比べると、一つ無くなって、代わりに、何か似ているような、二、三種類混ぜ合わせたような、微妙な品が置いてある

特に、元々、九品だったコーナーは、その変な品が二品ある


「レプリカと交換しているワケではないんだなぁ」

「何だか、モザイクみたいな感じですね」

「あっ、それかも。理由は良く分からないけど、そっくりそのまま作る分けにはいかなかったとか、変な能力なのかもしれないね」


そうなると、金曜日に何が有ったのかを、隠しカメラで確認だな


ということで


仕込み

回収

映像確認


なるほどね


現在時間は、そろそろ戸を開けに来てくれる時間

戻って、待ちますか


「何か分かりましたか」

戸を開けるなり、小木さんが言う

この人は、たぶん、美術品には、何も興味ない人なんだろう

前任者もきっとそうだ

それじゃなきゃ、こんだけ入れ替わって、何も気がつかないわけがない


「お聞きしたいことがあるんですが、この数量のチェックをされた方は三人いるとのことでしたが、三人目はどういう方ですか」

「みっちゃんね。日本史専攻している学生さんで、春から、金・土とアルバイトに来ていて、今月は夏休みで、毎日来てます」

「では、空気の入れ替えなども?」

「みっちゃんが来てからは、みっちゃんがやってます。だからみっちゃんの予定に合わせて金曜日に空気の入れ替えをお願いしてるんですよ。中を覗くだけで、勉強になるんですって」

「そうですか。でしたら、ぜひお話しを伺いたいですね」

「では、呼んできます」

小木さんは、やはりございます調で通すのは無理があるみたいだ(笑)


連れてこられた子は、今風オカッパの前髪パッツン

背は160cmくらいだろうか、自然なメイクはしているようで、それなりのお姉さんにみえる


蔵観(くらみ)です」

「三嶌です。では、先入観が働かない方が良いので、よろしければ、小木さんは席を外していただけますか。蔵観さん、いつもの段取りを教えてください。秋鳴もあちらで待っていて」

「では、サロンでお茶にしませんか」

秋鳴は、黙って頷くと部屋から出ていった

彼女は余計なことはしゃべらないたちだから、安心できる


「じゃぁ、蔵観さん、ついて来て頂けますか」

蔵観さんは、警戒心丸出しで、後をついて来た


「これと、、」

俺は部屋の中を巡りながら、いくつかの品物をピックアップしていく


「ここだけ、コレとコレですね」

振り返ると、蔵観さんは顔面蒼白だった


「できれば、これらの品物を、元の品物に戻して欲しいんですよ」

「あ、あたし」

「あー、最後の二つはいいです。他を戻してくれれば、全部、無かったことにして差し上げます」

「無かったこと?」

「あー、そうだ、あなたが壊してしまった茶器の代わりがいるので、これ、どちらか一ついただいてもいいですか」

「あなたは、何を知っていらっしゃるのですか」

「全部です」

「あたし、あたしは、どうなるの、つかまるの?」

「私が依頼を受けたのは、このコレクションで不要なものを教えて欲しいということだけです。ですから、ここにある二つの変わった茶器の一つを不要なものとして、小木さんに渡しますので、他は元に戻しておいて頂けますか」

「でも、壊してしまったものは、あっ!」

蔵観さんはしまったという顔をしたが、探偵は警察ではありません


「いや、あなたが壊したのは、こちらの茶器にすることにしました」

「えっ、何を言っているのかサッパリ・・・」

「いんですよ理屈は。あなたは、この茶器二つを私にくれれば。先ほど申しました通り、一つは、小木さんが処分します」

「それだけ、それだけでいいんですか」

「蔵観さんが作った他のものは、蔵観さんご自身のものにしてください。但し」

「但し?」


「以前、古代史を研究されている方が、沢山の土器を、出土されるはずのない場所から発掘するという世紀の捏造事件がありましたが」

「読んだことがあります」

「蔵観さんの作られた、あるいは、これから作られる作品の完成度は、素人の私には分かりませんが、下手に世の中に出ると、out of parts扱いにされたり、世紀の大発見にされる可能性がありますよね」

