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ヘラクレスでも変したい

まずヘラクレスさま!すみません。祟らないでください。

スパルタ小麦ですが、スペルト小麦ともいわれフツウコムギの古代種といわれています。粒の形状がフツウコムギの3つのゲノムのうちの一つタルホコムギによく似ていることから脱穀性が悪いのですが、現在でも生産されている品種です。

一番見分けやすいのは小麦の種についてる毛がスペルト小麦は無毛もしくは極短毛でフツウコムギやエンマー小麦は長毛であるということでしょうか。

ああ、あとアーシアが小麦を見分けたのは一般知識(鑑定)と専門技能(薬学)のコンビネーションです。


 山から抜けて平地に着いた。

 道はT字路になっていた。

 ここで左に行けばカラマタ、右に行けばメッセナである。

 「とりあえず、メッセナに向かうぞ」

 「はい」

 そこで右にすすみ、緑の穀倉地帯へ向かう道を進んだ。


 小麦畑の中を進みながらも微妙な違いを感じた。

 「なんか、緑が濃くて元気がよくないか?」

 「そうですか、私にはわかりませんが?」

 「ちょっと待ってくれ」

 そういうと馬を降り手綱をコリーダに渡すと小麦を調べ始めた。


 うん、やっぱり葉の色が濃い、それにたぶん背が低い。

 調べていくと実の形が頭に浮かんできたが……それは見たことのない形をしていた。

 小麦の原種のタルホコムギ、樽を袈裟切りにしたような形をした輪状の実をもつ小麦だ。

 これに近い形を持っている。


 この畑の小麦の名称は「スパルタ小麦」そのまんまの名称である。

 耐寒性に優れ土壌がやせていても育つが、一本から8~20個の実しか取れず脱穀性に難がある。

 なんでフツウコムギにしないんだろう……このあたりの地質なら十分に育ちそうだが?


 そんなことをしていたら道の向こうから武装した一団が現れた。


 処刑部隊クリプテイア、彼らを見て反射的にそう悟った。

 「そこの騎兵、アポロ神殿の旗を掲げているが、なにかようか?」

 俺が答える前にコリーダが対応した。

 「私はデルフォイの神託巫女アーシア様に使える奴隷コリーダと申します」

 「私有奴隷か、珍しいな。デルフォイの巫女様はおられるのか?」

 「失礼ですが、そちらもお名前を」

 コリーダが警戒心をあらわに誰何している。

 「クリプティア 第2エノモイア隊長 パウロスだ。巫女はおられるのかな?」

 「巫女のアーシアです」


 一歩進んで名乗るとパウロスは怪訝な顔をして全身をねめつけるように見た。

 そして男性であると判断したらしい。

 「巫女というわりには男性のようですが……事情をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 その言葉と同時に部下がぐるりと俺たちを取り囲む。

 「申し訳ありませんな。手荒なことはしたくないので、武器を渡してついてきてもらえますか?」

 そのまま剣とアポロン神殿の旗を結び付けた槍を取り上げられ、メッセナまで連行されるはめになった。


 コリーダは俺が監視され護送されているのが不満のようだった。

 「パウロス様、神殿の旗の下にあるものに対して無礼ではありませんか」

 「黙れ奴隷!潰して、持ち主に代価を払ってもいいのだぞ」

 彼の返事に温度は感じなかった。

 「コリーダ、やめろ」

 「しかし、アーシア様」

 「彼らも職務がある。メッセナに行くついでだ。気にするな」

 「……はい」


 そこからメッセナに向かい、1時間程、歩いた。

 馬は彼らが手綱を引いているので、手すきのこちらは、周囲をゆっくり見物しできた。

 道を歩いてきた奴隷ヘイロイタイは、こちらを見ると目につかないように隠れてしまった。

 やはりクリプテイアはそうとう恐れられているようである。

 畑で作業している奴隷は逃げるわけにもいかず、作業を続けていた。


 ふと、あることに気付いた。

 (あの農具……全部木製?)

