探り合い 湘南
眠い
今朝は5時起き
楽をしたけりゃ、時間を逆行させておくとか過去に戻ってグッスリ寝てくるとかできるんだが、人としてちょっとどうよと思ったので早起きした
長いこと大人やってると、特に日本では、現場に早めに入るのが絶対条件なので、別に自分の仕事でもないのに早起きしているわけだが、朝9時湘南集合に間に合うように車で行くことを考えると、逆算で朝6時にカイコをピックアップしないとならん
一時間半~二時間で着く距離だから朝7時で良さそうなものだが、朝7時に出ると二時間半~三時間かかるという経験則からなんだけど、迎えに行く途中で祝日なのに気がついた
まぁ、現地に早く着いて、ハンバーガーショップにでも入ろう
なんて、運転は結局 秋鳴なんだけどね
秋鳴は、もちろんついて来たがったが、どう考えてもマネージャー役はできないし、今日はボディーガード兼運転手、但し、車はタレント仕様のファミリーカー
秋鳴が朝が強いのは助かる
カイコは本気で死にそうな顔で降りてきた
岩谷さんは、まだ寝てるそうだ
別に現場を珍しがる人ではないし、今日は掃除・洗濯日だそうだ
7時半過ぎには、藤沢でのんびりコーヒーが飲めた
夏休みだというのに中止になってるイベントが多く、今日の野外イベントの強行は止むにやまれぬ事情があったのかもしれない
音合わせは10時かららしいので、9時集合は、単なる点呼だと思うが、どんな奴がいるか分からないので、事前に会場周辺をチェックしておきたい
岩谷さんが居れば確かに便利だけど、集まった人数が多いと識別困難らしいし、誰がどの能力をどう使ってくるのか分からない
取り敢えず盗撮関係かなぁ
岩谷さんの同僚の出亀みたいなのがいると、カメラ向けられただけでアウトだ
8時半に会場に入ると、設営スタッフはもちろんのこと、追っかけファンらしきものも既に随分、周辺にいるようだ
しかし、この時間から、暑いね
今日は、ワイシャツにネクタイしようかとチョットだけ考えたんだが、Tシャツにしちゃって良かったよ
元々老け顔なんで、仕草さえ気をつければそんなに学生みたいにはみえないはず
そこは、長いこと社会人やってる場馴れ感がある
俺は用意した適当な名刺で、チーフらしきものに挨拶して、秋鳴をボディーガードとして紹介した
秋鳴には流石に迷彩服ではなく黒のパンツで来てもらったが、秋鳴のガタイを見て先方も歓迎してくれた
女の子達にくっついて守るには女子に越したことはない
うまく信用してもらって、少し離れた所にある楽屋周りから確認させてもらう
普通はここで水着に着替えてしまって、上からパーカーのようなものを来て、移動しなくてはならないようだが、流石に導線に神経を尖らせているようだ
イベント強行するにあたって、警備員も増員したとのこと、危険物を感知できる能力者も居るそうだ
秋鳴の探知能力は、本人がイメージできるものか、探し物の持ち主と接触してイメージを認識できるものらしいので、漠然と危険物と言われても探せないらしい
速度違反ガラミのものは、飛ばし屋として、研究してたらしい
てか、そんな物研究するなよ
あー、でもカメラかぁ
ん?今、あのカメラ動かなかったか?
