表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/94

朝食

まだデルフォイから出られません。

アテナイすっ飛ばしてスパルタに行きそうな感じのペースです。

でもアテナイよりたいんだよなー

 起きたのは午前六時オージェだったが身支度をして、トイレについて考え込んでいたら、すぐ午前七時アナトーレになったらしい。


 「おはようございます。アーシア様」

 ピュロスが迎えに来た。昨日より態度が柔らかくなっている気がする。

 「巫女長が朝食を一緒にと言われています」

 即座に首を縦に振り、了承の意を伝える。


 「では、ご案内します」

 彼女の後ろをついていきながらも、ついついお尻に目が行ってしまう。

 無言のまま静かについていくのだが、心の中は大嵐である。


 上品そうな彼女も野外で・・・

 いや、それは・・・あくまで日本人の常識だとはわかってるけど・・・受け入れがたいものが・・・でも中世のベルサイユ宮殿もトイレがなかったっていうし・・・そんな変な状況でもないのだろうか?


 「こちらです」

 案内されたのは巫女長の私室らしい。


 丸い質素な木製のテーブルに椅子が二つ、一つにはすでにアレティア巫女長が座っている。

 柔らかな笑みとともに尋ねられた。

 「ゆっくりと休めましたか?」

 「ええ、いろいろご配慮ありがとうございます」

 そういいながら椅子に腰を下ろした。


 「朝食をとりながら今後について打ち合わせをしようと思いまして」

 ピュロスがワインの入った椀とパンを持ってきた。

 朝食はこれだけらしい。

 ワインは水で薄めてないのでブドウの味が強く出ている。

 ……ジャム代わりといった感じか。


 パンが固いのもあって、いい組み合わせではある。

 毎日これだと飽きそうだが、日本人は「みそ汁とごはん」ならずっと平気な気もするので、ありはありなのだろう。


 「困ったことはありませんか?」

 食べながら巫女長が聞いてきた。

 「差し迫ってはいないのですが、生活習慣で大きな違いが一つありますので、これだけは何とかしようと思います」



 「何をなさるのですか?」

 その言葉を聞いた巫女長が身を乗り出してきた。

 「我々の生活設備にはトイレというものがあるのですが、これを普及しようと思います」

 「トイレですか……」

 「ええ、ギリシャの国々(ポリス)に普及しようと思います」

 その言葉を聞いた巫女長は怪訝な顔をした。

 「そこまで重要な設備なのですか?」

 それに対し、きっぱりと首を縦に振る。

 「最も重要な生活設備の一つです」


 実は我々の世界ですら約10億人がトイレを利用したことがなく、ユネスコが改善中であり、不衛生を原因とする下痢性疾患で1日あたり1000人の子供が死んでいる原因と指摘している。

 投資効果が非常に高く、1ドルの投資に対し4.3ドルの費用削減が望めること。

 他にも教育効果や、観光資源の保全などきりがない。

 普及しきった現代日本では目立たないが、それだけ重要な設備がないのである。

絶対作るべきでしょう!


 「そもそもtoileとは何をする設備なのでしょうか?」

 食後のミントティーを運んできた、ピュロスが聞いてきた。

 「あ?」

 その言葉にすごい違和感を覚えた。

 「巫女長?」

 何事もなかったように巫女長はミントティーを口にしている。


 とりあえずピュロスにトイレの概念を説明した。

 「それだけで病気が減るのですか?」

 「聖域と街中での下痢の発症を比較すればわかると思います」

 「そういえば、巫女長が聖域にドーリア式を持ち込んでから、病気が減ったと聞いたことはあります」

 (衛生知識の流布・・・一般知識(公衆衛生)取得しました。)


「やっぱり」


 その言葉を聞いて俺の心に確信が生まれた。



 「アレティア巫女長、あなたは何者ですか?」


 その言葉をきいても巫女長には全く動揺がない。

 「ただのアポロの巫女ですよ。予言をつかさどる神のね」

 当たり前のように切り返してくる。

 元の世界となにか関係があるような気がするのだが?


 「とりあえずやりたいことはわかりました。こちらとしてはあなたの料理を参拝者に振舞いたいので料理人の指導をお願いしたいと思っています。そのあとで好きなポリスの市民権を取得してそのポリスに住むこともできるようにしたいと思います。もちろん、候補にはこのデルフォイも含みます」


 なんかさらっと言ってるけど、好きな国籍を取得できますみたいな話だのね?


 「一番難しいアテナイは神官長から取得してほしいと希望が出ていますし、スパルタはあなた自身があと3年でスパルタンになるので私の口添えがあれば問題ないでしょう。やや難しいのはテーベとアルゴスですが、私があなたの市民権がほしいといえば快く従うはずです」


 へー、やっぱり巫女長ってこの世界の重要人物なんだ。

 余計に正体が気になってきた。


 「まあ将来の話は、あとにして今日はコリーダをつけますので、神殿と街を見学してください。その間にトイレについては私も考えましょう」


 ……まあ特に問題もないし、他にやることが思いつかないのでそうしましょう。


 「わかりました。よろしくお願いします」


 戸口からコリーダが入ってきた。

 まるで子犬が跳ねるみたいな感じで近づいてきた。


 なんで、そんなにうれしそうなの?

 

=アーシアのスキル一覧表=

汎用知識(ギリシャ地域)

一般技能(鑑定)

一般知識(公衆衛生)

特殊技能(尋問)ランクF

特殊技能(神学)ランクF

特殊技能(神聖文字)ランクF

特殊技能(法学)ランクF

特殊技能(料理)ランクE

特殊技能(詐欺)ランクF

特殊技能(薬草学)ランクE

特殊技能(弁論)ランクF


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