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文書偽造屋が手の内で舞う

俺は家を探して欲しいと言う、クライアントの金野さんの自宅を張り込みしている


マンションロビー内のポストが見える所にずっと張ってる俺も充分に怪しいだろうが、実は、金野さんのポストが見えるような位置に隠しカメラを設置して、モニターで観察しているだけ


過去なら、いくらでも時間飛ばせる俺の能力で一時間おきにチェックして、ポストに細工される時間帯を、月曜日の17時から18時の間に特定したわけだ


17時半頃、マンション下の集合ポストに、怪しい人物が現れた

金野さんのポストが細工された所を確認したうえで、そいつの人相を確認する


その時、そいつがビクッとして、廻りを警戒した

マンション入り口を出入りする人間がいるらしい


こりゃ、ちょうどいい


st


俺は、奴の人相を確認するため、開いている入り口から中に入り込んだ


クタビレたポロシャツと、スラックスを穿いた中年の冴えない男だった


お尻のポケットが膨らんでいる

中にあるものを引っ張り出すと財布だった

しかも色々なカードや身分証明書の類がごっちゃに入ってパンパンに膨らんでいる


目当ての物も中にあった

竄愧文章(ざんきふみあき)、間違いない、こいつだ


助かる、これで半ば解決したようなものだ


俺は必要なものを抜き取った財布を無理矢理、奴のポケットに押し込み、隠しカメラを回収して、その場を撤収した


・・・


押収したもので、奴の本来の勤め先が分かった


俺は現在時間に戻ると、奴の勤め先の窓口へ行って、在籍を確認する


「失礼ですが、どのようなご用件でしょうか」

「いえ、この身分証明書のようなものを拾ったので、お届けしたのですが」

「ご丁寧にありがとうございます、本人、実は、今週、休んでおりますが、伝えておきます。」


そんな会話をしたわけだが、まぁ、なぜ金野さんが狙われたのかは、ほぼ推測できた


事務所に戻って、金野さんに2〜3確認をする


「では、引っ越しの転入届けの際、区役所に行ったことは間違いないですね」

「はい、間違いございません」

「対応された方は、この方ではありませんか」

「あまり、印象に残るような方ではございませんしたがね、でも、少し世間話とかしましたかしら、この方のような気もいたしますが、まぁ!この方が、何かされたのですか」


この調子なら、けっこう、ベラベラと奴に個人情報漏らしてそうだな


転入届は、もう少し早くして欲しい旨、言われたそうで、それに答えて、なかなか家が売れなくて、どなたにも、まだ転居のお知らせもしていない、などと余計なことを喋ったみたいだ


