表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/94

出発進行

第1章デルフォイ編終了です。

水戸黄門だと黄門様に助さん格さん+弥七がそろったくらいかな。

このあとアテナイ編に向かいます。

それからアテナイへの旅路は本編ではなく、あとで気が向いたら閑話で書こうと思います。


 腕を引っ張られ、宝物庫の外に出た後は、まさにがっちりと四方を固められて聖域に移動した。

 聖域の入り口ではピュロスとコリーダが口早に何かを話していたが、小声で聞き取れなかった。

 ピュロスはその場から走り去り……そういえばピュロスが走るの初めて見た……コリーダは聖域の中の東屋に俺を案内した。


 東屋のベンチに腰掛け、自分に何が起きたかを考えていると、館から手燭を持ったピュロスとプラチナブロンドの少女がやってきた。


 「巫女長より詳しい事情を尋ねるように言われてきました。私もアレティナです」

 ああ、血縁関係なんだ。だから祖先に似てるのね。

 とりあえず、何が起きたのかを順を追って説明していく。


 黄金鏡の諸世紀は詩の形をしているが、ヒエログリフに置き換えて読んでいくと、エジプトのファラオの魔術マギにつながる文書が書かれていることが解読できた。

 その内容を確かめるために宝物庫で文書を読んでいたら、突然、魔術マギが暴発して天井が溶け、光を放った。

 魔術マギを発動した覚えがなかったが、暗いから明かりがほしいと思ったときに、あたりの空間が自分のものになったような感じがして、結果として明るくなったのでので、たぶん自分で魔術マギを発動したと思う。

 幸いすぐに魔術マギは止まったが、あくまで偶然止まっただけで自分では制御できない。

推論として未読の部分に魔術マギの制御が書かれている可能性が高いので、他の詩も急いで読む必要がある。

 これらをつかえつかえ説明した。


 それらの話を聞いたと少女アレティナは呆れた顔を見せ、その後に真剣な顔になった。

 ちょっと考え込んだ後、質問してきた。

 「魔術マギを使わない状態を保てますか?」

 聞いた後、少し考え込んだ後答えた。

 「たぶん・・・でも暴発しない自信はありません」

 「わかりました」

 そういうとアレティナ(少女)は顔をグーッと近づけてきた。

 ?!近い!近い!

 顔がぶつかる寸前まで美少女の顔がきたところで、彼女の口から低い男性の声がした。


「君は魔術マギをまだ使えない」


 へ?・・・神託の声?


 「聞かれましたか?」


 次の彼女の言葉は少女の声だった。

 呆然としたまま頷くとにっこりと彼女は微笑んだ。


 「もう大丈夫です」


 そういわれると、さっきの周囲の空間すべてが自分の肌みたいな感触がなくなっている。


 「私の使える最上級の魔術マギで封印しました。無意識領域の催眠術という術がわかりますか?」

 ああ催眠術でできないと思わせるのか。なら納得できるな。


 「わかります」

 「では、それを用いたと思ってください」

 そう言ったあとクニドスの館へ撤収の指示を始める。

 「戻ったら巫女長と相談しますので、彼女の部屋へ行きます」


 些細な命令にも威厳らしいものを感じる……アレティアってことは王家なんだろうか?

 現役のお姫様の可能性もないとはいえないな。

 でも儀式の時、ゲロ処理してくれてたよな……姫様なのかな?


 そのまま彼女の後ろについてクニドスの館に戻る。

 これが映画とかだとあたり一面たいまつとかで明るくして緊急事態!!!て感じになるんだろうけど、実際には火の粉のほうが怖いので普段と変わらない明かりしかない。


 ただ巫女長の部屋は蜜蝋の蝋燭で明るくなっていた……


 巫女長の部屋の扉の前でいつもの問答もなくいきなり扉が開けられた。

 蜂蜜の甘い香りがふわりと通路にこぼれ出る。


 「巫女長、緊急事態だ。」

 平然と言い放つ少女、どうも少女のほうが偉いらしい。


 「姫様、何が起きましたか?」

 やっぱお姫さまなんだ。


 「アーシアが魔術マギを使った。まずいことに制御できていない」

 「マギですか?」

 あれ巫女長が不思議そうな顔してる。なぜか魔術じたい胡散臭いって感じだ?

 過去視させてくれたよね?


 「そうだ。ロゴスを用いて万物を動かす手法だ。まさかアーシアにその概念があったとは予想できなかった」

 「ロゴスを用いるのですか。そんな手法が」

 「ああ、ヘレネスではなくミノアの秘儀中の秘儀だ」

 ……えーと、ロゴスってなに?巫女長は納得したみたいだけど?


 「あのミノアの黄金鏡の中にミノアの秘儀が隠されていた。まずいことに隠してあった部分をアーシアは剥がしたらしい」

 剥がしたってシールじゃないんだから、返品不可は変わらないけど。


 「とりあえず妾の力で封印したが……いつまで持つかはわからん。正式に魔術を学ばせるしかあるまい」

 「しかし姫様。私も巫女長として見分を広げてきましたが、マギは聞いたことがありません。心当たりがおありですか?」

 「ああ、一人だけ知っている。幸いに今はアテナイに来ているはずだ」

 「アテナイですか。」

 「ヘラクレイトスという人物だ。著書の「自然について」で魔術について書いている」

 「ちょっとまって!俺の意見も聞いてほしいんだけど」

 俺は思わず口を突っ込んだ。

 黄金鏡の残りを読めれば解決する可能性が高いと思うのは伝えたはずなのに無視されている。


 「黄金鏡の残りを読みたいという話か、却下する。読んでる最中に、さらに強力な技を暴走させたらどうなる。アポロンの炎でも呼び出してみろ、デルフォイが消えてなくなるぞ。まず魔術の制御から習え」


