秋鳴慧(ときなりけい) 見参
「ふわー、あの人たちいますぅ」
「ふん、まったく昼間からイチャつきやがって」
相変わらず岩谷さんの反応は面白い
こっちに気づきもしない、二人はほっておくことにした
結局、どっかにお泊まりだったのかね
「ねぇ、結局あの変な生物はなんだったんだろう」
「彼女は結局、一晩中引きずり回されてたんだろ」
「そうね」
「康介ってのが結局何を考えたのかは分からんが、少なくともレイプされたはずの彼女の態度は解せなかったろうな」
「しかも、彼女のことを見続けなきゃいけないんでしょ」
「そう、そして、おそらく彼は、彼女の体内に残されているはずの奴の物が許せなかったんだと思う」
「それってまさか」
「考えたくもないんだけどな」
「ウゲー、触んなくて良かった」
俺もそれ以上、このことには触れたくない
「みんな大丈夫そうだね、車に戻ろうか」
「ふぁ!」
ナニゴト?
「ポーチが無い!」
「車の中じゃ無くて?」
「ふぇーん、さっきまで、持ってました」
さっきと言っても、夕べだが
「あっ、そういえば」
「探してもらいましょう!」
二人が、公園の外に向けて走り出す
って、あぁ、まぁ二人の考えていることは分かるが、どうすんだ
女の子二人に任せて、タラタラ公園を歩く
ベンチでホームレスが寝てる
若い母親達も、問題ない
うん、ここは平和にみえる
公園の外に出ると、どういう風に話をつけたんだか、女三人、仲良く話をしている
女子のコミニュケーション力は、伺いしれない
もっとも、おおかた、岩谷さんの仕業だろう
「ふぇー、お仕事探してるって」
おい、いったい何の話をつけてるんだ
「あっ、どうも初めまして、三嶌です、えーっと」
「派遣さんの仕事が、切れたんだそうです。雇えますよね」
「それは、ご本人の希望も聞かな・・」
「ぜひ、お願いします」
うわ、また、ツッコミタイプかよ
いきなり俺を見つめて握手してきた
まだ、名前も聞いてねえぇ
しかも、こいつも握力強いよ
さっき見たときは倒れてたからよく分からなかったが、デカっ
まぁ、ヒールを履いているせいもあるが、170cmの俺より10cm位高くみえるぞ
「いっ、いや、待った、それより、カイコ、カバン見つかったのか?」
「ふぁぁ、忘れてましたぁ」
脱力
話を良く聞いてみると、どうも、目の前のデカい彼女は自分の能力をうまく使えていなかったらしい
そもそもオッチョコチョイで、良く失くし物をしていたらしく、探し物の能力を願ったらしいんだが、、、
まぁ、オッチョコチョイらしいのは、ちょっと話せば分かるけど(笑)
確かにマップを使うことに気がつかないと、探し物の能力もあまり役たたないかもしれない
マップの使い方を教えてあげると
「おー~~」
妙な雄叫びをあげる
感動してくれているようだ
カイコのポーチは案の定、駐車場にありそうだ
昨日から、ほったらかしかな
探し物子の名前はトキナリケイ・秋鳴慧
自称20歳
岩谷さんがスリーパーホールドを決めに入った
お前ら、馴染むの早すぎるよ
秋鳴さんは、仕事が決まるなら、後の用事はどうでもいいらしく、従いてきたがった
いや、雇うとか言ってないんですが・・・
とりあえず、彼女の能力がキチンと発動しているかを確かめるため、車をほっておくわけにもいかないから、みんなでゾロゾロ車へ向かう
「うぉ!ハチロク!」
「車好きなの?」
「自分、B級ライセンス持ってます」
えーっと、君はナニモノ?
