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日本国世界大戦  作者: 一機当千
本編
33/68

二方面戦〈二〉

沖縄県那覇 10:00


沖縄県の首都であるこの街の海岸線では中国の上陸艦隊を中心とした攻略部隊と第15師団及び那覇基地独立警備部隊を筆頭とした部隊による銃砲雷撃戦が繰り広げられていた。

“美海11時の方向から揚陸艇接近しているよ!撃って!”香の言葉に反応してすぐさま機体が持っている50mm機関銃をむけ目標に向かって鉛玉を撃ち込む。撃ち込まれた揚陸艇は穴だらけになって乗っていたもの共々海の藻屑となる。しかし、次から次へと大量に攻めて来るせいで戦線が崩れ始めている。

「もう!キリがないわね、まだ相手が無人機だけだから精神的には楽だけど」余りの数に嫌気がさしながら文句を言う、この時代の上陸戦では先に無人機などを利用して安全を確保したのちに兵士を送るのが基本となっている。そして今の状態はいわば前哨戦でしかなく、そう遠くない内に主力部隊が送られてくるはずだ。

“だけどもういくつか上陸されているからそろそろ不味いかもよ”そう通信をいれる鈴、確か今は隊長と別の所を防衛していたはず、どうやらあっちでは上陸を許してしまっているようだ。そんな事を考えていると突如一緒に海岸線を守るために飛行していた支援群所属の機動戦鬼が爆発し墜落した。

“まずい、攻撃ヘリが来たこのままだとこっちも戦線が完全に崩れる”香がそう叫ぶ、攻撃ヘリ自体なら飛行できる機動戦鬼でも対処は可能だが付近には対空ミサイルを搭載している艦艇も多数いるため下手に飛べば落とされるかもしれない、事実すでに2機の機動戦鬼が艦艇の対空ミサイルの餌食になっている。

“本部から全前線部隊へ連絡、後退せよ第15師団の特火連隊及び砲火連隊のよる面砲撃を行う、繰り返す・・”前線の維持が困難と判断したのか後退命令が下される。すぐに僚機の香と共に後退する機甲隊や歩兵隊の支援をしながら後退を始めた、同時に沖縄いや日本本土への敵対勢力の上陸を許すことになってしまった。

沖縄撤退完了まであと4時間を切っていた頃だった。


沖縄本島120km付近 12:00


「ミサイル第5波来ます!そのすぐ後ろから同じく第6波も接近中!」「迎撃せよ!」第2艦隊の艦艇から次々に放たれる迎撃ミサイル、現在第2艦隊は九州に向け撤退中のところ中華解放軍によって追撃を受けていた。何故撤退しているのかといえば2時間前に沖縄本島に中華解放軍の上陸部隊による上陸を許したことから始まる。この上陸部隊後々調べて分かったことだが艦艇のほとんどは南海艦隊の所属だった。どうやら北海艦隊が第2艦隊と戦闘している間に遠回りした南海艦隊が上陸する手筈だったらしい、これにより第2艦隊は挟み撃ちにされる危険があり、また、上陸を許した時点で足止めの意味が失われたため撤退に踏み切ったのだが、中国もみすみす逃がすようなことはせず追い打ちをかけられている状況である。

「第5波全弾迎撃、第6波・・、 !! 5発依然接近中迎撃間に合いません!!」レーダー員から報告が上がると同時にスクリーンから味方艦を示すマークが消える。

「駆逐艦「冬雨」・巡洋艦「名取」轟沈!制圧艦「伊勢」及び駆逐艦「青空」被弾しました!」

「クソ!敵はまだ追ってきているのか相手は無人だったよな!」逃げながらの戦闘ほど難しいものはない1隻また1隻とやられていき、無傷の艦も数えるほどしかいない。

「敵艦依然本艦隊を追撃中、指揮艦も同行しているものと思われます」敵はまだまだこちらを逃がすつもりはないようだこの間にも7回目のミサイル攻撃が行われ駆逐艦「夏霧」が撃沈、「春霧」と「荒潮」が被弾した。そろそろこちらの迎撃ミサイルも残り少なくなってきた、制圧艦は艦内からVLSに再装填することができるが既に2回再装填しているためやはり数的には苦しい状況である。この状況を見守っていたふそうはこのままではいずれ全滅すると考え艦長にある提案をした・・、そして、全滅の危機にあったのは海だけではなかった。


