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日本国世界大戦  作者: 一機当千
本編
46/68

交差する思惑

アメリカ合衆国 ワシントンD.C.


アメリカの首都であるこの都市には政権の中枢であり、またアメリカ大統領の居住地でもあるホワイトハウスがある。そのホワイトハウスではいまジョン・アダムス大統領と国防省長官含む複数の閣僚による会議が行われていた。

「日本にいるCIA局員から最新の情報が送られてきた。主に日本の武力組織の展開状況と整備計画、作戦計画諸々が中心だ」

大統領が話しながら秘書官にコピーした資料を配らせる。参加者、特に国防省長官含む軍事関係の者たちはその資料を食い入るように読んでいる。現在の日本は本土に東南アジア、欧州とほぼ全世界に部隊を送り込んでいる状況でその戦力配分は海上戦力を例に挙げれば3:2:1という感じだ、艦隊編成にもかなり手を加えたようで制圧艦と巡洋艦合わせて6隻で編成された基幹艦隊を12個と駆逐隊、潜水隊規模で編成される遊撃艦隊を多数組み合わせることにより運用に幅を持たせてそれでも足りない時は支援群の艦艇による補助艦隊で補完するという体制を組み立てている。航空戦力についても既存の15個航空団に加え追加で編成するのか製造を受け持っている関連企業の動きが大きくなっているようである。さほど変化がないのは陸上戦力ぐらいだろうがそれでも全体としては戦力の増強と一貫している。

「さて、話を変えるがこれらの情報を踏まえて本国の方針に関する意見を再び聞こうと思う、特に早期介入を唱えている国防省はどう考えているのかね?」

「大統領、前々から申してはいますが我々の主張に変わりはありません、我が国を挟む二つの海洋が戦場となっているいまいずれは国に影響が出始めます。それに開戦のせいで世界経済はもう滅茶苦茶です。早期に世界情勢の安定が求められるでしょう」

「しかしですな国防省長官殿、この戦争により我が国はいま主に日本からの鉱物に燃料、食料と各種資源の買い付けによって久しぶりの好景気にわいています。今の所は日本単独でも持っているのですからもう少し様子を見ていても平気ではなかろうか?国民の世論ありますし」

大統領にそう話す国防省長官とそれに意見する他の閣僚たち、どうやら未だに意見は分かれてしまっているようである。どちらの主張もある意味事実なので大統領も迂闊なことは言えない、確かに一種の引きこもり政策によって縮小傾向だった貿易関係もこの戦争のいわば特需のようなもので業績が上がっている反面その危険性から保険に掛かる金額もバカにならないのであまり長引かせるのも良くない、だが介入するにしても軍の再編によって世界の警察と言われるほどの規模を持っていた米軍も今では他国と変わりない自国防衛に適した規模にまで縮小されている。それでもまだ巨大ではあるがここで不用意に介入しても無駄に傷を受ける可能性もあり出来ればやりたくない。

「我が国に対する他国の対応はどんな状況だ?」

「欧州各国からは我が軍の派遣要請が再三に渡ってきております。東南アジア周辺も似た感じですね、日本は一度こちらの状況を説明したあとは沈黙しています」

ほかにもこれらの国に敵対している国、中国やドイツなども今はアメリカを無視する態度をとっているようだ、単純に邪魔されたくないのだろうがおかげか世界中で戦火が上がっているにもかかわらずわが国だけは平穏に近い状況だった。

「他国には世論が追いついていないといって今は誤魔化せ、各方面での情報収集は怠らずに我が国の被害が一番小さくなるタイミングで介入する。これは最終決定と同時に最重要機密として扱う他言は無用だ、いいな?」

アダムス大統領がそうまとめ方針の維持を決定する。国民の世論を気にして他国のアメリカに対する印象を悪化させかねない決定ではあるが似たようなことが歴史上なかったわけではない、例えば日本も自国の憲法を盾にというより縛りプレイによって国際協力に消極的だった、あれは正直言って引きずり出すのに苦労したがもしかしたらそんな過去もあって早々にあの国は身を引いたのかもしれない。会議が終わり空気を入れ替えようと窓を開けた時一匹の蝶が窓から飛び離れる。はて?この時期に蝶はいただろうか?そう疑問に思いながらアダムス大統領は窓際から青空を見上げていた。


