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日本国世界大戦  作者: 一機当千
本編
30/68

偶然か必然か

中国 北京


ガシャン!

「貴様ら一体全体何をしていたのだ!!」ガラスの割れた音と怒声が室内に響き渡る、声の主はこの国の主席の王 周来である。

「もっ、申し訳ございません!現在、軍部の総力をあげて事態の解明をしております」怒りをぶつけられた軍の幹部が慌てて答える。主席の怒りの原因は無論インド洋でおきた遠征軍による攻撃についてである。あの攻撃のあと遠征軍全軍との連絡がまったく取れないうえに国内にいた遠征軍の幹部も2週間前から行方不明になっている。

「遠征軍の統制が出来ない上に解放軍の東海艦隊も壊滅状態とは、貴様らは一体軍で何をやっていたのだ?あまりにもひどすぎる。お前らは案山子か?」未だに怒りが収まらないのか怒鳴り続ける王主席、その怒りのせいで幹部たちも小さくなる。

「とっ、とんでもございません、すでに遠征軍との連絡のために東海艦隊の一部をアフリカに向かわせております。もし、遠征軍の奴らがおかしな行動をとれば速やかに殲滅するよう命令もだしています。」幹部も反論するが逆に彼の怒りに油を注いだようだ。

「ふん、東海艦隊には今はフリーゲートしか残っていなかったはずだが、おまけに遠征軍を殲滅するといったな?貴様はたががフリーゲート数隻で中国軍の半分の戦力をつぶせると本気で思っているのか?だとしたら貴様は本当の馬鹿だな、バカではなく馬鹿だ!」

「そっ、それは・・」言葉に詰まる幹部

「それに貴様らのおかげで我が国、いや我が党の国際的な立場もまた厄介な状況になってしまったではないか、さっき日本の在中大使がきたがなんて言ったと思う?『今回は事態を静かに見守らせてもらいますが、今後の振舞について考えておいてもらいたい』だとよ、暗に脅してきやがったぞ、あの日本がな!この不始末どうしてくれる!!」

「「「・・・・・、」」」幹部たちが沈黙している。主席も役に立たないと考えたのか幹部たちを部屋から追い出し、部屋内が静かになる。

「あいつらは役に立たん、すまんが今後の対応については貴様に任せることになるが頼んだぞ」そういいながら彼の後ろでやり取りを見ていた若い党幹部の男に話しかける。

「可能なかぎり手は打たせてもらいます」話しかけられた幹部も短く答える。この事件このままでは終わりそうもない。


日本 横須賀 地下ドック


「勇士、ゆうしおちゃん大丈夫そう?」不安気味に質問するゆうだち、仲間があわや沈没仕掛けたのだ、仕方もない俺もできるだけ不安に感じさせないように、

「艦の方は修理に時間がかかりそうだが、偽魂体の方は問題ないそうだ一先ず平気だとは思うぞ」と答える。現在俺たちは横須賀基地にある地下ドックの第1階層で損傷艦と一緒に整備を行われている駆逐艦「夕立」を見下ろしながら話している。この地下ドック一階層に10隻分のドックが5階層分用意されており、防衛隊をはじめとした艦船の建造・整備を行っている。


「艦長、駆逐艦「夕立」の整備状況聞いてきましたよ」そう走りながら報告してくる秋山副長、整備状況を聞き終わり戻ってきた。

「おう、助かった。でどんな感じだ?」「え~とですね、目立った傷はないとのことですので軽整備で終わらせて後はそのまま弾薬の補給に移るそうですよ、「夕潮」は5か月、「夕霧」は3か月の修理でドック入りですけど」

「そうなるとしばらくは第1駆逐隊そろっての行動はなさそうだな」報告を聞きそう考えていると秋山副長が追加で報告してくる。

「そのことですけど、抜けた2隻の代わりに最近引き渡された新造艦が来るのでその習熟訓練に協力するようにとのことです。これその指令書です」

「新造艦?ゆうだち達の後継か?」報告に対しそう答える。

「吹雪型・島風型・秋月型・初霜型の1番艦で、私たちが出ている間に就役したようです。第1駆逐隊に一時編入されるのは島風型と初霜型の2隻です」そのまま新型の仕様書を渡される。