「おわっと・・、無人機だからって無茶苦茶な飛行をしやがる、本当勘弁してくれよ・・」第2艦隊の上空で艦隊防空の任についていた早乙女三尉は疲労がたまった体に鞭をうちながら迫りくる無人機相手に必死の戦闘を繰り広げていた。基地と戦場をすでに3往復したため正直いうとかなりつらいのだが、沖縄に敵が上陸したため那覇基地にはもう戻れず艦隊と共に九州へと撤退しているわけだがこの追撃である。

“けど、あと一体どれだけ来るのだろう、そろそろミサイルの残弾がまずい・・”最後に那覇基地で補給を受けた時にAAMではなくSMを装着してもらったおかげで10機近くの無人機を落とした今でもまだ余裕があるがそれでも24発中残り9発と半分を切っている。そこに新たな敵の反応が現れる。すぐにミサイルを放ち対処するがそれでも4分の1を落とすにとどまり、そのまま格闘戦へともつれ込むことになる。

「!? しまった!!」2機目の無人機を落とした後自分の後ろを敵にとられてしまいミサイルを撃たれる。欺瞞が間に合わないと判断しミサイルで相殺した後そのまま攻撃を加え落とすことに成功する。それもつかの間別の機に再び後ろを取られそうになる、回避行動をとるが相手は無人機である人では耐えられないような機動をとりじわじわと追いつかれ始めた時いきなりミサイルが飛んできて無人機が爆散する。

“早乙女三尉大丈夫か?あぶなかったな”そう声をかけたのは同じ航空隊の山田隊長だった、敵に追われているところを助けてくれたようだった。

「隊長、ありがとうございます。おかげで助かりました」そう感謝すると気にするなといったのちに状況を確認し出す。既に第9航空団の航空戦闘隊の生存機は10機を下回っており、一緒に艦隊防空についている攻撃隊と支援隊を合わせても27機までその数を減らしていたパイロットも3名失い満身創痍な状況である。

“ミサイルもあと3発しか残っていない、三尉のほうはどうだ?”

「自分は4発です、次きたら確実に底をつきます」お互いそろそろ戦闘自体限界に近づいていた。他の機も同じ状況だろう、先に九州に撤退した第8航空団が戻ってくるのが間に合ってくれればいいが・・

“なんとか持ちこたえるしかないか・・、お互いまだまだ気を抜けそうに・・ビー、ビー!なんだ!?うお!!”ドン!そんな音がするのと同時に隊長の乗っていた機体が爆発して火だるまになりながら海へ落ちていった

「隊長!どこから!?」隊長を落とした敵の居場所を探るために周りを見渡す、そこに新たな敵を示す光点がレーダーに映し出されるがその反応がとてつもなく小さい、どうやらステルス機のようだ。

「おいおい、「蓮花」のレーダーは対ステルス用だぞ敵さんどんだけ影薄いんですか・・」ステルス全盛時代の今当然アンチステルス技術も開発されるのは必然な流れである。日本はこれをレーダーの出力を限界まで上げるという手段で対処している。それですら発見が遅れたということは相手がそれを上回るステルス能力をもっているのだろう。

「隊長の仇だ!覚悟しやがれ!!」ステルスとはいえ見える距離まで近づけば意味がなさなくなる。早乙女三尉は12機いる相手の内1機に狙いを定め格闘戦を挑もうとしたが、しかし、自分の機体の出力が上がらないことに気付くどうやら隊長がやられたときに自分も被害を受けていたようだ。エンジンからはまだ薄いが黒を帯びた煙が確認できる。

「少しでもいいせめて1機落とすまでもってくれ」戦線を離脱して基地に帰投すれば機体がダメになっても命は助かるがそれよりも隊長を撃った敵を一人でも多く道連れにすることをこの時早乙女三尉は選んだ、だがその決断を止めるように乗機の制御が突然彼の手から奪われる。

「れんかさん邪魔しないでください!」乗機の制御を奪った張本人にむかって、早乙女三尉は叫ぶように言い放った。

“ダメです、すでにあなたの機体は限界です。それにこれ以上優秀なパイロットを失うわけにはいきません!何としてでも連れ戻します!”だが返ってきたのは無情にも拒否の言葉だった、結局彼はどうすることもできずただ偽魂体に制御を奪われた機体の中て悔しさをかみしめるしかなかった・・

