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日本国世界大戦  作者: 一機当千
本編
67/68

戦火は留まることを知らず

超絶久しぶりの投稿です。結末は設定し終わっているのに蛇足が付きまくるぅ。ダレカタスケテ……。

「状況はこっちが有利なんだ。慌てずに確実に部隊を展開させろ!」

 ジャワ島へと上陸した歩兵科の小隊長が先に上陸していた装甲車の陰から各班に向かって大きな声で命令する。

 石橋を叩いて渡るどころか砕きそうな勢いで踏み固めて上陸した日本の上陸部隊であったが、解放軍のおびただしい量の無人兵器群を前にその歩みを抑え込まれていた。

 フィリピンを取り返した今、解放軍が抑えているのはジャワ島をはじめとするインドネシアの諸島群のみであり、ここを失うということは海軍を主体としていた解放軍にとっては頭を押さえつけられるのと同義であった。

 故に何が何でも死守しなければならず、その意思がこの尋常じゃない量の無人兵器による抗戦となって表れていた。

「くそ、わらわらと湧いてきやがって、グレネード用意、密集している所に集中して放り込め!」

 叫ぶやいなや比較的密集していた解放軍の無人兵器群に向けて多方向からグレネードが撃ちこまれ地面の土を軽く削りながら次々と粉砕していく。

 火力を集中したことが功を奏したのか、緻密に張られていた弾幕の一部に穴が開き僅かな隙が生まれる。

 そしてその隙間をこじ開けように日本の装甲車が前進、一気に押し入り膠着状態にあった戦況を日本側へと傾けさせる事に成功する。

「敵方が崩れた。このまま押し上げろ、前進!」

 依然として敵陣の穴を広げ続ける装甲車に追随するように歩兵科の各隊もまたその歩を前へと動かし始める。既に無人兵器群はその陣形を細かく引き裂かれており、総合的に上回った日本側の火力によって次第にすり潰され始めていた。

 その後、第二陣として到着した新たな上陸部隊が加わったことによって傾き始めていた流れを完全に掴んだ日本側はその勢いのまま上陸地点の海岸線を確保、時たま苦し紛れに放たれたミサイルによって機動戦鬼が破壊されることもあったが、無事橋頭堡を築くことに成功する。

 ジャワ島近辺の戦闘は海から陸へと移ったのであった。


カリマンタン島沖


 ジャワ島と向かい合う位置にあるカリマンタン島では散らす火花は大きいがその様相は陸戦へと突入したジャワ島とはだいぶ異なっていた。

「本艦及び「榛名」第二斉射、全弾目標地点への着弾を確認、「陸奥」「霧島」より対地ミサイルの発射を確認」

「島内部より複数の飛翔物体を探知、対艦ミサイルと思われる。「那珂」「加古」両艦、迎撃を開始」

 沖合に布陣する艦隊の中でも一際大きい制圧艦「長門」のCICで状況を報せる言葉が次々と飛び交う。

 「長門」率いる第2、第11艦隊はその誇る大火力で持ってカリマンタン島に駐留している解放軍の封じ込めに徹していた。

 陸上戦力が少ない日本としては解放軍が駐屯している島全てに律義に上陸戦を挑む余裕はなく、かといって長距離ミサイルが主流となっている昨今の戦闘において無傷で放っておくということも危険なため、比較的規模の大きい海上戦力による敵策源地攻撃による敵作戦行動の妨害を行っていた。

 完全な無力化は無理だが牽制は出来る。そして今回の作戦ではその牽制でも十分に成果を得られるだけの根拠を日本側は持っていた。

「情報機関の報告ではインドネシア一帯の解放軍の指揮はスマトラ島の司令部に移った魏中将という将官に一任されている。ここで牽制している間にスマトラ島を落とせれば一先ずの勝利は得られる。もっともそう易々と落とさせてはくれないだろうが」

 解放軍の幹部が一人、魏中将のスマトラ島司令部への移管。その情報は作戦の立案に際して大いに影響を与えた。

 かの人物が解放軍を率いる重要人物であることは勿論だが、それに加えクーデターを率いる主要人物であることが国家主席亡命事件の際に判明、それ以降は魏中将含むクーデター主導陣の暗殺含む無力化は今回の対中華解放軍戦終結のための重要なファクターとして捉えられていた。