「性能的には「夕立」達とは変わらないようだが、どうせこれ公称されている性能だろ?」

仕様書をみて苦笑する。装備の性能を過小に発表するのは先進国の軍にとっては基本な事だが、ここ最近の日本はそれが些か行き過ぎている感がある。例をあげるなら「夕立」たち駆逐艦の速度は35ktとされているが、インド洋からの撤退時にメーター(最大40kt)が振り切れていたことは公然の秘密だ。

「あれ?もしかして私そろそろ引退っぽい?」ゆうだちが疑問に思う。確かこいつもう艦齢が20年超えていたな、初めて会ったときにそのことに触れてぶん殴られたのは今では良い思い出だ。

「まぁ、すぐというわけでもないだろうしどこかの警備隊に編入を希望すればもう20年はいけると思うぞ」さすがに20年は無理とは思うがそう答える。

ふ~ん、そっか、と心此処に在らずの感じで答えるゆうだち、今は整備されている「夕立」を見つめている。とはいえこいつが退役か、必然の流れとはいえ寂しくなるな、そんな風に一つの時代が終わり始めているのを感じながら今後のことについて二人と話し始めていた。


日本 官邸


「総理、例のインド洋での件の資料を持ってきました」扉をノックして入ってきた音無外務相を迎えいれ、コーヒーを入れた後に話を聞き始める。

「中国に関してはあちらも混乱しているようだな、無人艇の出所についてはどうだ?」

「それに関してですがアフリカからの可能性が高いです」そう答える音無大臣

「アフリカか・・、確かに最初にアレが出たのもその付近だからまぁ妥当だろうな、そうなると中国の遠征軍が攻撃してきたのも案外偶然ではないかもしれんな」そんな仮説が出て来るが状況的に考えても仕方ない。なにしろ無人艇との戦闘が終わった直後の出現である偶然にしては出来過ぎている。

「あっ、遠征軍についてなのですがどうやら中国本土との通信が遮断状態であり実質独立して動いている状態と情報組織から報告を受けています」思い出したかのように報告する音無大臣

「独立して動いている?クーデターでもおきたのか?確かに遠征軍とはいえ大半はアフリカの国々の軍みたいなものだから、ありえなくはないが・・」そう疑問をぶつける鴉山総理、今話している遠征軍についてだが中国の軍の一部として扱われているものの実際はアフリカ各国と中国の合同治安部隊のような性質を持っている。これの前身が中国がアフリカへの援助を行っていた時に一緒に来た中国人労働者と現地の人との軋轢の解消のために組織された警察組織という余りにも謎すぎる理由で発足したために国際的にも随分問題となっていた組織でもある。

「さぁ、詳しくは分かっていませんのでまだ何とも言えませんね・・」煮え切らない様子で答えているところを見ると本当に掴めていないのだろう、結局謎は深まるばかりであった。


中国 某所


場所は分からないが今ここには数人の男たちが椅子に腰かけて神妙な顔立ちで話していた。

「結局遠征軍の起こした事件の処理は張殿が行うことになったそうだ」

「それはもう我々はお払い箱ということですかな?」

「防衛軍上がりの若僧にとられるとは解放軍の面目が丸つぶれではないか!」

最初にリーダー格の男性が話した後、続いて眼鏡をかけた男性と中年の男が言い放つ。

会話の内容で察しがつくだろうが今ここにいるのは全て解放軍の幹部たちであり、王主席に怒鳴られて追い払われた面子である。どうやら解放軍の面子が潰されたことがかなり不服らしい。

