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編集者 四之宮ゆかり(しのみやゆかり)の憂鬱

頭が痛い

夕べ飲みすぎた


自室で目を覚ました四之宮ゆかりは、窓の外から聞こえてくる嬌声に顔をしかめた


朝っぱらから、騒ぎやがって

あいつらの頭の中身を書き換えてやりたい

時計を見ると11時を指していた


いけない寝すぎた



幼児向けの雑誌編集者のゆかりが、こんな時間まで寝ていることは滅多にない

今日は取材先に直行するという名目で、朝寝しても大丈夫と、夕べは羽目を外しすぎた

約束時間は午後一時、お昼に出ればギリギリ間に合うはずだが、流石にシャワーぐらいは浴びたいと思った


普段はほとんどパンツスタイル

背も168cmと高めで化粧っ気がないため、男の子みたいとよく言われる

しかし今日の相手先はそうもいかない

急いで支度をして慣れない化粧もして、遊び着以外では一枚しか持っていないスカートを穿いて出かけた


急いだお蔭で、最寄り駅に着いたのは12時30分になる前だった


ここに着くまでの間にも、頭の中身を書き換えたくなるような奴ばかりだった


しかし、自分の人生、どこかで間違えた気がする


理数系も決して苦手な訳ではなかったのだが、本が好きだったので、何となく文学部を志望したところからだったか


最初に呆然としたのが、大学生にもなって、男の容姿について騒ぐバカ女どもがいたことだった

そんなのは、だいたい中学生が限度で、高校生でも私が居た学校では馬鹿にされた


法学部や、政経なら、もう少しはマシだったかと後悔した

偏差値的には充分合格圏だった


就職活動でも失敗した

自分に自信がありすぎたため、いらんところで、面接官と論議したり、、、


残念ながら大手と呼ばれるところほど、保守的で男性社会のようだった


唯一、君は面白いねと言ってくれた会社が今の会社だ

教育はもう少しまともにならないのかみたいなことを口走った気がするので、中高生向けの教材作成部署にでも配属されるかと思ったら、幼児教育の方だった


ここは女性社員が八割

ゆかりみたいなのでも、面白がって採ってくれる訳だ


しかし社外の先生様達の機嫌を取って、原稿を集めないといけないのは、どこでも同じだろう

ビックリしたのは、出版物を扱ってるくせに、著作権に関してゆかりより素人みたいなのが沢山いたこと

ゆかりは学生のうちに二級までだが、知的財産管理技能士の資格は取っていたが、配属された部署には似たような資格でも取っているような人はいなかった

そりゃ、先生様方に怒鳴られる訳だ


結局、難しい先生ほどゆかりにお鉢が回って来て、今日、訪ねて行くのもそんな先生様のところなのだが、、、


この先生様が、セクハラの権化みたいな爺さんだった

子ども向けの作品を書くのが、こんな人物だと知れたら、世のお母さん方はなんと思うだろうか


最初に言われたのが

「女のくせにズボンなんて履いて来るとはなにごとだ!」だった


そう言う訳で、ゆかりは、今日も一枚しか持っていないスカートで来てるわけだが、さすがに毎回同じ服装だと、また何か言われそうだ

あのクソジジイの頭の中身も書き変えてやりたい


駅に降り立った時も、そんなことを考えていた気がする

その時、聞こえてきたのがあの音と声だった


最初は駅の構内アナウンスかと思った

それにしては変なことをいう


能力?

そんなもの貰えるなら、ほんとに他人の頭の中、書き変えてやるよ


時間が無ければタクシーに乗るとこだが、歩いても二十分くらいなのでと、歩き出した


タバコ咥えて、火を点けようとしてるおっさんがいる

中々点かないようだ

ゆかりはそれほど喫煙に目くじらを立てたりはしないが、目と鼻の先に喫煙所があるから、そこで吸えとは思う

こいつも頭の中書き換えた方がいい


そんな事を考えてたら、またあの音がした


駅からはすでに離れている


周りのみんなもキョロキョロしていたり、中には熱心に願い事をしているようだったり、、、


ゆかりは、別に誰かが自分の願い事を聞くわけでもなかろうと、せっかくだから願ってみた


他人の頭の中をかきかえられますようにと


・・・


「うぉ!」

おっさんのタバコが火を噴いた

慌てて、口から落としている


何、まさか?


