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トロイゼンのトリュフ

スパルタ編の終了時点をどこにするかでちょっと迷ってます。

以前はマラトンの戦いで終わる予定だったのですが・・・

マラトンの戦いをマケドニア編の一番最初にもってきてもいいかな、という感じがしてどっちにするか悩んでます。

その場合はラムヌース到着でスパルタ編を終了ということになります。

まあ、その場合でもアテナイでの話があるのですが・・・

・・・着いたら決めよう。

 朝起きると、オレンジとレモンの香りがした。


 「おはようございます。ご主人様」


 今日の添寝はコリーダだった。

 最近のコリーダの変化は目を疑うばかりだ。

 今も黒髪が背中にかかる様など、色っぽいを通り越して煽情的ですらある。

 しっとりとした肌は白く輝き、瞳はブラウンからヘーゼルに変わりかかっているような気がする。


 「おはよう、コリーダ」

 「沐浴しますね」


 何一つ身に着けずに寝ていた彼女は、そのままの姿で、用意してあった洗面器と水を使い、俺の全身を布で拭き始めた。

 水にはミントが浮かべてあった、初めて会った時のように。


 今、船旅は今ギュテイオンからエピダウロスリメラを経由してトロイゼンに到着していた。

 ギュテイオンの出発したのは5月5日、船はトロイゼンで降りてギュテイオンで待っている第2陣を迎えに行かせた。その到着待ちである。

 人が急に増えたので船が足りなくて、一度に運びきれなかった。


 そんなわけでトロイゼンで何もせず待っていたのだが、今日はプレアデスの登る日5月10日である。

 小麦の刈り入れが始まり、街は活気づいていた。

 第1陣で来ていたメトイコイも小遣い稼ぎに、小麦を刈るアルバイトをしている者もいる。

 街の人とは平和的な関係が作れたようだ。よかった。


 俺はトロイゼンの銅細工の職人と話をしながら蒸留装置の組み立てをしていた。

 この蒸留装置は水と香料を入れた銅壺を炭火で熱して、出てきた蒸気を管を使って冷やして液体にする簡単なものだ。

 アルコールも蒸留できるかもしれないが、目的はフローラルウォーターを作ることである。

 姫様は水仙、ピュロスはバラ、コリーダはオレンジの香りを選んだ。俺はレモンを使っている。

 このことがばれたら、ヘタイラは絶対注文してくると思うので、蒸留装置の量産をお願いしているところだった。


 「おやっさん、これ、あと4セットいける?」

 「三日くれればいける」

 「じゃあ、お願い。代金は?」

 「一つ5ドラクマで、25ドラクマかな」

 「結構するな、アテナイのテトラドラクマ貨6枚で24ドラクマでどう?」

 「ああ、いいだろう」


 俺は代金を置くと、宿に納入を頼んで散歩に出かけた。

 コリーダがぴったりついてきている。


 「コリーダ、ここはテーセウスの出身地だそうだ。ちょっと見ていこうか」

 「ええ、ご自由にしてください。私はついていきますので」


 最初に目指したのはテーセウスの石である。

 そこには台座に乗っかった2m×2m×4mの石が鎮座していた。

 この石の比重を2.5とすると・・・・40トン。


 テーセウスはこんなものを16歳で持ち上げたのか。

 いや、まてアイゲオス王もこの下にサンダルと剣を隠したんだから、彼も持ち上げたのか。

 ……さすが神話の世界だとしておこう。

ただ、なんとなくだが魔術でできそうな気がするのは内緒だ。


 すぐ横にアスクレピオスの神殿があった。

 立派な石造りで、診療所も兼ねているようだ。

 待合室には囲炉裏に鍋がかけられお湯が沸いていた。

 もっとも今日は患者は少ない。みんな麦刈りに出ている。


 「結構立派な神殿なんだな?」

 「アスクレピオスは、もともとはこの地でゼウスに殺されたので、歴史ある神殿ですよ」

 「ああ、テーセウスの息子のヒッポリトスの話か。」

 殺されたヒッポリトスをアスクレピオスが生き返られせたのでゼウスが怒って、アスクレピオスを雷で撃ち殺したらしい。