中国 黒竜江省


寒さが続くこの地はロシアとの国境が近いこともあり解放・防衛軍の戦闘もなく、かつ防衛軍の主要な活動拠点となっている。そんな場所で特にロシアとの国境近くにはまだ日が昇っていなくて薄暗いのにもかかわらず何やらかなりの規模の団体が集まっていた。

「やはりここの朝の寒さは堪えますね・・・早く作業を終えてほしいものです」

「な~に言ってんだ若いくせしてだらしねぇな、この程度の寒さなんかうちの国じゃウォッカがあれば十分だぜ」

団体の一角で話している者が二人、一人は中国人であると同時に中国共産党幹部の張氏でありもう片方はロシア人である。ロシア人の方は軍人のようで軍服と防寒着を着ている。その彼が部下と思われるロシアの若者に指示を出しながら作業の様子を見ている。また、この場にはロシア軍人だけではなく中国軍人もおり制服のデザインから防衛軍の者だと分かる。

さて二カ国の軍人様がこんなところで何をしているのかというとどうやら荷物の受け渡しをしているようである。荷物と言ってもその内容は食料や衣料品、医薬品から始まり銃火器やその弾薬に加えて戦車、航空機など様々でありさながら何かの裏市場のようだ、また兵器類は全て中国が採用している物であることも記しておこう。

「しかし日本に防衛軍への武器の受け渡しは任せろといわれた時はどうするつもりだと思っていましたがまさか貴軍が協力するとは驚きました」

「そりゃ海路や空路が使えねぇ中で陸路を使おう思えばうちらを通した方が手っ取り早いだろうが・・・幸い今の露日は“陸続き”だからな、そこまで難しい話じゃねぇ」

ロシアの隊長がタバコに火をつけながらそう話す。その傍らでは中国兵が乗り込んだ戦車がエンジン音を鳴らしながら進んでいたりとなんか奇妙な光景である。今更説明が必要なのかは疑問だが一応説明すると彼らは日本が解析・複製した中国の兵器を中国国内で活動している防衛軍に引き渡している最中であり張氏は防衛軍出身だったことから主席の命を受けその橋渡しをしている。ロシア軍が居るのは引き渡し場所が国境付近だったため監視兼協力ということでいる。このことは日露両政府の間ですでに話はついているのでそこまでおかしな話でもない。まぁ、日本が造った中国の兵器をロシアが中国に引き渡している時点でおかしな状況ではあるが・・・

「そういえば貴国も確か何かと面倒なことになっている覚えがあるのですがこちらに構っていて平気なのですか?」

ふと思い出したように張氏が質問する。実はいうとロシアもある意味戦争当事国でありまだ直接的な戦闘は起こってはいないが前線である欧州方面に近い部隊は臨戦態勢を取り続けている。

「・・・まぁ向こうとは距離もあるからな、向こうの奴らは気が気ではないらしいがこっちは楽なもんさ、それに日本にはあの事件の時の借りもあるからなこのくらいどうってことねぇ」

ロシアの隊長がそのように張氏の質問に答える。その時二人の下に一人の少女がやってきて解放軍の偵察部隊が接近してくる旨を伝える。一応この少女はこの地での協力者ということになっているが実際の所は偽魂体ではと張氏は疑っている。いずれ確かめておきたいが今はそれよりも荷物の受け渡しを終えた両部隊の撤収を優先させる。こんなところで余計な戦闘は御免だ、中国の部隊の隊長と次の受け渡しについてのやり取りを手短に済ませて張氏は急いでロシア軍とこの場を去った。


とある国にある施設の一室で一人の男が部下から渡された自軍や同盟国の戦力状況の報告書を読んでいる。日本や解放軍と違い我が陣営はそこまで戦線をひいてはいないが何しろ同盟国の分布がアフリカ大陸を始め中東、ヨーロッパに東アジアと広いため調整にも一苦労だ。

「ドイツ、イタリアに大韓朝鮮帝国は準備を終えてしまってあとは作戦の開始を待つだけか・・・我々の準備が遅れているせいで足を引っ張っている状況になってしまっている」

書類を読み終え男が呟く、彼の属する組織の役目は腰を据えている地域にある豊富な労働力と資源による物資の生産と担当地域に迫る敵対組織からの防衛だ、それに応えるために造船所をはじめに工場を増やした、資源開発を推し進め慣れない技術開発にも力を入れた。国単位で見ると歪で脆弱に見えるだろうが大陸規模でなら中国などの上位国にも引けを取らないだろう、だが、まだ足りない今のままでは一応ドイツやイタリアは目的を達成でき、大韓朝鮮帝国は目的があれなので何もしなくても達成できそうだが我々の目的を達成するのは難しい。

