春秋戦国
孫武と伍子胥が並んで戦う戦場って想像しただけでも豪勢ですよね。
そんな時代に民主主義やってたアテナイとか共和制やってたローマがある一方で日本は縄文末期になります。このすぐ後に弥生時代になり米作が流入するのですが・・誰が持ち込んできたんでしょうねー・・・大陸の歴史が怪しげすぎます。
まさか中華料理を食べたことがある人が,古代ギリシャにいるとは思わなかった。
目の前の人物を見ながら、自分の常識が世界には通じないことを確認する。
「中華というのはどういう国でした」
「蓬莱について話してもらうのが先のような気もするが、お客の要望だ、答えなくてはな」
そういうとクレイステネスさんは春秋戦国の戦国時代について話してくれた。
時代は呉が孫武、伍子胥 を将軍とし越を滅ぼした時期で、将軍たちの逸話や平民のしぶとさ、中華の土地の豊かさについて事細かに話してくれた。
「あの土地は豊すぎる……人は多く、産も多い、ヘレネスの力では敵対できないほどに……」
そういうと
「では、蓬莱について聞かせてもらおうか」
彼はまだ見ぬ神仙の国について興味津々だった。
「正確には蓬莱ではなく、その2000年後の日本という国ですが……」
そう前置きすると、現代日本について要約し説明を試みた。
ところが、そうしてみると、意外に説明に困ることが分かった。
なんというか、歴史と科学と職人が混ざらないと説明できないのである。
日本人の気質を理解するのに江戸時代の制度は必須であり、基本的に無信教の成立は神仏習合……これはヘレネスにもわかりやすい……と神仏分離……こっちは概念がない……について理解がないと難しい。
王家に対する尊敬と民主主義への傾倒の両立。生産性に関する異常なまでの向上心、どう見てもそれに関する慣習の数々。
なにから説明すればいいのか困りきった俺は分野を区切って説明することにした。
まず一番最初に政治形態について話し始めた。クレイステネスさんが一番理解しやすい話だと思ったからである。
民主主義について、議会政治と政党について、選挙について、そのあたりでクレイステネスさんは失笑していた。
「二〇〇〇年たっても私が決めた方法がスタンダードになってるとは思わなかったよ」
ちょっと虚をつかれたが、たしかに言われてみるとその通りなのである。
五〇〇人議会という代議員制度を作り、それに伴う選挙区を決める。
違うのは議員の選出が抽選か投票かではあるが、投票そのものは陶片追放とまったく同じ手法を用いる。
これらの制度を作ったのは目の前にいる人物なのである。
その言葉に唖然としてると
「次は歴史だな。どうもそれを知らないと理解を間違う気がする」
そのまま手を叩くと
「ともあれ、まずは食事だ。羊羹と米飯を作らせた。食べてからにしよう」
奥のほうから数名の女性が出てきた。
その中に一人男性が混じっていて、彼はクレイステネスさんの耳元で何かをささやいた。
「千客万来だな」
そういうと
「彼もこちらへ、夕食も準備してくれ」
そう指示をだすと、こちらを向き
「アーシア君、ヘラクレイトスが訪ねてきたよ。珍しいこともあるものだ」
そういってる間に入り口のほうから麦藁帽に腰布のスタイルでヘラクレイトスが近寄ってきた。
「よう、クレイステネス。やあアーシア。話の前に飯をもらおう」
「ヘラクレイトス、君ならいつでも大歓迎だよ。今準備させている」
そういうとクレイステネスの横に絨毯が敷かれた。
ヘラクレイロスも特に遠慮した風もなくその絨毯に胡坐をかく。
その、腰布だと……丸見えなんですが……
なるべくそっちを見ないようにして食事が来るのをまつ。
メニューは皿に載った白米、器に入ったスープ、それと焼き魚(鯖)のようだ。
羊羹ってもともとは羊肉の羹だったな。
それよりも・・・蓮華と箸がある。
「アーシア君は箸は使えるらしいね。私は使えないので蓮華を使うよ。好きなほうを使ってくれ」
そうクレイステネスさんが説明している横でヘラクレイトスは、ご飯を手づかみでスープを器を口につけて飲んでいる。ワイルドである。せめて帽子はとってほしい。
食べてみると、ご飯はちょっと臭い。スープは薄いみそ汁みたいではあったが焼き鯖と一緒にいただく・・・一気に心が落ち着いた。
やっぱり日本人には米の飯、それこそ今頃から2000年かけて作られていく食文化なんだよなー。
感慨にふけっていると、先に食べ終わったヘラクレイトスさんが話してきた。
「アポロ神殿に聞いたらこっちだって聞いたんで歩いてきたが、久しぶりにうまいものが食えた。ゼウスに感謝だな。で本題だが・・・」
俺が慌てて箸をおこうとすると「そのまま食事を続けろ」と言われたので食べながら聞くことことになった。
「まず、いくつか確認する必要がある。おめぇさんはアカシックレコードって知ってるか?」
聞いたことはあるような気もするが、判然としない。そこで首を横に振ると
「じゃあ、まずそこからだな。アカシックレコードってのは人類共通記憶と思ってくれ。人間が死ぬときに、そこに記憶を投射して蓄積・成長していく。形状としては十一次元に浮かぶ二重螺旋の形をしている」
……相変わらず物理か科学にしか聞こえない……
でもクレイステネスさんの前で話していいのかな?
「でだ、これから知識を取り出す方法があればほぼ無限の力が得られるわけだが・・・今のところ成功した例はほとんどない」
ほとんどってことは、あるんだ成功例。
「その成功例が魔術ってやつなんだが……人によってアプローチが違ってな。それぞれでやり方が違う」
やり方?
「俺のやり方は情報の制御によりエントロピーの極小化を起こすことで、事象確率を変化させることだし……」
ごめん、その説明の段階で意味不明。
「アレティナは時間流の歪を利用して、情報が何もない断裂した空間を作り、そこに新しい情報を書き込む方法を使っている」
……もっとわかんない。でも、そんな方法で俺の魔術って封印されたの?
「そもそも、どうやって発動させたのか?お前さんが一番わからない。発動の手順を確認しながら制御の魔法を作らにゃーいけねぇが、まったく理屈もわからん奴がなんで魔術発動するかねー」
呆れ顔のヘラクレイトスの横でクレイステネスさんがニコニコしている。
……話してる内容わかってるのかな?
その感情が表情に出ていたのだろうクレイステネスさんが説明してくれた。
「あ、ご心配なく、私にヘラクレイトスの魔術はわからないので、気にしないでください。ヘラクレイトスは私がアテナイを追放になっていた間、アテナイでの商売と情報収集を引き受けてくれました。そんな理由で彼を信用してます」
はー、そういうことですか。でも、この二人ってなんかそれ以上の関係がありそうな気もするけど……気にしすぎかな?
=アーシアのスキル一覧表=
汎用知識(ギリシャ地域)
一般技能(鑑定)
一般知識(公衆衛生)
特殊技能(尋問)ランクD
特殊技能(神学)ランクF
特殊技能(神聖文字)ランクF
特殊技能(法学)ランクF
特殊技能(料理)ランクD
特殊技能(詐欺)ランクF
特殊技能(薬草学)ランクE
特殊技能(弁論)ランクF
特殊技能(取引)ランクE
特殊技能(魔術)ランクC
特殊技能(乗馬)ランクF
特殊技能(演劇)ランクE
今回は変動なしです。




