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探偵は美術商ではありません ~いらない美術品を処分してください

俺たちは、鎌倉のお屋敷にいる


これをお屋敷と呼ばずに、なんと言おう


車で大きな門をくぐって、目の前の坂道を登ると、取って付けたような、二階建ての建物があった


で、まずは、そこで待たされるわけだが、この建物全体が、出入り業者の休憩室のようだ

なんだか、市役所の仮庁舎みたいな建物だ



事務所にその電話がかかってきたのは、午前11時過ぎだった

ご相談があるから、とにかくお越し頂きたいの一点張り

誰とかとかから紹介されたと言っていたようだ


それで出かけたのが、大河ドラマの主人公になるような戦国時代から続く末裔の、それでも当主ではなく、そのお姉さんの家なんだそうだが、まぁ、兎に角、調べれば調べるほど、有名人に突き当たるような家系図の一家らしい


当主の家とかだと、きっともっと凄いんだろう


あー、今、思い出した

この一族の、一番下の弟さんと、過去巡り中にお食事したことがあるんだった

とっても気さくだったんで、あんまり、元華族の方だとか思わなかったんだ

親戚が探偵をやっているようなことは、しゃべったかもしれない


正直、今の俺には金はあるが、さすがにこんな名家のまねごとをしようとは思わない

車だって、そりゃ二千万円の車だって買えなくはないが、300万のハチロクで満足するのが似合ってる


用意されているお茶菓子をぱくついていると、秘書のような方が迎えに来た

さすがに、漫画に出てくるような、メイドさんや執事はいない


玄関は、高級旅館のような、よく磨かれた柱と床

育ちが悪いので、他に形容のしようが無い


通されたのは、すぐ脇、といっても、10m位は離れた所にあるサロン

って、サロンって言っていいんだよな

案内の方が、

こちらでは、時々、音楽会を催したりいたします

と言ってたから

昔読んだ推理小説に出てきた黒死館とかを思い出したら、チョッとゾッとした


「処分したい美術品がございまして」

はぁ?


結局、当主の方や奥様が出てくることはなく、この秘書みたいな方が話してくれるらしい


俺が、とにかく頷いて、先を促すと


「それで、どの美術品を処分したら良いか、お探しいただきたいのです」

「何か理由がありそうですね、詳しくお聞きしましょう」


・・・


今、お相手してくれている方は、遠い親戚筋のお孫さんのお嬢さんで小木さんという方だった

名家の秘書にしては、少し頼りない感じだったが、行儀見習いで預けられているようだ


「見ていただきたいのは、この奥のお部屋なのですが、、、」


その部屋は美術品を集めてある部屋ということだった

高価と言うよりは、歴史的な価値があるものが多いようで、良く貸し出すこともあるらしい


定期的な点検をしているのだが、一昨日点検すると、どうにも数が合わない

一つ多いんだそうだ

関係の無いものが、紛れ込んでたらすぐにわかりそうなもんだが、古くからお屋敷に仕えている人も含め三人でチェックしたのに、どうにも分からないんだそうだ


「秋鳴の出番だけで済みそうだな」

隣に座る秋鳴と一緒に腰を上げた




「・・・これは」

部屋を埋めつくす茶器、掛軸、甲冑の数々に圧倒される


「江戸時代末期に作られたレプリカも混ざっているそうで、そんなに価値のあるものは少ないらしくて、でも撮影の小道具とかには、よろしいでしょ」

「とはおっしゃっても、一万円や二万円で買えるものではないでしょ」

「それはまぁ、私のお小遣いで弁償しろと言われても困るくらいのものもございますわ」

数十万のものがあるのは、覚悟しておこう


「で、これらの品物は、全部、ご当主のものということで、よろしいのですね」

「えーっと、多分、奥様ご自身のものですとか、何しろ、数が多いものですから、本当に価値のあるものは、皆様、ご自身の財産として管理されているんですが、こちらにあるものは、ご親戚が財産分けなどでも、お引き取りになるのを面倒がって、そのまま放置されているものとか、所有者不明のものが沢山あると伺ってます」