 ぶらぶらと、歩くながら村を見ていると、思ったよりもインフラがしっかりしている。

 そういえばサラミスの海戦の時に、女子供の避難先がトロイゼンだったことを思い出した。

 村の周りに広がる小麦畑を見ても余裕がありそうである。


 「そういえば、最近旨いもの作ってないな……」


 =ピク=


 後ろから身じろぎをする気配を感じる。

 この辺は変わりない。


 「何か作ってみるか。コリーダ」

 「はい、お願いします」


 テーセウスにちなんで肉系のメニューにするか。

 なぜか古代ギリシャの英雄は魚を好んでない。


 「手に入りそうな肉は何があるかな?」

 「この時期ですと、子豚か山羊だと思います。」

 「鳥はどうかな?」

 「ご要望があれば、鳩ぐらいなら取ってきますが。」

 

……鳩か、いいかも


 「この辺はトリュフもあるみたいなのでついでにとって来ます」

 「トリュフあるの?」

 「ええ」


 コリーダの猟師経験から、さっきから飛び回っている黄色い蠅はトリュフに卵を産み付ける蠅らしい。

 これを追いかけて、トリュフを掘り出すのだそうだ。


 「蜂の子と一緒なんだな。じゃあたのむ」


 素材も面白そうだし、今日は本格的に料理の日にしてみた。

 「アーシア、今日は何作るの?」

 宿にもどるなり、姫様が声をかけてきた。

 姫様は勘がいい。旨いものは絶対逃さない。


 「今日は鳩の香草焼を作ってみようかと思います。」

 「鳩かー、しばらく食べてないわねー。」


 「レイチェル、アイギナは大丈夫?」

 「うん、スパルタが反乱分子接収終わったみたいだから。」

 これで、無事に輸送船に空きができそうだ。

 雑談をしながら、酵母パンを焼いていく。


 そうこうしているうちにコリーダが鳩とトリュフをもって現れた。

 「ご主人、5cmくらいのトリュフですが足りますか?」

 「充分。」


 ①まず鳩の毛をむしり、表面をあぶって羽根を取り除く。

 ②臓物を抜いてバラシ、肉は塩コショウして放置。

 ③レバー、心臓の血抜きをして炒め、塩味のガラスープ、マスタード、ワインピネガー、トリュフを加えすり潰す。

 ④オリーブオイルにローズマリー、セージを加え、熱して、香りが立ったら鳩肉を焼いて、火が通ったらワインを振り入れ、煮詰める。

 ⑤ルッコラを大量に敷き詰めた上に、肉を置きソースをかけて完成。


 「「「「いただきまーす。」」」」


 鳩が思ったより多かったので、ご近所の人に声をかけ、料理を持ち寄りパーティーになっていた。

 古代ギリシャでは一般的なパーティー形式だ。

 今日は収穫初日ということもあって、みんなテンションが上がっている。

 壺のワインもどんどん減っている。

 冬が十分に寒かったので豊作になりそうとのことである。

 無事に取り入れまで戦争が起きないことを祈るのみだ。


 そんなことをしていたらアポロ神殿の建立の話が出てきた。

 今後のことを考えればうれしい話だ……ペルシア戦争のことを考え、アテナイからの避難民が住める場所として設置するのもよいかと考える。

 場所は……テーセウスの小宮廷パラタキ内部に作ってもらうことにした。丘の上のあそこなら改装すればかなりの人数が住めそうな廃墟である。


 あと2.3日もすればアイギナ、そしてアテナイを経て、ラムヌースに向かう。のんびりできるのもここが最後かもしれない。


=アーシアのスキル一覧表=

汎用知識(ギリシャ地域)

一般技能(鑑定)

一般技能(知識・メイド)

一般知識(公衆衛生)

専門技能(薬学)ランクC

専門技能(馬術)ランクD

特殊技能(尋問)ランクD

特殊技能(神学)ランクE

特殊技能(神聖文字)ランクF

特殊技能(法学)ランクF

特殊技能(料理)ランクD

特殊技能(詐欺)ランクD

特殊技能(弁論)ランクF

特殊技能(取引)ランクE

特殊技能(魔術)ランクA

特殊技能(演劇)ランクC

特殊技能(服飾)ランクC

特殊技能(知識・船舶)ランクE

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