「そんなことって、ありえますか」

「最初に、『贋作作ってみました』って、発表してしまえば大丈夫でしょうね。著作権の失われたものであれば」

蔵見さんは、少し考え込んでいるようだった


「あっ、あの、私の壊したのは二つだったのでは?」

「二つ分の残骸がありましたか?」

「いえ、あたし、あの時、動転してしまっていて、あの、そもそも、あの日いつもより、支度が遅くなってしまってたんです。本当は、午前中に終わらせなくてはいけないのに、お昼をすぎてしまって。それで、バタバタしてたら、、、」

「まぁ、そういう事もありますよね」

「とにかく、破片を始末したあとに、展示品の数を数えたら、元は十品あるはずが、八品しか残ってなくて、、、どうしよう、どうしようと思ってたら、あの声が聞こえたんです」

レプリカを作る前に壊してしまったから、何か似たような感じのものを作ろうとしたんだな


「ところで、蔵観さんは、こういった、古いものはお好きなんでしょ」

「私自身は、江戸期の細工物とか、生活感のある民芸品が好きなんです。こちらのお屋敷の方は、そういったものの価値はまるでご存知のないようでしたし」

彼女のストレス要因その1だな

価値の分からない人に管理されている品々か


「でも、十品ずつが1グループになっていることはご存知だったんですね」

「小木さんが、そう言ってましたので、、、これだけ、たくさんありますし、一昨日、一緒に数を数えさせられるまでは、特に興味のないものに関しては、数を確認したことがありませんでした。えっ、ともしかして、あそこの茶器は元々九品しかなかったんですか?」

「それは、私からは、なんとも。何か、数え方に特殊なルールがあるのかもしれませんしね。ただ、ここに、二つ無関係のものがあるのは、確かですし、まぁ、それが、どうして分かったとか、なぜ、割れた茶器が交換できるのかとかは、企業秘密ですので」

「もしかして、あなたの能力?」

「企業秘密と申し上げました。それで、私の提案には、乗ってくださいますか?」


蔵観さんは、もう一度黙り込んでうつむいたが

「はい、お任せします」

と言ってくれた


それでは、うまいこと、彼女が壊す瞬間に飛んで、すり替えてきますか



彼女からみたら手品を見ている感じだったろう

俺が持っていた彼女の作品が、割れたはずの茶器にすり替わっていて、そのまま展示台に置かれたわけだから


「えーっと、これですか?」

「そうか、こう言った茶器には、あまり興味がなかったんですね。元はこれですよ」

彼女の作ったものとは、ずいぶんと趣の違うもの

蔵観さんは、残った茶器から、組み合わせたんだろう


「残りは、気がつかれないように、できるだけ早く取り替えてくださいね」

「わ、分かりました」


さて、報告しますか


小木さんは、アバウトな人だったから、俺が、『蔵観さんが良く覚えていてくれたので、質問をしているうちに、これだと分かりました』と言ったら、それ以上詮索してこなかった


彼女も、下手に色々口を出して、自分の責任になるのも、面倒なんだろう

一応、この余分なものは、贋作だから、壊してしまった方がいいと言ったら、その場で、

「じゃぁ、みっちゃん処分しといて」

で終わりになってしまった

ついでに、蔵観さんは優秀だから、明日にでも一通り、チェックしてもらうと良いですよ、と言っておいた


おそらく、自分の趣味のものをいくつかすり替えたんだろうが、ちゃんと元に戻す時間を作ってあげたんだから、約束は守ってね


探偵代は、管理費から捻出してくれるそうだ

〈〇〇セキュリティサービス〉とか、訳のわからない請求書がいるみたいだったが


八幡宮でもお参りして帰りますか





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