魔術(マギ)
夜の月を書くために日時設定しました。
本日、紀元前492年9月21日です。上弦の月が太く空を照らしてるはずです。
最初は肥溜めとかの話も入れようかと思いましたが・・・リアルすぎて年少期のトラウマが・・・ええ、肥溜に石投げ込んで遊んでた記憶があります。石沈まないんですよ・・・季節によっては、とんでもない田舎でした。
その横には麦畑が・・・田んぼじゃなかった・・・全部、津波が流してしまった地形の一つです(泣)
暗がりの中をリカヴィトスの丘を後ろに北西に向かって歩いていた。
一緒にいるのはヘラクレイトスさんのみである。
緩やかな斜面のなか荷馬車がすれ違える程度には広い道が続いている。
松明などは使わなかった。
月が満月と半月のちょうど中間ぐらいの大きさの月が夜道を照らしている。
ヘラクレイトスさん曰く、これだけ月が明るいなら灯りがないほうが道が見やすいということだ。
確かに道の両側の草むら?は暗くなって、道は白く浮き出ていた。
ヘラクレイトスさんの足取りはしっかりとして、カツカツと愛用の杖をつきながら進んでいく。
俺はその後を棒を片手にトボトボついていくだけである。
それにしてもどこに行くのだろう?
……
宴が終わる間際、ラーメンの試供が終わったのでサンチョがやってきた。
「ラーメンは大好評でした。あとフォークとスプーンは欲しいという方が多かったのですが、殿の意向をうかがってからと言ってあります」
「わかった。フォークとスプーンは欲しがる人にはあげてくれ。それでどのトッピングが人気高かった?」
「狼肉と小エビでした。狼肉については別途売ってほしいとの相談がありました
「狼肉の在庫はどうだっけ……」
そんな打ち合わせをしているとヘラクレイトスさんがやってきた。
「おう、アーシア迎えにきたぜ」
「ヘラクレイトスさん?」
「マにつくやつをやるぞ。ついて来い」
予想はしていたが唐突である。
「あの、どこへ行くんでしょうか?」
それを聞くと、顔をしかめながら小声で
(人のいないところに決まってるだろうが、オメェの頭は大理石か)
はい……確かに……そうですよね。
魔術に関することを人前で堂々と喋れるわけもありませんね……呆けてました。
「んじゃ、こっち来い。嬢ちゃん達とラーメン職人はついてくるなよ」
「「え?」」
「はい」
ラーメン職人はそのまま頷き、嬢ちゃん達は驚いた様子を見せた。
俺もヘラクレイトスさんに賛同する。
「ヘラクレイトスさんの言う通りに昨日の家で待っていてくれ」
「しかしアタシは護衛です。夜道を行かれるのに……」
「大丈夫。ヘラクレイトスさんがいるから」
ついて来ようとするコリーダを押しとどめ無理に帰らせた。
「これもってついてこい。アーシア」
渡されたのは2m近い樫の棒である。
「道は平気だがそれ以外はそいつで必ずつついてから進めよ」
「落とし穴でもあるんですか?」
「……お前すげえ、いいセンスしてんなぁ……」
「……アタリですか」
「アタリだ」
冗談のつもりが本当にあるらしい。
考えてみれば猟師と野生動物のいる世界だ。ないほうがおかしいかもしれない。
そんなこんなで館をあとにして丘の北側をトボトボあるく。
月明りで照らされる景色は、南面とはうって変わって人家がほとんどない。
人がいない地域に向かっているのは分かる。
ただヘラクレイトスさんの行動を見ると、星を見たり、山を見たり……どうもどこかに行く宛てがあるみたいに見える。
10分も歩くと前方に丘が見えてきた。
頭の中でアテナイの地図が広がる。
(あれはストレフィの丘だな)
もっともストレフィの丘は20世紀命名なので今はなんて呼ばれているかは知らない。
「あのオウラの丘が目標だ」
ヘラクレイトスさんが指さす。
「あそこなら魔術が暴走して一面丸焼けになっても誰も文句言わない」
「なにかあるんですか?」
「いや何もねぇ。せいぜい石灰岩と鍾乳洞……が一杯ある程度だ」
「鍾乳洞……なんか住んでませんか?」
「いや、それはぜったいねぇ。行けばわかる」
そういうと
「狼は昨日退治したから、たぶん平気だと思うが一応音に気を付けてくれ」
と続けられ、二人とも無言で丘を目指した。
そのうちに妙なことに気付いた。
他でもない「この道」である。
何もない丘に向かって一直線に二車線道路が向かってるって変じゃないか?
