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ピレウスの夜

アテナイ到着、といってもピレウス港ですが。

メガクレス(アルクメオン家)との話し合いもありますので・・・アテナイに行かないといけないのですが・・・史実でこの辺が血縁関係がめんどくさくて。

キモンはミルティアデスとトラキア王の娘の間の子供なんですが実の姉と結婚しています。たぶん異母姉だろうと推定しているのですが、この姉が諸事情で離婚してカリアス家に嫁ぎます。キモンが再婚したのがメガクレスの娘で・・・アテナイ3大貴族アルクメオン家、カリアス家、キモン家がここで血縁になります。

・・・ここで面倒なのがアーシアの立ち位置なんですが・・・

アーシアはキモンの将来の嫁と思って安心してますけど、アルクメオン家の当主のくせに、カリアス家の代わりをやらせても平気な感じになってるんですよね・・・どうしよう。

 夜だというのにアカイア号周辺は昼のようだった。


 「すごいことになってるなぁ」


 夕方にピレウス港が見えたので、その日は沖合に漂泊して、翌朝入ることにした。

 ピレウス港にその旨を連絡させたら、案の定、ものすごい数の訪問客である。

 やってきたボートの明かりに照らされ、アカイア号が浮き上がって見える。

 船内に一人でも入れると収拾がつかなくなりそうなので、アカイア号の船長が大声でかつ丁重に断っている声が聞こえる。


 「ご主人様のせいだと思いますが?」

 「まあ、そういうな。明日になればみんなおとなしくなるさ」

 「まあ、そうですが」

 じつは、もう桟橋にいる。

 連絡の時の小舟に紛れて上陸したのだ。

 真っ正直に明日まで待っていたら、誰とも相談できないはめになるだろう。


 髪の色が目立つので姫様とピュロスは船で留守番で、一緒にいるのはコリーダだけである。

 「急ごう。まずはミルティアデス将軍だ」

 「はい」


 麦わら帽を深くかぶり麻のキトンに茶のヒマティオンを重ね着して顔がばれないように進む。

 コリーダは、上着は亜麻のキトン、下着の上は胸帯アポディスムだが魔改造を施し、すでにスポーツブラといっていいレベルになっている。

 そして下はボーイレッグにドロワーズをつけている。

 彼女の下着はこの組み合わせが足さばきの関係で一番が楽らしい。


 (もう少し暑くなることも考えて、ペチコートも作らないといけないな)

