反撃そして奪還へ
色々と独自兵器が出てきますが(今更感)温かい目でお願いします。
1月26日 沖縄近海 海中
沖縄の撤退戦から1週間が経ち解放軍に奪われた沖縄は着実に解放軍の要塞と化していく中、日本も反撃の準備を着実に進めておりその第1手となる者たちがこの海中で作戦の開始を今か今かと息を潜めて待っていた。
「こちら第11支援艦隊旗艦「伊101」、みんな聞こえている?準備の再確認をもう一度しておいてね」その言葉に答えるように複数人の女性の声が響く、とは言え響いているのは偽魂体の頭の中なので海中は沈黙を保ったままだ。
“あいあい、聞こえているよ、とは言えイオイ30分前にも確認していたじゃん少し落ち着きなって”
“ところでイオイ姉、作戦っていつ開始だっけ”
“瞳、あんた話聞いていなかったでしょ・・、あと30分で開始よ”
“トーヤそれはあくまで予定だ、他の準備が早く終われば繰り上げられるからあんまり意味がないぞ”話が盛り上がっているのを止めるのは気が引けたが一度止めに入り作戦の再確認を行う「伊101」偽魂体のイオイ、第11支援艦隊隷下の10隻は沖縄の撤退支援時住民の輸送を終えた後そのまま近海にて無音潜航を行い、いずれ実施される奪還作戦まで待機していたのである。
「じゃあ、念のためにもう一度確認するけど私たちは作戦開始時に海中から解放軍さんの駐屯地と海岸線に向かってミサイルをお届けした後そのまま機動戦鬼を発艦させて上陸させるのが役目よ、わかった?特に瞳と一都ちゃんと理解した?」そう確認を取るイオイ、ちなみに瞳は「伊103」、一都は「伊110」の偽魂体である。支援艦の偽魂体の命名は分魂適正者に一任されているので特色の強いものがちらほら見受けられる(ほとんどの場合語呂合わせで済まされることが多いが)。そんなこんなで確認を取りながら会話を続けていると司令部から連絡が入り作戦の開始を伝えられる、思ったよりほかの準備が早く済んだ様だった。
「あら意外に早く来たわね・・、そういうことだからみんな作戦開始ですよ、準備して!」
妹たちに指示をだすイオイ、すかさず“ハーイ”と気合の入った?声が返ってきて各々動き始める。しばらくすると“ボン”と空気を押し出したようなくぐもった音が聞こえて来るミサイルを入れてあるカプセルを射出し始めたようだ、今回発射する予定のミサイルの数は100発で1隻につき10発を撃つ予定だ。
「各自打ち終わったらそのまま機動戦鬼の発艦に移ってね」忘れずに追加の指示を出す。今回の奪還作戦ではこの機動戦鬼の活躍が重要となる。なにはともあれ今ようやく奪還作戦が始まりつつあった・・・
同日 9:00
日が出きった頃沖縄の海岸線では物資の補給を得るために待機していた解放軍の兵たちがたむろって談笑をしていた。占領を終えたころは日本による抵抗も考え用心してはいたのだが、日本側が沖縄丸ごと放棄して逃げ去りそのあともこれといった反撃もなかったためすっかり気を緩めていた。そんな中一人の兵士が海上で何かが光ったことに気付き報告するが何かの見間違いだろうと同僚たちに言われていた直後、彼らの頭上を何本もの白い煙を残しながらミサイルが通っていき、内地にある基地へと弾着していき黒い煙を登らせる。いきなりのことに茫然自失している兵士たち・・、しかし、その洗礼は彼らにも等しく浴びせられることとなるいくつかのミサイルが海岸線に弾着を始めていた。そのことを知った兵士たちは我先にと内地の方へと逃げ出す、そこには指揮系統などあってないようなものだった逃げ遅れた兵士たちはあるものは爆風で体を吹き飛ばされ、またあるものは弾頭部分から高速でばら撒かれた刃物状に加工された金属片によってみじん切りにされその姿を肉塊へと変えていった・・・
「なんだ!?一体何が起きた!!」那覇基地では解放軍の司令官と思われる男が狼狽した様子で怒鳴り散らしていた。沖縄占領後日本の手によって破壊工作を施されたこの基地を復旧させ終わり、本国から航空機の受け入れを始めていた時日本本土から多数の航空機が来るのをレーダーでとらえ迎撃に向かわせたところで基地が攻撃されたのである。
「司令官、海岸線で補給の支援に向かわせていた部隊からミサイル攻撃を受けていると報告が来ています!!あと迎撃に上がった航空機群の反応が消えました!」部下の一人が報告をする。
