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閑話 ある秘書官の苦悩

はぁ、また、今日も1日が始まる


女房にどやされて、重い身体を引きずって家を出た


前任の秘書官やら、その取り巻き連中が不祥事を起こし、密かに処分されてホトボリが冷める期間のツナギで、私がイキナリ首相秘書官に抜擢されて、まだ1週間


「君は何を聞いても、調査中しか言えないんだね」

首相には呆れられてるが、そもそも私みたいな小物を、こんな地位につける方が間違っているのだ


もちろん、そんな反論ができるわけもなく、ウジウジ下を向くだけ


家に帰って、最初に秘書官就任の話を聞いた女房は、一瞬怪訝な顔をしたが、それでも本当のことだと分かると、あろうことか、知り合いに片端から、電話を始めた


「あなた、石にすがりついても、この地位を守るのよ!できなきゃ、その地位にいるうちに死になさい。」


それだけ言うと、彼女は、収入がどれくらい上がるのかを、色々調べ始めていた


私の地獄の一週間の始まりだ


そして、いつ終わってもおかしくないこの地獄の先に、終わること即、死亡宣告を出されている身だった


あぁ、せめて、首相の質問に的確に答えられるようになりたい、、、


朝からそんなことを考えながら登庁する

私のことなど、端からバカにしているという態度を隠さない部下たちから、報告書や連絡事項がつぎつぎ上がってくる


限界が近づいた昼休み

部下たちは、さっさと休憩に向かってくれた


この時間が唯一、午前中の要件を考えられる時間だ

午後には、官邸へ行かないといけない


今日は何を聞かれるだろう

自分に的確に答えられる能力があれば、、、


そろそろ支度をしようかという時、あの変な声が流れて来た


---------


私の人生が変わった


その時、周りには誰もいなかった


私はとうとう自分が狂ったのかと思った


ふん、狂ったなら狂ったでいい


そんな能力与えられるものなら与えてみろ


5分も待ちきれず、私はつぶやき続けていた


-------------


気がつくと、部下たちが戻ってくるらしいざわめきが聞こえてきた。

いけない、出かけないと


正気を取り戻した私は、慌てて官邸に向かった


--------------


その後のことは、私にとって、忘れられない一場面となった


首相は、私の顔を見るなり

「あれは、何だったんだろうね」

もちろん、何の期待もしていないような顔で、尋ねてこられた


そして、信じられないことに、私は直前まで、自分も知らない"事実"について、首相に語り出していた


それから一時間ほど、首相と問答し、また、他の人からも質問されて分かったこと


私が答えられるのは、首相の質問だけだった

他の誰に、同じような質問をされても、答えにつまってしまう


さっき私自身が首相に回答した通り、明らかに能力によるものだった


それともう一つ

答えられるのは、あくまで調べれば分かる"事実"に限るようだった


首相も、私がどんな秘密でも暴露できる能力なのか、疑いを持たれたようだが、引っ掛けで、おそらく首相しか答えをご存じないであろう質問をされてこられたのには、答えられなかったし、他の大臣に関しても、突っつけばすぐに調べがつく程度の秘密しか、答えられないようだった


しかし、かえってそれで首相には安心していただけたらしく

「君がすぐに返答できるようなスキャンダルを持つ人物さえ、マークしておけばいいから助かるよ」

とおっしゃっていただけた


首相はもう、私を手放すつもりはなさそうだ


夕方の記者発表後、すぐにまた質問を行なうから、待機しておくようにとおっしゃられた


同時に、私の返答の裏を取るような指示も出しておられた


首相が交代した時に、この能力がどうなるのか分からないが、今はこの首相の機嫌を取ることに全力を尽くそう

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