赤髪のピュロス
奴隷に関する話が出てきますので嫌いな人はパスしてください。
ただ性奴隷は特殊な趣味の人用以外にはいない国です。
ポリスが変わると違いますが……
アレティナ巫女長の後をついていくと中庭のような場所に出た。
三方を建物に囲まれているが海側の方だけが腰ぐらいの高さの石塀になっている。
その中央部分に2メートル間隔で4本の石柱が2列あった。
列と列の間は10m程あり、石柱の上には木製の格子が組まれていていた。
その格子は葡萄棚になっており、格子を覆い尽くした葡萄の葉は涼しそうな木陰を作りだしていた。
中央には雪花大理石で作られたテーブルが置かれていた。
直径2mの円状の天板に中央部分が太い1本足、しかしその足は巧みな彫刻で樹木を模しており枝を広げる形で天板を支えているデザインのせいで武骨なイメージは全くなかった。
「さあ、どうぞ涼しいですよ」
そういって巫女長がテーブルに近づくと、先ほどのストロベリーブロンドの女性が椅子をひき彼女を座らせた。
俺が近づくと同様に椅子を引いて座らせる準備をしていたので、
小さくお礼をいうと腰かけた。
対面に座った巫女長が不思議な表情をした。
「その子は奴隷ですから、お礼はいりませんよ」
あたかも当然のように言われた。
「奴隷ですか?」
「ええ、髪の色でわかるかと思っていましたが・・・ああ、今は遠国の出身でしたね。失礼、こちらがうっかりしていました」
「確かにきれいな赤髪ですね」
「それは赤髪の奴隷ですから」
なんだろう?まるで自慢されたみたいな感じだ。
「なにかピュロス?と赤髪は違うんですか?」
その言葉を聞いた瞬間に彼女の目が鋭くなった。
「大違いです。猫と獅子を同じとは言わないでしょう」
彼女はやや興奮気味に言葉をつづけた。
「ピュロスの奴隷はピュロス家産の奴隷にのみ許される名前なのです」
そこまで聞いたところで疑問が山のように出てきたが、失礼があってはいけないので謝罪した。
「すみません。失礼なことを尋ねたようです。ただ遠国の出身のためそのあたりが、よくわかりませんのでお許しください」
それをきくと彼女はハッとしたように座り直すと、小さく咳ばらいをして顔を赤らめた。
「こちらこそ失礼しました。ただピュロスの奴隷を持つのは小さな時からの夢でしたので・・・」
ちょっともじもじした感じで彼女は話した。
「そうですね、ついでに奴隷について教えておきましょう」
そのとき別の女性(黒髪)が昼食を運んできた。
テーブル上にパン(粉っぽいナンみたいなもの)とボールに入った赤ワインそれと焼き魚に野菜サラダだった。
「食べながら話しましょうか」
巫女長の所作を真似してパンを赤ワイン(水割りっぽい)に浸して食べる。
醗酵してないフランスパンをワインにひたすとこんな感じになるのかな?
焼き魚は塩っ気が強いけど微妙に甘い感じが?照り焼きほど甘くはない。
問題はサラダ。ゆでたキャベツとひよこ豆を香草と蜂蜜、酢で和えたらしいのだが・・ニンニクっぽい香りと甘ったるい香りが同時に来て、次にコリアンダーの原っぱの匂いが鼻を抜け、蜂蜜の甘さが口に広がり、後味に酢っぱさが残る。
ごめん、無理。
むりやり飲み込んでも胃の奥から匂いが出てくる感じ。
コリアンダーってパクチーだっけ……あんま食べたことなかったしなー
(料理体験・・・特殊技能(料理)Fランク取得しました。)
ふー、夕飯は自炊させてもらおう。まあ何とかなるだろうって気がするし。
「アレティナ様、先ほどの話の続きを」
サラダのことをごまかすため彼女に話を振る、うわ、おいしそうに食べてる。
「ああ、そうですね。では基本的なところから始めましょうか。スパルタはちょっと特殊なので説明しにくいのでアテナイの例で説明しますね。
まず、奴隷は大きく分けて野生種と繁殖種がいます。野生種は捕まえてきたばかりで、調教が済んでいないと命令も聞きませんし言葉も理解しません。このため安く手に入りますが、肉体労働用がほとんどですね。アテナイだと100から200ドラクマぐらいで手に入ると思います。」
だいたい100万から200万円くらいか・・・安いんだか高いんだか?
「次に高いのが繁殖種です。野生種を交配して生まれた奴隷は生まれた時からギリシャ語を聞いているため用途別に成長できます。普通はこの品種で商売の手伝用や書記、あるいは他の奴隷の監督官をさせます。」
交配・品種って完全に人間扱いしてない、しかも罪悪感ゼロっぽい。
「最後が繁殖家が血統を固定した銘持ちの奴隷がいます。例えばメネラオス家の奴隷は黒髪、赤銅色の肌が特徴で非常に頑健な体と忍耐強い精神を持ちますので、鍛冶や造船など肉体的な技能に向いています。書記や執筆活動を手伝わせるならメデス家の奴隷がいいでしょう。黒い肌に茶髪の巻き毛ですが読み書き、算術を標準で学んでいます」
なんだろう、この感じ。どっかで感じたような。標準、オプション?
「そしてその中の頂点を行くのがピュロスの奴隷なのです。体は大きく力があり、読み書き算術はもちろんのこと、最低一つは得意な分野を持ち、見た目も美しい白肌赤髪。最低でも1000ドラクマ、高いものでは1タラントン(6000ドラクマ)にもなるという最高級品です」
1タラントンって?えーと三段櫂船1隻の値段か、まさに戦艦1隻分の価値。
「わたしもこの子を持つまで5年待ちました。この子は累代5代の純血です。外観の特徴が非常にはっきり出ています」
ああわかった。フェラーリとかランボルギーニみたいな感じか。クルマだ。
扱いがクルマに近い。
「もちろん買い手も選ばれますので、お金だけあっても手にはいるものではないのですよ」
「それは知らぬこととはいえ失礼を申しました。ご容赦ください」
即座に再度あやまっておく。
はー、完全に日本人の感覚だとアウトなんだけど、不思議に彼女には嫌味を感じない。
とはいえ慣れないなー。
現時点のスキル
一般技能(ギリシャ語)
一般技能(地理、ギリシャ)
一般技能(鑑定)
特殊技能(尋問)ランクF
特殊技能(神学)ランクF
特殊技能(神聖文字)ランクF
特殊技能(法学)ランクF
特殊技能(料理)ランクF