試しに、おっさんに向けて、タバコが嫌いになるよう、念じてみた

でも、おっさんは、タバコを拾って、うまそうに、くゆらせ始めた


やっぱり無理か

それともやり方が違うのか


ブツブツ考えているうちに、作家先生様の家に着いた


書斎に通された

今日は先生様しか、いないらしい

何か嫌だな


「全く、毎度、同じ服装だな」

案の定だ

とりあえず、正座して、説教を聞く態勢になる

「ちょっと、色っぽい服に、、うおっ!」

「えっ!」

ゆかりの着ていた服が突然、上はチューブトップ、下はマイクロミニに変わった

ブラひもは出てるし、この格好じゃ、下着も丸見えだ


「そ、それだよ、四之宮君」

クソ先生は、やにわに、ゆかりにおそいかかった


こいつ、能力使いやがった

なら、絶対自分にだって使えるはず

ゆかりは必死に考えた


何だ、どうする

のしかかってきたクソジジイの額を抑えて、必死で、

<ゆかりへの関心を失くす>ように願った


クソ先生は、一瞬、キョトンとして、姿勢を正した

しかし、改めて、ゆかりを見つめると、

「おー、美味しそうなおなごが、」

と言いながら、また襲いかかった


確かに効いた

でも、まだ足りない

頭の中を書き変えるんだ

考える時間が欲しい


<とても眠かったことを思い出し、チョッと横になるところだ>


「ふわ、すまん、チョッとだけ横にならしてくれ」

あろうことか、ゆかりにひざまくらして、イビキをかき始めた


鳥肌が立つが、今は考えろ

こいつが二度と自分に手を出さないと考えるように


ゆかりは、生涯で一番頭を使った気がしていた


頭の中身を書き換えるんだから、頭に触らないと駄目だとは理解した


<四之宮ゆかりは、自分が大変世話になった方の、娘さんだ、だから何をおいても最大限の便宜を図り、助けなければならない>

ゆかり自身に世話になったというのは無理があるだろうから、こうしてみた

あとは、認識と次の行動だ


<四之宮ゆかりが、どんな服装をしていても、全く目に入らないし、気にした事もない>

<一眠りしたので、気分爽快で仕事に集中できる、四之宮君を待たせないように、サッサと原稿をあげて、渡してあげないといけない>


はぁはぁ、ゼェゼェ

何、この疲労感


幸い作家先生は、これは失礼と、立ち上がると、サッサと机に向かってくれた

案の定、原稿には何も手をつけてなかったか


安心すると同時に、ゆかりは気を失なった


・・・


「ふー、終わったよ四之宮君」

気がつくと、作家先生が、満足そうに息を吐くところだった


時間を見ると午後三時近く

二時間近くも気を失なっていたらしい


能力の使用によるのか、、、

使い方を考えないといけない


しかし、改めて、自分の格好を何とかしないといけないと思った

能力のお陰で作家先生は、ゆかりの格好に何の反応も示さないので、今更その頭をいじくる気にもならない

他の女が被害に遭う可能性はあるが、それは知ったことではない


帰り道ですぐに着替えを買わないと


ただ、服装のことを、後回しにしたことが、次の事件に巻き込まれるキッカケになった


駅まで行けば、洋品店くらいあるだろうと、ゆかりが駅前のロータリーを歩いていた時だった


イキナリ、

「お、お、ビッチ捕まえたじょ」


汗臭いデブが目の前に現れた




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