血の宇宙観艦式〈二〉
突撃艦「若葉」
補給活動を終えもう一度宇宙空間へ躍り出たこの艦はいま次々に格納庫から出て来る観艦式の参加艦艇を見るために止まっていた。
“こちら、突撃艦「若葉」に乗艦している新垣です。今私の後ろでは観艦式に参加する各国の宇宙戦闘艦が発進しているところでこの後観艦式が執り行われる予定となっています”艦橋でそのようにどこかのニュースレポーターが説明しているころ、俺たちは艦長室にあるモニターでその様子を見ていた。
「なぁ、俺が言うのもなんだがこんな所に俺たちがいても平気なのか?」
「大丈夫ですよ、なんかあっても艦長特権でねじ伏せますから安心してくださいな、勇士さん。それに一般大衆のいるところに彼女がいたら、折角の観艦式なのにそれどころじゃなくなってしまいますよ。」そう答える彼女色々危ない発言をしていた気もするが、確かにゆうだちを離しておけるのは助かる。なんだって、防衛隊の偽魂体はその出自の関係上一部の特殊な者たちに人気があるのだ。なかにはファンクラブがある娘もいる。
「そういうことなら折角の機会だ。ゆっくりさせてもらうことにするよ」再びモニターに視線を移す。ちょうど、艦艇も発進し終わり式が始まるところだった。
日本国宇宙防衛隊 第1星団旗艦 突破艦「水瓶」
「艦長、本艦の右舷の方向150㎞の先に高熱源反応を確認突撃艦クラスと思われます。」
「なにかの間違いじゃないのか?そんなところに艦なんか配置していないはずだが・・・」しかし、確かに反応がありますと返答され少し考える。現在、我が艦は観艦式の最中で右翼・左翼・上方・下方・中央艦隊の内、アメリカの宇宙戦艦と一緒の中央艦隊にて航行中である。ほかの艦の陣容は左翼艦隊に中国艦3隻と我が国の宇宙母艦「蒼龍」「飛龍」、右翼艦隊にイギリス・フランス合わせて4隻とロシア艦3隻、上方艦隊に大韓朝鮮帝国艦1隻とロシア艦4隻と突撃艦「珊瑚」「薄紅」、下方艦隊にドイツ艦2隻と巡航艦「博多」と伊呂波型支援艦5隻であり、中央艦隊に先ほどの2隻+巡航艦「別府」、突撃艦「緋」「銀朱」「紅」「撫子」そして、日露宇宙記念艦「Верный・響」の計35隻で構成されている。ちなみにこの日露宇宙記念艦、日露いや世界で初めて宇宙空間での戦闘を想定して建造された宇宙戦闘艦であり今現在は樺太で日露が年ごとに交互に保守・点検・整備を行っている。
そんなことは置いておくとして、その謎の艦隊についてだがまず参加の艦ではないことは間違いない。確かにはじめはインドも参加の予定だったがそれでも2隻だけの予定だったし、見学者を乗せた艦の追加の面でもそのような報告を受けていないのでそれもない・・・
“なに!? 艦長、不明艦隊から攻撃を確認高熱源反応まっすぐこちらに来ます。ビームです!”「なんだと!?」突然のCICからの報告を聞き、艦長席から立ち上がった直後水瓶の上を航行していた突撃艦「薄紅」のエンジン部分を2本の熱線が貫き、「薄紅」のエンジンが火を噴く。
“薄紅被弾、エンジンに火災を確認上方艦隊から落伍します!!”艦の後部を火に包まれ回転しながら落ちていく薄紅を見ながら報告を聞く。
“不明艦隊から更に攻撃を確認ビーム多数、ミサイル30発以上!!”
「各艦、個別に迎撃及び回避せよ!!」そう命令を下すが、直後に右にいた艦が爆発しその艦体が二つに折れる。
“宇宙戦艦プリンス・オブ・ウェールズ爆沈!!フランス艦の巡航艦ロレーヌ被弾、アルザス艦影確認できません!”
“上方艦隊、世宗大王爆散!ロシア艦2隻確認できず!他2隻珊瑚に曳航され離脱します。”
「なんてことだ・・・」あまりの出来事に放心状態になる。この間に左翼にいた中国艦が1隻轟沈し2隻が大破した・・他の海外艦も必死に反撃するが連携が出来ずじわりじわりと追い詰められていく
“!!!、伊33号轟沈!!偽魂体の脱出確認できず・・・”
「現時点をもって、徹底交戦へと行動範囲を移行!“敵艦隊を殲滅する!!”」
“了解、それと国安省から伝達『徹底交戦へ移行せよ』繰り返す『徹底交戦へ移行せよ』以上です”
「残存艦と連絡をとれ!連携しなければ全滅させられるぞ!」
“現在残っている艦は本艦をはじめ宇宙戦艦「ハワイ」「アドルフ・ヒトラー」巡航艦「別府」突撃艦「緋」「紅」「シゾポリ」「ペンデラクリヤ」「メセンヴリーヤ」支援艦「伊31」「伊32」宇宙母艦「蒼龍」「飛龍」あと「Верный・響」です・・”
14隻しか残っていなかった・・いや正確には16隻なのだがその2隻には一般人が乗っているため戦力にはできない・・ちなみに宇宙戦艦「クイーン・エリザベス」はドイツ艦の誤射により撃沈、宇宙戦艦「ビスマルク」はエンジンをやられ「博多」「伊34」「伊35」により曳航されて離脱しており、「銀朱」「撫子」は先ほどそれぞれ艦首とエンジンをやられ落ちていった・・撃沈自体は回避できたのが唯一の救いである。
対する相手は「クイーン・エリザベス」が2隻撃沈、「ハワイ」が1隻大破させ、「若葉」の迎撃ミサイルが“偶々相手艦に直撃”して5隻撃沈されており残り22隻となっている。
「数は劣勢おまけに連携も満足にできないか・・、かなり苦しいな・・」この状況をなんとか打開しようと思考を張り巡らせていると副長から報告が入る。
「艦長、ロシアの突撃艦「シゾポリ」から連絡が入っております」報告をきいてそのままつないでもらいモニターに相手が映る。
「こんにちは、こちらは突撃艦「シゾポリ」だ。時間もないので挨拶は省かせてもらおう」唐突に本題に入る突撃艦「シゾポリ」の艦長
「さて、今我々は礼儀を弁えぬ輩から攻撃を受けているわけだが折角の機会だ、ここは日露共同作戦をといきませんかな?」そう提案してくるがひとつ疑問がある。
「しかし、現在我々のほかにアメリカやドイツもまだ残っていますが・・」「失礼だが、アメリカはそろそろご退場するそうだぞ」?そんな感じに思っているとCICから“「ハワイ」第1砲塔に被弾、第2砲塔も吹っ飛びました。また、敵艦3隻の撃沈を確認”
“ドイツ艦から通電『我、「ハワイ」の曳航を開始する』以上です”と報告が入る。
決まりだな・・、相手にその旨を述べたのち指揮を執り始める。「しかし、艦長我々はロシアとの共同作戦機能を有しておりませんがいかがなされるおつもりですか?」副長が疑問を呈すがすかさず「大丈夫だ、手はある・・これより「Верный・響」を旗艦とした日露連合艦隊を編成する!とっととこの悪夢を終わらせるぞ!」と発す。
意外に戦闘描写書くのって難しいですね・・