 反論の余地もありません。そうだね下手すると天候制御やら重力制御が入っていてもおかしくなさそうだしね。


 「とはいえ、先立つものは……」

 「うむ」


 あーやっぱり、お金ですか。だよね弟子入りするにも教材使うにもお金いるよね。きっと。


 「計画を前倒しにしよう。アーシア、お前は商人になれ。それでお金を稼ぐ。商品は料理品のほかにも考えてくれ」


 姫様がこちらにぺこりと頭を下げる。それだけで申し訳ない気がしてくるくらい高貴な感じが漂っている。

 というか、なんかしゃべり方が、年寄り臭い……年齢いくつだ?


 それからあと姫様の計画を朝までかけて説明された。

 まずデルフォイでは

 ・アポロの聖餐としてコース料理を出すレストランを作る。

 ・そのレストランの通貨をスパルタの鉄貨に限定する。

 ・デルフォイでは20%の両替手数料をとる。

  銀貨10ドラクマを交換後、鉄貨幣50オボロス(約8.3ドラクマ)にするらしい。

 ・これによりスパルタの鉄貨そのものにデルフォイでの市場価値を有させる。

 ・神殿は両替手数料、俺はレストランの利益をもらう。


 鉄貨そのものは重すぎるのでわざわざ持ち込むよりは、神殿で両替する方を選ぶ人が多いと判断したらしい。まったく同感である。

 たとえば食事のコースが10ドラクマだとすると21.6kgの貨幣になる。

 これをもって100km以上離れたスパルタからくる苦労を考えたら、両替手数料は妥当というか安い。


 店の利益でパピルスや必要な薬剤・人材を整える。

 人材が奴隷なのはいうまでもない。

 特に魔術にかかわる部分は漏れたら殺す必要があるため奴隷以外はダメだそうだ。


 すごい厳しいがさっき自分でやらかしたばかりだ、意味は分かる。

 簡単に言えば核弾頭持って歩く人間を増やすわけにはいかない。でも持ってる人間はそれを制御しないといけないし、その人間を制御するため、複数人が知っている必要がある。

 そのために知識は伝えなくてはならない。


 ということでこんな手の込んだ知識制御をしていたのを、俺が破っちゃったということか。

 まいった、底なし沼に足突っ込んだ。


 「コリーダとピュロスの所有者はアーシアに変更してある。以後は自分の奴隷として使うように」


 まいったな。この姫様の宣言は巫女長に悪い気がする。

 この二人は確かにうれしいけど下手すると、たぶん……処分……できないよね、日本人としては。


 「それでアテナイについてだが?」


 神官長がスポンサーになってアテナイに小料理屋を出す計画があるらしい。

 そこで屋台向けの料理を出してデルフォイの聖餐を広告する、ということで巫女長と神官長で折り合いをつけたということだ。


 「そういうわけでアテナイにはいずれ行かせるつもりだったが……料理人の訓練もアテナイでやるしかあるまい。ドロンを連れていけ。腕は知ってるだろう。」

 あの料理長か、問題はないな。


 「何より優先はお前の魔術習得だ。どこかの土地をクレーターに変える前に魔術の制御を覚えるんだぞ。」


 ……


 そこまで言われて気になっていたことを聞いてみた。

「あの姫様。姫様って魔術使えますよね?いったいいつ誰に習ったんですか?」

 「不思議か?」

 「そりゃあ、どう見ても成人前の女性が持つ知識とは思えないんですが?」

 「うむ。」


 そういうと腕を組んで考え始めた。

 「一応言っておく。妾は見た目どおりの年齢ではない。」

 やっぱり。

 「肉体は15歳なんだがな。まあ今言えるのはここまでだ。」


 ……もしかして同じパターンなのか?


 「ともあれヘラクレイトスに無事弟子入りできるよう祈っている。あいつは気難しいから。」


 あれ?姫様に習えばいいような気がするが……それだと金策ができないのか……貧乏暇なしやな。

 まだ記憶にある限り3日目の夜明けですよ。こんなに濃い時間を過ごしたのは生まれて初めてです。

 とりあえずアテナイで商人しながらトイレを広めよう……まて、その前にスプーンとフォークか……いや……作業着としての服飾でもいいかも……うーんどれからやろう。


 いってから決めるか。


 部屋に戻るとコリーダが旅の荷物をまとめていた。

 「ご主人様、これからよろしくお願いします」

 「ああ、よろしく」

 そう答えたところで後ろからピュロスが声をかけてきた。

 「アーシア様、陸路にしますか、海路にしますか?今の季節は一般的には海路ですが、ご希望があれば陸路を手配します」

 「ああ、陸路でたのむ」

 これから生きる世界だ、ゆっくり確認しながらアテナイに向かいたい。

 ついでに行商人のまねごとでもしながら歩いてみるか。

 富山の薬売りみたいな感じで、幸い薬種はいっぱいあるしね。

 


=アーシアのスキル一覧表=

汎用知識(ギリシャ地域)

一般技能(鑑定)

一般知識(公衆衛生)

特殊技能(尋問)ランクD

特殊技能(神学)ランクF

特殊技能(神聖文字)ランクF

特殊技能(法学)ランクF

特殊技能(料理)ランクD

特殊技能(詐欺)ランクF

特殊技能(薬草学)ランクE

特殊技能(弁論)ランクF

特殊技能(取引)ランクE

特殊技能(魔術)ランクC

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