 一見一枚岩に見える解放軍もよくよく調べてみるとその結束はクーデターを起こした主導陣の手腕によるものが大きいと分かり、この主導陣さえ何とかできれば解放軍という組織自体が次の主導権を巡り分裂する可能性が高く、また分裂せずとも短くない期間の混乱は免れないというのが情報機関の見解であった。あとはその間に亡命政府率いる防衛軍に中国本土の主導権を把握してくれれば少なくとも後に起こる戦いは中国国内の内戦という形に落ち着き日本は戦いから手を引くことが出来る。

 無論中国国外に展開している解放軍部隊に関しては日本が率先して潰すか無力化するが中国国内にまで深入りするつもりは毛頭もない。その辺の行動方針は日本と言えど歴史から学んでいた。

 故にその対象の一人である魏中将の存在は戦いの犠牲を減らすうえでも無視できるものではなく、作戦の要綱も彼の身柄を主軸として組み立てられる結果となった。

「制圧艦「駿河」より通信。スマトラ島への攻略を開始とのこと」

「第4海母隊群に連絡、作戦を第2段階へ移行。艦載機の発艦を急がせろ」

 スマトラ島攻略艦隊の旗艦である「駿河」からの連絡を受け、作戦を次段階へと移す。

 依然として抵抗を続けるカリマンタン島への砲撃を続ける「長門」ら艦隊上空を海洋母艦「青鷺」「赤鷺」2隻から発艦した艦載機群が飛び去っていった。


スマトラ島中華解放軍駐屯司令部


 島の中央部に位置するパカンバルに置かれた駐屯司令部ではインドネシア一帯に配備されている部隊からの報告が押し寄せており喧噪に呑まれていた。

 その報告の殆どが自軍劣勢を示すもので各幹部が集う会議室には重い空気が場を支配していた。

「ジャワ島は日本軍の上陸を許し配備していた無人兵器群は既に2割を失っております、カリマンタン島は上陸こそまだですがミサイル部隊の被害が拡大しており時間の問題です」

「本島にも艦隊の接近が確認されており現在に南部の部隊が迎撃態勢に入っています」

「こちらの艦隊は一体何をしているのだ。艦艇の補充はされていたはずだぞ」

 会議室の中央を陣取っていた魏中将の声が報告をしていた幹部らの話を遮り室内に響く。その声は決して大きくないものの明らかに不機嫌さが混じっていた。

「日本軍の艦隊が行動を開始した時点で警戒任務中だった艦艇を向かわせて対応に当たりましたが数時間前から連絡が取れておりません。今現在港内に係留されていた艦を順次出航させ迎撃の態勢を整えていますが空母がおらず航空戦力の不足があり、迂闊に動けません」

「なら陸上基地に配備されている機を上げれば良いであろう。何故やらん?」

 航空戦力の不備を理由に動かない艦隊の状況を聞いた中将が苛立つように陸上機に言及する。

 中華解放軍がインドネシアに持ち込んだ航空機は無人機も含めれば400機に達する。小型なものが多いが反面一撃に重きを置いた機体が多いため、確認されている日本の航空戦力を相手するなら数的有利も加えて十二分に渡り合える戦力であるはずなのだが、それが動く気配は感じられなかった。

「それが本国からの補給がここ最近減少しており、稼働できる機が減っており動かせる状況ではなく。島の防空だけなら十分なのですが艦隊の防空に割ける余裕がありません。艦隊を島から200km以内に展開させるのであれば話は別なのですが――」

 初耳だったのかその言葉を聞いた魏中将の眼が大きく見開かれる。

「劉の奴は一体何をやっていたのだ。補給を怠るなど愚の骨頂、大迷惑もいい所ではないか」

 この場に居ない幹部の一人である劉上将に向かって呪詛を吐く。少しでも戦力が欲しい状況にあるにも関わらず、物資不足のせいで元ある戦力すらまともに動かせないとあっては最前線で戦っている者にとっては勘弁してほしいところだろう。

「ない物ねだりをしていても無駄か、一先ず稼働できる機は全て出せ、その他は多少潰しても構わん、一機でも多くの機体を動かせるように整備部隊に対応させろ。それと各地の高射、ミサイル部隊には島西部の海岸線付近に展開、航空部隊及び艦隊と連携しつつ敵の着上陸の阻止に専念するように通達しろ。日本とて陸上戦力には余裕はないはずだ。上陸地点も限られている。戦力を集中し敵を寄せ付けさせるな。本国への援軍要請も忘れるなよ」

