スパルタ
アーシア君ついに危険な領域に・・・無自覚の・・・本文をお読みください。
しかしスパルタ遠かった。到着まで17万字以上かかるとは思わなかった。
スパルタ内部とメッセニアの話もあるのでちょっと終わりまでどれくらいかかるかまだ不明です。たぶん皆さんにも道筋は見えはじめたと思うけど。
夕飯に向け大車輪で準備を始めた。
メニューはカツサンドである。
要は特別な材料を使わずに、料理法だけ変える分には共同会食にはひっからないみたいだ。
ただ、どうしてもワインとチーズは欲しかったので全員分(1000人分)テゲアのアゴラで大人買いである。ワインは600リットル、フェタチーズも100kg買い込んだ。(ワインは120ドラクマ、チーズは400ドラクマでしめて520ドラクマを420ドラクマに値切りました。)
これを供出して、代わりに猪の肉と小麦粉を分けてもらう。
それと頼んでラードを分けてもらった。
まず、食べきれなかった昼のパンを砕いてパン粉にする。
肉を薄く叩き、塩コショウで下味をつける。
水で溶いた小麦粉を、卵の代わりにしてパン粉をつけ熱したラードでカリッと揚げる。
マスタード、ピネガーを茹でて刻んだラデッシュの葉(これは共同会食にだしてもいらないといわれた。)と和え、チーズ、玉ねぎスライスと一緒にパンに挟み込めばお手軽サンドの出来上がり。
それに、オニオンリング、ワインを添えて夕食を準備、クレオンプロトス殿下をお招きした。
「おいでいただき光栄です」
「アーシア殿、なにか良い香りがするのですが?」
場所はテゲアのアポロ神殿、このポリスでは2番目に大きい神殿だ。一番目はアテナの聖域だが建物はない……。
「共同会食に出た材料だけしか使っていませんから、リュクルゴスの制度は破ってないので大丈夫です。たぶんこの匂いだと思います」
そう言ってオニオンリングを指さすと、匂いを確かめ
「確かに、この輪のようだ。これは?」
「玉ねぎに小麦粉をつけてラードで熱したものです。甘くておいしいですよ。こちらに、お座りください」
そう言って殿下をベンチに座らせると、俺が毒見役と説明役を兼ねながら夕食が始まった。
「……兵士たちの食事とはえらく違うな」
「まあ、調理法が東方の中華の技法を用いていますので、味が変わるのは仕方ないかと」
「ふーむ」
「あと、中華には医食同源という考え方がありまして、食事に薬を入れて薬功を与えながら味を調えるという考え方があります。この食事でも水当たり防止のため胡椒を使ってあります」
「なるほど、健康にもよいのか。スパルタに広められるか?」
「手法そのものは利用できますが、薬の中でも高価なものは無理でしょう。その辺は薬草師と相談させてもらえば可能な範囲を示せると思います」
「うむ、わかった。手配しよう」
……
……
えーと、今までの人と違ってやりにくい。言葉が短かく断定的で会話が弾みにくい。
その後は無言での食事が続く。
たぶん、うまいと思ってるんだろうけど(顔が笑顔だ)何も言わない。
食べ終わり、ワインを飲むと。
「うまかった。明日も一緒で頼む」
そう言って一礼し、殿下は去っていった。
……
……
ドーリア人の無口って本当だ、こりゃすごいわ。
腹芸不可に近い。
直球を放り込むしかないか。
翌日、テゲアを出発。
出発するときに今日明日分の食材を購入する。(といっても小麦粉、ワインとチーズだが)
全部で900ドラクマ、殆ど在庫一掃したらしい。必要量を手に入れるのが精いっぱいだった。
小麦は10リットルで1ドラクマだった。冬なのに若干高めのようだ。
代金は捕虜身代金から引いてもらった。だいたい7人分か。
テゲアを離れると、しばらくは川沿いの道を歩いていたのだが、昼頃に右に曲がって山道に入った。
俺は、女性3人の状態を確認しながら、山道をしばらく歩いていると、奇妙な違和感を覚えた。
途中で鹿が狩れたので、本日も夕飯に肉が出るのは確定になったので、その臭い消し用の野蒜を探しながら歩いた。
なんとか野蒜も採集できたので夕飯はハンバーグにしようと考えていたところで、野営の命令が下った。
「ご主人様、野蒜と肉を一緒に刻んで焼くんですか?」
「ああ、ほかにもニンジンとかを入れてもいいが……なんか気になるな?」
コリーダとピュロスにハンバーグの作り方を教えているときである。
