伸二語る
ガタガタガタ
おいおいおい
揺さ揺さ揺さ
おーおーおー
決して、胸派ではないのだが、やはり揺れるモノはみてしまう
いや、それより、階段こけないか心配で見てるだけだ
そういや、昨日来たんだっけな
どうも、未来というか過去というかややこしいが、俺が知ってるらしい、決して静かではない鼎静佳が、唐突に現われた。
「スゴイね、シンジくん、スゴイね、知ってたの、ねぇ、アレ、スゴイね」
落ち着きなさい
「えーと、静佳さん、コーヒーでも入れましょうか」
「コーヒーあるの? どうせインスタントでしょ」
良くご存じで
「いいわよ、私いれる、お湯湧かしてあるんでしょ。」
揺さ胸姉さんは、勝手知ったるというか、俺がインスタントコーヒーをしまっている場所に迷わず行って、カップを用意している。
「はい、ブラックよねブラック」
俺の前にカップを置くと、どこからか持ち出した椅子に腰掛ける。たぶん彼女の定位置なんだろう。
「はぁぁぁ~。それでね、それで、あれ聞いたよね、やったよね、願い事」
落ち着く間もないじゃないか
「シンジクンは、シンジクンは、どうしたの。あたしね、お願いしたよ。えーっと何だっけ?」
そこ、口開けて、上向いてポカンとしない。
女子高生のころは、それで可愛かったんだろうけど、姉さん、今いくつよ
「はっ!今、失礼なこと考えた?考えたでしょ!そうそう、病気や怪我、みんな飛んでけーだっけ」
いや、それじゃ、あちこちにまき散らしませんか?
「違ったわ、とにかくね、隣のお婆ちゃんのリューマチが治ったのよ。ついでに、なんか私も肩こり治っちゃって、元気ハツラツよ」
まぁ、確かにその胸じゃ肩は凝るだろうな。
でも、無事に能力使えてるみたいだ。
「シンジクンは? どっか悪いところ無い?」
オッサンの時なら、沢山あったんだけどね
「で、報告に来てくれたんだね。ありがとう」
「何よ、他人行儀ね。ほんと、センセーの悪いところばかり似てんだから」
彼女の中では、俺は、そのセンセーとかの息子になってる
「センセーとは連絡取れたの?」
「いや、どうかなぁ」
「あっ、TV買ったの?地デジが映んないの、放置してたとかじゃないのよ、でも、さあ、勝手にできないし、でしょ、でしょ」
次の話題に移ったらしい
「スゴイねぇ、えぇ、危ないから使ってはいけませんとか、言ってるよ、あたしもう使っちゃった」
「静佳さんのは大丈夫そうじゃない? でもあんまり言いふらしたりしない方がいいかも」
「えー、あたし、会った人に全部言っちゃってるよ」
そうだろうな
「ほら、勝手に治療すると医師法違反とかあるんじゃない」
「えっ、たいへん」
「まぁ、お金取ったりしなければいいのかなぁ、するとしても親しい人だけにした方がいいよ」
「うん、分かった」
一応、ここは現代日本だから、色々制約があるぞ
「はぁ、なんかニッポンはどうなっちゃうの」
「いや、別にどうもならないと思うよ」
「だって、だって、危ない能力とかいっぱいでしょ」
「そんなことより、これは、みんなの人間性が良く分かるチャンスだよ」
「へっ?」
「偽善者とか、口だけワルとかもそうだし、環境のせいとか、やたら自己正義を振りかざす奴とか」
「どうなっちゃうの」
「だって、自分が一番したかったことはなんだったのか、もらった能力でばれちゃうよ」
「でも、マジメに聞いてない人とかもいるでしょ」
「俺から言わせると、そういう人は、結局、なににも、マジメに取り組んでない人だ」
「なんでそうなるの」
「例えば、マザーテレサの様な人がこの日本にいたとしよう。どんなに小さな可能性だって、他人を助けられる可能性につながるなら、まずなにかしら試してみると思うよ」
