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ラオニサス祭

デルフォイのアポロ神殿の壁には現実でも奴隷解放の契約文書が彫ってあります。やたら制限の多いもので、完全な解放ではないようですが。

ギュムノパイディアイ祭は太陽暦で7月あたりに行われていたようなのでラオニサス祭よりも1月程後なのですが・・・アーシアの介入の影響だと思ってください・・・


 =グォ―――ン=


 つるした盾をぶったたく、即席の銅鑼がメッセニアの平原に鳴り響いた。


 「これより、ラオニサス祭を開催する。これより5日間はメッセナとも休戦を行う。皆、存分に楽しめ!」


 クレオメネス王の宣言に周囲が歓声で埋まる。

 予想通りに皆のノリノリである。


 「初日は主催者のアーシア・オレステス・アリキポスの意向により、ヘロットの水夫選抜大会になる。ラケダイモンはじっくり見物し明日に備えよ」

 王の宣言でさらに歓声は高まる。

 ラダケイモンは肉体競技はやるのも見るのも大好きなのだ。


 初日はメッセニアのヘイロイタイの選抜大会にしたのは、昨日まで3日かけて移動してきたラケダイモンの疲労回復を考えての提案だったが、この様子を見ると不要な心配だったようだ。


 とても昨日まで山道を歩いていた集団とは思えない元気さである。


 ラオニサスの山中を5000のラケダイモンが移動したことについては、水不足が一部で見られたほかは全く問題が生じなかった。

 さすがに第2次メッセニア戦役で戦い続けたこともあり、このルート移動のノウハウは十分のようである。


 今日の4月4日閉会式を含めて4月7日までが祭りの期間になる。

 この間はラケダイモンによるヘイロイタイの攻撃も禁止されるのであるが……実際には若者の一部がこの布告を無視したためサルピズマが叩き伏せた例が何件か生じた。

 まあ、予想の範疇ではある。


 コイヌスの村からも1縦隊エノモイアが参加していた。彼らはなんとか勝ち残ってガレー船の漕ぎ手の切符を手にしようと必死である。

 他の村々の参加者も、コイヌスからの伝言、そしてスパルタ王からの休戦宣言を受けて、密談の内容を信じたようだ。気迫が伝わってくる。


 最初の種目は綱引きである。

 ブロック、リーグ方式で30チームの選抜になる。

 午前中に20チーム、午後に10チームの選抜を行った。

 コイヌスの縦隊は見事、選抜に残った。

 

 午後は長距離走である。

 10スタディオンを走るのだが、こちらで約100名の選抜をするため、10回に分け上位10名の選抜となった。

 長距離走は見慣れた競技のせいか、ラケダイモンの興奮も激しく、ところどころで喧嘩が発生したた。

 それにサルピズマが仲裁に入る光景がしばしば見られた。

 全体的な雰囲気として、市民運動会の巨大なものという感じがする……屋台や出店がほしい感じだ。


 レイチェルにそう話したら翌日は出店を出すことになった。

 材料の方はあり合わせなので、ミント水とお好み焼きもどきだけである。


 ……これが爆発的ヒットになった。


 結局、競技も見ずに鉄板の前で一日中過ごすことになった。

 選抜されたヘイロイタイも急きょ動員しての対応である。

 まさにお祭り騒ぎになった。


 「で、ラケダイモンの競技はどうだったの?」

 「すごかったわよ。やっぱりヘイロイタイとは身体能力が格段に違うわね。」

 レイチェルが観戦した風景を教えてくれた。


 スタディオン走(192m走)でもだいたい30秒以内、ディアウロス走(384m走)だと50秒、ドリコス走 (1920m走)で5分ぐらいらしい。


 ……まじですか?……ウサイン・ボルトの200m走が19秒19、マイケル・ジョンソンの400m走が43秒18、2000m走は世界記録が4分45秒ぐらいのはずである……シューズなしでその記録って……


 三日目はラケダイモンの徒競走の決勝である。

 一方で、選抜されたヘイロイタイはコリントスに向け移動を始める日でもあった。

 今日は850名が移動。残り200名は出店の手伝い要員である。

 仲間の歓声を背に彼らは新天地に向かった。

 スパルタに契約内容を伝えないため、デルフォイのアポロン神殿で契約を彫刻する予定である。

 解放条件がペルシアとの海戦の後にあるのでちょっと特殊になるが……後世からみるとやたら制限の多い変な契約に見えるだろうなと思いつつ送り出した。

 護衛としてサルピズマ(クラブ)とサンチョがついているので問題はないと思う。


 結局、俺はこの日も一日鉄板と向き合っていた。


 競技最後の4日目、みなさん待望のムカデ競争が始まった。

 そういえば、ムカデは前進しかしないので戦場では縁起のいい虫だ、と教えたら、やけにムカデの人気が上がっていた気がする。


 ムカデ競争は、競技者よりも応援の方の熱狂が怖かった。競技者はどんなに急いでも2スタディオンを3分から5分かけて移動する。このため周りの一喜一憂が半端でなくなるのだ。

 同じ縦隊、出身者からの応援、野次、罵声が一日中鳴り響いた。


 出店もこの日は前日より楽で、合間に競技を見ることができた。

 時々、ムカデの下駄を折ったグループが出ていた……恐るべしスパルタン。

 下駄も改良しないとと思いながら競技を見ていると……?


 あれは元王デマラトス?……母親かな、女性と何かを話している。

 4日目の最後に女性のスタディオン走があるのでオリンピアと違って、女性の観戦禁止とかはないのだが……何か真剣な様子だ。


 デマラトス……えーと……たしかギュムノパイディアイの祭で母親に実の父親はだれか聞いて、アリストンに化けた英雄アストラパゴスであると聞いて……ペルシアに亡命したって史実があったな。

 ギュムノパイディアイ祭ってたしか双子の裸祭りって意味で、アポロンとアルテミスにささげた祭り……え?


 ……


 うん、見なかったことにしよう。(あとでこの判断を死ぬほど後悔する羽目になった。)


 ……その夜デマラトスは失踪した。祭りの休戦に準じ、追手はかからなかった。


 5日目は閉会式と宴会である。

 結局、ほとんど鉄板の前で過ごすことになった。

 でも、ヘイロイタイからは生まれて初めて生命の危険のない日々をもらったと感謝され、ラケダイモンからは最高のアポロン神への奉納と褒めたたらえた。


 これで、少しは両者の距離が近づけばいいのだが……ならないだろうな……そんな生易しい環境ではないことは身に染みて知っている。


 ともあれ、これで次はコリントスに戻って、デルフォイに行って契約だ。

 少しは自由に動けるだろう。

=アーシアのスキル一覧表=

汎用知識(ギリシャ地域)

一般技能(鑑定)

一般技能(知識・メイド)

一般知識(公衆衛生)

専門技能(薬学)ランクC

専門技能(馬術)ランクD

特殊技能(尋問)ランクD

特殊技能(神学)ランクF

特殊技能(神聖文字)ランクF

特殊技能(法学)ランクF

特殊技能(料理)ランクD

特殊技能(詐欺)ランクD

特殊技能(弁論)ランクF

特殊技能(取引)ランクE

特殊技能(魔術)ランクB

特殊技能(演劇)ランクC

特殊技能(服飾)ランクC

特殊技能(知識・船舶)ランクE

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