神託の貴公子
なんとなく始めました。
「Ή bios εντάξει ;」
ガンガンと頭が割れそうに痛い。目をしっかりとつぶり苦痛に耐える。
「Bios ήταν αυτό που πραγματικά ;」
すぐ横から外国語が聞こえてくる。
「Μπορείτε σχετικά με το εάν ο χρησμός ξεκίνησε Μήπως εννοείτε ;」
たしか会社で残業の後、同僚と一緒に居酒屋に行った。二次会に女の子のいる店に行ったはず・・・そのあと記憶がない・・・
とすると、この頭痛は二日酔いで、この外国語はその店の人か。
あの店、外国人いたのか。
「Είτε την περσική επίθεση όταν έρχεται να μου πεις ;」
「ごめん、何言ってるかわからない。日本語でお願い」
ちょっと話しただけで頭に激痛が響く、飲みすぎ決定。
「Τι λες? bios」
「ビオス?」
「Είναι τόσο bios . Είναι το όνομά σου .」
(会話成立・・・一般技能(ギリシャ語)を習得します。)
なんか心の奥にささやかれたような気が・・しただけか。
「ビオス、神託が降りたのか?」
あれ?日本語ではないが、なぜか言ってる意味がわかる。サブチャンネルで日本語流してる感じ?
でも神託ってなによ?
「ペルシアとヘレネスは戦いになるのか?」
ペルシア?ペルシアなんて絨毯しかしらないし、ヘレネスっていうサッカーチームも思い当たらない。
うん、頭痛が少し治まってきた。
「ペルシア戦争はポリスの勝利で終わったよ。警察で習ったろ」
軽いジョークで返す。何のスポーツだろう?
「「「うぉおおー」」」
ものすごい歓声があたりをゆるがす。
また二日酔いが痛む。頼むから静かにって……何人いるの?
驚いて目を開く。
まぶしいまでの青空、大理石の石柱、そして蒼い海。なんとなく地中海旅行のパンフレットを思い出してしまった。
円形の石造りの建物に数百人はいる外国人。
なんかローマ人みたいなトーガみたいなものを着ている。
そして例外なく、みんながこっちを見て手を振り上げ騒いでいる。
もしかして俺、外国につれてこられた。何のため?
いきなり横から肩をバンバンたたかれた。
「ビオス、大丈夫か。まさかお前に神託が降りるとは思わなかった」
横にいた黒髪の濃い顔のおっさんが話しかけてきた。
「誰?」
「おいおい、自分の父親を見忘れたか。まだ神託の影響が残ってるのか?」
「父親?」
思いもかけない言葉に変な顔をしたらしい、その男はいきなり真面目な顔になると
「おかしい!神官を呼んでくる。動くなよ!」
そういうなり群衆を掻き分けてどこかへ行ってしまった。
そういえばちょっとだけ気になることがある。
俺の肌ってこんなにピンクだっけ、日焼けかな?
腕も細いような気がする……ダイエット済?
うん、おまけに俺もトーガ着てる。
……まて、どうも変だ。冷静になろう。
可能性が高いのは
1)別人に転生した(お話ならあるある系)
2)VRMMORPGのテストプレイに巻き込まれた
3)テレビ局のドッキリ番組
4)夢オチ
さてどれだろう。
転生は事例報告がダライラマぐらいしかしらないし、あれも転生後は赤ん坊のはず。
VRMMORPGはハードの開発自体知らん。
テレビ局のドッキリは・・・国内TV局でははやってないが海外TV局ならありえるかも……
夢、頭痛のひどい夢は見たことがない。
結論、海外テレビ局のドッキリに巻き込まれた可能性が高い。これなら納得!
とりあえず安心した俺は何気に後ろを振り返った。
そこには円形の大きな鏡が有り、見たことのない少年が映し出されていた。
「あれ?誰、この超絶美形……」
マジですか。まるで黒髪のビヨルン・アンデルセン。
いやそこ驚くとこ違うって言わないように。
でも最初、見蕩れて動けなかったときは、自分だと気づかなかったんだから仕方ない。
鏡って動いて初めて自分だと理解できるんだよね。
おかげで自分の外観が変わったのに、儲けた気分になったんだから現金なもんだ。
……でなにが起きたんだろう?
向こうから群衆をかきわけてさっきのおっさんが戻ってきた。
何人か一緒についてきてる。女性もいるな。
「ビオス、大丈夫か!」
「私がビオスなのですか?」
近くにきた自称父親に尋ねてみる。
「当たり前だ。誇り高きドーリア人、プトレキスとカイレイの子、メソアのビオス・・・思い出せないか?」
(尋問による回答有・・・特殊技能(尋問)ランクF 習得します。)
また心の奥底でチカッとなったような?