「海からだと!?馬鹿なさんざん哨戒活動をして潜水艦1隻すらいないと前に報告を受けたはずだぞ!まぁいい、攻撃を受けているのは事実だ、とっとと片付けるよう前線の奴らに命令しろ、日本の奴らとうとう奪い返しに来たぞ!あと追加の迎撃機はまだ上げられんのか!」報告を受け一瞬怒りをあらわにした司令官だがすぐに冷静になり指示をだす。
「指令!滑走路に被害が出ています。また煙幕が張られており迎撃機が上げられません」兵の一人が報告してくる。外を見てみると滑走路があると思われる箇所が白い煙でおおわれており状況が確認できない、また、かろうじて見える場所も長い金属状の棒が無数突き刺さりまるで針山のようになっている。他の場所でも炎上している航空機の消火作業などで慌ただしく動いているのが分かった。
「日本の奴らミサイルに何を詰め込んで撃ち込んできたのだ?」そう疑問を吐いた途端司令部は大きな地響きに見舞われる。どこかにミサイルが着弾したのかと思ったが爆発音が無いところを見るとちがうようだ、なんだ?その場に居たすべてのものが身構えたその刹那無事だった航空機の一機に攻撃が加えられ爆発する。
「なっ!敵の攻撃だと!?一体いつここまで接近したのだ!?」まだ上陸部隊どころか航空機すら近づいてないのに攻撃を受けた、混乱しているこの間にも攻撃は続けられ次々に航空機やレーダーが破壊されていく。攻撃が煙幕の中から加えられていることもあり姿が見えず効果的な反撃が出来ずにいたが次第に煙が晴れていき巨大な人の形をした何かが現れ始める。
「に、日本の機動戦鬼だ!」兵士の一人がそう叫んだ途端周りにいた者たちもその姿をとらえる。機動戦鬼の数は見えているだけで2機、他の所も攻撃を受けていることからまだほかにもいるようだ。機体の後ろの滑走路には大きな穴があいていた。
「せ、戦車を連れてこい!はやく!!」隊長と思われる男が叫ぶが残念なことに上陸させていた戦車は海岸線の防衛に全てで払ってしまっていたため基地には1両もいなかった。基地に居た者は何もできずに基地ごと潰されるか逃げ惑うことしかできなかった。
那覇基地が機動戦鬼の攻撃にさらされている頃海岸線ではすでに日本の手によって橋頭堡が出来始めていた、先陣を切ったのは第11支援艦隊から発艦した60式機動戦鬼「水鬼」1個大隊100機である。元々海底都市建設目的で開発された機体だが思い寄らぬところで役立つことになった。
「全員降下しろ、今は機動戦鬼が抑えているがすぐ反撃してくるぞ、急げ!」海洋母艦と輸送艦から送り出された輸送ヘリから次々と第15師団の歩兵連隊の隊員たちが下りていく、先におこなったミサイル攻撃によってあらかたの敵は逃げるか斃されたがそれも一時的な事そう遅くない内に反撃をしに帰ってくるだろう。その前に奪取した海岸線の守りを固めるのが彼らの役目である。
「隊長、基地からの航空攻撃は大丈夫でしょうか?」部隊の一人が質問する。
「大丈夫だ、先ほど本部から基地の破壊が成功したと報告が入った、今の沖縄には奴らの航空機は1機もいないはずだ」隊長も不安を取り除けるように力強く言う、そんな隊長の声に励まされたのか隊員の顔から不安の表情が消える。既にいくつかの小隊が偵察のために歩を進め始めており作戦の状況は良好のようだ。今回基地を攻撃したのは「水鬼」の姉妹機でもある60式機動戦鬼「巌」であり、沖縄の地下都市での事故処理用として配備していたもので武装らしいものはついてなくあるとしても岩石の切断用のレーザーしかないため占領した解放軍も特に害はないと判断して放っておいたのが仇となった。なにしろ機動戦鬼にも偽魂体技術が施されているため遠隔操作くらい造作もない、更に「巌」は採掘能力も付加されており地下から近づくという方法により基地攻撃を成功させる要因にもなり、沖縄の航空優勢を取ることに成功したのである。
「優勢とは言えまだ作戦は始まったばかりだ、気を抜いてやられるなんてヘマだけはするなよ?」隊員たちに注意をしておく隊長、この後主力部隊の上陸を支援したのちに共に進撃する予定である。すでに海上には何隻もの輸送艦が展開して主力部隊を揚陸させるところまで来ていた。
沖縄東海岸方面20km沖