「国力の強化はここら辺が限界だな、あとは目的を達成するための意思の強さにかかってくる。これからが本番だ・・・」

他に誰もいない部屋で馬 功石中華遠征軍総司令兼地球連合アフリカ州代表補佐官は一人静かにそう覚悟を決めた。

中華遠征軍本格参戦である。


日本国某所


“情報機関”

日本に存在する組織で世界規模から一個人規模までの情報収集・分析・工作を担当している。世界で言うCIAやMI6、中国国家安全部に相当するものと考えてもらっていい、組織名がただ情報機関というのはなんか味気ない気がするがこれには最高レベルの秘匿性の確保というちゃんとした理由がある。・・・というのは建前で実の所この組織の全容が掴めていないからこう呼んでいるというのが本音だ、なんせ日本政府ですらこの組織の構成員や情報収集の手法などが不明でただ機関からの報告を一方的に送られてくるという徹底ぶりどうやって機関に命令するのかというと命令内容すら自らの手で収集する始末、もしその情報が正確でなければ相手にされないほど謎すぎて扱いに困りそうな機関である。

さてそんな謎の機関に情報を提供してもらったものがここにも一人、ソファに腰を下ろしてヘッドフォンをつけて音楽を聞きながら偽魂体特有の統合システム(共有システムの上位システム)経由で個別システムにアップロードされた情報を確認しているゆうだち、内容は配置換えや再編などでごっちゃになった現在の海上防衛隊所属艦隊の展開状況である。情報機関にかかれば個人、特に偽魂体が知りたい情報を提供することなどたやすい事である。

そう言うことで有り難く提供された情報を元に現状把握にかかる。これは彼女の分魂適正者である広瀬艦長からの指示でもあるので後で報告するために調べた内容を紙面に書き写す。

紙面にはこう書かれていた。


基幹艦隊

 本土巡回艦隊

  第3艦隊  「山城」「妙高」「那智」「長良」「五十鈴」

  第4艦隊  「伊勢」「日向」「足柄」「羽黒」「由良」

 特亜戦線艦隊

  第5艦隊  「薩摩」「安芸」「高雄」「愛宕」「球磨」「多摩」

  第6艦隊  「加賀」「土佐」「麻耶」「鳥海」「北上」「大井」

 東南アジア戦線艦隊

  第1艦隊  「大和」「武蔵」「金剛」「比叡」「川内」「神通」

  第2艦隊  「長門」「陸奥」「榛名」「霧島」「那珂」「加古」

  第8艦隊  「河内」「摂津」「葛城」「阿武隈」「夕張」

  第9艦隊  「紀伊」「尾張」「富士」「阿蘇」「天龍」「龍田」

 第3作戦参加艦隊

  第10艦隊 「駿河」「近江」「吾妻」「浅間」「利根」「筑摩」

  第11艦隊 「相模」「周防」「青葉」「衣笠」「最上」「三隈」

  第12艦隊 「肥前」「石見」「古鷹」「伊吹」「鈴谷」「熊野」

 欧州戦線艦隊

  第7艦隊  「信濃」「壱岐」「赤城」「天城」「木曾」「鬼怒」


他にも遊撃艦隊として駆逐隊や潜水隊が多数編成されているが概ねこんな感じてある。東南アジア戦線は作戦も関係して多くの艦隊が派遣されている。欧州戦線もテコ入れが入り現在追加の駆逐隊と共に結集中、先の戦闘によって損傷してドック入りしている艦も居るので実際は偏りがあるがこれで今後の行動の編成は固定されることになる。

ついでに陸空宙防衛隊の展開状況も記しておいた方がいいかなと考えたが海以上に編成が複雑だったので辞めておいた。仕事を終えたゆうだちはそのままネットサーフィンならぬシステムサーフィンをして広瀬艦長が戻ってくるまで時間を潰す。丁度システムには情報機関から各国の情勢や軍の動き、国内に潜伏している他国の情報機関の者の摘発報告が物凄い勢いでアップロードされ続けていた。

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