えーと、とりあえず、日本人の私にはまったく身に覚えがありません。
「申し訳ありません。私はビオスではないようです」
そういうと男は後ろの人物にすがるような目をした。
「プトレキス殿、どうやら神託の影響が長引いているようです。数十年に一度みられるらしいのですが、私も初めて見ました。数日で元に戻るらしいので、それまで神殿で預かりましょう」
「アイオス神官長、よろしくお願いします。我々は軍務があるので明日には帰路につかないといけないのです」
「わかりました。事情は文書でデマラトス王に送りますのでお持ち帰りください」
「かたじけない」
うーん、まるで時代劇みたいだな。
「では息子よ。さらばだ」
そういうと男はあっさり離れていった。あれ、意外にさっぱりしてる。
……そういえばドーリア人とかスパルタとか言ってたな。
スパルタっていうとあれか、スパルタ式教育でたしか訓練の途中で不具になると殺されるとか。
あれ、マジですか???
それなら、あのさっぱりした態度もわからなくはないけど・・
立ち止まっていると神官長に手招きされた。
「ではビオス殿、こちらへ」
「あの、私は殺されるのでしょうか?」
おそるおそる尋ねてみる。
会話の前後からして、たぶん大丈夫だとは思うけど、少しでも命の危険があると、どうしてもねぇ。
神官長は笑いながら答えてくる。
「いやいや、神が降りた依代をそのように扱うことはありませんよ。たとえ、あのドーリア人でもね」
そして、神官長から次の質問が来た。
「で、あなたは誰なのでしょうか?」
「私は……誰?」
東山優馬、年齢24歳、独身(恋人なし)、機械部品メーカーの営業部所属、勤続2年、部下なしのはずなんだけど。外観違うし、誰なんだろう?
とりあえず頭を捻りつつ、近寄りながら答える。
「私は日本人です。」
「nihon人とはきいたことがありませんな。どのあたりになるのでしょう」
「たぶん、はるか東の果てになります」
「・・・太陽の生まれる場所ですか。アポロの神託にふさわしいですな」
アポロ?ああ、そういえば、ここどこだ?
「ここはどこでしょうか」
「ここはデルフォイのアポロ神殿です。」
(位置把握・・・一般技能(地理、ギリシャ)を習得します。)
頭の中に突然地図が広がった感じ。まるで日本地図のように場所がわかる。
だいたいスパルタとは湾を挟むがほぼ南に120km、アテナイはほぼ東に同じくらい離れてる、ちょうど正三角形だな。
「どうかなされましたか?」
立ち止まった私に女神官の一人が尋ねてくる。
「なぜ私はここに来たのでしょう」
その言葉を聞いたとたん女神官は直立不動になった。
「ペルシア帝国がエーゲ海対岸の諸都市を攻略を終了しました。そのあとどうなるかのアポロ神の予言をもらうためにスパルタから使節が派遣されました。正使はエウリュポン家のペトロクレスです。副使がプトレキスです。あなたは他の年少者と一緒に派遣されました。その理由は知りません。以上です。」
え、と?顔を無表情のまま淡々と答えられると怖いんですけど。
「どうした、クリサンテ。緊張してがちがちになってるぞ」
「失礼しました。アポロ神の依代から直接質問をいただいたので、つい」
神官長が苦笑している。
「ではnihon人のえーと、名前は何でしょうか?」
「東山優馬 東の山に優れた馬と書きます」
「?!」
おっといけない、いつもの癖で 漢字の説明した。わかるはずないわな。
「アーシア・オレステス・アリキポスですか?女性名ですが?」
え?
「いえアーシアは普通は女性につける名前なので?」
なぜそうなった???
「アイオス神官長、アポロの巫女扱いなのでしょう」
クリサンテさんが答えている。
(宗教知識入手・・・特殊技能(神学)ランクF 習得します。)
「なるほど」
いや納得しないで、こっちが謎です……ってあれ?わかった!
アーシア=東、オレステス=山、アリキポス=優馬か。文字ごとに自動翻訳されたかんじだわ。
「ではアーシア殿こちらへ」
大理石の神殿を奥に進んでいく。たぶん、巫女長の部屋に向かってるな。
あれ、何で神殿の造りが予測できるんだ?
資料がたりない、アテナイ出身ならこんな苦労は……
古代ドーリア人のあほー