晩餐
グルメ小説じゃないんですけど、当時の材料でコースを組んだらこうなりましたって感じです。
あと技能ランクのイメージですが
F、一人前
E、ベテラン
D、一流
C、超一流
B、世界一
A、歴代一位
S、空前絶後 位のイメージで書いています。
「アーシア様、ご要望のカードとホエー準備しておきました」
厨房に戻るなり料理人のドロンが伝えてきた。この二つはどっちもチーズの原料だ。ヤギの乳から作ってる。
「ありがとうございます。では厨房お借りします」
手元の材料と調味料を合わせて献立を考える。
自分一人なら適当な煮込みですむが……巫女長に出すとなると……
コース料理にしよう。
まずカサゴのあらとカニ、鳥のガラでスープを作り始める。
次に別の鍋で芽キャベツとニンジンをゆで始める。
同時に獣脂を入れた鍋も火にかけ熱し始める。
パン窯に火を入れる。
その間に小麦粉とカード、塩でパイ生地を作り薄く延ばす。
バタバタと動く俺を見て、コリーダから申し出がある。
「アーシア様、ご迷惑でなければお手伝いさせてください」
「じゃあ、キュウリとキノコ、玉ねぎを厚めにスライスして」
「厚めといいますと？」
「小指の幅の半分くらいの厚さ」
それをみていたドロンが面白がってやってきた。
「私も手伝いましょうか？」
「じゃあ、卵黄と酢を混ぜた後、混ぜながらカードを入れて。ついでに卵白は別に取っておいて棒数本で掻き回して泡だらけにして」
マヨネーズの代用品とメレンゲの準備である。
「これは何に使うんです？」
「みんなの分も作るから、あとで食べて感想聞かせて」
奮闘の結果、もうすぐ午後四時
普段より遅いらしいがようやく料理が仕上がった。
「お待たせしました」
アレティア巫女長とアイオス神官長、そしてピュロスの座るテーブルにコリーダが料理を運んでいく。
用意した料理は三人分である。
ピュロスが毒見役ということでまず一人前をどれか選んで飲食してもらい、その後で二人に食べてもらうという手順になっている。
まずは飲み物から。
「おや、ワインではないのですね？」
巫女長が声を上げる。
「食前酒替わりに蜂蜜レモンのミント風味をどうぞ」
事前に決められた通りにピュロスが杯の一つを取り、飲み干す。
「やや甘めの飲み物ですが、レモンの香りと酸味が後味を引き締めます。飲み終わった後にミントの爽やかさとわずかに花の香りがしますが・・これは？」
「アカシアの蜂蜜を使わせてもらいました」
「なるほど」
ピュロスは別にグルメ談義をしているわけではない。
毒があればでる兆候を探しているだけで、自分の五感で感じたままを話し、感じたことに不自然なことがないかを確認しているのである。
「大丈夫です」
ピュロスがそういうと二人が杯に手をのばす。
「・・・おいしい」
「初めて飲みましたな。このような組み合わせもありですな」
次にスープである。
「続きましてカニと二十日大根のスープ、ローリエ風味です。アポロンの神木にちなみましたが香りが弱いと思われる方はアサフェティダとクミンをオリーブオイルで練りこんだ薬味を用意しましたのでそちらをお足し下さい」
ピュロスがスープを見て一口含み、次に薬味を入れて味を見てみる。
「このスープ、具が少ないのですが複雑な味ですね。肉の味もするのですが？」
「鳥の骨、魚の骨、殻つきのままのカニをもとにホエーで煮込んでいます。二十日大根はアク抜きでいったん湯がいた後に、このスープで煮込み味をしみこませました。カニ肉は蒸したカニから取り出し、この二つをみじん切りにした具にして皆様にお出し直前でスープに入れてあります」
「なるほど。手が込んでいますね。アサフェティダとクミンの薬味を入れると、なじみ深い味と香りになりますが・・・異国情緒を楽しむならそのままのほうが楽しめますね」
さらに数口確認してピュロスが言った。
「大丈夫です」
二人は静かに器を受け取るとすぐに口をつけた。
「うまい」
「これはおいしい」
なんだろう、ピュロスの目が潤んで顔が赤くなってる気がする？
言い忘れていたが、古代ギリシャにはナイフ、フォーク、スプーンがない。
このため手でつまんで食べるか、器で飲むかの形にしている。
「では次は前菜です。前菜はキャベツとニンジンのキャラウェイ風味です」
そこで神官長が声を上げた。
「アレティア巫女長・・・彼が毒を盛れるわけもないし・・・毒見をはぶいてもよいのでないかな」
「アイオス神官長が良ければそれで構いませんが」
「では、そうさせてもらおう」
・・・？