 恨み言も程々に思考を切り替えた魏中将は矢継ぎ早に指示を各幹部に飛ばす。

 どうやらこの際現有戦力での日本の撃退はすっぱり諦めたらしい。代わりに着上陸の阻止に専念し、その間に中国本土からの増援を待つ構えのようである。

「分かりました。では、至急そのように各部隊に通達を――」

「ほ、報告します!! 島北東部を中心に日本の機動戦鬼部隊が降下中! ミサイル、歩兵部隊を中心に被害が増加しております!!」

「な!?」

 突如入ったその報告に魏中将が一瞬言葉を詰まらせる。

 戦力の集中による着上陸阻止に専念しようとした矢先、戦いの流れは思わぬ日本の行動によってかき乱されることとなった。


突撃艦「若葉」CIC


「降下予定の機動戦鬼部隊、目標数を超えました」

「各支援艦隊はそのまま降下作業を継続中、護衛部隊は各艦警戒を厳にせよとのこと」

 上空遥か彼方、とは言っても完全な宇宙空間とは言い切れず、大気も十分にあるとは言えないような中途半端な高度で特殊任務を受けた突撃艦「若葉」をはじめとした日本の宇宙艦隊が展開していた。

 かの艦隊が受けた任務、それはスマトラ島を中心とした各諸島に対する機動戦鬼による強襲降下任務であった。

 何しろ日本の陸上戦力は自衛隊時代と比べると15個師団と大幅に増強はされているが、それでも周辺各国と比べると数的少なさは否めない。

 さらに言えば機械化等で代替えが進んでいるものの、日本人の人命というのは色々と面倒な意味で高いのだ。おいそれとほいほい敵が準備万端な場所に突撃させることなどほぼ不可能である。

 そのため本作戦においても少しでも敵の態勢を崩すために色々と策が講じられており、機動戦鬼の強襲降下もその一つであった。

 この強襲降下任務、かつて行われた大韓朝鮮帝国との戦闘で受けた宇宙からのミサイル攻撃を元として発案されている。最初はミサイルによる直接攻撃が考えられていたのだが、宇宙部隊の弾薬に余裕が無いこともあって断念、代替えとして新型の配備によって旧式化した機動戦鬼を用いた強襲降下による攪乱が決定された。

 機動戦鬼による超高度からの降下運用自体は機動戦鬼が開発された初期から考え自体はあったが、ミサイル性能の向上による迎撃能力の高さなどもあって効果は低いというのが一般的な考えであったため、今まで行われることはなかったが今回に限っては相手側も上陸部隊に対して戦力の集中を行うために部隊を移動させる可能性が情報機関より示唆されていたために実行された形だ。流石に訓練なしでいきなり突入させるわけにもいかず、今回参加させている機動戦鬼は全て偽魂体管制による力業と言うところには一抹の不安を覚えるしかないが。

「――!! 突撃艦「浅葱」が高速で接近中の艦隊を発見、中華解放軍だと思われる」

「旗艦「牡羊」より通達。現時点を持って強襲降下任務を終了し、撤退を開始するとのこと」

「総員、戦闘準備。速やかに地球との距離を取ります」

 新たな敵の出現を受けて降下部隊の護衛についていた第2、第3星団が戦闘態勢に入り、降下部隊を全て出し終えた一部の支援艦は地球の自転に沿うように降下していき、その他の支援艦が残った機動戦鬼を使って防御態勢を取りつつ宙域からの離脱を開始するなど各々で対応に移る。

「武器管制システム異常なし、いつでもいけます」

「宇宙母艦「雲龍」「鳳龍」より機動戦鬼「星隠」の発艦を開始、他突破艦、巡航艦より機動機が発艦中です」

「敵艦隊、有効射程に入りました!」

「てぇ!」

 偽魂体わかばの声に連動するように「若葉」からミサイルが五月雨式に発射され、そのほかの突撃艦も各々のタイミングで次々とミサイルを放っていく。

 それと同時に事前に放出しておいた多数のミサイルコンテナからも敵艦隊を囲むようにミサイルが撃ち出される。

 その数分後、その殆どが黒色に支配されている宇宙空間に数多の火球が散らばる。

「ミサイル、敵艦隊より50km付近でその殆どがレーダーロスト、迎撃されたと思われる」

「取り舵、砲撃戦用意。敵の真横を通り抜けることになるわ。気を抜くんじゃないわよ」

 先んじて撃った100発近いミサイルは大した打撃を与える事無くその殆どが迎撃される。

 人類唯一の地球外拠点の全てが月に集中しているため、自ずとその撤退航路は敵方と近くなってしまい衝突避けようがない。インドネシアを中心に行われていた戦いは新たな戦場を宇宙へと生み出そうとしていた。

次回、宇宙艦隊戦。

解放軍側の艦艇の命名基準の設定を忘れた……。

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