クレイステネスとの会話
前にぼやいてたら塩野七生女史が「ギリシャ人の物語」を書いてくれました。現在読んでる最中ですが・・・どうしよう・・・結構修正したい部分が出てきました。
おまけで藤村シシン女史の古代ギリシャのリアルと丹下和彦氏の食べるギリシア人ー古典文学グルメ紀行ーまで一緒に手に入ったから・・・あれも直したい、これも直したい・・・でも、マケドニア編用にアレキサンダー大王も下準備しないといけないんで・・・あの本もほしい、この本も読まなきゃ状態です。
・・・先は長い・・・
まずはスパルタ編終わってから考えます。
昨日の民会で俺の処遇に関する提案は無事済んで、4日後の民会で認可される見通しになっていた。
そんな折、姫様の方も手が空いたので、各地の状況確認と連絡で一日過ごすことになった。
「じゃあレイチェル、お願い」
姫様は嬉しそうにホルスを抱きかかえた。
「じゃあ、ホルス、力を貸してね」
「ニャア」
姫様に抱きかかえられたホルスは喉を撫でられると、嬉しそうに目を閉じている。
足の靴下模様も消え、ようやく元の色に戻ってきていたのだが……
姫様に各地のアレティアからの情報を集めてもらう。
コリントスを出てから、もう二月半、大きな動きはないようだが小アジアのペルシア軍の動静が活発になってきている。
小アジアには現在アレティナはいないので、貿易の木材の値段などから推定するしかないが、まだ急激な上昇はないので大規模渡海での攻勢準備はないと判断できた。
やはり来年が勝負になりそうだ。
昼食後に姫様に魔術を使ってもらい、クレイステネスさんに連絡する。
「やあ、アーシア、久し振りだね」
「今、よろしかったでしょうか?」
「ああ、ちょうど風邪をひいて休んでいたから、周りには誰もいない。ゆっくり話せるよ」
「大丈夫ですか?」
「季節の変わり目だし、油断したかな。でも話す分には、寝たままでいいし、ちょうどいい暇つぶしになる」
「そういうことなら」
そこで、俺はコリントスを出てから、今日までの状況報告を行った。
「すごいじゃないか、アーシア。予想以上だよ」
「ええ、ほぼ理想的に推移できました。それで、アテナイの造船所に発注をお願いしたいのですが?」
「わかった。テミストクレスと話して造船所を増やす話をしていたところだ。前倒しにして今年中に5隻を作らせるようにしよう」
「ありがとうございます。……あれ?テミストクレスですか、ミルティアデスではなく?」
「ああ、彼はペルシアとの戦争は海戦で決着すると主張している。これは私も同意している。そうなるとアテナイの造船能力を上げなくてはいけないということで、現在の年間30隻を50隻できれば60隻にしたいと話していたところだ」
「倍ですか」
「ピレウスだけでは敷地が不足しそうだからメガーラや他のポリスにも頼む予定だ。スパルタがその状況ならアイギナを使うこともできそうだな」
「スパルタの双王は四日後の民会を終え次第、アイギナへ旅立つ予定です」
「わかった」
そのあとラムヌースの神殿および海軍拠点の建設の話になった。
「ヘイロイタイは今まで金属製の道具を使ってないので石工は無理だと思います」
「同意するね。アテナイで腕のいい石工を50人ほど指導役を兼ねて送り込もう」
「ありがとうございます。」
「後は船大工だな。こっちも増産で厳しいから、一隻分の人数しか出せないと思う。当面はヘイロイタイの技術指導に専念するしかないか……船は実地に作りながら教えることになるだろう」
「感謝します」
「いや、ラムヌースはペルシアとの戦争で鍵になる場所だ。知ってる人間に押さえてもらって助かる。礼を言うのはこっちだよ」
「あとは船に乗る戦士ですが……」
これについては小アジアで売りに出されている元ギリシア系ポリスの市民を選ぶ方向で進めるように言われた。
貿易でエーゲ海を回る貨物船を専用に作り、アテナイの陶器を売り、軍馬や革、食料を扱いながら一年かけて集めればいいとアドバイスされた。
「ヘラクレイトスから聞いているよ。秘密兵器は奴隷にしか扱わせられないし、ペルシアに奴隷に落とされた人たちなら君に喜んで協力するだろう」
くわえて今、小アジアは奴隷が値崩れを起こしていることを教えてくれた。
それにしても……相変わらず、ものすごい。
話しているだけで大体の方向性が決まってしまう。
ここまでを羊皮紙に書き留め、項目を確認していると、クレイステネスさんから聞いてきた。
「そういえば君からこれからの歴史を聞き損ねていたな。今、聞かせてもらってもいいだろうか?」
そういえば、あの時は政治形態の話までで終わってたっけ?
