そしてトイレへ
アテナイ編もあと1話、今回はちょっと短いので物足らないでしょうが、若干時間が飛ぶ(話の中で1月ぐらい)のでここで切りました。
アテナイ編最終話も明日にはアップする予定ですのでご勘弁ください。
ようやくアテナイ編冒頭の謎の風景の意味が次回でわかります。
「わたっ、た、たっ・・・」
あれから後クレイステネスさんに挨拶もそこそこに、サンチョとコリーダにはあとからくるように命じて馬を飛ばしてきた。
鐙がないせいで、きついが、ほんの15分でアテナイのアゴラに来ることができた。
(クエスト:早駆終了・・・特殊技能(乗馬)ランクDに昇格します。」
「し、師匠!!」
アゴラに着くや否や探したのはヘラクレイトス師匠である。
火薬のことを話せる人物は他に思いつかなかった。
その師匠はいつものように陽だまりで、樽に腰かけながら昼寝をしていた。
その腕の中にはイシスが抱かれ、彼女も目を細めてうつらうつらとしているようだった。
(相変わらず平穏無事な人だ。)
その姿を見ることで俺の心も少し落ち着いた。
まずアゴラを回って魚の干物と、パン、ワインを手に入れた。
「師匠、もうすぐ正午です。食事はどうですか?」
「ああ、アーシアか。昼飯か、もらおう。」
まだ寝ぼけているのか毒舌が出てこない。
横でイシスは自分用に用意された干物を食べ始めた。
「イシスの分を用意するたぁ、気が利いてるな。誉めてやる。」
めずらしくもお褒めの言葉をもらった。気分がいいのだろう。
「実は相談事がありまして……」
食事をとる師匠におずおずと話しかける。
「相談?いいぞ、言ってみい」
そして硝石と火薬の関係、火薬の利用法……そこまで言ったところで、いきなり頭を叩かれた。
「あほか、この空気頭。こんなところでする話か。」
「でも、師匠……」
「誰かに聞かれたらどうするんだ、この大理石脳。」
「・・・はい」
「取り合えず、飯終わったらお前んち行くぞ」
そのあと正座で食事が終了するのをまち、食事が終わると、馬と一緒に歩いてリカヴィトスの丘を目指した。
「しかし、お前も厄介ごとばかり見つけるよな」
「誠に申し訳ございません」
道を歩きながらも、くどくどお叱りを受けていた。
宿舎に着くとピュロスとホルスが飛び出してきた。
「アーシア様、ご無事で何よりです。」
ピュロスは若干目の下にくまがあるような……?
ああーー、昨日向こうに泊まるって連絡入れてない。
徹夜で待ってたのか?
「すまない、ピュロス。急にミルティアデス様に泊まるよう勧められた。連絡を入れなかったな」
「お気になさらないでください。無事で何よりです」
……責められるより罪悪感がきつい……
飛び出してきたホルスはイシスに甘えている。まだ小さいもんなー
「ほれ、さっさと要件済ますぞ」
「はい師匠」
後ろから師匠に急かされた。
部屋の中に入るとさっきの火薬の話を再開した。
現在の戦術、重装歩兵のファランクスでは炸裂弾を作っただけで、戦列が吹き飛び戦術を根本から変えないといけないことや、最終的には銃器の開発に至り、近接武器がほぼ使われなくなること、今の時代なら世界を征服できる力になりうることなど、事細かに説明した。
けれど師匠は、途中から耳掃除をしたり、イシスとホルスで遊んだり……なんかまじめに聞いてない?
「ということで師匠、どうしたらいいんでしょうか?」
最後にそう尋ねると師匠は言った。
「んーどうもしなきゃいいんじゃね?」
「師匠!!」
「いやマジで。なんもしないで忘れろ。それで解決だ。」
……?
……!!
そうか、誰にも話さないで、そのままにしておけば火薬はできない。歴史は変わらない。
すげー、俺の悩み、一言で終わらせた。やっぱ師匠。
「どうしても気になるなら、硝石ができないよう、糞尿がどっかに溜まらないように下水設備を作ったら?」
下水設備そのものはもうローマで作られてるし、そのこと自体は問題ないだろう。
「ただ金はかかるよ。数百タラントン。その点だけなんとかできるなら、アテナイのアゴラ付近の通路に作って、順次広げていけばいい。」
通路?
「まず道に下水を掘って、石で蓋すればいいだろ。川からでも水引いて。ほんで臭くない区画ができれば、他の区画でも真似はじめると思うから、そしたら民会でクレイステネスにでも予算を通させればいい」
なるほど。
「オウラの丘の分はそのうち俺が回収しておく。もう気にしなくていいぞ」
すげーぞ、師匠。
「お前は皆に下水を作らせる運動を考えろ。トイレを最新流行にするとかな」
それはそれで難しいんですが……いいでしょう。わかりました。
トイレをトレンドにするためアーシア全力で考えさせていただきます。
=アーシアのスキル一覧表=
汎用知識(ギリシャ地域)
一般技能(鑑定)
一般技能(知識・メイド)
一般知識(公衆衛生)
専門技能(薬学)ランクE
特殊技能(尋問)ランクD
特殊技能(神学)ランクF
特殊技能(神聖文字)ランクF
特殊技能(法学)ランクF
特殊技能(料理)ランクD
特殊技能(詐欺)ランクF
特殊技能(弁論)ランクF
特殊技能(取引)ランクE
特殊技能(魔術)ランクB
特殊技能(乗馬)ランクD
特殊技能(演劇)ランクD
特殊技能(服飾)ランクE
特殊技能(知識・船舶)ランクF