「そんなもんかなぁ」
「話は変わるけど、最近の電車の中での一番のマナー違反はなんだと思う」
「えーっと、ケータイ?」
「うん、いわゆるスマホやタブレットの電源が入っていることに」
「やっぱり!」
「でかい声で注意して、しまいにはキレ出す、年寄りだ」
「へ?へ?」
「静佳さんは、マナーってなんだと思う」
「あーん、シーちゃんって呼んで (はぁと)」
斜め下から突然突き上げるなよ
「し、シーちゃん?」
「きゃぁ、久しぶり、嬉しい」
「い、いや、それで、マナーの話なんだけど」
「迷惑かけないことよ」
「そうね。少なくとも、自分の周りにいる人に不愉快な思いをさせないことでしょ。ギャーギャーわめき散らす人が、マナーを守ってると思う」
「そっかぁ。でもでも、あれって、危険なんでしょ」
「あの携帯電話の電源を切れっていうのは、元々15年も前に、総務省が発表したガイダンスを元に、鉄道会社が、事なかれ主義の横並びで、始めた啓蒙活動なんだよね」
「やっぱり駄目なんじゃ」
「当時の携帯、今で言うガラケーは、発信する電波が、今のものより少し強かったんだよ。その後いわゆる第三世代っていう携帯電話からは、その電波も弱くなって、総務省の求める基準以下になってる。当然、後から出たスマホやタブレット類もその基準満たしてるよ」
「えっ、えっ、でも、総務省とか」
「うん、もうとっくにそのガイダンスは撤回しているね。だいたい、何か本当に問題になったって話、聞いたことある?」
「えー、でも、やっぱり怖いと思う人いるんじゃ」
「そう、啓蒙活動のマイナス効果でね、心理的圧迫を受けて、電車に乗れなくなってしまった人がいるという話は聞いてる。
でもね、本当に危険なら、国が、鉄道会社と電話会社に、シルバーシート付近では自動的に電源切れるようにするなんてことは、技術的にはできるんだぜ」
「それって」
「そんな危険なことを、それぞれの人のマナーに頼るなんてのおかしいでしょ。大きな声で通話するってのとは、全く別問題だよ。特に電話機能のないタブレットなんて、全く問題無い」
「でも、電車で放送とかしてるよ」
「いや、まもなく、無くなるよ。さすがに、困った年寄りの弊害の方が増えてきたからね」
「そうなの」
「で、俺が楽しみなのは、そういった、訳の分からない自己正義とか振り回すような輩が、どんな能力を願ったかなんだよ」
ちと、色々と思うことがあって、語ってしまった
実は、本当に、変なばあさんに絡まれて、言い争いをしたばかりだった
「そうだ、お子さんは?こういう日は、早めに引き取った方がいんじゃないの」
「それそれ、それで、あたし早く出てきたんだった。こうしちゃいられないわ。またねシンジくん」
「あぁ、カップとか俺が洗っとくから、ほっといていいですよ」
椅子だけは元の位置に戻した静佳さんは再び、ユサユサと帰って行った
竜巻みたいな人だな
トルネード静佳とよんでやろうか
でも、ほんとに竜巻発生させる能力持ちとかいそうで、イヤだな
TVもガチャガチャやってるが、総理会見くらいまでは、見なくてもいいかなぁ
岩谷さんが出てこないかとか思ったんだけど、もう引き上げたのかなぁ
とか、考えてると、電話が鳴った
その岩谷さんだ
仕事お終いなのかなぁ
「もしもし」
「あっ、伸二くん、来たよ、来た、あの爆弾魔から電話」
忘れてた、奴のスマホを岩谷さんに預けてたんだ
「超気持ち悪い奴だった。ほんとに、あいつと会うの?」
「えー、結局どうなったの。」
「あんまり長話できないけど」
と言って、岩谷さんは、例の就活生爆弾魔・七危安威とのやり取りを教えてくれた。