楽屋用に確保されている建物の入り口を見張る監視カメラ
監視カメラねぇ
「秋鳴、あのカメラと同じようなものが他にどこにあるかとか、探せる?」
「自分の能力は、物そのものより誰のものかが重要みたいで、オービスとかだと、県警の所有物という指定と、これから自分が通過する場所で範囲を狭められたんですが、あのカメラ誰のでしょう」
はぁ、なるほど
「じゃあ、この建物の事務所に行ってみよう」
結局、備品を含む建物全体とイベント会場すべて、市の管理下にあるそうなので、それで絞って秋鳴に探してもらった
が、秋鳴が首を傾げてる
今の俺と比べると、背も高いしだいぶお姉さんなんだが、何気ない仕草はチョット可愛い
もっとも可愛いと言うより、鼻筋の通った美人系、いや、やっぱり男前系だ
ハリウッドに元格闘家の、ジーナ・カラーノという女優がいるが、それをもっとスリムにして縦に引き伸ばした感じ
腕の筋肉は勝ってそう
アクション女優になれるんじゃないか
「どうした?」
「いくつかカメラを把握してマーキングできたのですが、目の前のカメラがマーキングされてないんです」
「なんだろう、考えられるようことは・・・」
俺も首を傾げて、カメラを見ると
「あっ!」
自分のマーキングマップを見ていた秋鳴が声を上げた
「今度はなんだ?」
「今まで、マーキングされていたカメラの点が消えて、今度はこのカメラがマーキングされました」
どう言うことだ
・・・・・・・・・
「カメラ切換えろ」
四之宮ゆかりは、思わずトミーに命じた
「別に、カメラ見つめられたからって、こちらが見えるわけではないですぜ」
覗きに慣れたトミーこと闇木冨夫はそう言って眠そうな目で笑った
「それもそうだが、ちょっと確認したいこともある」
目の前のモニターは、設営中のステージに切り替わっている
ゆかりは、夕べ作戦を練っているとき、自分のしていることのおかしさに、ふと気づいた
奴らの中に明らかに、リセット能力を持つ奴がいる
それから、人を急激に老化させる奴
あと、記憶の底にあったものだが、腕が異様な状態になっていた男も、何らかの能力にやられたはず
どいつが、どの能力だ
とにかく独り拉致して記憶改変できれば分かることだが、リセット能力を回避する妙案が浮かばなかった
で、考えているうちに、ゆかりは、何で奴らをどうこうしようと思っているんだ?
と、今更なことに、思い至った
私は世界征服でもするつもりか
ゆかりは、ただ自分の身を守れるようにしたかっただけだ
今、連中と敵対している訳でもなく、そればかりか、連中はこちらのことを、何も知らない
イキナリ先制攻撃したら、藪蛇だ
ただ、リセット能力を持つ奴だけは、確実に把握しておきたかった
そいつと親しくなって、上手く頭を触れれば、それで後の連中は、一人づつなら何とかなるはず
そこで、またゆかりは苦笑する
結局、君臨したいんじゃないか
今のボスという地位が心地よくなってきてる
まずは、連中を観察することからだ
明日の会場と時間は分かった
こちらには、離れた所から場を制圧できる駒がいるから、何も、出っ張ることはない
ゆかりは、トミーに会場周辺のカメラを調べさせた
結果、会場を見渡せるカメラ二台、駐車場二台、楽屋として使われそうな建物にはいくつかあったが、出入りしそうな場所にあるのが三台、他にちょっと遠いが、海岸の監視用のカメラも操作して、イベント会場を捉えられそうなのが三台あった
もう夜になって本来なら見通しが利かないが、トミーはズームや画面の明るさ調整もできるので、明日の会場設営に入っているスタッフらしき人間はすでに確認できた
ということで、最近は、すっかり宵っ張りだったが、明日は、朝八時集合ということにして、解散していた
今朝、監視基地、なぜか、そんな風に呼びだしたトミーたちの寝ぐらに顔を出すと、まだ、二人とも寝ていた
「ボスに起こさせるんじゃない」
ログは必要ないが、とにかくトミーだけたたき起こして、それでも、まだ早いだろうと思いながらもカメラのチェックをしてもらっていると、結構、八時過ぎにはタレント連中が集まりだしているようだった
そしてみつけた
甲斐唯香だ
荷物持ちをしている男が伸二か
マネージャーみたいにみえるが、マネージャーは他にいたはず
でも、普通に業界関係者っぽい
あと、初めてみる背の高い女
その女が運転手らしいが、威嚇するような目をしてあたりをみているから、ボディーガードが似合いそうだ
甲斐唯香自体、たいしたスターでもないはずなのに物々しい
しばらく連中を追っかけていると
「あれ?」
とトミーがつぶやいた
「何かあったか?」
「いや、なんでもないと思うんすけど、何か、今、カメラを切り替えたときに引っ掛かりがあって」
あきらかに楽屋に使われている建物の入り口の映像が映る
伸二と背の高い女が、並んで立っているが、背の高い女が首をかしげて、こちらの画面を見た
伸二に対してなにか言ってる
二人がカメラを見つめた
「カメラ切換えろ」