そのころ対馬沖で戦っていた第3艦隊は思いもよらぬところから攻撃を受け苦戦を強いられていた。


対馬 第3艦隊 12:00


いつもなら青く澄んだ空と海があるだろうこの場所は今現在複数の艦が黒煙を上げ炎上している地獄絵図と化していた。

「駆逐艦「親潮」退艦完了しました、「天雨」「磯雨」以前炎上中!消火間に合いません!」

「巡洋艦「球磨」及び「多摩」被弾した駆逐艦「朝霧」「夜霧」を曳航して撤退します」

「敵宇宙艦隊から第3波攻撃を確認、各艦迎撃開始!」

しばらくすると第3艦隊からあがる迎撃ミサイルと第3艦隊を葬らんと宇宙から放たれたミサイルが交差・爆発を起こし空が燃え上がる。

「制圧艦「加賀」第1砲塔に被弾!駆逐艦「雨空」反応消失!」

「宇宙艦への攻撃はどうなっている!」「薩摩」の艦長が怒鳴りながら聞く。

「SCMを各艦から発射するも全弾迎撃されました!」乗員もすかさず答える。第3艦隊は大韓朝鮮帝国の海空軍相手に戦闘をしていたところを突然宇宙からの攻撃にさらされ決して軽くない被害を受けたのであった。反撃はしたものの弾道ミサイルと違いあっちも迎撃を行ってくるため有効な手を打てずにいる。

「艦長、いま第2、第3星団が援護のために急行しているとのことです」30分後に援護が来るとさつまが報告するがこの状況では30分どころか20分ももたない、すでに投入した戦力が駆逐艦だけでも半分が沈むか被害を受けているのだ。30分もかかるのか・・、はっきり言って絶望しか感じられない、敵がこちらの注意を惹きつけていることは何となく察しがついていたが来るとしたら海中か後ろからと考えていたが宇宙からは流石に想定外だ、そもそも弾道ミサイルもそうだが宇宙からの攻撃は少しのズレでものすごく大きな誤差を生み出す使いにくい兵器だ、戦略的な運用なら別だが今回のような戦術しかも特定海域での戦闘で使うなど下手をすれば味方を撃ちかねない行動をとるとは考えもしなかった。

「問題はどうやって30分もたせるか・・」攻撃しても十中八九迎撃されて反撃されるのがおちである。かといってひたすら迎撃に徹したとしても確実に迎撃が出来ないのは既に被害が出ていることから明らかである。その前に先の戦闘で迎撃ミサイルを消費している確実にミサイルが底をつく。

「1発でも当てれば確実に沈められるが問題はどうやってあてるかだ・・」敵の宇宙艦は5隻いずれも命中率を高めるためか大気圏ギリギリの高度を陣とっている、当てれば重力にひかれて確実に落とせる。

「艦長、提案があるのですが・・」さつまが自信なさそうな感じで話しかけて来る。その提案は正直いって効率・確率共に低い方法だったが今の状況を打ち破れる唯一の方法だとこの時艦長は直感しすぐさま行動に移った。


沖縄本島 13:30


住民の避難が終わり防衛をしていた第15師団の撤退が進められているその上空では中華解放軍と機動戦鬼が空中戦を行っていた。

「敵機さらに4機接近・・ちょっと待ってよ、流石にそろそろ疲れてきたのだけど・・」そう言いながら50mm機関銃の引き金を引き敵機を穴だらけにした白瀬 美海は疲労が溜まった顔をしながらつぶやく、かれこれもう3時間以上休憩も補給もせず戦闘を続けている。

“弱音を吐いている暇があったらとっとと敵を倒しなさいよ、美海!”白瀬の後方で3機の敵機と戦闘をしていた香が言い返す。敵はきれいに両断されて落ちていった。

「いやけど50mmも100mmも弾が尽きそうなのよ、結構不味くないこれ」近づいてきた3機の無人機を装備していた5000mm長刀でたたき切りながらいう、接近戦など起こらないといわれ無用の長物と言われ続けたこの装備がここまで役立つことになるとは皮肉である。長距離攻撃ようの100mm機関砲の弾がさっき尽きたせいでますます事態が逼迫することとなった。

“皆さんご無事ですか?生存確認を!”隊長の声がしたと思ったら相手をしていた敵機5機が爆散して墜落して行った。一体どこから撃ったのだろうか・・、そんな疑問をよぎるが自機の無事を知らせるため返答する。

