ステージ裏の駆け引き
さて、騒ぎの犯人を特定するか
時間逆行の世界で、俺はマーキング地図を確認する
えーっと、コッチがステージ
ステージへの出入り口がこちらで、警備員の・・・
あれ?
奴じゃない
マーキングは正反対の、会場出入り口の外を示している
アワナガレジョージ:泡流浄滋 35歳
北関東から遠征してやがる
狙いはなんだ
どうもあの警備員も気になるんだが
秋鳴と先に打ち合わせよう
・・・
みんなの所へ戻ると、秋鳴が見つからない
あいつ、また、どんだけ上手に隠れてるんだよ
あぁ、こんな時のためのパーティチェックか
いたよ
どこ這いつくばって、スコープ覗いてるんだよ
「おい、秋鳴」
「あっ、隊長」
ちげぇよ
「どんな様子だ」
「やはり怪しいですね、後ろを気にかけていましたが、今の瞬間は、何か起こるのが分かっているみたいに、前を向いていて、一瞬ニヤッとしたところです」
「そうか、ところで、あいつが、この騒ぎの犯人ではない」
「どう言うことでしょう」
「ステージを壊した犯人は別にいて、あいつは騒ぎに乗じて、何かしようとしているのかもしれない。とにかく、あいつがこの後、どういう行動を取ろうとして、どんな表情をするか観察してくれ、焦らなくても、マーキング済みだから逃げられることはない。また、時間を少し動かすが、他にも共犯者がいるかもしれないから、とにかく監視だ」
「yes,Sir」
おまえ、ワザとやってるだろ
次はカイコの方だ
カイコは精一杯頑張ってた
少し巻き戻し過ぎたので、5秒くらい経っているはず
例の警備員に気がつかれないため、みなが飛び出していかないよう、手を広げていた
俺は、裏に回って、時間を動かすと同時に叫んだ
「しゃがんで、みんなしゃがんで」
一呼吸置いてステージ側で爆音がして、音楽も止まったようだ
悲鳴や怒号を上げようとする連中に
「話しは、後だ、とにかくじっとして」
と、自分もしゃがんだ
こちら側にも埃が舞ってきたが、崩落しているのは、ステージの中側だけのよう
退避させた連中が、大人しくなったことを確認
5秒我慢して、再び、時間を止めた
「カイコ、ご苦労さん、とりあえず安全だ」
「ふひー」
緊張の連続だったカイコがへたり込んだ
「しんどいところ申し訳ないが、もうひとがんばりだ。仲間の上に着る物や私物までは避難できなかったので、それを運んでくれ」
こいつは、ただメソメソしている様な奴でないと信じてる
俺はもう一度秋鳴と打ち合わせをして、他に退避させ損ねて、巻き添え食っている奴がいないか、確認だ
秋鳴は、相変わらず這いつくばっていた
例の警備員は、いち早くステージに駆け込もうとしている
やはり、ドサクサに、何かするようだ
いつの間にか、ゴーグルのようなものをつけている
「秋鳴、、、場所を変えるぞ」
俺の予想では、例の警備員はステージへ向かうが、予想していた光景を見出せず、何かシッポを出すと思っている
今は自分の行動に夢中なはずなので、秋鳴には、もう少し挙動がハッキリ見えるところに位置してもらいたい
失敗と分かったら、誰かに連絡をとる可能性が高い
先にステージをチェックしてみる
盛大に埃のようなものが舞っているようで、見通しがほとんどきかないが、派手な割に、人を即死させるような、大物が落ちてきている気配は無い
やはり騒ぎを起こすことが目的か
俺の位置取りによっては、俺の能力が発動しない可能性もあったな
例の警備員のゴーグルは明らかにこの状態を見越している
カイコが、最後の荷物を運び出しているようだ
他に巻き込まれている人間はいないことは確認できた
結局、爆音と、この視界を遮る、埃のようなものだけということか
しかし、もたもたしていると、また、パラドックスにハマってしまう
秋鳴にポジション取りさせ、監視を徹底させ、俺はカイコを手伝って、一緒に退避している連中のところに戻る
間に合った
俺の演説が終わり、既にみんながしゃがんだ後だ
時間停止能力ではないから、自分以外を巻き込むと、パズルのような動きをしないといけない
元々は、ゆっくり考える時間を作るためだったのに、とんでもない羽目に陥っている
俺は時間を動かす
既にこの場所で、この時間より前には戻れない
俺は、時間を動かしたまま、警備員の死角に入り、そのまま会場内には入らず、外から、この騒動を引き起こした泡流のいる場所へ向かうことにした
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
四之宮ゆかりは、全ての映像をシッカリ目に焼き付けるよう、モニターを睨んでいた
(巻き戻された)
トミーもログも、時間が巻き戻ったなど夢にも思っていない風で、ただ単に今流れている、ステージから突然人が消えた映像を、初めてみたように驚いている
(ここで、爆発)
「うぁ、なんだこりゃいったい」
「なんも、見えなくなったじょ」
(違う、さっきはこうなる前までみんな踊っていたんだ そして爆発の瞬間巻き戻った)
ほんの五秒ほど
ゆかりはこの曲を知っていた
サビの最後の部分で、バックの音は綺麗につながっているのに、映像は不自然に録音テープが上書きされたかのように、突然ステージに人がいない状況になり、歌も変なタイミングで切れた
朝は朝で、ゾッとした
こちらが見ていることに気づいたように、カメラを見つめてくる伸二と背の高い女に、ゆかりは思わずカメラを切り替えさせたが、しばらくすると、切り替えたカメラの方にやって来て、またこちらを見ながら、二人で何か会話していた
全てのカメラをチェックしていたのかもしれない
偶然かもしれない
しかし、ゆかりは、連中が、このカメラで覗かれているのに気がついていることを確信していた
画面は、更に進む
トミーが無意識にズームしているが、白い噴煙の中には、当然誰の姿も無い
もし、最初のまま、ステージが進行していたら、その時は何が起こったのだろう
異能力者の溢れる世界
「ふざけんな」
ゆかりはつぶやいていた
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
爆音の余韻の残る中、俺は、会場脇を走っていた
先へ行くほど、会場周辺はごった返している
野次馬も、音に驚いて逃げるんだか、会場の様子を見に行くんだか右往左往している
ちょっと、通り抜けられそうもないな
いったん止まってマーキングを確認すると、騒ぎの張本人は、そう遠くへ行っていない
任務完了で、帰るのなら、駅の方角か、一般駐車場
北関東の人間なら、車の可能性が高い
さっきの警備員と合流する可能性も考えると、駐車場か
ここで焦ることはない
そう思ったら汗が噴き出してきた
「こんにちは」
息をついていると、後ろから声をかけられた
振り返ると、犬を抱えた女性
北村さんと、くるみ姫がいた
「何かあったんですか」
「ちょっと、騒ぎがあって、今、対応中、イベントは、たぶん中止だけど、あとで、向こうの建物を訪ねてくれたら、甲斐唯香さんが喜ぶと思うから、寄ってください。」
「ほんと!嬉しい」
一人と一匹と別れると、俺は、人混みから外れて、一般駐車場へと向かった
マーキングした男もゆっくりと、そちらにむかっているようだった
こいつは、結局、誰かを肉体的に傷つけるようなことをしようとした訳ではなさそうだ
爆発物の検知ができる能力者とかも、何も感知していないと聞いている
やはり、秋鳴の方の奴が気になるな




