カイコの能力
「ふへ、へっ、何、どうなってるの」
うろたえているカイコの腕を掴んで、岩谷さんは、ズンズン進む。
「ふぅ、シズさん、痛いです。」
カイコの名の通りか、何か、この子はいちいちしゃべる前に糸を吐き出すかのようの息を吐く
でも、確かに、無茶苦茶にしてやりたいほど可愛い。でもなぁ、こんだけ可愛いと、どうも商品って感じにしか見えないんだよなぁ
手を出すなの商品な
「それで、カイコ、さっきの声は聞いたよね」
この二人は、本当に仲が良いらしい
「ふわぁ、あのピンポンポンポーンって奴ですよね」
「そう、それで何を願った?」
「ふぅ、それは、朝、シズさんに聞かれてて覚えてたけど、私たち収録中だったんで、あっ、でも私の出番は終わってて、それであの変な声がスタジオ中に響いて」
あぁ、そうか、スタジオの中にいたらそんな感じか
「シズさんの言ってたの、これかぁって、でも、宣伝にしては、よそのスタジオまで流すのかとか思ったけど」
「それはいいから、で、なんてお願いしたの」
「ふぅ、やっぱり、悪いことしてからじゃ遅いですよね、だから、
『悪いことした人を見つけたら、全部無かったことにして、もう二度と悪いことができなくなるようにできますように』ってお願いしました。」
おっ、コレはデカしたなのか?
岩谷さんが微妙な顔をしてる
「そっか、そういう能力なのか」
「ふわぁ、どういうことですか」
「うーんとね、私は、人がどんな能力を持っているか分かる能力みたいなの」
「岩谷さんは彼女の能力がなんだと思うの」
「なんか、敵を懲らしめてやるみたいな感じに思えた」
そりゃ、水戸黄門だろ
いや、ファンが多いからそういう能力をゲットした奴もいそうだ
「ふぇ、シズさんこの人誰です?」
おい、今頃気がつくか
もしかして残念美少女か
このキャラを前面に出せばそれはそれでもっとファンはつきそうだ
「彼は伸二君。なんかこんな風に、時間止まったみたいにできるみたい」
「ふぁ、それっていやらしくないですか」
「おい!」
さすがに口をだすぞ
「シズさん、怖いです」
「大丈夫、悪いことをしたら懲らしめてやりなさい」
こいつら
二人あわせるとますます天敵くさい
「なんか、悪いこと考えてます」
「君ねぇ、初対面の人に向かっていう言葉ではないよ。俺は女性に困ってないし」
「「えぇ」」
なぜ、口をそろえる
俺が若かった頃は、別にイケメンが唯一の基準じゃないぞ。
今だって、そんなこと考えてるのは、ネットの向こうで引きこもってる奴だけだ
「それはそうと、他の子たちも、それぞれなんか能力を持ったのかな」
俺は気になっていることを聞く
「それが、その音が聞こえてたときも収録中だったから、ディレクターさんが怒り出しちゃって、
『音声なにやってんだ』とかで、音声さんも『こっちは関係ない』とかで喧嘩になりそうで」
あっ、そうね、TVの人ってそんな反応するかも
「ふぅ、いったん収録が止まったので、プロデューサーさんが、なんかあたふたしてたし、アシスタントさんはおろおろしてるし」
「うちのチームにもとばっちりがいってそうだなぁ」
岩谷さんはそういう心配もするか
「それでね、いったん機材調べるとかで、中断してたら、またあの声がしたでしょ。
あたしはシズさんから聞いてたから、ちゃんとお願いしたんだけど、他のメンバーやスタジオにいた人たち全員それどころじゃない、って感じでした」
で、今ようやく落ち着いて、収録再開し始めたところだったらしい。
「あっ、ねぇねぇ、特に何も願わないとつまんない能力になるんだっけ」
「えっと、それは俺に聞いてるの」
「例えば、『ポケットをたたくとビスケットが二つ』とか」
「それって、童謡でしょ?」
「そうなの?なんか、そんな能力がさっき見えたんだけど、はてなマークだったのよ」
岩谷さんもさっきスタジオに入った短い時間に、何人か観察してたらしい
「毎日違うマニキュアが塗られてるとか」
「はぁ、まぁそれはそれで楽しいかも」
「でも、たぶんそれ美術のおじさんだったような」
うーん、ギリギリセーフかもしれない
「ふぅ、それで、私は、どうされちゃうんですか」
俺はさっきの爆弾魔になりそうな男の話をする
「で、何か起こったら君に対応してもらえないかと思ったんだよ」
「ふへぇ、シズさんどうしたらいんですか」
「懲らしめてやりなさい」
やっぱり黄門様をやりたいのは、あんただろ
「じゃぁ、連絡先を教えてもらえる」
「ひゃぁ、ダメですそんなの、シズさん助けてください」
殴りたくなってきた(笑)
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「なんでもいいが、どっちにしろ凶悪な能力が見つけられるのは、岩谷さんだし、
岩谷さんが甲斐さんにお願いすればいいことだから。
まぁ、二人で対応しにくかったら、岩谷さんが俺に連絡してくれればいいだろ」
「う~む」
岩谷さんの目が俺をスキャンする
「シズさん、この人、なんか役に立つんですか」
キリキリしてきた
「うーんとねぇ、なんか隠し事してるんだよねぇ、伸二君?お姉さん信頼できないかなぁ」
「ふぁ、やっぱり悪い人ですね」
「君たち、君たち二人の気持ちはよく分かった。俺が悪い人かどうかはおいといて、
俺ができるのは、時間稼ぎだから、取りあえず、考える時間が欲しいときとか、場合によっては
取り返しのつかないことが起こっちゃても、なんとかなるかもしれないし、そんな時連絡してくれれば
いいよ。」
「ふーん、そちらからは連絡してこないんだ。」
「別に正義の味方をしようとは思ってないからなぁ」
「いや、私に逢いたくなるとかさ」
岩谷君、君は、結局何が言いたいのかね
「はぁ、まぁ、忙しそうだし、男には困ってないんでしょ?」
「そ、そうね」
「それよりさ、自分たちの能力をあまり他人に知られない方がいいよ。適当にごまかしてさ」
「ふぇ、どうしてですか」
「二人とも、結構、強い力だから、ほんとに悪いこと考えてる人に知られると、危険だよ?」
「シズさーん。この人やっぱり怖いです」
「カイコぉ、でもやっぱり用心はしたほうがいいかも。二人一緒だと、悪い人見つけてそれをできなくしちゃえるんでしょ」
「はぃぃ」
「あと、気をつけて欲しいのは、催眠術とかマインドコントロールとかね。もちろん俺の能力とかも知られないようにしてね」
「悪いことできなくなるからですかぁ?」
「あのね・・・。、とりあえず、ここ連絡先」
「神宮前1丁目、伸二君、ここって原宿の近くじゃない?」
「あぁ、竹下通りかな」
「ええ、そんな一等地に住んでるわけ?」
「シズさん、私も竹下通り行きたいです」
「住んでるって言うか、根城かな。あっと、しまった、まだやることがあったんだよな」
岩谷さんと俺は、カイコをスタジオに連れ戻して、報道局へ向かうことにした