暇だ、ものすごく暇だ、次々に発艦していくヘリと機動戦鬼を眺めながら海洋母艦「瑞鶴」の偽魂体ずいかくはやることもなく暇を持て余していた。発艦作業は「海鶴」「山鶴」の乗員も同乗しているため彼女の仕事が全くないのだ。
「この様子だと別に私たちじゃなくても黒鷹型か秋燕型でも事足りるんじゃない?なんで私たちをこっちに送ったのかなぁ、本部は」周りが忙しそうに動いている中で自分のやることがないことに文句が出る。上陸艦隊の編成は第1、第2輸送隊群を中心に第11海母隊と2個支援艦隊で南下したあと第11支援艦隊と合流した42隻となっている。第11海母隊は航空優勢の維持のために本艦隊に組み込まれたが基地攻撃により脅威が消えたためはやいうちからお役目ごめんとなった、もっとも搭載しているのが機動戦鬼のみのことからそこまで必要性がなかったことが伺える。
“ずいかくったら随分と暇しているのね、気を抜くのも程ほどにしておいてよ、いつ敵が来るか分からないんだから・・”ずいかくをたしなめたのは姉妹艦でもあるしょうかくだった、見たところ補給のために戻った機動戦鬼を収容しているようだ。
「ハイハイ、しょうかくは偉いね~、こんなんじゃ私なんか30分集中力が持てばいい方なのにちゃんとしているのだから、私も西側で戦いたかったなー多分そろそろ始まっている頃じゃないの?」まだ気の抜けた声で答えるずいかく、言われたしょうかくも苦笑いしながら“私は解放軍さんが気の毒に思いますけど・・”と答え向こう側での戦闘を気に掛けていた。
一方そのころその西側では解放軍の海上部隊が少し、いやかなり悲惨で痛い目に合っていた・・・
「駆逐艦「朝陽」「海淀」大破!フリーゲート「王佐」「北務」「李遂」「百善」「延寿」及びコルベット「霞雲嶺」「蒲窪」「劉斌堡」「香営」が沈みました!!」
「敵ミサイル第3波を確認、数40!!上空を飛行しています」
「げ、迎撃しろ!艦隊上空に近づけさせるな!」艦隊司令の命令のもと沖縄に駐留していた北海艦隊の部隊が対空ミサイルを放ち、上空を飛んでいるミサイルを迎撃する。普通海面すれすれを飛ばせるのが常識であるはずの対艦攻撃をなぜか上空を飛ばしてきているおかげで難なく破壊はできるのだが・・
「敵ミサイルから金属飛翔体が落下してきます!」
「くそ、またか!全艦回避行動!!」その号令のもと艦隊が動き出したあと物凄い速さで金属の雨が降り注ぎ艦隊を襲う、ただの金属の落下物ならたいしたことはない、しかし、今降り注いでいるものは破壊を目的として落下してきている。その貫通能力は恐ろしくまともに浴びた艦は穴だらけになるか針の筵と化した。
「駆逐艦「河北」「河東」「南開」ミサイル発射装置に被害戦闘能力喪失!フリーゲート「中北」「辛口」「清武」「大寺」被害甚大、航空母艦「白虎」の飛行甲板に被害そのほか多数被害を確認」こんな感じに沈まなくとも無視できない被害を受けているせいでじわじわと北海艦隊の戦力が削られていく、比較的小型のフリーゲートやコルベットなんかは最初の攻撃で大半はリタイアしていた。
「おのれ小日本の奴ら好き勝手にやりやがって、こんな攻撃どう防げというつもりだ!」余りにも一方的な攻撃でとうとう艦隊司令がキレてしまい周囲に怒鳴り散らす。実はいうとこのミサイルのほかに潜水艦からの魚雷攻撃も受け続けているのである、海面の至る所では敵の魚雷か味方潜水艦が沈んで起きた水柱が立ち上がっている。
「指令、このままでは全滅の可能性が高すぎます撤退を具申させてもらいます!」艦長がそう発言する。ミサイル攻撃でさえ苦労しているのに今現在日本の艦隊が猛スピードで迫ってきているのだ、このままでは袋叩きに合うのは火を見るより明らかだ、そう考えた結果の意見具申だったが当の艦隊司令が言った言葉は・・
「いやダメだ、このまま逃げればわた・・、北海艦隊のメンツにかかわる。何としてでも日本の奴らを追い返すのだ!わかったな艦長?撤退は認められん」
「しかし、このままでは!!」メンツの為に撤退を認めない艦隊司令に食い掛かる艦長、その時観測員から日本の追加攻撃の報告がされる。
「敵航空機大量に接近中!数300機以上!ほか新たに対艦ミサイルが上空、海上両方面から来ています!」すぐに迎撃命令が出されたが受けていた傷が深すぎた、迎撃ミサイルを放てた艦は10隻前後しかおらず他の艦は沈黙したままだった・・