「じゃあ、君、運転して」
ドライバーが手に入った
って、それで良かったのか(笑)
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なんと、彼女は元自衛官だった
どおりで、岩谷さんのスリーパーホールドを平然とぶら下げていたわけだ
高卒で3年自衛隊にいて、大型の免許までは取ったんだが、女性だと戦車には乗せてもらえないことがわかると、辞めたらしい
って、そこですでに二十歳過ぎてるだろ
そもそも女性自衛官は狭き門で、相当優秀なはず
だから元自衛官じゃ、仕事なんていくらでもありそうなもんだが、なぜか、普通の事務のOLがやりたくなったとかで、でも、それじゃ派遣の仕事しかないよな
派遣を転々とする日々だったそうな
さすがに自衛隊じゃB級ライセンスなどは取らしてくれないので、自費で取ったらしいが、結局車を手に入れるお金まで回らず、カタログ眺めてる日々だそうだ
変な女(笑)
で、戦士が手に入ったと
ちがーーーーう
そういう番組じゃねぇ
迷宮には潜らんぞ
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カイコのポーチは、駐車場の隅でみつかった
車の裏をすり抜けて走り回っていたけど、まぁ、奴に突っかかっていった時にでも引っかけて落としたんだろう
中身も無事のようだ
「なぁ、四人乗っちゃうと、さすがに、荷物載らねぇなぁ」
「あっ、何やられるんでありますか」
いや、あんたいつもそんな口調なの?
そりゃ、普通のOLさんやってたら浮くぞ
「ふぅ、私の荷物を取りに行くところだったんです」
「自分、荷物持ち得意です」
いや、それは分かる
岩谷さんほどガッチリしている訳ではないが、近くでよく見ると、二の腕とか女性とは思えないほどエラク筋肉が発達してるし、手も大きくてごつい
「良かったら、三人で行ってくれば?女性同士の方がいんじゃね、俺、事務所戻ってるし」
「伸二君、ナイスよ」
「あっ、あっ、そんな、自分やっぱ邪魔でしたよね」
「全然、そんなことないよ、後で車返しに行けばいんでしょ」
「そういうこと、道はだいたい分かるでしょ」
「いや、私は駄目だけど、秋鳴さんなら、探せるんじゃない?」
好きにして
俺は新宿駅で降ろしてもらった
なんかあったら連絡くれるでしょ
女の子三人とはいえ、それぞれ結構、凶悪だぞあいつら
さて、転移して帰ってもいんだが、久しぶりに電車に乗るか
しかし眠くなってきた
原宿まではたったの5分
しかも、今日は出歩く奴も少ないらしく、土曜日も重なって、人の出は少ない
なのに、なぜ電車まで間引き運転
場内アナウンスは能力の不使用を訴えている
夕べは相当混乱したんじゃなかろうか
勝手に電車を走らせるような奴がいても驚かんぞ
心なしか、みな、お互いを警戒し合っているようにみえる
やっぱ、人混みに出てくるのは避けた方が良かったなぁ
反対側のホームに頭から煙を噴いている奴がいるぞ
うわ、見ないようにしよう
ホームギリギリには立ちたくない
なるべく、みんなの様子が見えるところに陣取る
「おら、てめえ」
なんか女に絡んでる男がいる
ギャッ
うわ、女の目から光線
俺は見ない、俺は聞かない
だめだこの世界
『繰り返しお客様に申し上げます。駅構内でのいかなる能力の使用もお止めくださるようお願い申し上げます。』
もう、アナウンスがなんか逝っちゃってるよ
駅員だって、たいがい能力持ちいそうだぞ
みんな大人しくしような
電車やっと来た
乗った
うぁ、やっぱ降りようか
なんだ、この妖気漂う車内は
見た感じはいかれた奴は少ないさ
が、考えてみると、今日あたり出歩いている人間なんて、能力を試したいとか、自分の能力に自信のある奴ばかりじゃねぇのか
とにかく人と顔合わせないようにしよう
『車掌は変わりまして、わたくしセキドメがご案内申し上げます。皆様には車内のマナーお守りいただき誠にありがとうございます。お客様にお願い申し上げます。車内での能力使用は堅くお断わりいたします。車内での不審人物、暴力行為など見かけましたら、駅係員までご連絡ください。なお、私の能力は、車内での迷惑行為を働いた人物を強制的に車外に排除する能力です。皆様のご協力をお願いいたします』
うゎ、車掌が言っちゃったよ
てか、車内の妖気が薄れた(笑)
お陰で、安全に原宿駅にたどり着けた