「白瀬機無事ですが残弾がまずいです」続けて山瀬隊員と川瀬隊員が無事を知らせる。4機とも無事に生き残っているようだ、生存を確認した隊長が新たな指示を出す。

“先ほど本部から撤退命令が出ました。これより私たち那覇基地独立警備機動戦鬼小隊は奄美諸島まで撤退します。皆さんいいですね?”ようやく撤退命令がでた、まだ第15師団は撤退作業の途中だがそこは支援群の機動戦鬼中隊が引き受けてくれるらしい、そういうことで撤退を開始した小隊だがこの時私白瀬 美海は安心して気を緩めてしまった、そしてそれが命取りになった・・・、敵機が放ったミサイルの接近に反応が遅れてスラスター部分に被弾してしまったのだ。

「ミサイル!?しまった、きゃあ!」そのまま機体は山岳の方へ回転しながら落ちていった。

“美海隊員!?あっ!!”被弾した際に小隊の編隊も崩れてしまい他の3機も次々に被弾して街の方へ落ちていった。この時の墜落場所で生死を分けることとなったことを知ったのはもう少し後のことである。


第2艦隊 13:30


「大谷さん、「扶桑」乗員の収容が完了しました、撤退を再開します」偽魂体のやましろがそう報告し制圧艦「山城」はその巨艦を動かし始めた。

「やましろ、「扶桑」はどうなっている?」「山城」艦長、大谷 信也一等海佐はほとんど呟くように彼女に質問する。

「残念ですが15分前に反応が消えたままです。撃沈です・・」短く答える彼女、その声は震えていた。事の起こりは約1時間前にさかのぼる・・・

「艦長、「扶桑」から退艦命令が発令されました。本艦に収容の要請が来ています」

「「扶桑」が?いったいなぜ?何か知らないかやましろ」中国の追撃部隊からの撤退中何回も攻撃を受けていたが「扶桑」はまだ一度も被弾していないはずだ(代わりに第2艦隊のほぼすべての艦が被弾して全滅まで秒読み状態ではあるが)、疑問が多すぎるため偽魂体の彼女に聞いてみるが返事がない彼女の方をみているとなにやら一人で言い争いをしている。

「大谷さん、お姉さまを止めてください!自艦を囮にして艦隊を逃がすって一点張りなんです!!」取り乱しながらそう叫ぶやましろ、過去にあった艦隊ゲームのキャラクターと同じでこいつの姉好きも大概だな・・、ってそんな場合ではない今なんていった?艦を囮にするだと!?

「それは本当かやましろ、おい通信員すぐ「扶桑」につなげ!確認する!」はっ、はいと慌てて「扶桑」と連絡を取ろうとした通信員とは逆にスピーカーから聞こえてきた男の声は余りのも呑気であった。

“え~、こちら制圧艦「扶桑」艦長黒田だ、なんか要か?”

「くろだぁ、テメエ一体何のつもりだ!囮になるとかやましろから聞いたぞ!何考えてやがるんだ、この馬鹿野郎!!」出せうる限りの声で怒鳴りつける大谷、彼と黒田は同期の仲でもあり、その怒りは2倍増しである。そんな彼の怒りにも動じず黒田は静かに答える。

“そうは言ってもな大谷、このままでははっきり言って全滅確定だ、どうにかして追撃の目をそらさないといかんし、且つ可能な限り足止めもしないといけないそれが出来るとしたらこの「扶桑」しか適任がないのだよ、そうふそうが言っていたぞ、それに私も彼女も退艦するから安心しろ”

「だからと言ってもお前なぁ、それの意味すること分かっているのか?」いくら味方を逃がすためとはいえ旗艦をわざわざ沈めるようなことをすれば確実に処罰ものだ、そのことを考えているのかを聞く前に通信を切られる。仕方ない続きは後だ、そう割り切り扶桑乗員の収容を急ぐように指示を出す。

「艦長、「扶桑」動き始めました回頭しています」見ると非常にゆっくりだが、「扶桑」が動き出しているのが確認できた。しかし・・

「早すぎないか?遠隔操作をするにも脱出艇では操作に集中できないだろ・・」ただでさえ遠隔操作は極限までの集中力を必要とするのに波で揺れる小型艇の中でできるわけがない、その疑問を口に出した時なぜか嫌な予感が頭の中をよぎる。そしてすぐにその予感が当たってしまったことに大谷は後悔した。