「敵ミサイル20発依然接近中、航空機群も対艦攻撃を開始しました」
「み、味方の航空機は何をしている!早く迎撃せんか!」悠々と対艦攻撃を始める敵航空機に対して味方の動きがない事に怒る艦隊司令、だがそんな彼に艦長が静かに言葉を返す。
「指令、我が方が上げていた航空戦力は既に全滅しております」
「なら追加で早く上げないか!!空母の奴らは何をしておる!」艦長の言葉に逆上する指令、しかし艦長も続けて言い返す。
「お言葉ですが我が艦隊の「白虎」は飛行甲板に被害がでて発艦自体が出来ません。また「玄武」に関してはそもそも飛ばす飛行機が無いのでどのみち無理です」そう言い終わると同時に日本のミサイルが艦隊に対して牙をむき始める。各艦生き残ろうと持てうる限りの力で迎撃するが1隻、また1隻と確実に仕留められていく。
「て、撤退だ、こ、このままでは全滅する、急いでこの海域から離脱するのだ!!」先ほどまで徹底交戦を唱えていた艦隊司令が己の危険を察知するや否やそう命令を下す。周りに居た者は呆れた視線を送っていたが、それでも命令を実行する。被害を受け動けなくなった艦も連れて帰りたかったがそんな余裕もないので日本の良心に期待して置いていった・・、逃げられた艦は20にも届かなかった。
“きいさん、敵艦隊が撤退を始めました。また、いくつかの艦は動かずにそのまま居座っておりますがどういたしますか?”僚艦から報告をうけ、制圧艦「紀伊」の偽魂体であるきいは少し考えていた。本作戦では敵勢力の排除を目的の一つとして加えられているのでこのまま攻撃を続けてもいいがわざわざ撤退している者がいるのに残っているものの意図が何なのかをはかりかねていた。足止めとして残ったのなら心置きなく沈めさせられるが一向に攻撃を示唆する行動が無いとなると何か別の理由がある可能性もあるのではないかと思ってしまうのだ。
「このまま攻撃を続けてもいいけれど動けないだけで攻撃の意志がない可能性もあり得ますね・・、はるざめさんとほしざめさん、申し訳ありませんが潜水戦隊の方で少し様子を観察してもらいませんでしょうか?」戦闘をしなくてすむのならそれに越したこともないと判断し一先ず情報を集めることにした彼女は本艦隊より先行していた第5、第6潜水戦隊それぞれの旗艦にそう命令をくだす。すかさず命令を受けた2隻から了承の言葉が伝えられてきた。
それから10分ほどたったあと潜水艦「春鮫」から連絡がはいる。
“こちらはるざめ、残った中国艦のことなんですが海軍旗を降ろして白旗を掲げております。どうやら投降の意志があるようです”彼女が言うにはベットのシーツなどをつなぎ合わせて作った白旗を掲げて中国語ではあるが投降すると放送しているとのことだった。そのあと他の潜水艦の子たちからも似たような報告がきたので嘘ではないだろう。
「わかりました、潜水戦隊の皆さんには悪いですがどなたか浮上して意思確認をお願いします。我が艦隊ももうすぐ視認できる距離につきますからそれまでの間の対応を頼みます」潜水艦相手に姿を見せろと無茶振りな命令をするが、意思伝達のためだここは我慢してもらうしかない、向こうも少し不安な様子だったが了承してくれた。
「思ったよりも抵抗が少なかったですわね、3型弾頭が効果的でしたのでしょうか?」そう呟くきい、今言った3型弾頭とは対艦攻撃に使ったSSM-3とASM-3のことである。日本のミサイルは弾頭部分を変えることによって多種多様な攻撃を可能としており、通常弾頭の0型をはじめとした複数の種類がある。3型の場合は弾頭部分に熱を与えることによって特定の形状に変形する金属をしこんであり、これを空中からばら撒くことによって対象の破壊を目的とした弾頭でクラスター爆弾の代わりとして開発された。その貫徹能力は5m未満のコンクリートなら確実に貫き、また対象が金属でもかなりの確率で貫通するか突き刺さる。基本的に対地用のミサイルに搭載する弾頭だが今回敢えて対艦攻撃に使用した。効果はまずまずだったが敵の攻撃手段を奪うには十分だったらしく日本の艦隊は攻撃らしい攻撃を受けずに済んだ。
「まぁ、弾薬の節約にもなりましたし良しとしますか、あとは沖縄にいる敵の排除だけですね」そう言って旗艦として艦隊を率いながら沖縄への歩を早める彼女だった。




