板橋の捕り物劇
新宿三丁目のこじんまりしたうどん屋に 俺たちは入った
「そのお揚げ大きい!」
関西風うどんに、ドンブリ全面覆うような油揚に、カイコが喜んでる
JRからは、歩いて10分弱だが、別に急いでいる訳でもないので、秋鳴もそのうち来るだろう
まだ、20時前だ
いや、現れた、、、
新宿通りに面した一階の店の窓
ブラインドのすき間から見えるのは
おま、なんて格好
店の入り口を確認した奴が、入って来た
「遅くなりました!」
いや、敬礼はいい
が、なぁ
「ひゃぁ、トッキーかっこいい!」
「秋鳴、あんたさぁ」
岩谷さんがまだ冷静で救われる
「いいから座れ」
秋鳴が、俺の隣に座る
まず、注文、説教はそれからだ
大丈夫心配するな、お前もうどんだけじゃ足らんだろう
ここはドンブリセットもある
「ところでだ、敵はジャングルにいるわけじゃないぞ」
何故、迷彩服だ
電車に一緒に乗られてた方が迷惑だったろ
「まぁ、でも、その格好じゃ、襲われないわよね」
岩谷さんがフォローする
「すみません、自分これが一番動きやすいもので」
カイコ、目をキラキラさせても駄目な物は駄目だぞ
20代に戻った俺の胃袋もうどんだけじゃ、物足りなかった
オッさんの時のつもりで、しかもこのメンツじゃ、うどん屋は失敗だったな
ただし、カイコを除くだ
「ふぅ、お腹いっぱいです」
「カイコは食事終わったら、送ってくからな」
「ふぇー」
「秋鳴、ちょっと、カイコの後ろに回って立って見てくれるか」
「はい」
「そのまま、片手でカイコの、そうだな、肩を掴めるか」
しかし、華奢だな
「で、そのまま釣り上げて」
「ふへー」
幼児じゃあるまいしとは思ったが、この二人ならひょっとしてと考えたら、見事に吊り上がった(笑)
「いいよ、秋鳴戻って」
「トッキー、ヒドイです」
岩谷さんは、クツクツ笑ってる
「おとなしく帰るよな」
「ふぁーん、ちゃんと残さず食べます」
そうなのだ、他の三人がそれぞれ二人前は食べているところ、一人お残し
いや、それも大切だけどな
「カイコ、君は、相手が能力を使って攻撃して来ると分かっている場合は、最大の秘密兵器だ」
「ふぁい」
「だけど、普通に暴力振るわれたら、一たまりもないよな」
「。。。」
「それに、秘密兵器が、いつでも出てきたら、秘密兵器にならないよな」
「ふにー」
「よし、それじゃ、シッカリご飯食べて、今日はシッカリ寝る、以上」
ということで、岩谷さんとカイコは、東中野まで、送り届ける
運転席には女ランボーみたいな奴が座っているが、こいつは、まぁ、しょうがないだろう
いや、昼間のブラウス姿じゃ分かりづらかったが、Tシャツを肩までまくり上げたこいつの筋肉すげぇ
秋鳴相手に立ち回れるのは、よほどの奴に違いない
すでに、美女木さんの仕掛けは終わっているとのメールが入ってる
今日来ない可能性もあるが、その時はその時
こちらは、事が起こってから動いても間に合う
秋鳴と一緒に現地近くで張り込むことにした
・・・
時刻は二十二時
秋鳴には、あくまでも捕まえるのは警察の仕事で、そのための罠をしかけてある旨、説明してある
今晩張り込むのは二十四時まで
先週、賊が入ったのは同じ土曜日の二十二時半頃だったらしいから十分だろう
秋鳴をベランダの見える側に、建物の構造上大きく迂回しないと見えない非常階段側に俺を、配置した
奴はマーキング済みだから、その辺にいることは分かっているが、ただ歩いている所を捕まえてもしょうがない
普通なら、俺が先に奴が侵入する姿を見つけるはずだったが
『不審人物、壁を下降中』
「了解動くな」
どういうことだ
俺はひとまず、時間逆行させ、現場確認に動いた
・・・
秋鳴は、上手く隠れているらしく、すぐに見つからない
身体も大きいし、派手な迷彩服なのに、そんな才能もあるらしい
ベランダへ近づくと、なんだあれは?
イモムシ?
