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覚醒

アーシア君から世界への精一杯の抗議でした。

昨日から書けって、うるさかったです。

キャラクターの主張を初めて感じました。短いのはお許しください。


 世界から色が消え、モノトーンの景色になった。

 やがて、それすらも白と黒に分かれていく。

 次に消えたのは音だ。

 自分の鼓動すら聞こえない。


 絶望という現象を詳細に知覚していた。


 こんなにもクレイステネスさんへ依存していことが意外だった。

 なんでも知っていて、教えてくれて、導いてくれて……

 アレティナ巫女長をこの世の母親とするなら……父親、たしかにそんな存在だった。


 「お父さん……」


 その言葉をつぶやいたとき瞬間、空気が可視化され、世界はガラスにつつまれた。


 ベットの下のイシスが飛び出して僕の胸元に飛び込んだ。

 彼女の動きで動いた風が煌きながら広がって行く、他に動くものはなかった。


 イシスが身じろぎすると、三つ編みの髪が一本抜けた……

 その髪は見ている間に短くなり、やがて、点のようになった。

 その後すぐに長くなりはじめると数百mになって、きらめきを残して消えた。


 ……?


 また1本抜ける……短くなって、点になって、長くなって消える。


 ……!


 このときこれが、魔術が起こした現象だと理解した。

 髪の毛の長さは変わらない……変わっているのは空間の距離そのものだ。


 どうやればいいのかはわかるのだが……道具がない。杖かワンドが必要だ。


 「ニャーン」


 イシスが自分に任せろと言っているような気がした……。


 次の一本が短くなる、1cm程度まで短くなったところで猫パンチが出た。


 =シャーン=


 髪の毛が消え、空間に音が響く。

 僅かに1歩踏み出すと……屋外にいた。


 「ニャン」


 次の一本が抜ける。

 俺の髪は今70cm程度。たぶん点になった時は0.7mmだと思う。

 つまり


 =シャーン=


 点になった瞬間に猫パンチを放ったイシスに導かれ、アテナイの方向へ一歩踏み出す。


 景色が一瞬で海上になった。

 間違いない、俺は今、普段の1000倍……時速6000kmで動いている。


 届け、アテナイに!


 また一本、また一本と髪の毛が抜けては、猫パンチで音を立てて消え去っていく。


 ほぼ1秒に一本髪の毛が抜けていく。


 流れる景色の中、4~5分程度は歩いただろうか?


 城壁の郊外、見慣れた広場についた。


 「アテナイ?」


 (クエスト:100kmを超える空間魔法に成功・・・特殊技能(魔術)ランクAに昇格します。)


 時間は殆どたっていない。まだ太陽は天頂近くで輝いている。


 「来たか!」


 声のする方を向くと師匠ヘラクレイトスがいた。


 「師匠!クレイステネスさんは?」


 「まだ息はある。いつもの管理棟だ、急げ!」


 色々と聞きたいこともあるが、その返事で反射的に管理棟へ走り出した。


 管理棟の前には警備兵が数名いて、屋内を覗こうとする人たちを追い払っていた。

 でも俺が建物の前まで行くと警備兵は無言で道を開けてくれた。


 建物の中は薄暗く、冷たく、静かだった。

 いつもクレイステネスさんが使っていた部屋を目指してまっすぐに奥に向かった。


 そこには予想通りにクレイステネスさんが眠っていた。

 ベットの上でやせ衰え、落ちくぼんだ眼窩を目立たせ、静かに眠っていた。

 「……クレイステネスさん……」


 ベットの横に跪くと耳元で囁いた。


 「ただいま……お父さん」


 声が聞こえたのだろう。

 僅かに目を見開き、ついで口を動かしている。


 口元に耳を寄せるとわずかな声が聞こえた。


 「アポロよ、ゼウスよ感謝します。今、一度息子に会えました……」


 そういうと眼から涙が流れ落ちた。


 「長きに渡り世界をさまよい……やっと見つけました」


 「ニャーゴ」


 イシスは一生懸命、クレイステネスさんの頬をなめて起こそうとしている。


 ……しかし、もう、その目は二度と閉じることはなかった。




 俺はその光景を背にして、部屋を出ると大声で叫んだ。


 「アテナイの英雄、クレイステネスが今亡くなった。天よ地よ英霊をその胸に迎えよ」


 俺の声が聞こえたのだろう。表の方がガヤガヤうるさくなっていた。

 やがて入り口から、師匠ヘラクレイトスが入ってきた。


 「間に合ったな……」

 「ええ、父と呼べました」

 「そうか……」


 それきり、言葉は途切れた。

 ヘラクレイトス師匠は無言で、麦わら帽子を脱ぐと、俺の頭にかぶせた。

 師匠の頭はレオナルド・ダヴィンチのような髪型になっている。


 彼は厳かに俺に告げた。


 「最後の弟子よ。我を超えて先を開け」


 そこまで聞いたところで、どうしようもない疲れが全身を襲い、気を失った。


=アーシアのスキル一覧表=

汎用知識(ギリシャ地域)

一般技能(鑑定)

一般技能(知識・メイド)

一般知識(公衆衛生)

専門技能(薬学)ランクC

専門技能(馬術)ランクD

特殊技能(尋問)ランクD

特殊技能(神学)ランクF

特殊技能(神聖文字)ランクF

特殊技能(法学)ランクF

特殊技能(料理)ランクD

特殊技能(詐欺)ランクD

特殊技能(弁論)ランクF

特殊技能(取引)ランクE

特殊技能(魔術)ランクA

特殊技能(演劇)ランクC

特殊技能(服飾)ランクC

特殊技能(知識・船舶)ランクE

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