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奴隷

張三は本名ではありません。張三李四からとった偽名です。日本風に言えば権兵衛とか太郎とかいう感じでしょうか?

この当時の中国は袍と裳で構成されるゆったりしたものですが、騎馬民族は胡服と言われる筒袖の服が成立していました。

なんで中華の説明してるのか・・・足りない分は東から持ってくる予定だからです。

 一挙動で跳ね起きたコリーダは予備の松明をつかむと常夜灯から火を移した。

 それを玄関に移動して外に取り付けると、室内に戻ってきて護身用の小剣を抜いた。

 「ご主人様、サンダルを!」

 彼女の命令に従い、サンダルをはこうとベットから足を下すと、たちまちのうちピュロスが編み上げサンダルをはかせてくれた。

 ピュロスの「コリーダ、終わったわ。」の声を聞くと、彼女(コリーダ)もサンダルをはき始めた。


 「これからどうする?」

 中身がごく平凡な日本人なのでどうしたらいいか、まったくわからなかった。

 「とりあえず、室内で待ちます」

 常夜灯を吹き消しながらコリーダが答えた。

 「今、出て行っても警備隊の迎撃の邪魔になるだけですし。まだ誰もここに来てないということは狙いは私たちではないと思います」


 松明が表の通りを照らし、室内が暗いせいで通りの様子がよく見える。

 確かに大勢が行き来している。

 行ったら邪魔になりそうだ。


 「もしかしたら襲ってきたのは人間ではないかも?」

 コリーダがつぶやいた。

 「人間でない?」

 「ええ、オオカミかイノシシのような感じがします。人の多さからみてオオカミの群れ……でもまだ確定はできません、盗賊の可能性もありますので」

「了解」


 無言のままのピュロスは、ホルスが逃げないようにこの間ずっと抱っこしていました。


 =カンカンカン…カンカンカン…=


 暗闇でじっとしていた僕らにもはっきり聞こえる音が響いた。

 「コリーダ、何があったのかな?」

 「たぶん戦闘終了の合図だと思います。行き来する人間の緊張感が減りました」

 そういわれてみる広場の人間の行動が、さっきより軽く動いている感じがした。

 「もう少ししたら、だれか来ると思いますので待ちましょう」

 こういう場面ではコリーダの独壇場である。彼女の指示に従って暗闇で待つ。


 すぐに入口にだれかやってきた。

 「アーシア様、クレイステネス様よりご案内するようにいわれました。グラウコスです。管理棟までご案内するように言われました」

 さっきの中年男性である。

 出ていこうとする俺をコリーダは片手で止めると、自分が出ていき、グラウコスの身体検査を始めた。

 持っていたナイフを預かると、

 「アーシア様、もうよろしいです。行きましょう」

 ……そこまで警戒する必要があるのか?……あるんだろうな、きっと。


 管理棟は目の前なのですぐに到着した。

 入ってすぐの広間にクレイステネスさんが兵士数名と一緒にいた。

 「アーシア、騒がせてすまねぇ。でけぇオオカミの群れが襲ってきた」

 あ、べらんめい調だ。

 「はー、それにしても、まいった」

 そう呟くクレイステネスさんは本当に困った顔をしている。


 「何か問題でも?」

 「いやな、オオカミは追っ払たんだが、そん時に命令違反した奴がいてな」

 「それが何か?」

 別に普通にある話だと思うが?


 「そいつは西の見張り小屋に行くはずだったんだが、南のほうが危ないと判断して勝手に一人で南の戦場に行っちまったんだよ」

 よく聞く話だ。


 「その判断は正確で、おかげで兵士の損害は最小限で済んだんだが……」

なら、別に問題はないのでは?


 「問題はそいつが奴隷だったことでな。主人の命令を聞かない奴隷への罰を与えなくちゃならない。」

 それは……


 「張三て奴だがあっちで買って、おれが中華から帰って来る時もよく守ってくれた。今回も南に俺の甥がいるのを知ってて助けに行ったんだ」

 そういうとクレイステネスは、目の前の大男に目を移した。


 「張三、戦闘中に命令違反した奴隷は死刑にせざるを得ねぇ。わかってんのか」

 張三はうなずくと

 「私の命より、あなたの甥の命が重要と判断した。」


 その横にいたクレイステネスによく似た男性が答えた。

 「伯父上、彼の判断は的確です。彼がオオカミの群れの後ろから突撃してくれなければ我々は殺されていました」

 「アカイオロス、それはわかってるんだ。問題は命令違反のほうでなー」


 クレイステネスは大きくため息をつくと

 「張三、命令違反の死罪は変えられない。ただお前の子供と女房は奴隷を開放してメトイコイにする、それで勘弁してくれ」

 「感謝します。ご主人様」


 その間、俺は疑問に思ったことを聞いていた。

 (ねぇピュロス、奴隷の命令違反ってそんなに厳しいの?)

 (もちろんです。我々は意識ある道具です。道具が勝手にやることを決めたらまずいでしょう?)

 (?)

 (そうですね、例えばナイフで果物を切るつもりが、そのナイフが勝手に肉を切り出したらどうします?)

 (人を切る前に折るかな?)

 (そういうことです)


 でも疑問が一つ残る……なぜ、クレイステネスさんは俺をこの場に呼んだんだろう?

 さっきからこっちをちらちら見てる気もする。

 何かやることがあるんだろうか?


 「では、デルフォイの神託……の巫女アーシア殿、彼に最後の言葉をかけてくれないか」


 あれ、口調が変わったな、なんだろう?


 死刑執行の前の神父役?違うな、そんな話あるわけがない。


 あ!神託か!これを使えば


 「クレイステネス、今アポロンより神託が降りました。奴隷、張三ちょうさん以後サンチョと名を変え巫女の護衛をなすべしとのことです」


 うわーデマばっかし……うまくごまかせるといいんだけど。

 (クエスト;演技を行う完了・・・特殊技能(演劇)ランクDに昇格します)


 それを聞いたクレイステネスさんは満面の笑みになった。


 「そっかー、神託じゃあ仕方ねぇやな。やい、張三いやサンチョか、残念だが処刑はなしだ。しっかりアーシアに仕えるんだぞ」


 「?……は、心に銘じて」


 よくわかってないな。サンチョさん。まああとで話せばいいか。


 「サンチョは元の格好に戻ったほうがいいな。後で用意しておく」


 元の格好?もしかして服があるのかな。あるなら俺もほしいなー


=アーシアのスキル一覧表=

汎用知識(ギリシャ地域)

一般技能(鑑定)

一般知識(公衆衛生)

特殊技能(尋問)ランクD

特殊技能(神学)ランクF

特殊技能(神聖文字)ランクF

特殊技能(法学)ランクF

特殊技能(料理)ランクD

特殊技能(詐欺)ランクF

特殊技能(薬草学)ランクE

特殊技能(弁論)ランクF

特殊技能(取引)ランクE

特殊技能(魔術)ランクC

特殊技能(乗馬)ランクF

特殊技能(演劇)ランクD

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