 どうでもいいことが思い浮かぶ中、前に訪ねたことのあるミルティアデスの館を目指す。


 門前で案内を乞う。

 「夜分、申し訳ありません。緊急の伝令です」

 「はて、どちらからでしょう?」

 幸い応対にでた使用人には見覚えがあった。たしか将軍の側近で前に神託を板書してた人だ。

 麦わら帽を脱ぎ、顔を見せる。


 「アーシアです。お久しぶりです」

 「ヒッ!」

 かなりびっくりしたようだ……ごめん。


 「とりあえず、中に、いま旦那様を呼んでまいりますので」

 そういって、そのまま広間に通された。

 椅子に座って待っていると5分もしないでキモンが現れた。


 「アーシア様、いらっしゃいませ」

 「やあ、キモン、夜遅くすまない。お父上は?」

 「今準備中です。あと、いつでも大歓迎ですのでお気遣いなく」

 そういうとニコニコしながら対面の椅子に座った。


 ……ほんと人柄がいいよな……将来を思うと不憫だわ……


 キモンと最近のアテナイの話題を話しているとラーメン専門店「イナダ トゥ アポローナ」(アポロの髭)亭 の話になった。

 「ものすごい人気で、真似をする店も多いんですよ」


 ああ、やっぱり……


 「でも調味料が手に入らないとかで、スープタイプでなく塩味でオリーブオイルとハーブで麵をあえるタイプが出てきまして……これはこれでおいしいんですよね」


 ん?ちょっと、まて。


 「それって……もしかしてパスタ?」

 「カペッリ・ダンジェロ(神使の髪の毛)って言ってますね」

 カッペリーニじゃないか……一番細いロングパスタ……早すぎる……でもいいか、それくらい。

 たしかローマではBC4世紀にはスパゲッティ―あったみたいだし。


 「油で炒めないと溶けるくらいに細いんですよ。今度、案内しますね」

 「ああ、よろしく」


 「やあ、お待たせした。アーシア殿」

 奥の垂れ布を上げて偉丈夫が入ってきた……やっぱ61才には見えない。


 「ミルティアデス様、久しぶりです。夜分、すいません」

 「いや、そちらの事情は理解している。うまく来てもらえてよかった」


 あまり時間もないので、テミストクレスに伝令を出してもらい、この屋敷に来てもらうことにした。


 「早速ですが、ペルシアが攻めてきそうな時期をある程度絞り込みました」

 「ほんとか!」


 将軍ミルティアデスが身を乗り出してきた。


 「もちろん完全とは言い切れはしませんが、気休め以上の確かさはあります」

 「ふむ、いつなんだね?」

 「来年4月上旬、もしくは5月下旬が危なそうです」

 「春から初夏か、なぜ?」


 彼の表情は期待と不安の入り混じったものだった。

 それは当然だろう。

 ずっと警戒し続けるのと二か月間厳重警戒では後者の方が圧倒的に楽だ……そして外れると危険だ。


 「スパルタでは4月上旬にはラオニサス祭が、そして5月下旬はギュムノパイデアイ祭の開催されます。この間は戦闘は禁止されますので、スパルタの援軍がこない神託に一致します」

 「……あまりうれしくないが、君の神託はデマラトス王の件で証明されているしな……ヘレネスの勝利と言ってくれてるのが救いだが」

 「ええ、でも十分に気を付けて、そのデマラトスがペルシアに亡命していると思われます」

 「ほんとうか!」

 驚愕した声が室内に響いた。


 「だから……いや……それで小アジアが……」


 将軍ミルティアデスはそのあと、ブツブツと小声で呟いていた。


 「ですから、余計にスパルタが動けない時期を狙われると思うのです」

 「なるほど。納得した」


 実際にはテルモピュライの戦いが起きるまでペルシア王はスパルタ兵を全然評価してなかったらしいが……まあ、嘘も方便だ。


 (クエスト:外交交渉達成……特殊技能(詐欺)ランクCに昇格します)


 「その時期は俺個人の私兵とスパルタ海軍は動けるようにしますが……アテナイと同盟国はお願いします」

 「わかった。テミストクレスとも話し合って何とかしよう」


 そのまま、ミルティアデスの屋敷に泊まることにして、テミストクレスを待った。


 しかし、戻ってきた使者から、「本日ははずせない要件があり、明日午前中に訪問」と伝えられたので、ゆっくり休むことにした。


……夜遅くまでキモンといろいろ話していたら、ちょっと気になることが……


 「エルピニケ姉さまもアーシア様に会いたいって言ってました。明日紹介しますね」


 エルピニケって美女で有名な、キモンの実姉で最初の妻のはずだよな?

 うーん、まだ結婚はしてないか、キモンが未成年だし。

 どんな美人か、ちょっと楽しみ。



=アーシアのスキル一覧表=

汎用知識(ギリシャ地域)

一般技能(鑑定)

一般技能(知識・メイド)

一般知識(公衆衛生)

専門技能(薬学)ランクC

専門技能(馬術)ランクD

特殊技能(尋問)ランクD

特殊技能(神学)ランクE

特殊技能(神聖文字)ランクF

特殊技能(法学)ランクF

特殊技能(料理)ランクD

特殊技能(詐欺)ランクC

特殊技能(弁論)ランクF

特殊技能(取引)ランクE

特殊技能(魔術)ランクA

特殊技能(演劇)ランクC

特殊技能(服飾)ランクC

特殊技能(知識・船舶)ランクE

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