何もない休日
嵐の前の静けさというか、作者の正月休み(2-4)に合わせ、日常でのんびりしてる感じを書いてみたくて。
アレティアお姉さんの魔術講座、開講しました。興味ある方は覗いてください。
おまけでパラメス=戦功 ミコス=丈から名前もらってます。
レモングラスはまだこの時代は入ってきてないはずなので、クレイステネス農園に行かないと出せないのが残念です。
次回は競技会です。
今日はBC491年3月26日、ようやく、ほぼすべての準備が終わった。
外は篠つく雨……スパルタンは今日も訓練に修練に特訓に忙しい……元気が有り余っている。
そういえば、ムカデ競争が進化した十字のロープネットを使ったファランクス訓練が年少組に採用された。
実戦でどこまで使えるかは未知数だが、やってみても損はないと判断されたらしい。
パラメス・ミコスという人物の発案らしいが……よく考え付くもんだ。
今日の最低気温は3℃、日中の最高気温は11℃の見込みです(適当)……という感じで……日本の3月に近い。まあ高地の分、東北寄りではあるが。
その中をマッパで訓練してる彼らはすごいと思う……湯気上がってるし
彼らに言わせると今の時期から初夏が訓練には最高らしい。
やや寒いぐらいでないと、運動したときに燃えないんだそうだ?
だいぶスパルタン空間に慣らされた俺は、革ひもの球をつついて遊んでいるホルスを捕まえると肩に乗せた。
ホルスは作ったばかりの新しい首輪をつけている。
首輪はなめした兎の革を細くひも状にした後に布のように編み込んでみた。
その上で首輪にはΔελφοί, Ναός του Απόλλωνα γάτα Horus (デルフォイ、アポロ神殿の猫 ホルス)と赤で染色した毛糸で刺繍した。
いい出来だとほれぼれと見ていたら……女性陣3人からもチョーカーを要求された。……しょうがないのでホルスとお揃いのデザイン……人間サイズはやはり大きいし、疲れる。
刺繍の文字は
「Αιώνια αγάπη」(永遠の愛)レイチェル
「Εφ 'όσον δεν την πίστη」(限りなき忠誠)コリーダ
「ελπίζω」(希望)ピュロス を各人がチョイスした。
3人そろってつけると3姉妹みたいである……ギリシャ神話の3姉妹ってたくさんいるから有名どころで、モイラ・カリテス・ゴルゴーン・グライアイ・エリヌス・ムーサぐらい?
この中だとムーサ(美術の三女神)がぴったりかな?
アオイデー(歌唱)、ムネーメー(記憶)、メレテー(実践)の三柱だけど、なんかイメージが重なる。
その三人も明日の狩りの準備で忙しい。
ヘレネスの共通ルールで狩りは基本男性のみの仕事なのだが、投げ槍を削ったり、矢作をしたり消耗品の補充にと、女手はいくらあっても足りない。
そんなわけであぶれた男二人組は降る雨を見ながら、大会の実施要綱の確認をしていた。
「これで明日の狩りがうまくいって、宴会用の肉が手に入れば、終わりだと思うのですが……」
「ニャア」
「ええ、そうですね。その後、三日かけてラケダイモンがメッセナまで移動ですから、その分も準備しないと、冴えてますね。ホルスさん」
「ミー」
「え、ミルクですか……あちらに」
俺をあやすのに飽きたらしい、ホルスはミルク皿の方に移動していった。
「ご主人様、ミントティーを入れました。」
「ああ、ありがとう」
ぼんやりしていたらピュロスがお茶をもってきてくれた。
気温は若干寒いくらいなので暖かいお茶はありがたい。
持ってきたピュロスを見るとやはりチョーカーが目につく……
「ピュロス、なんでその文字にしたの?」
「好きな言葉だからですけど、それが何か?」
どうやら深い意味はないらしい。
「他の二人もそうかな?」
「さあ、レイチェル様は知りませんが、コリーダはご主人への隷属の証だ!と言ってましたが」
コリーダ……ぶれないやつ……
「そういえば、サンチョはどうしてるんだ?何人か叩き伏せたのは聞いてるが?」