屋根から頭を下に釣り下がる人影、、、
あの野郎、変な能力持ちやがったな
こりゃ、格闘になる可能性が出てきた
次は警官が上手い具合に来るようなタイミング合わせ
ここは、実は大通りを挟んですぐに警察署がある
なんで、そんなところで犯罪を、とも思うが、裏通り側は逃走経路が多いので、土地勘があるのなら、逃げやすいと考えてるんだろう
ましては、変な能力持ちだと、尚更、試したくなったんだろう
俺自身が不審人物に思われたくないし、すぐ近くに俺がいる状態でのタイムパラドックスがどうなるのか今一つわからない状況だが、ゆっくり警察に説明したいのもあって、十五分前に警察に連絡した
先週あった事件の経緯や、知り合いに見張りを頼まれた旨など、うまいこと説明して、警官がまず一人、自転車で秋鳴から連絡があった五分前に俺と合流できた
派手にサイレン鳴らされてパトカーに来られても、今は困る
秋鳴には、メールで状況説明済み
更に、俺と入れ替わって、大通り側に移動してもらっている
警官には、屋根の上に怪しい人影が見えたと伝え、現場に誘導していく
警察沙汰を嫌う人も多いが、俺の実家は何かと言うとすぐに警官呼んだり警察に相談する家だったので、俺自身が警官慣れしてるというか、実は子供の頃、警察で剣道を習わされていたので、まぁ、こんな時も、気安く接しられるわけだ
「ほら、あれです」
「何だあの野郎は」
「今、相棒の元自衛官が、大通りの方にいるんですが、応援要りますか?」
「一般の方が手を出すのは危険だけど、元自衛官か、まぁ、こちらも応援呼ぶんで、危ないことはしないように」
若い警官は、こちらも若いので気安く話しかける
しかし、そうこう言ううちに、犯人はぶら下がったまま、洗濯物に手をかけた
「こら、何をしてる!」
警官が叫びながら駆け出してしまった
俺?
俺は罠を張るのが仕事
犯行現場を警官に確認させることが、本日のメインイベント
奴がどこに逃げようと、マーキング済み
秋鳴にも視認できる奴の持ち物をマーキングするようには伝えてあったが、一回、巻き戻しちゃったからな
っと、あの泥棒壁を這い上がって飛び移ったよ
ヤモリか
違うわ、ありゃ、例の蜘蛛男だろう
そうすると、秋鳴でもヤバい
「秋鳴、聞こえるか」
「はい、今、自分の画面にも、奴らしい、マークが出てます」
「奴を見たのか?」
「いえ、まだこちらには見えてません」
どういう訳だ?
まぁ、考えるのは後だ
俺は、細かく時間を区切りながら、奴の逃走経路が見える所を追って行く
しかし、走ってはいないが、実際には、奴の三倍は動いているので、それなりに疲れるぞ
いくつかシミュレートして、奴が離れた場所に飛び移ろうとした瞬間に、片足をロープでしっかり縛り付けて、もう片方を、あちこちから見える電信柱に結え付けてやった
あー、疲れた
奴の本来の能力なら、ロープぐらい容易く切れるだろうし、何処かに糸を絡めてバランスを取れたろうが、そこは、取得したばかりの能力
慌てた奴は、モロに顔面から落下してくれた
ここでいつもの姑息な仕掛け
パンツのゴム切ったり、靴脱げかけさせたり
だから、野郎の身体なんか触りたくないと言ってるのだが
まぁ、イロイロ絡まっちゃたりしてる状態で、離れる
警官も必死でやって来るが、あんまりうかつに近づくと糸にやられるよう、とか思って見ていたら、反対側から、秋鳴が既にやってきていて、思い切り蹴りを後頭部にかましてた
蜘蛛男の能力が、どれ位身体能力強化しているかわからんが、ありゃ、一般人ならご臨終だぞ
仕方ない加勢しとこう
モチロン、時間逆行させてからね
肩、肩、肩、肩、肩
足、足、足、足、足
少しは効いてくれるかなぁ
さて、後は、警察官頑張れ
秋鳴は、そんなに張り切るな
やっぱり、かなり身体能力も強化されているらしい奴は、それでも抵抗しているが、ダメージは入っている模様
ていうか
「召し捕ったぁ!」
あちゃー、この警官能力持ちだよ
イキナリ犯人縛り上げられてる
そりゃ、張り切って一人で来るわな
・・・
なんだかんだ、事情聴取を受け、仕掛けてあったビデオカメラのデータも渡して、俺ら三人は、深夜のファミレスで、ほっとひと息
もちろん、もう一人は、美女木さんね
岩谷さんに報告した返しに、明日のことで、また別のお願いされちまったが、今日は、もう帰ろうね




