表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/94

アテナイの前にて

第2部開始します。

こっち主体で半美女は月一更新ぐらいで第2部を乗り切ろうと思います。

アテナイ編でだいぶ史実からずらし始めます。

 「お帰りなさいませ、ご主人様!」


 「いってらしゃいませ、ご主人様!」


 ヴィクトリアンメイドの姿をした女の子の声がホールに響く。

 厳しい接客の特訓中だ。


 「もうすこし声に抑揚をつけて、アクセントは「ご主人様」のほうを強く発音!」

 「「「はい」」」


 それを指導しているのはヘタイラ。

 高級娼婦とも訳されるが、日本でいうと花魁とか舞妓とかいう感じが近い。


 彼女ヘタイラらもそれぞれ個室を持ち、10人以上が所属、開店準備している。

 娼婦ポルノイはおいていない。


 もちろん万が一に備えた警備兵もいる。

 警備兵はすぐわかるようにトランプの兵隊みたいに厚手の布を前後に垂らしている。

 ホールの隣でパンクラチオンをベースとした格闘の訓練をしている。

 布の中央のマークはトランプのスートそのままにスペード、クラブ、ハート、ダイヤでエースからキングまで13名がそれぞれいて合計52名。

 それを満足そうに見守る、入れ墨をしたマッチョは燕尾服(執事用)を着ている。


 ホールからはドロンが唐揚げや天ぷらの準備をしている。

 ワインだけでなく、エールもエジプトからの輸入品を用意した。


 「アーシア店長、カクテルの味見おねがいします。」

 ……いつのまにか肩書きも店長になってるし。

 ノンアルコールカクテルという概念がなかったので、アレキサンドラとかシンデレラとかをベースにワインを入れた飲み方を流行らせてしまった。

 他の所でもまねをしているが、隠し味にこっそり蒸留酒を使っているので、完全なまねはできていない。


 カクテルの味見をしながら室内を見渡した。

 上から入ってくる光に装飾用の象牙が照らされきらりと輝く。

 絨毯を敷き、壁には漆喰の上に地図や絵画を描き、象牙が天井からぶら下がる、あまりにカオスすぎる光景に俺は思わず天を仰いだ。


 (うーん、どこで間違えたんだろう……?)





 土塀を前に一息入れる。

 青い空、空を舞う海猫。

 高い丘にはややくたびれた感じのアテナ神殿が見える。

 (ああ、ペリクレスがデロス同盟の金を流用して直すのは、まだ後か)


 デルフォイを出てからひと月。

 普通に行けば1週間あれば余裕の道のりを4倍の時間かかってようやくアテナイに到着した。

 時間がかかった代わりに所持金は200ドラクマを超え、たくさんの薬草も手に入った。

 盗賊団を退治したり疫病を直したりといろいろ起きたが、まあ有意義な旅だった。


 そしてここまでにくる間に感じたことが一つ。

(人口密度が低い)


 頭では理解していたが歩いてみて実感した。

 小さな村みたいのはそれこそ数km置きにあるが大きい街というものが存在しない。

 大きい村と呼べるものもほとんどない。

 自給自足が原則で商店と呼べるものは見なかった。

 せいぜい注文を受けて、デルフォイやアテナイに買いに行く商人がいる程度で、行商人も聞いた限りでは10人もいない。


 これは単位当たりの農産物生産量が低いことに起因している。

 生活がぎりぎりなので何かを買うために回す余剰がない。

 当然、人々はほしいものはあるが、それが商品として流通するだけの量が確保はできない。

 そのため手に入るのが不定期なので自分で作るほうが確実となる。

 その結果、その商品の市場要求は下がり、なくても生活をこなしていく。

 なにしろ余裕がある市民達はアテナイに集中して住んでいる。

 周辺域に住んでいるのは奴隷か半自由民メトイコイの監督者が主だ。

 どうしても富はアテナイに集中する。


 そんな中を通過してきたのだが、どこでも薬は需要は高かった。

 なければ民間療法の薬草でとなるのだが、長期保存可能な粉薬であり、デルフォイの巫女という社会的地位の保証がある人物が売るのである。それこそ飛ぶように売れた。

 途中で切れた材料の補給に、何度か山に立ち入って薬草摘みをしたが、それでも材料が足りなくて村人から買うはめになった。

 結果的に余計、薬が売れることになっただけだったが。


 (商人をやるにも市場規模がなー)

 アテナイに行けば市民相手に一定規模の市場は成立しているとは思うが、日常品でなく嗜好品の市場だと安定性にかける。

 日常品は安定的に売れ、必要量が多いため市場化できれば大きいが、市場化するには現段階では買い手側の金銭の蓄積がまだ不十分。


 風がアテナイの臭いを運んでくる。

 しかし予想よりもにおわない。

 もっとひどいかと思ったが……

 なれたのか?

 そういえば、食べ物でうんこの臭いが変わるという話は聞いたことがある。

 だとすると、十分な栄養がないと臭いも少なくなるのかな?


 とはいえ公衆衛生的な問題から下水を何とかしたいのは変わらない。

 ともあれアテナイについたらアイオス神官長の手紙を持っていかないと、友人だって言ってたけど、いい人だといいな。



 「ご主人様、ピュロスも、いそぎましょう。アポロ神殿に行けばただで止まれます」

 「コリーダ、アーシア様に気安いです。もっと敬意をもって接しなさい。急ぐのは賛成しますが。」

 うしろから二人の声が聞こえてくる。

 この旅の間俺を支えてくれた、これからを切り開いてくれる大事な仲間だ。


=アーシアのスキル一覧表=

汎用知識(ギリシャ地域)

一般技能(鑑定)

一般知識(公衆衛生)

特殊技能(尋問)ランクD

特殊技能(神学)ランクF

特殊技能(神聖文字)ランクF

特殊技能(法学)ランクF

特殊技能(料理)ランクD

特殊技能(詐欺)ランクF

特殊技能(薬草学)ランクD

特殊技能(弁論)ランクF

特殊技能(取引)ランクD

特殊技能(魔術)ランクC

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