「そもそも王主席は何を考えて小日本や弱小国と友好関係を続けているのだ!我々と肩を並べるなどおこがましいにも程がある!!」中年の幹部が机を叩きながら怒鳴る。

「誇りある中国4000年の歴史もこれでは哀れですな、そろそろ我々も立ち上がるべきかもしれません。計画の進展の方はどうなっているのでしょうか?」リーダー格の幹部が眼鏡をかけた幹部に話しかける。

「解放軍の地上戦力と航空戦力は全て我らの勢力に引き込んでおります。ただ、海上戦力は南海・北海艦隊は問題ありませんが東海艦隊は半分も掌握できていません。宇宙戦力に関しては幸い不安分子が先の襲撃事件で消えてくれたので楽に引き込めました」

「東海艦隊に関しては心配はいらんぞ、掌握しきれていない勢力のほとんどはアフリカに向かわせたからな今頃海の藻屑になっているであろうよ、残った奴らもすぐに捻りつぶせるだろう」補足するように最初に怒鳴っていた中年の幹部も話し始める。

「そうなると既に我々は解放軍の9割の戦力を手に入れたということになりますな、これならたとえ防衛軍が抵抗したとしてもすぐ鎮圧できることでしょう。数多の偶然が重なったとはいえここまでうまく事が運ぶとは・・・、どうやら我々には神の御加護がついているようだ。よろしい、時は来ました今こそ我々は立ち上がり誇りある中国の歴史を取り戻す絶好の機会です。我々でこの栄誉ある役目を果たそうではないか」そう締めくくり幹部をはじめその場に居た者達が歓声をあげる。


「フフフ、主席が悪いのですよ。中国のプライドを捨て去りあろうことか他国と共に歩もうなどと考える主席がね」歓声のなかリーダー格の幹部がそう呟くがその言葉は歓声のなかにすぐ消えてしまった。

そして1か月がたったあくる日それは起こった。


1月 中国


北京のとある防衛軍の基地ではいつものように来るべき使命に備え日々の鍛練をしていた。

「よし、一時休息とする。解散!!」隊長の号令により兵士の緊張が解け会話が起こり始める。そんな彼らの頭上を“キュイィィィン”と音を轟かせながら向かってくる二機の戦闘機があった中華防衛軍の正規戦闘機の内の一種である殲-40A型だ。中国軍の正規戦闘機として運用されていた殲-20の後継として開発された新鋭機で日本の運用する60式戦闘機や65式支援機と同等の性能を有しておりアジアで運用されている戦闘機の総数の内三本の指に入るほどの数が配備・運用をされている。

その機体が飛行する様子を地上の兵士たちが見送る。どうやらスクランブル発進のようだが何かかおかしい彼らが飛んでいこうとしている方角は南つまり中国国内の方面に向かって行っているのだ、北京の航空隊は北方方面の防空を担当しており南方は管轄外である。そのことを兵士たちが不思議に思っていると今度は南の方から機影が3つ見える2機は解放軍所属の殲-40Aで残る1機はそれよりも大きい解放軍保有の轟-8爆撃機だ。ますます兵士たちは疑問に感じる。解放軍の飛行訓練の予定はないはずなので本来この機体たちが飛んでいるはずがない、そもそも飛行訓練場は海の方向でここにいること自体がおかしい。何事かと地上の兵士たちが議論しているさなか突如彼らは信じられない光景を目にすることになる。なんと“防衛軍”の戦闘機に向かって“解放軍”の戦闘機がミサイルを発射したのだ、防衛軍の戦闘機は慌てて回避行動をとるものの間に合わず直撃してしまい虚しく街へ落ちていった・・

突然の悲劇的な出来事を目撃してしまい茫然としていた兵士たちにも同じく悲劇の牙が襲い掛かろうとしていた。後ろからやってきていた轟-8爆撃機がいつの間にか彼らの真上を飛んでおりその機体に備え付けられていた爆弾槽が開き中から黒い物体が落とされ基地諸共吹き飛ばされる、彼らを自分たちの使命を果たすこともできずにその命を散らすこととなった・・・