「はんばーぐですか?まだ作ったことがないので、どこか違いましたでしょうか?アーシア様」
「いや、そっちじゃなくて、昼頃からなんかこう……うまく言えない違和感があるんだけど……」
その俺の言葉に興味を示したのはレイチェルである。
「なにか、うまく言えないが物足りない感じがする。じゃないの?」
「そうそれ!」
いわれてみると物足りないが一番近い感じがする。
「なりたてとはいえ空間魔術師ということねー。足りないのは人の気配よ。この辺には人が住んでない の」
「ああ!」
そういえば山に入った後、獣の気配は感知したが、人が暮らしている家や人間を感知できなかった。
「あなたも野蒜の採集で苦労したでしょ。あんな野草ですら十分に生えない・・・すごく痩せた土地なの。当然農地には無理……」
納得である。
それもあって村が見えないのか。
ともあれハンバーグを作り、殿下を招待する。
また寡黙な夕食が始まる。
殿下の食事が終わったところで直球を切り出す。
じっと殿下の瞳を見て話す。
「クレオンプロトス殿下、お願いがあるのですが?」
「いってみよ」
「ガレー船の漕ぎ手としてヘロットを1000人ほど訓練したく思います。できれば譲り受けたく願います」
「ガレー船?スパルタに海はないぞ」
「ペルシアとの戦争で海戦は必須。その際にアッティカ人のみに名声を渡すわけにはいきません。
主力として海戦でも勇猛をはせるドーリア人の艦が必要です。」
「船か……」
「船は共同保有で二隻もっています、三隻目も建造中です。漕ぎ手を確保すれば私個人の資金で船を増やすことは可能です」
「……よかろう。王族と長老の会議にかける。今回のアルゴス戦の褒美として下げ渡そう」
「ありがとうございます。それでヘロットの選抜方法なのですが、どなたと相談すればよいでしょうか?」
「長老たちと話せ。明日も夕食を頼む」
そういうとまた一礼して去っていった。
(クエスト;色仕掛け成功・・・特殊技能(詐欺)ランクDに昇格します。)
……なんかえらく簡単に決めたな?大丈夫なんだろうか……
たしか史実では、アギス家のレオニダス1世の戦死後(あの300人である。)子供のプレイスタルコス王の摂政を務めた人だから有能なのは間違いないと思うんだけど……
まあいいやOKでたし、長老と話し合おう。
「ねえ、アーシア」
「なに、レイチェル?」
レイチェルが頬を膨らませながら話かけてきた。
「スパルタンに同性愛者がいなくてよかったわね」
「なにが、いいたいの?」
「べつにーー」
なぜか、おかんむりである……よくわからない?
「アーシア様」
じっとピュロスが俺の瞳を見つめる。
「ピュロス、きれいだな」
素直に思ったまま言ったら、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「ご主人様」
「コリーダも張り合わなくてもいいから……」
「そうじゃなくて!!」
二人が姫様に泣きついている?
「「レイチェルさまー」」
「うう、もう、あきらめよう」
何をやってるんだろう?
結局その日と、もう一日、野営になった。
4日目の夕方、遠方に人の賑わいを感じた。
遠くにポツポツと灯の明かりが見えた。
……えーと、どこからがスパルタ市街?……
中央のアクロポリスの上には市場と劇場とアテナ神殿が一緒になった500m×300mの建物があるが……
あのポリスを示す塀がない……塀がない。大事なことなので2回言いました。
ものごい違和感がある。何だろう、他のポリスのせいかな。
狼とか来たらどうするんだとか、いろいろあるけど……アクロポリスまで登っていく途中の建物が全部見える。
塀がないってこんな開放的なもんなんだ。
日本にいた時はこんな無防備な街に住めたんだ。
=アーシアのスキル一覧表=
汎用知識(ギリシャ地域)
一般技能(鑑定)
一般技能(知識・メイド)
一般知識(公衆衛生)
専門技能(薬学)ランクE
専門技能(馬術)ランクD
特殊技能(尋問)ランクD
特殊技能(神学)ランクF
特殊技能(神聖文字)ランクF
特殊技能(法学)ランクF
特殊技能(料理)ランクD
特殊技能(詐欺)ランクD
特殊技能(弁論)ランクF
特殊技能(取引)ランクE
特殊技能(魔術)ランクB
特殊技能(演劇)ランクC
特殊技能(服飾)ランクD
特殊技能(知識・船舶)ランクE