「艦長!収容した扶桑乗員からの報告で偽魂体ふそうが退艦命令に従わずに艦に残って操艦を開始したと言っています。黒田艦長が艦に戻っていったとも」

「なんだと!?あの馬鹿すぐ「扶桑」を止めさせろ」慌てて二人を止めようとするが時すでにおそし、制圧艦「扶桑」との距離は10kmを超えていた、敵も気づいたのか一時は止まっていた攻撃を再開し始めた、狙いはもちろん「扶桑」である。大谷はただその後ろ姿を見ていることしかできなかった。

そのころ「扶桑」艦橋では囮となるために必死の形相で操艦している女性、ふそうがいた。

「くっ・・!いくら装甲があってもこう連続して攻撃をもらい続けたら、流石の私も辛いですわね・・」そう弱音を漏らすが顔は笑っていた。既に艦体には数か所穴が開いておりそこから浸水しているのが分かる。

「ですがこのままやられるわけにはいきません、あと10隻くらいは道連れにさせてもらいます」そう言いながらVLSに残っていたミサイルを全て撃ち出し、敵を攻撃する迎撃能力を持たない無人艇はなすすべもなく沈められた。しかし、「扶桑」にも新たに4発のミサイルを受け艦が右に傾き彼女もバランスを崩す。

「そろそろ限界・・でしょうか・・、黒田艦長、きっと怒っているでしょうね・・けど敵を40程減らしたので許してくれればいいのですが・・」自分の最後が近いと悟ったのかそう呟く、自分が艦長との約束を破ってしまったことに対して自責の念が生まれる。

「許してはやりたいが流石に40では少ないぞ、ふそう」後ろから声をかけられ慌てて振り向く、そこには煤で汚れた制服を着た黒田艦長が居た。

「か、艦長!?どうしてここに!退艦したはずでは」いないと思っていた人物が目の前に現れ驚きを隠せない彼女、さっき死にかけていたことなど忘れ去ったようだ。

「どっかの誰かさんが命令無視して行動した挙句死にかけていることを知ってな、折角だから付き合ってやることにした」嘘か本当か分からない言葉を返す黒田、こんな状況なのに笑顔でいるあたり色々と危ない気がする。

「ほら、ふそうそんなところで座っている暇ないぞ、敵はまだたくさんいる。日本の異名をもつお前の底力を見せつけてやれ」そう言いながら彼女に手を差し出す黒田、その眼はまだ闘志を宿らせていた。手を差し出された彼女も半ばあきれながら、“最後まで付き合って下さいね”といい、その手を取り立ち上がった・・・、


対馬 第3艦隊 13:30


「第3星団旗艦「牡羊」から入電、敵宇宙艦の最後の1隻を撃沈とのことです。また、同時に敵艦隊も撤退を開始した模様」

「全艦に追撃は不要だと通達及び損傷した艦及び乗員の救助を開始しろ」そう締めくくったあと、戦闘が終わった安心感からか息をつくまだまだやることは残ってはいるが少なくとも戦闘よりかはずっと気を張らなくてすむ。そんな風に事態の進行を見ているとさつまが艦隊の被害について報告してきた、一言でいえばかなりの傷を負わされてしまった。

「駆逐艦だけでも最低6隻撃沈は確実か・・、まだ、偽魂体が生き残った艦もあるから戦力の回復は望めるのがせめてもの救いだな」特に宇宙からの攻撃が痛すぎた、もしさつまの提案がなければ負けていたのはこっちかもしれない。

「その件は対処が遅れてしまい申し訳ございませんでした」なぜか彼女が謝ってきた。

「謝ることでもないだろう、事実お前はちゃんと仲間を守ったんだからあの策がなければどうなっていたか・・、逆に感謝しているくらいださつま」彼女の出した策は実に単純明快で敵が迎撃しきれないほど大量にミサイルをぶつけるというものだった。迎撃に使う汎用ミサイルは攻撃にも使え、かつSMなどは1セルに6発も収納できることから可能な事ではあったが、こちら側も迎撃する手段まで失うことにも成りうるため積極的には行われないことを敢えてさつまは提案した。結果、敵艦1隻に対し1000発単位の攻撃を行い2隻撃沈するに至った。そのおかげで艦隊のもつVLSはすっからかんになっているから危ない状況でもあったので、撤退してくれて助かった面も大きい。

「あとは潜水戦隊の奴らが上手くやってくれれば任務完了だな」

「うまくやってくれるでしょうか・・」別任務で艦隊を離れている潜水戦隊の心配をしながら帰還の準備を始めた。かくして日中・日韓両戦争の初戦は幕を閉じることとなったが日本の負った傷を軽くはない、今後の作戦への影響が心配されることは確実である。

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