「いま、あそこでサルピズマに教えてますよ。」
屋内の訓練場の方をさし示された。中は見えない角度だった……よかった、屋外じゃなくて……
サンチョは予想以上に強かったというか、個人技は中華の方が発達していたようだ。
剣術と盾術の組み合わせ、あるいは槍術の威力はラケダイモンでも歯が立たなかった。
「比較的、個人技の強いスパルタでも系統立てた武術って進歩しなかったんだな」
「スパルタは人数に余力がなさすぎます。それに常に戦争では集団戦法を優先しないわけにはいきません」
「なるほどねー」
「あー、いい匂い。ピュロス、あたしにもちょうだい」
「はい、レイチェル様」
入ってきたレイチェルが騒ぐなり、ピュロスはお茶を入れに部屋を出ていった。
こちらをジーと見つめる姫様
「暇なの、アーシア?」
ぐ、認めたくないが……
「……暇です……」
その答えを待っていたらしい姫様は
「じゃあ、遊ぼう」
満面の笑みでそうおっしゃった。
「あん、アーシアったら、もうきちゃうの。ダメそこ弱いのに」
「だめ、そんなにいきなり、あたし、もう、もたない!」
「ああ、倒れそう。もう……ダメ……」
……
「レイチェル……わざとそういう声で、俺を動揺させるのはなしな」
「別にそんなつもりは……あなたがやってるときに、コリーダが来て倒れてもアタシの勝ちよ」
「はい、レイチェル、そっちの番、さっさと一本抜いてくれ!」
「ご主人様!今の声は?」
=ガッシャーン=
「あああー」
コリーダが入ってきた振動で、木で組み上げた塔が倒れる。
そう、ジェンガである。姫様に簡単に楽しめるテーブルゲームとして教えた。
「反則!、もう一回」
「自業自得って言葉知ってます?」
「知らない!もう一回」
そりゃそうか、仏教すら生まれてないもんな。
=カチャカチャカチャ・ガチャ――ン=
もう一度、くみ上げたところでホルスが猫パンチしました。
……
「レイチェル、ホルスが遊んでほしいみたいだよ」
「え、いいの」
「まあ、目の届く範囲なら」
「やった」
一人と一匹が遊んでいると、ピュロスがお茶を入れて戻ってきた。
「あーー。ひまだーーー」
「いいじゃないですか。アーシア様は昨日まで働きづめで、明日からも山のように仕事があるんですから、今日くらいゆっくりされても」
「ご主人様、労働中毒症?」
ジェンガの倒れた音で、駆けつけたコリーダが不思議そうな顔で尋ねてくる。
頭ではわかっているのだが……昨日までの密度の濃すぎる日を考えると、こんな完全休日は退屈なだけである。
「贅沢なのはわかってるけどさ……ちょっとだけ刺激がほしいよ」
「そんなに暇なら交易でもやる?」
姫様の声にもあまり食指が動かない。
何しろ、アレティアネットワークを使うと、商品の売り手と交渉しながら次の港にいる買い手と交渉が同時にできる。
つまり運べば儲かるといっていい状態で交易してしまう。
これはこれでぼろ儲けさせてもらっているのだが……緊張感はなく、姫様に任せっぱなしである。
「しょうがない……新しい薬でも作ってみるか……」
「どんな薬だ?」
「師匠様に毛生え薬でも」
「……アーシア、妾でも踏まん地雷を踏むか」
「やっぱダメですかねー」
結局、新しい料理の開発で、その日の午後は費やされた。
結果、リゾットは米でないとおいしくないということだけはわかった。
=アーシアのスキル一覧表=
汎用知識(ギリシャ地域)
一般技能(鑑定)
一般技能(知識・メイド)
一般知識(公衆衛生)
専門技能(薬学)ランクC
専門技能(馬術)ランクD
特殊技能(尋問)ランクD
特殊技能(神学)ランクF
特殊技能(神聖文字)ランクF
特殊技能(法学)ランクF
特殊技能(料理)ランクD
特殊技能(詐欺)ランクD
特殊技能(弁論)ランクF
特殊技能(取引)ランクE
特殊技能(魔術)ランクB
特殊技能(演劇)ランクC
特殊技能(服飾)ランクC
特殊技能(知識・船舶)ランクE