「一体何が起こった!!」執務中に外で突然爆発音がしたため側近たちに聞く王主席、窓の外では至る所で黒煙が上がっている。

「報告します!解放軍の航空機が防衛軍の基地を爆撃しております!また、他の地域でも同様のことが起きており民間人にも多数の犠牲が出ているとのことです!!」事態の確認の為部屋を飛び出していた側近の一人が戻り顔を青くしながら報告する。

「解放軍のアホどもが?一体どういうつもりだ!」報告を聞き怒鳴り返す主席、そんな彼に恐れを取らずに冷静に事態の説明をしようとしていたものがいた。幹部の一人の張 徳因である。

「主席、恐らく解放軍によるクーデター・・所謂反乱の可能性が高いと考えます」

「反乱だと!?なぜまた今頃そんなことをするのだ!」そんなやり取りをしていると外の方が騒がしくなりはじめ、そして執務室のドアが勢いよく破られ銃をもった兵が入ってくる。

「劉!貴様これはどういうつもりだ!説明しろ!!」入ってきた兵たちの中に見知った顔を見つけ睨みつけながら怒鳴る王主席、その相手は解放軍の幹部の一人でもある劉 長祥上将だった。

「こんにちは皆さん、ご機嫌はいかがですかな?まぁ、聞くだけ無粋ではあるとは思いますが・・、それと王主席先ほどどういうつもりだとおっしゃいましたが簡単な事です。今一度この中国を世界の強国そして世界の指導者として君臨するために立ち上がっただけで御座います。その前に皆さんの身柄を拘束させてもらいますが、なに命まではおとなしくして頂ければ取りませんのでご安心ください」笑いながら説明をする劉上将まるで自分がこの国の指導者だと言っているような雰囲気を出している。その態度が気に食わなかったのか王主席が言い返す。

「ふん、劉よとうとう夢と現実の区別もつかなくなったか哀れな奴だ、今の時代我が国どころかどこの国も世界の指導者として君臨することなどできん、そんなこともわからないほど貴様はバカだったのか?まぁ、こんな事をやらかすくらいだし、今更確認する必要もないな、もしかして遠征軍の暴走も貴様らの差し金か?」そんな言葉を受ける劉上将しかし余裕の笑みは崩れず更に言葉を紡ぐ

「残念ですが遠征軍のことに関しては我々も予想外のことですな、だがそのおかげで邪魔だった東海艦隊もほとんど消えてくれて簡単にこちらへ引き込めたので感謝はしていますがね、さて無駄話もそろそろ終わりにしましょうか」その言葉を合図に周りにいた兵が動き出し、主席をはじめとした幹部を拘束しようとした刹那、張 徳因が黒い球体を自分たちと兵の間に放り投げる。それをみた一人の兵士が「手榴弾!!」と叫んだことで周りに居た者が慌て一時的に隙が生まれた。その隙をついて張が主席を担ぎ窓のほうへ走り出す。

「主席!今はここを逃げましょう掴まっていてください!!」「張君待てそっちは窓だ!ここは四階だぞ」

そう叫ぶ主席を抱えたまま張は窓を突き破り、下へと降り立ちそのまま逃走をはかる。ちなみに彼の投げた手榴弾は爆発しなかった、どうやら本物に似た偽物だったらしい。それに気づいた兵士たちは慌てて窓に駆け寄り二人を撃とうとしたが突然飛んできたカラスの大群に妨害され取り逃がしてしまった。そしていまここに軍が実権を握った中国政府が誕生してしまった。そしてこの一部始終を見て居た他国の者が実はいたことをこの時劉上将を始め誰も気づいたものはいなかった。


“こちらカラスからアマテラスへ師の国にて龍が暴れたし、魂は逃走するも以前危険と思われる。以上通信終わり”


1月15日 中華三軍紛争勃発ス

実際4階から飛び降りて無事にすむのだろうか・・

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