 鋤も鍬も金属部分が見当たらないのである。

 鋤は木製のT字の棒に木製スコップという感じだし、鍬も木製のバールのようなものである。

 よく見ると畑の隅には15cmくらいの長さの石斧が置いてある。


 ……あれが麦刈り用とか……まさかな……


 そのうちに前方に一人の少年らしい存在が現れた。

 「パウロスさまー」

 彼の姿は異様だった。

 ヘラクレスがライオンの頭をかぶり物にして、ライオンの口から顔を出している絵を見たことがあるだろうか?

挿絵(By みてみん)

 彼はそれを狼でやっているのである。

 ただ狼はライオンより頭が小さいので下あごは真下まで大きく開かれている。


 「イプソンか、まだその恰好をしているのか」

 「仕方ありません、わが魂ヘラクレスのような獅子が現れるまでは、狡猾な狼でいるしかないのです。」

 「まあいい、ヘロットを狩ってるのか?」

 「ええ、わが狼への贄を探しています」

 「ちゃんと仕事してるのはよけろよ。年寄りか子供にするんだぞ」

 「承知!さらばです。」

 そういうと彼はなぜか四つん這いで素早く麦畑に消えた。


 パウロスは大きくため息をつくと、こちらを振り向き弁明を始めた。


 「彼はヘラクレス症候群だ。形成されていく自意識と夢見がちな幼児性が混ざり合って、おかしな行動をとってしまうアレだ。君たちも……まあ、忘れてやってくれ」


 そっちかい!言動はいいのか!


 「ヘロットは結構しっかり狩れるいいやつなんだ。将来有望なんだが恰好がなー」


 ……


 あ、だめだ。こいつら、生理的に受け付けない。


 横を見るとコリーダも同じ考えにいたったようだ。


 俺は一歩踏み出すと、隊長に宣言した。

 「パウロス殿、同行するのはここまでにしよう」

 「なにを言ってるのかな?自称巫女君」

 「お渡しした剣を鞘から抜いてみてください」

 「剣?」

 パウロスは部下から剣を受け取ると、さっと引き抜いた。

 鞘から抜いた剣は見事なダマスコ模様が見えた、刀身にはアギス王家の紋章そして送り主のクレオンプロトス殿下の名前が刻印されていた。


 「殿下から拝領したもので身分証明になるといわれました」


 「失礼しましたー」


 いきなり謝られた。

 いっそ潔い。


 「いやそちらも職務なので、こちらは気にしてません」

 「ありがとうございます。では失礼します」


 一瞬の躊躇の後、武器と馬を渡すとクリプテイアは撤収した。


 でもよく考えてみると、俺たちって何もしてない麦畑にたたずむ旅人?だっただけなのに警戒しすぎである。


 「なんで、クリプテイアはあんなに警戒したんだろう?」

 「ご主人様、気づいてないんですか?」

 「え?」

 「……服装からみて野蛮人バルバロイと思ったのでは……」

 「ああ!」


 そうだ、俺が小袖に袴、コリーダが執事服……そりゃ警戒するわな。

 まてよ?そうなると、さっきの厨二の時の「君たちも……」は、そういうことか!


 まいったね。


 さてどうしようかと、周りを見渡すと北に村が見えた。


 名前も知らない村だが、今日はあの村の神殿にでも泊めてもらおう。

=アーシアのスキル一覧表=

汎用知識(ギリシャ地域)

一般技能(鑑定)

一般技能(知識・メイド)

一般知識(公衆衛生)

専門技能(薬学)ランクE

専門技能(馬術)ランクD

特殊技能(尋問)ランクD

特殊技能(神学)ランクF

特殊技能(神聖文字)ランクF

特殊技能(法学)ランクF

特殊技能(料理)ランクD

特殊技能(詐欺)ランクD

特殊技能(弁論)ランクF

特殊技能(取引)ランクE

特殊技能(魔術)ランクB

特殊技能(演劇)ランクC

特殊技能(服飾)ランクD

特殊技能(知識・船舶)ランクE

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