……本当に何もないんだよね……
その疑問は丘の麓に着いたときに吹き飛ばされた。
「!!!ヘラクレイトスさん!!!」
「我慢しろ。すぐ慣れる」
ものすごい爆臭である。
アテナイの街中で漂っている臭いを1万倍に濃縮したみたいな爆臭があたりに満ちている。
「ここが毎日、汚水桶を捨てにくる場所なんだ」
ああ、法律で城壁から2km以上と決めたやつか……ここまできて捨てる……確かに余計な人いないと思うけど。
「鍾乳洞に突っ込むから中に動物はいない」
……なるほどぅ……うううう……くせー
「だいたい回収が終わって捨てに来るのが午前十時くらいだ。それまで人は近寄らねぇ」
うぇーー、たしかにわかりました。
「丘のてっぺんまで行けばマシになる。急ぐぞ」
そこから後は口を開くのが嫌で無口になっていた。
下手に口を開くと空気に味がしそうな気がする。
しかし臭いは丘の中腹を超えると急速に薄まってきた。
頂上に着くころにはもはや気にならない程度に薄まっていた。
不思議だ。
「よし、それじゃ始めるぞ」
頂上にはなぜか石のベンチがあり、そこに二人座って話し始めた。
「まず、お前さんが魔術を暴走させた時、どんな感じがしたか教えてくれ」
そう尋ねられてその時のことを一生懸命に思い出した。
まず粘土板の暗号を解いて有頂天になっていたこと。
次にそれを確かめるべく宝物庫にむかったときは暗くて怖かったこと。
粘土板の読み方が正解だった時にはすごくうれしかったが中身が?だったこと。
その中身は名前だけ知っている程度だったが未来の知識だったこと。
暗くて見にくいので、明るいといいなと思ったときに……
「ストップ!!」
大声でヘラクレイトスさんが制止してきた。
「……空間の広がり方が急に変に……ババア、完全には封じきれなかったのか……」
なんかヘラクレイトスさんが息を切らして汗かいてる……まさか、また暴走させかけた?
「そこはとばして逆に寝る前から過去に向かって教えてくれ。」
寝る前?
たしかアレティア姫と巫女長が話してヘラクレイトスさんを紹介してくれて、
その前は聖域の中庭で姫が俺の魔法を封印して、
「そこだ。なんて言ってた?」
「たしか、そう・・君はまだ魔術をつかえない……って男性の声で。」
「ふーむ。声の周波が変わっていたということは……時間流は変えられたのか……となると……あのババア……」
「どうしたんですか?」
「どうもこうも、あのババア、お前を俺に押し付けやがった」
「は?」
俺はその時きっと、ものすごい間抜けな顔をしていたと思う。
「「まだ」ってのが曲者だ。あのババア完全に封印できるくせに、条件付けで再解放するようにしやがった。」
???どゆこと?
「たぶん、俺に会って魔術の話をするとかの条件で、封印を外すようにしてやがった」
「あああーーー」
「ババア真剣に呪うぞ!まったく!」
やばい、今の俺は安全装置の外れた核弾頭状態だ。
人に会うまでに何とか再封印しないと危険すぎる、大ピンチです。
=アーシアのスキル一覧表=
汎用知識(ギリシャ地域)
一般技能(鑑定)
一般技能(知識・メイド)
一般知識(公衆衛生)
専門技能(薬学)ランクE
特殊技能(尋問)ランクD
特殊技能(神学)ランクF
特殊技能(神聖文字)ランクF
特殊技能(法学)ランクF
特殊技能(料理)ランクD
特殊技能(詐欺)ランクF
特殊技能(弁論)ランクF
特殊技能(取引)ランクE
特殊技能(魔術)ランクC
特殊技能(乗馬)ランクF
特殊技能(演劇)ランクD
特殊技能(服飾)ランクE
今回は変動なしです。