そう竄愧は、区役所の転入届の係だった


「もし、金野さんのお家が、無事に戻って来たら、犯人を告訴しないで済ますことができますか」

「それはまぁ、ねぇ、ホテルの宿泊費ぐらいは出していただけませんことには、ねぇ、探偵さんへの御礼もございますでしょ」

「宿泊費に関しては、出させるとして、探偵料に関しては、私が、相手方と直接交渉いたしますので、それでいかがですか」

「それは、もう、わたくしとしては、大助かりですわ。主人も亡くなって、色々と、物入りもございますでしょ」

解決の目処が立ったことが分かって、ホッとしたのか、放って置くと、いつまでもベラベラと喋りそうだ


細かいお金にうるさい、典型的なお金持ちだな


俺が穏便に済まそうとしているのには理由がある


俺の考えが正しければ、奴の能力は文書偽造もしくは、書き換えだ


ただ、対象を一つずつ指定する方法を取ったのか、金野さんの行きつけの美容院の顧客カードにまでは、頭が回らなかったのじゃないだろうか


色々と足場を固めてから、奴に接触することにした


・・・


trrrrrr



『竄愧さんですか』

『どちらさん?』

『あなたを調査しているものです』

『どういうことだ?』

『取引しませんか?』

『言ってる意味が分からないんだが』

『今、お部屋の前にいるんで、入れてもらえたら、ご説明しますよ』

『そんな訳のわからない奴、入れられるわけないだろ』

『でも、ここで騒がれて困るのは、貴方だと思いますよ』

『・・・pi tu-tu-tu-tu』


電話は切られたか

ふむ、仕方ない

中に入って待つことにしますか


gacha


「こんにちは竄愧さん」

奴が外から戻ってきたところを、俺はリビングで出迎える

奴の出入りする時間が分かれば、簡単なことだ


「だ、誰だお前は」

「あなたを調査しているものです」

「人の家に入り込んで何言ってる」

「いえ、私は、この家の本来の持ち主に招待されているだけですよ」

「な、何を言ってるんだ」

「竄愧さん、取り引きしませんか」

「・・・」

「あなたの能力は素晴らしいと思いますが、チョッと穴が有りすぎるんですよ。あっ、逃げても無駄ですよ、能力持ちはあなただけではないので。まぁ、座りませんか」

俺は、金野さんから委任状を書いてもらって、“先週”手に入れた住民票の写しのコピーを見せる


「例えば、これとかね、あっ、いくら書き換えても無駄ですから」

「あ、あんた何が言いたいんだ」

「だからね、取引したいって言ってるんですよ」

「取引?」

「もっと安全に、こんな簡単に足のつかない方法で財産を作った方がいいでしょ?」

「俺は、何をすればいいんだ?」

「ひとつは、ここの持ち主のおばさんのお家は、返してあげましょう、まぁ、持っている株の名義を一つくらい変えちゃってもいんですけどね」


まぁ、ちょっとくらいで、食うに困りそうな人でもなかったしな

実際、今、株式市場は大混乱中ではあるんだが


「あんた、そんな事、言っちゃっていいのか」

「だって、もともと、あなたは、あのおばさんにチョッとカチンと来て、こんなこと考えたんじゃないんですか?」

「そこまで、分かってるのか」

いや、カマかけただけです


「もう一つお願いしたい事があるんですよ」

「何だ」

「竄愧さん、戸籍をでっち上げられるんじゃありませんか?」


・・・


非合法なことをしたい時、竄愧の能力は、非常に強力だが、いかんせん本人が考えることは、穴だらけ

俺は、悪いようにはしないから、俺のブレーンになって、勝手に能力を使わないよう釘をさした


「部屋なら、いい所を、一つ差し上げますから、あとは、派手なことは慎んで、表面上は今まで通り、生きていれば、幸せだと思いますよ」

もともと、小心者みたいだし、役所を勤め上げた方がいいと思うよ


「もう一つ、鍵の件についてお聞きしたいんですが」

「あー、すり替え屋か」

やっぱり、まだ他にも誰か噛んでたか

竄愧の能力が、文書偽造系だと言うのは検討ついたんだが、鍵が使えなくなっていたのが、分からなかった


「こちらで調べてもいんですが、良かったら、そのすり替え屋さんについても教えて下さい」

すり替え屋というのは、竄愧の中学時代の友人だった

ただ、手癖の悪い奴で、要はスリの常習犯だったのが、とうとうパクられた後、身元引き受け人になってやって、金まで貸してやったらしい

それが、金曜日の夜に金を返したいからと電話をしてきて、ここだけの話と言って、自分の能力を教えてくれたんだそうな


奴ができるのは、物のすり替え

空の財布を用意して、お札が何枚か入ってる程度に、膨らませて置いて、金を持ってそうな奴の財布すり替える


その財布から金を抜き出して、またさっきの財布とすり替えておくだけ


離れた場所から、ポケットやハンドバッグに入っている財布に対してすり替えを行なうので、多少の違和感を感じる人間がいても、まずバレないらしい


そのすり替え屋と話をして、今回の計画を思いついたそうな


金野さんの鍵に関しては、彼女の外出時にまず適当な鍵とすり替えて、それから、ゲットした鍵の合鍵を作成

それから更に、その合鍵を削ったりして、使えなくして、もう一度すり替える、と言う面倒な手順を踏んだらしい


すり替え屋に関しては、今すぐに用はないが、まぁ、マークして置いた方が良い相手だろう


竄愧と会っている今は、実は、火曜日の夜

水曜日の昼前にもう一度来るので、それまでに変更したものを全て元に戻すことを条件に、こちらも新しい部屋を提供する

その時に、ここの鍵を俺に渡して、他は、出来るだけ居た痕跡を残さず出てくる様に伝えて別れた



ついでに、戸籍も作らせた


三嶌伸一と伸二のね





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