あちゃ、そりゃ困った

秋鳴の能力が機能するのは、所有者のハッキリしているものだけだ


「でも、それでしたら、一つくらい数が前後しても、どうということはないのではありませんか」

「それが、先々代のご主人様、私の曽祖父の兄上様が、常にこのお部屋の美術品の数が九百九十九品となるように管理せよとのご遺訓を遺されておりまして」

うげっ、そんなにあるんだ

てか、迷惑な遺訓を残すじじいだ


「ということは、今、この部屋には」

「はい、何度数えましても、千品、ございますの」


いや、それにしたって、リストと付け合わせながら丁寧にチェックすれば問題ないだろうに


「数えると言っても、この数をどうチェックしているんですか」

「こちらは収納に独特の規準があるんです」

あら、小木さん少しずつ口調が変わってるかな


「基本は、十品で一グループとなってて、えーと、コーナーが十あって、あれ?違ったかしら、あと、何でしたかしら、もう一つ十に分かれてて、、、これで幾つになりますの」

「十の三乗で、千品ですね」

「はい、それであってます」

「合ってるんですか?確か九百九十九でないといけないのでは」

「えー、何か、必ず一つ欠けるようになっていて、満ち足りないようにしておくんですって」

「そしたら、簡単に分かりそうな気がするんですが」

「なぜですの」

「だって、9品しかないはずのグループが分かってれば、そこだけチェックすればいいんでしょ」

「あら、分かりませんわ」

「は?」

「だって、しょっちゅう、入れ替わるんですもの」

「入れ替わるって」

「先ほど、良く貸し出しをすると申し上げましたでしょ」

「えー、だから、数が足りないことは、良くあるんですよね」

「それは、有りませんの」

「何故ですか」


なんか論理的には話が進みそうに無いな


「お借りなさりたい方は、代わりに同じ数量だけ、同等以上の価値のものをこちらに預けていただくので、数量は常に一緒です。ですから、本当に信用のできる方を通じてでないと、お貸出しはいたしませんの」

「でも、出した所に、代わりの物を置くとか」

「それは、大きい物、長いもの、小さいものなどありますから、そんなに単純ではありません。代わりの品、同等以上という規準だけですので、お借りになる方は、寸法は、考慮いたしませんから」

「はぁ、でも貸し出し一覧みたいなものはお有りでしょ」

「それは、お借りになる方がご存知なら良いことで、ここには、何か歴史的に価値のあるものが、千品ある、ということだけ、皆様にお知らせしているだけです」

「えっ?九百九十九品では、ないんですか?」

「そのことは、担当の私と、古くからいらっしゃる、もうひと方が知っておれば良いことで、数を数えるのを手伝っていただくだけの方は、知っている必要もないこと、というようになっております。どちらか一人が、死亡するような時だけ、要員を補充しているそうですので、知っているのは二人だけ。別に大した秘密ではないので、誰かにわざわざ打ち明けるようなことでは、ありませんし、でも、そのことをどなたか別の方が知っているとなると、どちらかが漏らしたと、、、そんなつまらないことで、信用を無くす方はおりませんでしょ?」


そりゃそうだな


「ですから、外部の方に、このことを申し上げるのは初めてですので、ご承知おきください」

まぁ、別にそんなこと知っていても何の自慢にもならんが、思ったより面倒くさいな

「最後に貸し出したのはいつですか」

「撮影に使いたいとのことから、昨年の二月が最後かしら。四月までには全部元にもどしていただいています。その後、半年に一度の点検を、昨年の七月と、今年の一月と二度しておりますし、その時は、数は合っていました」

「えっ、でも、その時欠けていたところとか?」

「そんなの、半年も前のこと、忘れてしまいましたわ」


あら、そう


うーむ


「どれでも適当に処分してよい訳ではない理由は」

「だって、私には価値が分かりませんし、安いものだから必要ないということではありませんでしょ」

「かと言って、ここにあるものにお詳しい方に伺う訳にはいかないと」

小木さんは満面の笑みを浮かべて

「はい」

と答えた


「この中に、警報システムはありますか?」

「出入口と、通気用の窓にはございますが、中にはございません」

「数量点検以外に、開け閉めすることは」

「一週間に一度、金曜日の午前中に、空気の入れ替えを、あと、四月と十月は空調の点検をしています。今日は、数量の合わない騒ぎがございましたので、空気の入れ替えはしておりません」

「分かりました。では、少し我々でも数えてみますので、数え方を教えてください。ここは、中から開けられますか?」

「いえ、外からだけです。電気は点きっぱなしにできますが」

「それは、けっこう。では、教えてくださったら、いったん外から閉めていただいて、三十分後に開けて頂けますか?」

「三十分で分かりますの?」

「原因を突き止める必要がなければ、十分だと思います」


先週の木曜日に行ってみますか


・・・


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