なんだ？ピュロスがこっそりとテーブルの上に指で文字を書いた。
（お預け・無理）
ああ、毒見がじらしになってるのか・・・確かに・・・見たことも聞いたこともないおいしい料理ならすぐ食べたいわな。
「では料理をお出しして、食べていただきながら紹介します。」
三人が食べ始めるのを見て言葉をつないだ
「前菜は軽く塩ゆでしたキャベツを、梨ジュースと蜂蜜で甘く煮たニンジンに巻き付け、キャラウェイとピネガーで香りづけしています」
「もう少し量があってもよいのではないか？」
「まだたくさんが料理ありますので、一つ当たりは少なめにしています」
「ふむう」
神官長はこの料理がお気に召したようだ。
「では口直しにワインです。水ではなくぶどうジュースで割ってみました」
このワインは三人とも受けが良かった。ちょっとだけ果汁に蜂蜜入れて甘めにしていたしね。
「次は魚料理です。カサゴのから揚げタルタルソース添えでどうぞ。食べて瞬間、三人が黙った……よし！」
「小麦粉をまぶしたカサゴの身を、熱した獣脂で揚げることによりカリッとした触感と香ばしさを与え、ピネガーと卵の黄身とカードからつくったマヨネーズという調味料に刻んだピクルス＆ゆでたまごへタラゴン、塩、コショウで味を調えたタルタルソースで和えています」
三人はすぐに食べ終わると期待に満ちた目で、次を促した。
「次は肉料理です。鶏肉しかなかったのでチキンソテーのオレンジソースにさせてもらいました」
コリーダが三人に配膳する・・・もはや選んでないし、こちらの説明を聞くのも一口食べて味わったあとだ。
「オレンジの果汁をソースに用いることでさっぱり感を強くしました。鶏肉はささみを使いさっぱり感を消さないようにしています」
・・・たぶん聞こえてないな・・・
「ではメインディッシュとサラダです」
「おお・・・なんだこれは」
ようやく反応が返ってきた。サラダの形に驚いたらしい。スティックサラダなのだが一般的ではないようだ。
「その杯の底にある白い調味料をつけながら食べてください。野菜はアスパラガス、キュウリ、ニンジンです。白い調味料はマヨネーズに梨漬物とセージ、ヒハツを混ぜたものです。
「ふむわずかに辛みがあるな。」
「でもすぐに消えますね、この白い調味料・・・マヨネーズでしたか？」
「いえマヨネーズはその調味料の原料です。しいていうならドレッシングですね？」
「着飾ですか？化粧のことでしょうか？」
あれ・・・アーシアの時と一緒だ。ない言語は自動翻訳されるんだな。
「いやそれはともかく、このパンは・・・絶品だ」
もうメインに手を付けていたのか神官長。
「メインディッシュは鳥、キュウリ、キノコ、玉ねぎのキッシュ、ガルムソース風味です」
「小麦粉にカード・塩を加えて捏ね、薄く伸ばした生地を焼き型の底に敷き薄切りにした具をガルムで味付けして油で炒め、卵とチーズ、山羊乳を混ぜた卵液に混ぜて生地の上にのせ、パン窯で焼き上げました。最後にオレガノを一振りしてあります」
まあキッシュにして外れることはまずないからメインに持ってきたんだけど、ボリュームもあるし、いい反応だね。
「デザートは蒸パンです」
一口食べた三人の反応が面白い。見た目と違う食感のギャップに驚いているのかな。
「蒸しパンは卵白を使ったメレンゲに小麦粉とショウガ汁、蜂蜜を入れてふわふわにしてみました。その蒸しパンの上にフェマグリークと蜂蜜で作ったカラメルをかけシナモンで香りづけしました。
三人が食べ終わったと焙煎した大麦で作った麦茶を出し
「本日のコース終了いたします。いかがでしたか」
（クエスト コース料理作成達成・・・特殊技能（料理）ランクEに昇格します。）
（複数へのプレゼンテーション完了・・・特殊技能（弁論）ランクF取得しました。）
アレティナ巫女長がちょっと考え込んでいる。
「これほどの料理の腕ならば使えるかもしれません・・・アイオス神官長ちょっと相談に乗ってください」
「わかりました」
なにやら二人で話し込み始めた。
話がまとまるまでは自由にしていいとのことなので、用意しておいた賄いを食べに行こう。
パスタのペスカトーレ（トマト抜き）だったりする。トマトは新大陸だしなー。
我慢しよう。
でもほしーなトマト。
＝アーシアのスキル一覧表＝
汎用知識（ギリシャ地域）
一般技能（鑑定）
特殊技能（尋問）ランクF
特殊技能（神学）ランクF
特殊技能（神聖文字）ランクF
特殊技能（法学）ランクF
特殊技能（料理）ランクE
特殊技能（詐欺）ランクF
特殊技能（薬草学）ランクE
特殊技能（弁論）ランクF