「そうですね。ではペルシア戦争の推移から始めますか」
そのあとは俺が一方的に話す形になったが……ペルシア戦争からぺルポネソス戦争、マケドニアのアレキサンダー大王の話まで行ったところで一休みさせてもらった。
「本当にマケドニアの王が軍勢率いてインダス河まで行ったのか……超人だな。」
「その点は同意します。おそらく人類史上最高の軍人だろうと思ってます。」
「2000年を超えて伝わる伝説の王か。憧れるな。」
「でもクレイステネスさんも2500年を超えて伝わる偉人ですよ?」
「そういわれると嬉しいが……ちょっと恥ずかしいな。」
いつの間にか午後四時になっていた。
ホルスが銀色の縞を持つ猫みたいになっている。
銀色に色変わりしたベンガルみたいだ。
「今回はこれくらいにするか。」
「ええ、クレイステネスさん、いろいろとご迷惑をかけますがよろしくお願いします」
「気にしないでくれ。本来ヘレネスがやらなければならないことを頼んでいるんだ」
その言葉でニャルラトホテプの黄金鏡のことを思い出した。
「そういえば、こんな話があるんですけど……」
そう言って、未来に作られる小説、クトゥルフ神話の神々がファラオの名前に聞こえるらしいことや、百詩選集とよばれる2000年後の出版物が「創世記」の線文字B(ギリシャ語)の内容だったりすることを伝えた。
「創世記は君が羊皮紙に写して、ギリシャ語にしたんだったね。それだと、それが伝わって書かれた可能性はあるね。」
ああ、そうか……原因はあれの可能性があるのか……
「神々の名前は……わからないな?名前の基になったのがフォラオ達なんだろうけど……魔術はツタンカーメンで切れているんだろうから……その前……」
しばらく考え込んでいたが
「だめだ、これ以上時間をかけるとイシスが真っ白になってしまう。時間切れだ」
「そうですね、こっちもホルスが白虎みたいです」
「西の守護獣?」
ああ、また自動翻訳か。
「ああ、中華で西の守護獣は白い虎なんです。」
「ああ、そうだったね、東の偉大なる種族の伝承か。」
……ん?なにか引っかかる言い方だな……
「じゃあ」
「クレイステネスさん、お体に気を付けて」
「ああ、ありがとう、我が息子よ」
……え?
えーと、我が息子か。なんか嬉しい
「クレイステネスは子供がいないから、あなたを子供みたいに思ってるのかしら?」
姫様が戻ってきたらしい。
「だとすれば光栄だね、レイチェル」
そこで、気になったことを聞いてみた。
「クレイステネスさんの容体はどうだったの?」
「本人も言ってたように、ただの風邪よ。微熱があったぐらい」
「そうか」
そのあと共同会食に向かうべくピュロスにキトンを準備をしてもらい、食堂に向かった。
民会後のスケジュールを頭の中で組みながら食べる夕食は、味が全くしなかった。
=アーシアのスキル一覧表=
汎用知識(ギリシャ地域)
一般技能(鑑定)
一般技能(知識・メイド)
一般知識(公衆衛生)
専門技能(薬学)ランクC
専門技能(馬術)ランクD
特殊技能(尋問)ランクD
特殊技能(神学)ランクF
特殊技能(神聖文字)ランクF
特殊技能(法学)ランクF
特殊技能(料理)ランクD
特殊技能(詐欺)ランクD
特殊技能(弁論)ランクF
特殊技能(取引)ランクE
特殊技能(魔術)ランクB
特殊技能(演劇)ランクC
特殊技能(服飾)ランクC
特殊技能(知識・船舶)ランクE




